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AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
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印刷2008/03/04 23:01

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AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表

画像集#002のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 日本時間2008年3月4日11:01PM,AMDはグラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780G」および「AMD 780V」を発表した。正式発表前に一部ショップで販売が始まり,4Gamerでも実機検証をすでにお伝えしている新製品が,いよいよ公式に発表されたわけだ。本稿では,AMDの日本法人である日本AMDが開催した報道関係者向け事前説明会の内容を中心に,AMD 780シリーズの概要をお伝えしたいと思う。


最新世代のローエンドGPUに匹敵する3D性能

AMD 780GではHybrid Graphics対応&UVD搭載


AMD 780Gの概要
画像集#003のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 AMD 780G(開発コードネーム「RS780」)とAMD 780V(同「RS780C」)は,いずれもHyperTransport 3.0,そしてPCI Express 2.0をサポートする。またAMD 790シリーズと同様,AMD純正オーバークロックツールである「AMD OverDrive」に対応するのも特徴だ。
 AMD製のグラフィックス機能統合型チップセットが持つGPU機能には,「AMD 690G」以降,ATI Radeonファミリーの製品名が付記されることになっているが,AMD 780GとAMD 780Vでは,それぞれ下に示したブランドネームが与えられている。

  • AMD 780GATI Radeon HD 3200
  • AMD 780VATI Radeon 3100

AMD 780GとAMD 780Vの違いを示したスライド
画像集#004のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 ポイントは,AMD 780GとAMD 780Vのいずれも,統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採用し,40基のストリーミングプロセッサを搭載することでDirectX 10(Direct3D 10)をサポートすることだ。DirectX 10をサポートするグラフィックス機能統合型チップセットは,もちろん両製品が初めてである。
 ただし,ATI Radeon HDファミリーの単体GPUで3000番台の型番が与えられているものはDirectX 10.1対応。ATI Radeon HD 3200とATI Radeon 3100がDirectX 10“止まり”となる点には少々注意が必要かもしれない。

AMD 780Gのブロックダイアグラム。ATI Radeon HD 3200用のDisplay Cache(=専用グラフィックスメモリ)をサポートしているとあるが,事前説明会ではいっさい言及がなかった。基本的にはUMA(Unified Memory Architecture),つまりCPU側のメモリコントローラを通じてメインメモリの一部をグラフィックスメモリとして利用する仕様になるという理解でよさそうだ
画像集#005のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表

森本竜英氏(日本AMD マーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング シニアスペシャリスト)
画像集#006のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 なお,ストリーミングプロセッサ数が40基というのはATI Radeon HD 3400/2400シリーズと同じ。つまりシェーダユニット周りのスペックでローエンドGPUに並んだわけで,事前説明会でAMD 780シリーズの説明を行った日本AMDの森本竜英氏は「メインストリームのゲームプラットフォーム」とAMD 780シリーズを位置づけていた(※少々分かりづらいかもしれないが,一般にPC業界ではローエンドのことを「メインストリーム」と呼ぶのである)。
 当然,ローエンドGPU並みのスペックを実現するにはチップ規模を大きくする必要があり,現にAMD 690Gで7200万だったトランジスタ数は,AMD 780Gで2億500万個へと,3倍弱にまで肥大化している。ただし,製造プロセスを従来の80nmから55nmへとシュリンクすることで,アイドル時の消費電力は1.40Wから0.95Wへと大きく引き下げられており,AMD 780GやAMD 780Vノースブリッジは,チップセットヒートシンクだけのファンレス動作を実現できると,森本氏は胸を張る。

3DMark06や主要ゲームタイトルのフレームレートで,Intel G35/G33 ExpressチップセットをAMD 780Gが圧倒するというスライド
画像集#007のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表 画像集#008のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表

AMD 780Gでトランジスタ数が大幅に増した一方,アイドル時の消費電力が1Wを割ったとAMDは謳う
画像集#009のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表

