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SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
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印刷2015/01/28 00:00

インタビュー

SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか

 いまを去ること3か月前,デンマーク時間2014年10月21日に,SteelSeriesが人事に関するニュースリリースを出したのを,憶えている人も多いだろう。それは,2014年夏頃までLogitechの展開するゲーマー向け製品ブランド「Logitech G」(日本では「Logicool G」)を率いていたEhtisham Rabbani(エティシャム・ラバーニ)氏が,SteelSeriesのCEOに就任するという,驚きの内容だった。

 では,そんなRabbani氏をトップに据えたSteelSeriesは,どこへ向かおうとしているのだろうか。今回4Gamerでは,新CEO就任後初となる来日のタイミングで氏に話をする機会を得たので,移籍の経緯から,SteelSeriesのこれまでとこれから,日本のゲーマーから見て気になるところ,そして2015 International CES(以下,CES 2015)で発表された新製品まで,時間の許す限りいろいろ聞いてきた。

Ehtisham Rabbani氏(CEO, SteelSeries)
画像集 No.002のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか

 以下,その内容を,余すところなくお伝えしてみたい。


Logitech Gから移籍してきた理由と

SteelSeriesが狙う客層とは


4Gamer:
 こんにちは。お会いする前に確認したんですが,初めてお目にかかったのは,2013年の春でした。2年弱ぶりですね。ニュースリリース日から計算すると,SteelSeriesへの入社から3か月程度経過したかと思いますが,落ち着きましたか。

Ehtisham Rabbani氏:
 実際には4か月くらいになりましたけど,おかげさまで落ち着きました。
 (Logitech GのトップからSteelSeriesのトップへと移籍となるため)業界が変わっていませんから。

4Gamer:
 いまは基本,本社のあるデンマークで仕事をしている感じですか。

Ehtisham Rabbani氏:
 私の本拠地は飛行機の中みたいな感じですね(笑)。本社のあるコペンハーゲンと,北米拠点のあるシカゴ,それとアジアを飛び回ってます。

4Gamer:
 つまり,今回の来日で私達のような報道関係者や,あるいはお客さんと会ったら,また“本拠地”に戻って,別の場所に向かう,と。
 お会いしたら伺おうと思っていたのですが,せっかくご自身で立ち上げたLogitech Gを半ば捨てるような形でSteelSeriesへ移籍した理由は何なのでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 Logitechにいたときから,SteelSeriesのことは,素晴らしい会社だと敬意を払っていました。が,私自身はLogitech Gを率いることで満足していたので,正直,SteelSeriesの取締役会からCEO就任を打診されたときも,Logitechを離れる気はなかったんですよ。

4Gamer:
 ではなぜ,移籍に至ったのでしょう。

画像集 No.003のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 少し自分のお話をさせていただくと,そもそも私はゲームが大好きで,ゲーマーであると自負しています。ゲームを愛する者として,自分以外の人達にも,最高のツールを手にしてほしいというのが根底にあるんですね。
 翻って,いま,大手のゲームデバイスメーカーが何をやっているかというと,ゲーム以外の部分に注力しているように見えます。とくにトップ2社はその傾向が強いように見えます。

 そのなかにあって,3番手であるSteelSeriesは,ゲーマーのためのデバイスを作る専業メーカーであり続けている。私としては,(SteelSeries取締役会との交渉を通じて)そんな専業メーカーの企業を率いていくことに興味が出てきた,というのが,移籍を決めた最大の理由です。
 いかがですか。大手2社を見ていて,同じような印象を持ちませんか。

4Gamer:
 Razerに関しては若干そう思わなくもないですね。Logitechに関して言うと,とくにLogitech Gが立ち上がってからはゲームにフォーカスしているように見えますが,Ehtishamさんがおっしゃりたいのは,周辺機器メーカーのゲームデバイス部門ではなく,ゲームデバイスメーカーを率いたい気持ちが勝った,ということですよね。

Ehtisham Rabbani氏:
 まさにおっしゃるとおりで,ゲーム専業メーカーのトップになるというのは大きなチャンスだと思ったのです。

4Gamer:
 Logitech Gのトップだとすると,Logitech社内で他部門と調整しなければならないことがあるのが,SteelSeriesだと,そういうことはなくなるとかいったあたりが,ぱっと思いつくメリットとしてありそうですね。

Ehtisham Rabbani氏:
 そのとおりで,SteelSeriesに来てからは,他部門とのネゴシエーションはまったく必要ありません。メンバーが全員,ゲームのことしか考えてませんから(笑),仕事はとてもしやすいですね。
 ところで,最近のSteelSeriesについては,どういう印象を持っていますか。

4Gamer:
 社名がSoft Tradingだった頃からお付き合いさせていただいてますが,Ehtishamさんが入社する1年くらい前まで,それ以前の2〜3年は,スタッフの入れ替わりが多かったりして,かなり混乱していたように見えました。

