
インタビュー
開発者に聞く「ROG Xbox ALLY」のポイント。消費電力の低減と使いやすさに注力した最新の携帯型ゲームPC
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今回は,ASUS本社でROG Xbox ALLYシリーズの開発に携わったROG製品プロダクトマネジメントディレクターのGabriel Meng氏に,同製品のハードウェアにおけるポイントを中心に話を聞いた。
なお,ROG Xbox ALLYシリーズに搭載するカスタム版Windows 11に関するインタビュー記事も掲載しているので,こちらも合わせてチェックしてほしい。
「ROG Xbox ALLY」のカスタム版Windows 11を,他のPCメーカーに提供する可能性は? Xbox担当VPに聞いてみた[TGS2025]
![「ROG Xbox ALLY」のカスタム版Windows 11を,他のPCメーカーに提供する可能性は? Xbox担当VPに聞いてみた[TGS2025]](/games/047/G004755/20250928029/TN/001.jpg)
TGS2025開幕直前に,Microsoftで「ROG Xbox ALLY」の開発に携わったJason Ronald氏に合同インタビューを行う機会を得た。そこで,MicrosoftがROG Xbox ALLYで何を狙っているのか,カスタム版Windows 11を他に展開する可能性はないのかなどを聞いてみた。
4Gamer:
2023年に行われたROG ALLYの発表イベントでは,ASUSとMicrosoft,AMDのキーパーソンが一堂に介して,特徴を紹介していたのが,印象的でした。その段階からカスタム版Windowsを含めた次世代モデルの検討はスタートしていたのでしょうか。
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2年前の時点では,Windows搭載の携帯型ゲームPCを作ること自体が,新しい試みだったので,その部分に集中していたと思います。その時点では,十分快適にプレイできないゲームがあったり,ゲームパッドでの操作といった部分で課題がありました。
とはいえ,非常に多くの力を使って,ROG ALLYを成功に導いたことで,これをもっとよりよく改良しようという流れになり,今回の製品に繋がったと考えています。
4Gamer:
ROG Xbox ALLYは,初代のROG ALLYからデザインが変わり,背面に大きめのグリップを備えています。デザイン変更に至った理由を教えてください。
Meng氏:
ROG ALLYのユーザーが,常に正しい姿勢で持ち続けるわけではありません。たとえば,ソファに深く腰をかけたり,持ち運ぶときに本体の片方だけを持ったり,いろんな体勢や角度でPCを持つわけです。
そうしたときに,グリップがあると本体がすごく持ちやすくなります。ROG Xbox ALLYにおける大きな工夫の1つです。
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4Gamer:
ROG Xbox ALLYシリーズは,ニーズに合わせて,スタンダードモデルの「ROG Xbox ALLY」と,上位モデルの「ROG Xbox ALLY X」をラインナップしています。搭載SoCだけでなく,内蔵バッテリー容量なども異なっていますね。
Meng氏:
ROG Xbox ALLYは容量60Wh,ROG Xbox ALLY Xは容量80Whのバッテリーを搭載していることに加えて,ROG Xbox ALLY Xには,性能が高い冷却機構を採用しているので,重量が45gほど重くなっています。また,ROG Xbox ALLY Xの搭載CPUである「Ryzen AI Z2 Extreme」は,NPUを備えており,AI処理を高速に行えるといった違いもあります。
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4Gamer:
ディスプレイについて伺います。ROG Xbox ALLYは,ROG ALLYと同じ,7インチサイズの液晶ディスプレイを搭載しています。携帯型ゲームPCのなかには,8インチや10インチサイズの製品もありますが,7インチサイズのディスプレイを継続したのは,なぜでしょうか。
Meng氏:
携帯型ゲームPCにおいて,本体サイズは重要です。ROG Xbox ALLYの横幅は,290mmありますが,これでも大きいと感じる人はいますよね。これ以上サイズが大きくなってしまうと,持ちにくいし,重くなってしまう。それは避けたいと考えました。
4Gamer:
ASUSは,ゲーマー向けPCやディスプレイで,積極的に有機ELパネルを採用しています。ROG Xbox ALLYにも,有機ELディスプレイを採用するアイデアはあったのでしょうか。
Meng氏:
皆さんが有機ELディスプレイを求めているということは,非常によく分かっています。有機ELパネルは,コスト面の問題もありますが,それ以上に消費電力が大きな課題になっています。とくに,白い画面を表示すると,消費電力が非常に増えてしまうんですね。
一般的なゲーマー向けPCであれば,性能が重要ですが,携帯型ゲームPCでは,電力消費を抑えるのが大切です。いくら性能が高くても,バッテリーの電力がなくなってしまえば,ゲームすらできません。性能を落とさずにゲームをプレイできる時間をどれだけ長引かせられるか,という点に注力しています。
ただ,バッテリーの容量には限度がありますし,本体サイズや重さにも影響するので,そういった部分のバランスを取りつつ,製品を開発しています。
有機ELパネルの採用については,今後も引き続き研究していきます。
4Gamer:
ソフトウェアについても聞かせてください。ROG Xbox ALLYに搭載する「全画面表示エクスペリエンス」は,一見するとアプリランチャーに見えますが,どのような機能を備えていますか。
Meng氏:
全画面表示エクスペリエンスは,携帯型ゲームPC向けの新しいUIです。ゲームパッドでも違和感なく操作できるように設計されており,スクリーンキーボードの一部にもゲームパッドのボタンを割り振っています。もちろん,アプリランチャーとしての機能も備えていて,いかに早くゲームにアクセスできるかという点も工夫した部分です。
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4Gamer:
ROG Xbox ALLYに搭載するカスタム版のWindows 11では,通常のWindows 11と比べて,メモリの消費量を2GB抑えられるとのことですが,どのような処理を行っているのでしょうか。
Meng氏:
プロセスの工夫によるもので,どのプロセスを停止しているかといった細かな情報についてはお答えできませんが,メモリ消費量を2GBほど減らせるのは確かです。
全画面表示エクスペリエンスを利用しているときは,ゲームプレイに必要な部分のWindowsだけをを動かすというイメージで,通常のWindowsデスクトップ画面に移行すると,残りの部分を読み込みます。
ROG Xbox ALLYで重要なのは,全画面表示エクスペリエンスから,通常のWindowsデスクトップ画面へ移行するときに,再起動をせずにスムーズに切り替えられるところです。
(※編注:Windowsデスクトップ画面から,全画面表示エクスペリエンスに戻そうとすると,性能を引き出すために再起動をうながすメッセージが表示される。ただ,再起動は必須ではない)
4Gamer:
ROG Xbox ALLYの発表後に公開された配信では,既存のROG ALLYにも,カスタム版Windows 11と全画面表示エクスペリエンスを提供したいという発言がありました。いつ頃から提供できそうでしょうか。
Meng氏:
いくつかの課題があるので,提供するにしても時間は必要です。いつ頃までにとは,現時点ではお話しできません。ただ,ROG ALLYユーザーに対しても,サポートやアップデートを継続的に提供していきたいと考えていますので,カスタム版Windows 11と全画面表示エクスペリエンスを使えるように検討しています。
ASUSのROG Xbox ALLYシリーズ製品情報ページ
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
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(C)ASUSTeK Computer Inc.