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[TGS 2008#003]CESA和田会長の基調講演「ゲーム産業新世代に向けて,日本がなすべきこと」
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印刷2008/10/09 13:49

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[TGS 2008#003]CESA和田会長の基調講演「ゲーム産業新世代に向けて,日本がなすべきこと」

 2008年10月9日,幕張メッセにて世界最大級のゲームの祭典「東京ゲームショウ2008」が開幕した。10月9日(木)〜10月12日(日)の4日間,国内外のさまざまなゲームが展示/公開される。

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CESA会長 和田洋一氏

 東京ゲームショウ2008の初日に開催される「TGSフォーラム」の基調講演には,社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の会長で,スクウェア・エニックスの代表取締役でもある和田洋一氏が登壇。和田氏は,「本日は抽象的なお話をしますが」と冗談めかして断りを入れつつ,「海外のゲーム産業が発展するなかで,日本のゲーム産業が向かうべき方向,なすべきこと」について話を始めた。

 和田氏はまず,日本のゲーム産業が海外勢との“発展速度”において,追いつかれ追い越されてしまったという現状を披露。「昔は,日本はゲーム産業のリーダーだと自信を持って言えたが,今はどうだろうか」と,業界のイニシアチブを失いつつある点を指摘した。

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 日本産のゲームが国内でもシェアを奪われつつある現状に対し,“よくいわれる言説”を持ち出した和田氏は,

・ハリウッド映画,アニメ,漫画など,万国で受け入れられるコンテンツはあり,趣向性の問題ではない
・日本企業の財務体制面は強固であり,この点が北米に比べ問題になるとは言えない
・世界的に,「成功したコンテンツファンド」の例はほとんどなく,ファンドの問題とは言えない

といった具合に各説を一蹴,

氏によれば根本的な問題は,「日本ゲーム産業が『物作りのコミュニティ』を発展させてこなかった」ところにあり,問題解決のために今後日本のゲーム産業は,「ネットワーク型の産業に変化していくべき」とのことだ。

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 ゲーム開発者のコミュニティというと,日本におけるCEDEC(Cesa Developers Conference),海外におけるGDC(Game Developers Conference)などが連想される。だが,和田氏のいうコミュニティは,そういった話に留まらず,産学連携や他業種との交流など,広い意味での「コミュニティ」「知識の蓄積」を意味するようだ。

 和田氏は,「日本のゲーム産業に勢いがあったとき,我々は,もっと外に広がっていくべきだった」と,過去を反省しつつ振り返る。「私が言うといろいろと問題もあるのだが,ゲームの開発者は,職人気質的なところもあって,その“作り方”について,『やって覚えるんだ』,『見て盗め』みたいなところがあったかもしれません。要するに,ゲーム業界から外に知識を求める,知識を広げる努力をしてこなかった」と語りながら,「一方北米では,学校教育まで根を広げ,ハリウッドなど他産業との連携を密にしています」と,その差に対する危機感を露わにした。

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 和田氏は,こういった広い意味でのコミュニティの閉鎖感が,今日の日本ゲーム産業,ひいては日本の産業界全体に影を落としている側面もあるのだという。ビジネスモデルも含む物作りに対する重層的な知識こそが,今後の発展には必要なのではないか? というわけである。
 和田氏が語る「ネットワーク型の産業」というのは,インターネット云々とかそういう意味でのネットワークではなく,知識が重層的に折り合うという意味でのネットワークという意味だ。

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 現状の危機に対して一通りの説明を終えたあと,和田氏は,「コミュニティをオープンにしていかないと,日本の『物作り』の土壌が細くなっていくのではないか」と語りながら,「とはいえ,日本のゲーム会社にはまだまだ力があり,今後,危機の本質を自覚して取り組んでいけば,まだまだ間に合う」と説明。「まずはできるところから手を付けるべき」だとして,CEDECなどの取り組みをより充実させること,教育/研究分野の促進などを提示しながら,講演を終了した。

 ここ最近の和田氏というと,海外のゲーム市場を見据えた発言が目立つ節があったが,今回の講演もまた,海外市場,そしてそこへ向けて日本のゲーム産業が進むべき道を示唆する話であった。
 CESAでの取り組みをはじめとした業界人としての和田氏,そして「インフィニット アンディスカバリー」「ラストレムナント」など,海外市場を意識した“和製RPGの普及”への取り組みなどというスクウェア・エニックスの代表としての和田氏。この両面から,今後の氏の活躍に注目したい。
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