Ehtisham Rabbani氏:
 それは大変重要なご指摘です。実のところSteelSeriesは,いまご指摘いただいた期間も通じて,一貫して急激な成長を続けています。これくらい急激な成長を遂げている期間は,ときとして,自分達の目の前にある「成長を果たしていくための準備」が100%できていないことも多く,それを外から見ると,混乱しているように見えたりするんですよ。
 そこで,私の入社後,私達は,「SteelSeriesとは何者なのか」の再定義を図ってきました。私達の差別化要因は何なのか,ゲーマーの心を捉えるため,次に何をすればいいのかを考えてきたのです。

4Gamer:
 外から混乱しているように見えていた,SteelSeriesというブランドの再定義が必要だった,というわけですね。

Ehtisham Rabbani氏:
 ええ。それで,いま私達がどういう立場にいるかというと,チャレンジャーであると言うことができると思います。業界3位ですからね。
 ただ,この3位というのは非常によいポジションだと考えていて,追いかける立場であるからこそ,一所懸命に仕事をできるな,と。

 それに,私達のお客さまである方々がどういう人達かと言えば,ゲームが大好きで,ゲームは楽しいものだと考えていて,同時に,初心者を虐めることで喜ぶのではなく,タフな相手を倒すことに喜びを感じるような人達だと思います。チャレンジャーである私達と,挑戦し続けるゲーマーが出会うことによって,とても楽しい時期が訪れているというわけです。

現在のSteelSeriesロゴ。かつてあったprofessional gaming gearは消えている
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4Gamer:
 ブランドの再定義という点で気になるのは――これはEhtishamさんがSteelSeriesに合流する前に決定され,実行に移されたことですが――SteelSeriesのブランドロゴから,「professional gaming gear」のタグライン(tag line,スローガン)が消えたことです。ほぼ同時に,「SteelSeries Free」とか「SteelSeries Flux」といった,少なくともプロ志向ではない製品も出てきたことで,日本では「SteelSeriesってこれからどうなっちゃうの?」という声が多く聞かれるようになっていった印象があります。
 それもあって伺いたいのですが,いまおっしゃった「挑戦し続けるゲーマー」というゲーマーがどういう人達のことなのか,もう少し細かく説明いただけないでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 実のところ,私自身も,そのあたりを入社以来,ずっと考えています。
 SteelSeriesはブランドとして,e-Sportsをサポートしています。プロチームのサポートも増えています。
 でもそれだけじゃない。ならどういう人達がターゲットになるかというと,真剣にゲームへ取り組んでいる人達です。いまは有名ではなく,目立った実績はないかもしれないけれども,いずれこの世界で勝って名を上げたいという人達が,私達の極めて重要なターゲットなのです。

 ダビデとゴリアテの話(※旧約聖書に登場する物語。少年ダビデが巨人ゴリアテを倒すもの)はご存じですよね。

4Gamer:
 ええ。

Ehtisham Rabbani氏:
 いま,デバイスの世界には巨大なゴリアテが2人いて(笑),SteelSeriesはダビデのような会社なわけです。そして,ダビデのようなゲーマーもいて,その人達が,大きな功績を打ち立てたような人達を相手にがんばっている。私達は,そういうゲーマーのためにありたいと考えています。

4Gamer:
 その市場って,全世界的に見て,どの程度の規模があるとお考えですか。世界規模で見ると,当然のことながら,ゲームは余暇として楽しむ,カジュアルな層のほうが圧倒的に多いですよね。

Ehtisham Rabbani氏:
 どういう定義をするかによって変わるとは思いますが,FPSやRTS,MOBA,オンラインRPGを1週間に10時間プレイする人達のことを「ハードコアにゲームをプレイするシリアスゲーマー」と定義するのであれば,13〜44歳の男性のうち,25%がシリアスゲーマーという調査結果があります。

4Gamer:
 え,そんなにいますか。

Ehtisham Rabbani氏:
 かなりの規模ですよね? 世界全体で,13〜44歳の男性の25%が,私達のターゲットなんですよ。

4Gamer:
 同席いただいている(SteelSeires国内)スタッフの方々もざわついていますが(笑),ちょっと驚きました。
 ところで,そのデータはあくまで男性のものなんですよね。女性はいかがですか。

Ehtisham Rabbani氏:
 (手元にデータはないけれども)個人的には,男女間の性差はないと思っています。女性も男性も,勝ちたいという気持ちや,最良のツールを使いたいという気持ちに違いはないのではないでしょうか。

SteelSeriesがかつて市場投入した女性向け製品シリーズ「Iron.Lady」には,ピンク色の「SteelSeries Ikari Laser」と「SteelSeries QcK」がラインナップされていた
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4Gamer:
 それこそSteelSeriesは以前,女性向け製品として,ピンク色のゲームデバイスを出したりしていましたね。

Ehtisham Rabbani氏:
 ありましたね(笑)。ただ私は,女性のユーザーを獲得しようと,ピンクにしたりピカピカしたものをつけたりするのは,遅れていると思います。

4Gamer:
 あれは出てすぐ消えた記憶がありますが,今後はもうないと?