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Hybrid Graphicsの概要
画像集#011のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
主要ゲームタイトルの平均フレームレートを,今度はHybrid Graphicsでテストした結果。最大1.7倍のパフォーマンスを得られるという
 また上位モデルのAMD 780Gでは,さらに「Hybrid Graphics」という,3Dグラフィックス性能の安価なアップグレードパスが用意される。Hybrid Graphicsについては4Gamerでもこれまで何度かお伝えしてきているが,簡単にまとめるなら「グラフィックス機能統合型チップセットと単体グラフィックスカードによるATI CrossFire(以下,CrossFire)」のこと。AMD 780Gがサポートする「Hybrid Graphics用単体GPU」は「ATI Radeon 3450/3470」で,これらと組み合わせたCrossFire動作時には,最大1.7倍のスケーリング(=パフォーマンス向上)が得られるという。
 ところで,海外ではATI Radeon HD 2400シリーズとの組み合わせでもHybrid Graphicsが動いたというレポートが上がったりしているが,ATI Radeon HD 3600シリーズなど,ほかのGPUと組み合わせたときもCrossFire動作そのものはさせられてしまう可能性はあると森本氏。ただし,「CrossFireの仕様上,AMD 780Gの3D性能と極端に異なるGPUと組み合わせても効果はない」とのことで,ATI Radeon HD 2400シリーズに関してのみ,今後公式サポートされる可能性が示唆された。

Intelのプラットフォーム以上のシステムを,100〜140ドル安価に構築できるとするスライド
画像集#012のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 ATI Radeon HD 3400シリーズのGPUを搭載したグラフィックスカードは,安価なものなら6000円程度で手に入る(※2008年3月4日現在)。ひとまずAMD 780Gでがんばってみて,性能面で少し足りないと思ったらHybrid Graphics用にグラフィックスカードを買い,それでも無理ならミドルクラス以上の単体グラフィックスカードを購入するという手も使えるわけで,ゲーム用PCをなるべく低コストで抑えたい人にとっては興味深い選択肢が登場したといえる。ATI Radeon HD 3450/3470カードはファンレス仕様のものも多いので,ファンレスのまま,そこそこの3Dパフォーマンスが得られるプラットフォームともいえるわけだ。
 また,専用コントロールパネル「ATI Catalyst Control Center」からCrossFireを無効化した場合は,AMD 780G側で2,グラフィックスカード側で2,最大4台のディスプレイを接続できるのも,Hybrid Graphicsの強みと森本氏は述べる。

画像集#013のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 注意すべき点は二つで,一つは,Hybrid GraphicsによるCrossFire構築時にサポートされるのは,DirectX 10になること。もう一つはHybrid Graphicsをサポートするグラフィックスドライバ(「Display Driver」のバージョン8.47以降)は,当面,Windows Vista向けにしか用意されないことだ。Windows XPをサポートするかどうかは未定とのことだが,ソフトウェア開発負担――Windows XPとWindows Vistaではグラフィックスドライバの構造が大きく変えられている――や,Windows Vista Service Pack 1のサポートを行う必要がある事実などを考え合わせるに,Windows XPでHybrid Graphicsがサポートされる可能性はあまり高くないように思われる。

 ところで,GPUブランドネームに片方だけ「HD」の文字がない点だが,この違いは高解像度ビデオ再生機能「UVD」(Unified Video Decoder)をベースとしたビデオ再生支援機能「Avivo HD」サポートの有無に起因している。AMD 780Gでは,H.264/AVCをサポートする従来のUVDから一歩進み,MPEG-2 HDのハードウェア処理にも対応した「Enhanced UVD」(Enhanced UVD Block)を搭載する。一方のAMD 780VではこのEnhanced UVDが省かれているというわけだ。

ICH9を上回るというSB700のSATAパフォーマンス。森本氏も「業界最高」と胸を張るが,一方,あるマザーボードベンダー関係者は「過去が過去だけにとても信用できない。うちはファーストロットでは出荷しないし,ユーザーにもセカンドロット以降のチップセットを搭載したマザーボードを勧める」とも述べていた
画像集#014のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 なお,AMD 780GではHDCPのコンテンツ保護キーは一つしか内蔵していないため,著作権保護されたビデオコンテンツは1台のディスプレイにしか出力できない。デジタル出力そのものは2台のディスプレイに対して行えるので,大勢に影響はないと思われるが念のため。また,Hybrid Graphics構成時には,マザーボード側のディスプレイ出力端子を利用したときでなければ,Enhanced UVDは利用できない。これは,UVD機能がGPU側のDAC機能を利用するためである。

 最後に,ATI Technologies(以下,ATI)時代から弱点といわれていたサウスブリッジは,AMD 780で「SB700」が用意された。従来の「SB600」は機能面,性能面とも他社製品と比べると貧弱で,導入の障害となっていたが,SB700ではノースブリッジに合わせてPCI Express 2.0をサポートしたほか,最大のウィークポイントとされていたSerial ATA周りでも,転送速度の大幅な向上が図られた。SB600で4だった接続ポート数は6へ増え,eSATAにも対応し,少なくとも他社製と比較できるレベルに到達している。

