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[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts
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印刷2008/02/19 21:10

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[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts

スティーヴ・シーボルト(Steve Seabolt)氏
画像集#001のサムネイル/[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts
 Electronic Artsといえば,「ライセンスゲームを中心とした豊富なラインナップを持つ業界の巨人」というイメージが強いが,GDC08で同社が初のセミナーを行う場は,なんとシリアスゲーム・サミット(シリアスゲームとは学習/教育を目的としたゲームのこと)。「Electronic Artsがシリアスゲームなんて作ってたっけ?」なんて思った人,実は同社は随分と社会貢献しているのである。
 壇上に上がったのは,Global Brand Development(グローバル・ブランド開発)部門の副社長で,主にThe Simsシリーズに深く関わるスティーヴ・シーボルト(Steve Seabolt)氏だ。彼を中心に,現在Electronic Artsが取り組んでいるシリアスゲーム関連の事業は,以下の三つに大別できる。

1. 「シムシティ ソサエティーズ」


画像集#002のサムネイル/[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts
 2007年12月に日本でもリリースされた「シムシティ ソサエティーズ」は,これまでのSimCityシリーズのファンにとっては“水で薄められたような番外編”であったかもしれない。だが,そもそも本作はティーンエイジャー向けに「地球温暖化の原因や影響を,電力生産や温室効果ガス排出の観点から学ぶ」ことを目的にして制作されたものである。本作ではBP(ブリティッシュ・ペトロリアム,英国石油)社が,資本・情報面でゲーム開発に参加していると,シーボルトは内情を明かす。本来ならBPの広告塔としてのアドバゲームとなるところを,商売臭さを抜き取ってしまったElectronic Artsの姿勢は評価できるだろう。

2. OLPCプロジェクト


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 OLPCとは「ワン・ラップトップ・パー・チャイルド」の略で,つまりは「世界の貧しい子供達の一人一人にノートPCを用意しよう」という,マサチューセッツ工科大学などで推進される社会運動である。最終的な生産目標は1台100ドルというものだが,今年中にも1台あたり199ドルで生産が開始され,発展途上国の政府や教育機関向けに販売される予定だ(先進国では350ドルで販売されるとしている)。
 Electronic Artsは,このプロジェクトにゲームを提供することで合意しており,初代「シムシティ」が,オープンソース化して無料搭載されることが決まっている(関連記事)。ネックとなったのはオープンソースの部分だったらしいが,自分の知的財産を守る立場にある企業としては当然だろう。もっとも,シーボルトはシムシティを利用して現行のシリーズに対抗するほどのMODを作り出す青少年が出てくるかどうかは疑問だとしていた。

3. Alice


画像集#004のサムネイル/[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts
 「Alice」というのは,カーネギーメロン大学との提携で推し進めている,ゲームプログラミングのための教育用ツールのことだ。現在はバージョン2.0までリリースされており,オープンソースであるため学術関係者は自分の好みでプログラムを変更できる。このツールは中高生を対象にしており,The Simsシリーズのキャラクターモデルやセットを利用して,ドラッグ&ドロップでアニメーションパターンや会話などを挿入していくというものだ。実際にC言語の学習ができるのではなく,あくまでゲーム開発に興味を持ってもらうことが本来の目的というわけだ。シーボルト氏は,アメリカの首都ワシントンDC近辺にある非常に貧しい地域の高校で,3日間も昼飯を抜いて自分のゲーム作りに夢中になっていたという不良高校生の話を引き合いに出し,人材発掘にも役立つAliceの持つ潜在能力の高さを評価していた。


画像集#005のサムネイル/[GDC2008#04]シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts
 シーボルト氏は,Electronic Artsはシリアスゲームをビジネスにしようという意思はないと念を押す。ただ,The Simsシリーズなどは,そのゲーム性から応用度が高く,社会貢献に協力しやすいゲームであるのは間違いないと語っていた。
 またElectronic Artsでは,もともとゲームとして制作された「Madden Football」シリーズをベースに,特定の大学アメフトチームの戦術利用やメンタルトレーニングに利用する目的で,「Play Action Simulator」というソフトを大学側の要望に応じて制作している。ゲームエンジンが改良されており,クォーターバックが一人称視点で,自分の視界を確認できたり,実際にモーションセンサーを選手の体に取り付けてのバーチャル体験ができたりする。ほかの大学からの注文も増えているという。こちらはどうやらビジネスとしても成立しそうな気配だが,自社ソフトを使った社会貢献というのは,多くのゲーム企業が抱えるべき今後の課題となるだろうことを感じさせた。
  • 関連タイトル:

    シムシティ ソサエティーズ

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