Ehtisham Rabbani氏:
 絶対ないですよ。


アジア地域での開発拠点設置計画あり

日本市場におけるスポークスパーソン復活も


4Gamer:
 Ehtishamさんは世界中を飛び回っているというお話でしたが,SteelSeriesの拠点は本社のあるデンマークのコペンハーゲンと,米国シカゴ,あとは中国ということでいいのでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 台湾にもアジアのマーケティング拠点がありますね。会社としての拠点としてはコペンハーゲンとシカゴ,台北です。中国は製造拠点になります。

4Gamer:
 コペンハーゲンとシカゴの役割分担は,どうなっているのでしょうか。一時期,プレスリリースがシカゴからしか出ないような時期もあったように記憶しているのですが。

Ehtisham Rabbani氏:
 簡単にお話すると,ハードウェアのデザインはすべてデンマークで行い,ソフトウェアの開発チームはシカゴに置き,製造は中国で行っています。
 マーケティングのチームはデンマークとシカゴ,台湾のすべてに置いていますが,こうすることで,欧州と北米,アジアそれぞれの市場におけるトレンドが分かるのが強みですね。

SteelSeries Stratus
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4Gamer:
 以前,「SteelSeries Stratus」開発担当の方から,モバイルチームとして少し特殊な行動をとっているという話を聞いたことがあるのですが,例外はそれくらいで,ハードウェア開発は基本的に全部デンマークでやっていると。

Ehtisham Rabbani氏:
 そうですね。
 ただ,そこに付け加えると,いま私達は,台湾にも開発部隊を設けようと考えています。アジア発で,全世界で使われるような,ユニークな製品が今後,作られていくことになるでしょう。
 またこれは「将来的に」という話ですけども,ゆくゆくは中国,日本といった感じで,全世界の主要なところには,製品開発の専門家を置きたいと思っています。

4Gamer:
 製造は中国とのことですが,SteelSeriesについて,「CEOクラスの人にお目にかかったら絶対に聞こう」と思ったことを聞かせてください。

Ehtisham Rabbani氏:
 何でしょう?

4Gamer:
 お世辞でも何でもないのですが,SteelSeries製品に対しては,技術的に高いものがあり,ときに傑作が飛び出してくる,面白いブランドだという認識を持っています。

Ehtisham Rabbani氏:
 ありがとう(笑)。

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SteelSeries Kana
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SteelSeries Siberia Elite
4Gamer:
 しかし,製品の品質管理面で若干の問題を抱えている。これが,SteelSeriesに対するもう1つの評価でもあります。日本では「発売延期」となったので,エンドユーザーレベルでの混乱は招きませんでしたが,「SteelSeries Kana」の初期ロットで,ソールが当初予告されているものと違っていたり,「SteelSeries Siberia Elite」のマイク入力レベルが著しく低く,確認してみると,申し出た人に対しては交換対応していたり……。
 トンデモないレベルの問題がしばしば生じ,しかもそれが明らかにされない。ここに問題があるのではないかと考えていますが,この点についての見解を聞かせてください。

Ehtisham Rabbani氏:
 それは重要なポイントです。私も外から見て似たような認識を持っていたので,入社後,製品の不良率を調べてみました。
 すると面白いことに,(不良率自体は)弊社のほうが競合他社よりも低かったんですよ。SteelSeriesの製品はもともと品質が高いレベルで安定しているため,エンドユーザーの期待値も高くなってしまう。そのため,仮に極めて小さな欠点であっても,気づいて指摘され,不具合の話が大きくなる傾向にあるのだと思います。

 すべてがそうとは言いませんが,メーカーによっては,平凡な品質で出しているため,多少の問題なら,ユーザー側も「そのメーカーならそんなもんだよ」と,フィードバックにつながらない。それに対してSteelSeriesの場合は,ユーザー側がシビアで,すぐ声を上げているのではないでしょうか。
 ただ,期待値が高いというのは,とてもいいことだと考えています。私達は常に完璧でありたいと願っていますし,完璧でなかった場合は,申し訳ないと心の底から思ってます。個人的にもいやな気持になりますしね。