お詫びと訂正:初出時にSB600のSerial ATAポート数を2としていましたが,正しくは4です。お詫びして訂正いたします。

ヘテロジニアス・マルチプロセッシングで

独自性を打ち出し,対抗するAMD


Athlon X2 4850eとAMD 780Gの組み合わせでは,アイドル時の消費電力は42Wとのこと。「世界のPCをAMDプラットフォームに置き換えれば720億kWhの電力が削減できる。Co2換算で5600万トン」という,何とも現実味が薄いというか,ヤケクソとも受け取れる表現で低消費電力をアピールしていたが,それだけ力を入れたいポイントということなのかもしれない
画像集#015のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
画像集#016のサムネイル/AMD,グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780」を正式発表
 ところで,ここまでとくに触れてこなかったが,AMD 780シリーズの発表と併せて,「Athlon X2 4850e/2.5GHz」という,新しいモデルナンバー表記を採用したCPUがリリースされている。これは65nm SOIプロセスで製造されるTDP 45Wの低電圧デュアルコアCPUというのがウリだ。いわばAthlon X2 BEの後継で,「e」が「energy efficient」を示す模様。L2キャッシュ容量512KB×2なのも,従来のBrisbaneコア版Athlon X2 BEと変わらないので,ひっそりとした製品投入になったようである。

 うがった見方をするなら,「チップセットを大々的に発表しつつ,CPUをひっそりとリリースする」というあたりは,AMDの置かれた現在の立ち位置を象徴しているといえなくもない。ご存じのように,AMDはエラッタ問題でケチのついたPhenomやOpteronのリファインに注力せざるを得ず,ミドルクラス以下のCPUに何かしらの革新を行う余裕はない。歩留まりなどに関していろいろ言われながらも,45nmプロセス製品を間違いなく出荷しているIntelに対して,CPU性能で追いつける状態にはないのだ。

 しかし,PCの性能向上はCPUだけで達成されるわけではないという,当たり前の事実もある。4Gamerの不定期連載「PCゲームのお作法」GPU編やCPU編で説明しているように,3DゲームのパフォーマンスにおいてCPUの占める比率はさほど高くなく,CPUとGPUなら,後者を強化したほうがゲームパフォーマンスは向上しやすい。
 仕様があまり明らかになっておらず,ゲーマーに向かない可能性のあるAMD 780Vはさておき,AMD 780GはローエンドのGPUを丸ごと統合してしまった製品と捉えて問題なく,Intelのグラフィックス機能統合型チップセットでは(少なくとも現時点では)逆立ちしても到達できない3Dパフォーマンスを持っている。Core 2ファミリーのCPUを使っているユーザーなら,グラフィックスカードを購入しなければ手に入れられない3D性能を,AMD 780ならマザーボード単体で実現できるのだ。 
 また,CPUにとって決して“軽い”処理ではない高解像度ビデオの再生処理をサポートするのも,AMD 780Gの強みだ。Enhanced UVDを持つGPU(=グラフィックス機能統合型チップセット)が処理を行えば,より高性能のCPUを搭載したシステムと同等のパフォーマンスが得られるといっても過言ではない。

 これはまさにヘテロジニアス(=異種混合)マルチプロセッシングの方向で,CPU単体の性能が及ばないなら総合力でで勝負しようというわけだろう。それが以前お伝えした「プラットフォームの魅力」にも繋がるわけだ。
 こうした方向転換が可能なのもAMDがATIを吸収したからで,あの合併がなければ,いまのAMDには為す術がなかったはずだ。もっとも(皮肉にも)その合併吸収コストがAMDにとって大きな負担となっているわけだが,ATIと合併した利を最大限生かそうとした戦略を,今のAMDが取ろうとしていることだけは間違いない。そしてこれはゲーマーにとっても,PCゲームプラットフォームの低価格化と,選択肢の拡大という意味で,大いに注目できる動きといえるだろう。

 なお4Gamerでは,正式発表に合わせ,Hybrid Graphicsを含めたAMD 780Gの実力を別記事であらためて検証している。興味を持った人はぜひチェックしてほしい。
  • 関連タイトル:

    AMD 7

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