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世界最速610Hz表示のゲーマー向けTN液晶ディスプレイをASUSが披露。24インチ級液晶パネルを選んだ驚きの理由とは?
本製品のアピールポイントは,「世界最速ディスプレイ」(World's Fastest eSports Monitor)。垂直最大リフレッシュレートがスゴイのだ。その値たるや610Hz。毎秒610コマの映像を表示できる製品なのだ。
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XG248QSGの画面サイズは24.1インチで,解像度は1920×1080ピクセルという,eスポーツ特化型ディスプレイでは標準的なもの。映像パネルには,応答速度0.1msの「Super TN」型パネルを採用しており,パネルの製造元はAU Optronics(以下,AUO)だという。
バックライトシステムは,よくあるエッジ(サイド)型白色LED方式だ。ただ,画面左右の両端縦方向に,白色LEDを10ゾーンの分割して組み込んでおり,画面上から下に向かっての10ゾーンのバックライトスキャニングによる黒挿入を行うことで,残像低減の増強を行う。
なお,ASUSが「ELMB 2」(Extreme Low Motion Blur 2)と呼ぶ新バックライトスキャニングは,無効にすることも可能だ。
XG248QSGの映像入力遅延は,0.8msを謳う。この値は最近のゲーマー向けディスプレイでも,時々見られる値ではある。AMD独自のディスプレイ同期技術「FreeSync」や,HDMIの可変フレームレート技術「VRR」にも当然対応する。
発売時期は2025年8月前後を予定しているそうで,北米市場におけるメーカー想定売価は,799〜1199ドルあたりで検討中だという。
なぜここまで幅があるかというと,どのくらい売れるのか,ASUS側でも正確に把握できていないため,だという。担当者は,「あまりにもニッチすぎる商品のため,地域ごとに価格差が発生するかもしれない」と述べていた。
なぜ有機ELでなく,TN型液晶を採用したのか
さて,XG248QSGの垂直最大リフレッシュレートは610Hzなので,必要な液晶応答速度は1/610秒,つまり約1.64msとなる。XG248QSGが採用したSuper TN液晶パネルの公称応答速度が0.1msであれば,その要求性能を満たせてはいる理屈だ。
しかし,ここでゲーマー向けディスプレイマニアであれば,「なぜ有機ELパネルを使わなかったのか」と疑問を持つかもしれない。
有機EL画素の応答速度は30μ秒。ミリ秒に換算すれば0.03msだ。Super TN液晶パネルの約55倍も高速なのだ。リフレッシュレートで言えば,3万Hz以上にも対応できる速さである。
それに,TN型液晶は,暗部階調特性にやや難がある。画質的な視点では,有機ELが選ばれない理由が分からない。そう思った読者もいることだろう。
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この問いを,ASUSのディスプレイセクション担当者にぶつけてみたところ,予想外の答えが返ってきた。「価格?」と思った人はハズレ。
ASUS担当者は,「画面サイズだよ。トップのeスポーツアスリートたちが求めるのは,まず画面サイズなんだ。有機ELパネルで20インチ前半の小さめのパネルは製造されていないから,このパネルになったんだよ」と笑う。
補足説明が必要だろう。そもそも,610Hzというリフレッシュレートが必要なゲーマーとはどんな人なのか。それは,eスポーツに命を燃やす本物のコアゲーマーたちで,彼らはハイフレームレートを好むのはもちろん,同時に高い一望性を重視する。
普段,ゲームをプレイする視距離で画面を見たときに,画面の全域が目に入らなければ,彼らにとっては「ダメなディスプレイ」となるわけだ。
そういえば,今から10年ほど前,今ほどはeスポーツがメディアに大きく取り沙汰されていない頃の話だが,ディスプレイの専門家として,「Counter Strike」系の某eスポーツプロチームの取材を,某ゲーマー向けディスプレイメーカーから広告企画として依頼されたことがある。
筆者は,プロチームのメンバーに「○○社の最新ゲーマー向けディスプレイはどうですか。使いやすかったですか」と質問したのだが,「うーん。画面が大きくて我々の競技には向かないですね。使いにくい」とあっさり切り捨てるような回答をされたことがあった。
このとき,メーカーが提供した製品は27インチだった。常人からすれば,ごく一般的なサイズのゲーマー向けディスプレイ製品だったが,「大きすぎてダメだ」と彼らは口を揃えていうのだ。とにかく彼らの理想サイズは20インチ前半だという。
それをその場で聞いたメーカー担当者と,プロチームのリーダーの表情は凍っていたが。
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というわけで,ASUSの本製品開発チームも,広くeスポーツプロゲーマーにヒアリングしたそうで,筆者と同じ体験をしたようだ。彼らからは「27インチはダメだ」という意見が多かったようで,結局20インチ台前半で超ハイリフレッシュレートに対応した最小サイズの映像パネルを探したところ,有機ELパネルでは10数インチ台のノートPC向けしかなかったという。
そこで,チーム内で検討を重ねた結果,AUOの610HzのTN型液晶パネルに決定した。つまり,「画面サイズを優先した結果,TN型液晶パネルになった」という逸話だ。
興味深いのと同時に,ASUSのゲーマー向けディスプレイ開発陣が,ユーザー(≒競技者)優先で製品を開発しているというエピソードでもあり,筆者としては少々感慨深かった。
ASUSの「ROG Strix ACE XG248QSG」製品情報ページ
4Gamer.netのCOMPUTEX 2025特集ページ
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- ライター:西川善司

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