 1つ保証させていただくと,製品が100%でなかった場合,3か月以内にその問題を解決します。

SteelSeries Siberia v3
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4Gamer:
 品質管理関連で直近の「残念なこと」として,「SteelSeries Siberia v3」(以下,Siberia v3)の出荷が止まっていることがあります。これについては私も調べまして,PlayStation 4(以下,PS4)の「DUALSHOCK 4」と接続するとき,まれに接続不良が生じる,という現象があるという問題を認識していますが,まず,その理解は正しいでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 ご指摘のとおり,Siberia V3では,PS4ユーザーの方からそのようなフィードバックをいただき,すぐに販売を停止しました。現在は問題がケーブル配線にあったと解明し,解決もしていますから,すぐに流通は再開すると思います。

4Gamer:
 たとえば1月上旬に店頭で買おうと思った人は,店頭に行っても売っていなかったわけですよね。エンドユーザーが,「発売されているはずなのに売られていない。その理由も分からない」と感じるというのは,大きな問題だと思うんです。
 SteelSeriesは,そういった情報が出てきにくいメーカーだという印象もあるのですが,なぜ出てこないのでしょう。

Ehtisham Rabbani氏:
 Siberia v3に関して言えば,正直にお話すると,「問題は解決してしまったので,とくに説明の必要を感じなかった」という回答になります。ただ,おっしゃるとおり,ユーザーの方々が受ける印象というのはありますね。今のご指摘はとてもいいアドバイスでした。

4Gamer:
 なぜ失礼を承知でこのことを伺ったかというと,「いまのSteelSeriesにはスポークスパーソンがいないんじゃないか」と,思うからなんです。
 世界規模でも,以前はいましたが,ここ2〜3年は不在でした。日本でも,SteelSeriesが日本市場にやって来たときから優秀なスポークスパーソンがいて,二代めの方も優秀でしたが,やはりいまはいません。世界市場においても,日本市場においても,ここは弱点になり得ると思うのですが,いかがでしょう。

Ehtisham Rabbani氏:
 直します。というか,世界市場に向けて専任のスポークスパーソンを1人置きました。また,別途,こうやってお話しているように,私自身もスポークスパーソンとして動いていますので,何でも聞いてください。
 また,日本でも,いまはカントリーマネージャーと,台湾から統括する地域担当副社長,そして代理店がいますが,それに加え,メディアやユーザーに対してアクティブに働きかけができるような人を付けようと考えています。

4Gamer:
 それは心強い。期待しています。
 製品に関してはもう1つ,ここ数年のSteelSeriesは,とにかくゲームチームやゲームタイトルのコラボレーションが多く,一方で,純然たる新製品の出てくるペースが落ちていたようにも感じられます。
 エンドユーザーからすれば,「コラボでカラーバリエーションを増やすくらいだったら,そのリソースを次の何か新しい製品に向けてほしい」と思ったりもするでしょうが,コラボ製品についての見解を聞かせてください。

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Ehtisham Rabbani氏:
 私のなかでは,その2つは,「どちらかを優先させるために片方が犠牲になる」という関係になってはならないと考えています。
 ゲーマーの数とか,我々がビジネスをしている国の数は膨大な数にのぼりますので,さまざまなテイストがあって,いろんなe-Sportsのチームがあって,それを我々は全部サポートしていきたいという思いがあるので,バリエーションを増やしていく必要はあり,それは正しい戦略だと考えます。ただ,「バリエーションモデルを増やすのにコストがかかっているから,次世代製品は我慢……」というのは,あってはならない。そういう抑制は1セントもしていません。

4Gamer:
 それは,Ehtishamさんが入社する前からですか? それとも,入ってから改めたのでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 そこをデータとしてお話できるほどには社歴が長くないのですが,私が入社してからは確実にそうです。


Apex M800の目玉はQS1と「薄さ」

マクロ機能は何のために?


4Gamer:
 CES 2015では,面白い製品が出てきたように思います。オリジナルキースイッチ採用の「SteelSeries Apex M800」(以下,Apex M800」と,ペーパーローンチ自体はされていた「SteelSeries Sentry Eye Tracker」(以下,Sentry)は,どちらもユニークですね。

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Apex M800
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Sentry

Ehtisham Rabbani氏:
 はい。いまコラボと新作の話が出ましたが,エンドユーザーに「新作が少ない」という印象を与えていたのだとすれば,それはイノベーション(innovation,革新)の数が足りなかったのだと思います。
 いま私達は「最新のブレイクスルー」と呼べるような技術の開発にもう一度注力していこうとしていますが,そのよい例が,Apex M800とSentryです。
 CESで体験しましたか?

4Gamer:
 残念ながらできていません。同僚が触ってきた印象を聞いているくらいですね。

Ehtisham Rabbani氏:
 どうしてブースに来てくれなかったんですか?(笑)

4Gamer:
 仕事で日本を離れられなかったんですよ(笑)。私もぜひ体験したかったのですが。

インタビュー会場に置かれていた,Apex M800およびSentryのデモ機。Sentryはまだ日本に1台しかないそうだ
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Ehtisham Rabbani氏:
 ではぜひ今日,体験していってください(※インタビュー会場には両製品のデモ機が置かれていた)。

 ということでApex M800ですが,ゲームデバイスの世界において,いま,メカニカルキーボードは最強のツールになっていると思いますが,Apex M800における私達のイノベーションは,「Cherry MX」ではない,新しい「QS1」スイッチです。

4Gamer:
 QS1は自社開発だと聞いていますが,ぜひ詳細を聞かせてください。

QS1キースイッチのデモ用ストラップ
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Ehtisham Rabbani氏:
 もちろんです。そこが一番“おいしい”ところですからね。
 QS1は,自社で開発し,自社製品に使うため開発したスイッチです。最大の特徴は,レスポンスが非常に高速だということです。まず,キーの押下を検出するまでの距離がCherry MXの2mmよりも短い1.5mmとなっています。また,底打ちする必要はないんですが,仮に底打ちしたとしても,やはりCherry MXの4mmより短い3mmまでしか沈みません。
 ゲーマーはもちろんキーを叩きたいわけですが,厳密に言えば,叩いた反応が欲しいだけですから,そこまで深くキーを押し込む必要はないですよね。それに対応した結果がQS1です。結果として,一般的なメンブレンスイッチより40%,Cherry MXキースイッチよりも25%高速な打鍵を行えるようになりました。

QS1キースイッチの概要
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4Gamer:
 反応する距離が1.5mmで,底打ちまで3mmという数字は,どういう根拠で設定されたのでしょうか。短くしたいだけなら,極論,順に1mm,2mmでもいいと思いますが。

Ehtisham Rabbani氏:
 これはいわゆる“誤爆”を回避するためです。たとえば,1mm押下しただけで反応するようにしてしまうと,何かが触れただけで誤作動してしまうということがあったりしたんですよ。あくまでも意図したストロークを検出するために設定した数字ということになります。

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4Gamer:
 結果として誕生したQS1ですが,「キーの反応する深さが1.5mm」「底打ちするまで3mm」という仕様は,先に搭載製品が出てきたLogitechとオムロン スイッチアンドデバイスの「Romer-G」とまったく同じ。中央に約1677万色対応のLEDを搭載し,周囲をプランジャーのような機構で覆ったというスイッチ形状すら同じですが,短く,光らせようとすると,この形状になるということなのでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 「ゲームにとって効果的なキースイッチとは何か」というテーマに対して,偶然,両社が同じ方向を向いていたということだと思います。
 ただ,ゲームにおける反応速度を向上させるためには,スイッチだけではなく,全体的な設計の最適化が必要ではないかとも思いますね。そこが彼らと私達の違いではないでしょうか。

4Gamer:
 「全体」というのはどういう意味ですか。

Ehtisham Rabbani氏:
 キーボード全体という意味です。Apex M800は,キーボードのデザインそのものがシンプルであるということですね。
 競合他社を貶(けな)すつもりはまったくないとお断りしてから続けると,複雑なデザインをしているキーボードって,純粋に,作業しにくいと思うんですよね。

4Gamer:
 ああ,それはよく分かります。Apex M800って,メインキーの左に追加キーがある以外は,非常にシンプルなデザインですね。

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画像集 No.017のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 実はここがApex M800の設計上,非常にチャレンジングなところでして,筐体とキートップの高さを低く,フラットにするというのを実現するのは非常に難しかったんです。(背が高いと,ゲーマーは手の置き方に窮屈な思いをすることになり,その分操作が遅れがちになるのに対し)キーが低ければ,指が動かしやすく,極めて高速にキー操作を行えます。

4Gamer:
 段ごとのキー角度傾斜に違いはなく,また,キートップ自体もフラットですね。

Ehtisham Rabbani氏:
 ご指摘の意図は分かりますよ。キーごとに異なる溝が付いていたりとか,いろいろなパターンをほかの会社さんはされていますよね。
 私達も,開発中には,溝や,逆に突起など,表面の特徴をいろいろ試しました。もちろん,プロゲーマーの方々と一緒にです。

4Gamer:
 つまり,他社とは異なり,SteelSeriesの調査では,キートップはフラットなほうがよいという結果が出たと。

Ehtisham Rabbani氏:
 そういうことです。ただ,全部フラットなのではなく,[W]キーにすぐ指で辿り付けるような目印が求められていることが分かりまして,[W]キーには,(ホームポジションである[F][J]キー用とは異なる)突起を用意しています。

Apex M800では,[W]キーの手前側両端に突起が設けられている
画像集 No.018のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか 画像集 No.032のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか

4Gamer:
 (実機をチェックして)あ,ほんとだ。(左手の)中指でこういう突起を確認するのって新鮮ですね。

キーの下地に漏れる光の量は,ゼロではないものの,相当に少ない
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画像集 No.031のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 外観のデザインという点では,キートップから光が漏れない,という点にも注目してください。QS1のLEDは,中央部分を集中して光らせるような設計になっています。なので,漏れた光同士が混ざって濁ったりすることがありません。非常にクリーンで,エレガントで,美しい。

4Gamer:
 ああ,それで合点がいきました。キートップの中央に英字が印字されているのはそれが理由なんですね。

Ehtisham Rabbani氏:
 おっしゃるとおりです。

4Gamer:
 ただ,光ることそれ自体は,珍しくありませんよね。約1677万色から好きな色を選択できることも,少なくとも斬新ではありません。Apex M800ならではの機能というのはあるのでしょうか。

画像集 No.026のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 統合ソフトである「SteelSeries Engine 3」から,全キーの光らせ方をカスタマイズできます。また,ゲーム内の動きと連動してイルミネーションが動く,といったこともできます。「通常時はゲーム内で使うキーだけ光っているのだけれども,ダメージを受けるとその瞬間だけ全キーが赤く光る」とかいった感じですね。

4Gamer:
 それはどうやって実装してるんですか?

Ehtisham Rabbani氏:
 この機能を実装するには,ゲームパブリッシャさんとの協力が必要です。まだ名前は開示できませんが,ゲーム業界の最大手2社さんと目下,話を進めているところですので,近々,実装について発表できるでしょう。

4Gamer:
 期待しています。ところで,Apex M800ではもう1つ,マクロやイルミネーション処理専用のプロセッサを,キーボード制御用とは別に搭載しているのも,大きな特徴として打ち出されていますよね(関連記事)。

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Ehtisham Rabbani氏:
 はい。Apex M800では,私達が「Macro Key」と呼んでいる本体左端のキーだけでなく,すべてのキーに対して,イルミネーションの色だけでなくマクロ機能もカスタマイズできるようになっています。それを専用プロセッサで処理するため,端的に述べて処理が非常に高速です。

4Gamer:
 マクロに関して以前から疑問がありまして,そもそも競技性の高いゲームタイトルだと,マクロが禁止されていることが多いですよね? SteelSeriesとして,キーマクロって,どのような用途を想定しているのでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 まったくご指摘のとおりで,e-Sportsの大会では,マクロは禁止されますね。
 ただ,自分が1人でプレイする,友人と遊ぶ分には何の問題もないわけです。私もRPGはプレイしますが,「Diablo III」のようなタイトルで,ポーションを取り出して,適切な量を飲んで,という複数のステップは,マクロなら一発で済みますから,食わず嫌いせず,使ってみると便利ですよ。
 私の友人には,16ステップをマクロに突っ込んでいる人もいますが(笑),SteelSeries Engine 3なら40でも50でも好きなだけステップを入れられますから,問題のない範囲で,ご自由に使いこなしてください。

4Gamer:
 あと,Apex M800の固有機能と直接の関係はないのですが,1つお願いしたいことがありまして。

Ehtisham Rabbani氏:
 なんでしょう。

4Gamer:
 当たり前のことを伺いますが,Ehtishamさんって,これまで英語キーボードしか使ったことはありませんよね?

Ehtisham Rabbani氏:
 はい。

画像集 No.021のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
4Gamer:
 実は,日本語キーボードには,[1]キーの左に[半角/全角]キーというのがありまして,簡単にいうと,1byteの英数字入力と,2bytesの日本語入力を切り替えるためのスイッチ的なキーなのですが,これが,一部のゲームエンジンと相性が悪いんです。最悪の場合,これを押下してしまうと,コンソールが立ち上がってしまい,しかもゲーム自体を終了させて再起動しない限り二度とゲームに戻れなくなってしまうという。

Ehtisham Rabbani氏:
 それは大変ですね。

4Gamer:
 SteelSeriesのキーボードには,[Windows]キーを無効化する機能があります。なのでおそらくApex M800でも同じように[Windows]キーは無効化できるのですが,これと同じように,[半角/全角]キーを無効化する機能を用意してほしいと思っているのです。
 現状のSteelSeries Engine 3だと,[半角/全角]キーは,カスタマイズの対象から外れているはずなので……。

Ehtisham Rabbani氏:
 それはゲームプレイにおいてすごく大事な点ですよね。私の感覚としては,たぶんそれは対応できると思うので,必ず確認します。

4Gamer:
 ありがとうございます。よろしくお願いします。

※2015年1月28日20:00頃追記
 その後,1月リリースの最新版SteelSeries Engine 3で,[半角/全角]キーの無効化が可能になっていることを確認できました。ゲームの起動に合わせて無効化する,ということも可能になっています。


SentryのTwitchストリーミングは基本的に全タイトルで利用可能。PC以外にゲーム機でも使える?


4Gamer:
 Sentryについても聞かせてください。2014年6月にペーパーローンチされたときから,国内でもかなり高い注目を集めてましたが,これはいままでのSteelSeriesのラインナップからすると,かなり特殊な製品ですね。

MSI製のゲーマー向けノートPCにSentryを取り付けた状態
画像集 No.022のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 ですね。全然違うタイプの製品です。
 おそらく次の質問は「なんでこんなの作ったんですか」でしょうから(笑),先んじてお答えしてしますが,これからのゲームってどうなるんだろうと考えたときに,私達は2つの大きなトレンドがあると考えています。
 1つは,すべてのゲーマーが配信を始めつつあるということ。もう1つは,勝ちたいと思うゲーマーが,“プロフェッショナルなツール”を使いたいと考えていることです。

4Gamer:
 1つめは分かりやすいですが,2つめはなかなか面白いですね。初めて聞きました。

Ehtisham Rabbani氏:
 こういった2つのトレンドがあるなら,それに対応したいということで,用意したのがSentryになります。

4Gamer:
 Sentryは,Tobii Technology(以下,Tobii)との協業によって生まれたとのことですが,Tobiiの現行技術だとUSB 2.0で60fpsに対応できるのに対し,SentryはUSB 3.0で50fpsですね。これはどういった理由によるものでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 まずUSBのほうから回答しますと,USB 3.0なのは,単純にUSB 3.0が普及しているからですね。

4Gamer:
 USB 3.0なので,「Sentryにはデータ解析のためのプロセッサが入っておらず,けっこうな量の生データをPCへ送るのではないか。だとするとSentryのCPU負荷はかなり高いのではないか」と,私達は考えていましたが。

画像集 No.025のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
Ehtisham Rabbani氏:
 Sentryが搭載するのはマイクロプロセッサのみなので,その点では正しいですが,PCに送るデータの量は少なく,ゲーム用途での負荷もほとんど無視できるレベルです。安心してください。
 50fpsなのはなぜかという点ですが,まず,50fpsでも非常に正確な検出が可能です。そのうえで回答させていただくと,現時点でのアプリケーション(application,ここではソフトウェアではなく応用分野のこと)に合わせて選択しています。なので,次世代Sentryでは60fps化するかもしれませんし,もっと上のフレームレートを狙うかもしれません。

4Gamer:
 ちょっと気になったのは,CES 2015で,ブーススタッフから,対応タイトルが2つしかないという説明を同僚が受けたことです。これは厳しくないかという気もするのですが。

Ehtisham Rabbani氏:
 その点については,Sentryの使い方が3つある,ということを考えていただく必要があると思います。

 1つはTwitchストリーミング用で,「ゲーマーがプレイ中の様子と,目の動きとセットでストリーミングする」用途です。これまでは,ゲーム内で生じていることしか見えませんでしたが,Sentryであれば,プレイヤーの目の動きを一緒に配信できますから,(MOBAで)リソースをどうやってマネジメントしているのか,いかにして防御を組み立てているのか,といったことを視聴者がチェックできるようになります。

Sentryの概要
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4Gamer:
 それをできるのが,現状,「Dota 2」と「StarCraft II」のみという理解だったのですが……。

Ehtisham Rabbani氏:
 そこにミスコミュニケーションがあったようですね。Twitchストリーミングにおけるアイトラッキングは,どのゲームでもできます

4Gamer:
 なんと! それは重要な情報ですね。Sentryの可能性がぱあっと開けてきた気がします。

Ehtisham Rabbani氏:
 なら,2タイトルの対応に留まるのは何かというと,2つめの用途,「目で行うゲーム操作」です。これを行うためには,操作用のAPIがゲーム側に入っていなければならないわけですが,そこまで対応できているタイトルがまだ2タイトルしかありません。

4Gamer:
 そういうことだったんですか。納得しました。

Ehtisham Rabbani氏:
 はい。それで3つめがトレーニング用途ですね。
 たとえば「League of Legends」(以下,LoL)などをプレイするときに,プロは画面内の何を見ているか,ということを,Sentryを使えば可視化することができます。「プロはリソースコレクションなんて全然見てなくて,あくまでもプレイに集中しているのが,アマチュアはリソースに気を遣っている」なんてことが,データとしてはっきり分かるようになります。

4Gamer:
 いまお話いただいた3つの機能は,すべて,CES 2015で展示されたバージョンの現行世代Sentryで実現されているのですか。

Ehtisham Rabbani氏:
 Twitchストリーミングは,デモさせていただいたように,すでに実現できています。インゲームの操作とトレーニング用ツールは開発中です。
 また,先ほど次世代の話も少しお話しましたが,並行して次世代Sentryも開発中ですね。ということで,今後数か月にわたって,Sentryに関してはたくさんのニュースをお届けできるのではないかと思いますよ。

Sentryを用いたアイトラッキングのデモ。最初に,ユーザーの目と,ディスプレイサイズに対してキャリブレーションを行うと,一定の枠内で目の動きを追従するようになる。写真を拡大してもらうと分かるのだが,ここでは9つある点のうち,上段中央より左下あたりを目で見ている
画像集 No.023のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
4Gamer:
 Sentryに関してはもう1つ質問がありまして,その前に予備質問ですが,Sentryは3つの赤外線マイクロプロジェクタが,ディスプレイデバイスのサイズとユーザーの目との距離を把握して,キャリブレートされた枠内における視点の動きを追うデバイスという理解でいいですか。

Ehtisham Rabbani氏:
 そのとおりです。

4Gamer:
 ありがとうございます。というわけで本題ですが,CES 2015のデモでは,デスクトップかノートかはともかく,いずれもPCゲームのデモになっていましたよね。ただ,いまお話いただいた実装であれば,たとえばSentryでディスプレイのキャリブレーションさえ終わってしまえば,その後はPCゲームじゃなくて,ディスプレイデバイスに接続したゲーム機のゲームプレイに対するアイトラッキングも,少なくともトレーニング用途では可能ではないかと思えるのですが,この点はいかがでしょう。

Ehtisham Rabbani氏:
 それはいいアイデアですね。我々もまだテストしていませんから,「できます」と即答はできませんが,おっしゃるとおりだと思います。

SentryはマグネットシートでノートPCの液晶パネルに半固定されていた。なので,使わないときは外して片付けておける
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4Gamer:
 日本でも,LoLの人気に火が付き始めている印象を受けるので,Senrtyは「PCゲーム用」として出ても十分に面白いと思いますが,一方で,おそらく日本におけるSentryの用途として最も期待されているのは,格闘プロゲーマーのアイトラッキングではないかと。なので,ゲーム機が主戦場となっている格闘ゲームで使えたら素晴らしいなと思っていたんですが,質問して正解でした。

Ehtisham Rabbani氏:
 いや,本当にすごくいいアイデアだと思いますね。

4Gamer:
 ちなみに,Apex M800とSentryは,いつ頃から日本でも購入できると思っておけばいいでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 どちらも2月か3月くらいには店頭に並ぶと思います。弊社の直販サイトではもう少し早く購入できるようになるかもしれません。


新製品は四半期ごとに発表

次に登場する製品は……?


4Gamer:
 将来の話はできないと分かっていますが,最後に少しだけ。
 Sentryのところでちょっと話に出させていただきましたが,日本ではやはり,格闘ゲームがe-Sports系タイトルとしては大きな存在になっています。
 シリアスゲーマーをサポートしているはずのSteelSeriesは,これまで一度もアーケードスティックを出したことはありませんが,EhtishamさんのCEO就任で,状況が変わることはあるでしょうか。

Ehtisham Rabbani氏:
 ご想像いただいているとおり,将来の製品開発については何も言えませんが,そのコメントは真摯に受け取っておきます。
 逆に質問していいですか? 弊社製品のパッケージングについては,どういう印象を持っていますか。

4Gamer:
 これまでも失礼な質問をしてきたので,失礼を承知で率直に述べますが(笑)。

Ehtisham Rabbani氏:
 (笑)。

Apex M800とSentryの製品ボックス
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画像集 No.028のサムネイル画像 / SteelSeriesの新CEO,ラバーニ氏インタビュー。Logitech Gから電撃移籍した彼は,業界第3位のデバイスメーカーをどこへ導くのか
4Gamer:
 SteelSeriesのファンにとっては,すばらしい製品ボックスだと思います。ファンなら,誰が見てもSteelSeriesの製品だと分かりますし,印刷されている製品イメージも実際の製品とそう大きな齟齬はありません。
 しかし,そうでない人にとっては,なんだか分からないと思いますね。「Sensei」って言われても「え?」という。説明がなさすぎるうえに,わずかにある説明は,英語か記号。店頭で,生まれて初めてゲーム用デバイスを買う人が手に取るかというと,ちょっと厳しいというのが私の意見です。

Ehtisham Rabbani氏:
 そういう意見は本当に役立ちます。ありがとうございます。

4Gamer:
 いや本当に,古くからSteelSeries製品を使っている人にとっては,遠くからでも一発でSteelSeries製品だと分かる,いいデザインだと思うんですけどね。

Ehtisham Rabbani氏:
 とくに,どんどん若い人達が出てきますからね。

4Gamer:
 というわけで,長時間ありがとうございました。最後の質問です。CES 2015で新製品が発表されましたが,次の製品発表はいつ頃ですか? そろそろ新しいマウスにも期待したいところですが。

Ehtisham Rabbani氏:
 何が出てくるかは言えませんが(笑),基本的には,四半期ごとに新しい製品が出てくると期待していたいだいて,間違いないでしょう。

ゲーマーだからというわけではないのだが,遊び心も豊富なRabbani氏。最後の最後に,お願いしていないのにこんなおどけたポーズもとってくれた
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