パッケージ
Tegra
  • NVIDIA
  • 発表日:2008/06/02
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Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた
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印刷2011/04/04 12:22

テストレポート

Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた

Optimus Pad L-06Cのパッケージ
画像集#008のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた
 NVIDIAのモバイル向けアプリケーションプロセッサTegra 250/1GHz(以下,Tegra 2)を搭載したタブレット「Optimus Pad L-06C」が2011年3月31日にNTTドコモから発売された。
 スマートフォン用のOSとして続々と採用製品が登場しているGoogleのAndroid 1.x/2.xは,一部でタブレット製品も発売されていたものの,OSの仕様としては,あくまでも携帯電話やスマートフォンをターゲットにしたもの。そのため,いろいろと使い勝手の面で問題があったのだが,最近になって搭載製品が発表された「Android 3.0」(開発コードネーム「Honeycomb」)は,はじめからタブレット用に開発されたOSとして,そんな流れに大きな変革をもたらすものとなる。そして,Optimus Pad L-06C(以下,Optimus Pad)は,そんなAndroid 3.0+Tegra 2採用タブレットとして,国内初登場となった製品だ。

 では,このTegra 2搭載タブレットには,どの程度の実力を期待できるのか。4Gamerとして気になるのは言うまでもなくゲームプラットフォームとしての可能性なので,そのあたりを中心に,Optimus Padの試用レポートをお届けしたい。

画像集#019のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた
主な付属品。ACアダプタ,USBケーブル,USBホスト用ケーブル,マニュアルなど
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裏蓋をスライドさせるとSIMスロットなどが確認できる。なお,ドコモのSIMロック解除対応は4月1日発売製品からなので,3月31日発売の本機種はSIMロック解除には対応しない


ハードウェア&Android 3.0の完成度はまずまず


Tegra 2プロセッサ
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 注目のゲームプラットフォームとしての評価はのちほど行うとして,まずはTegraの概要をおさらいすると同時に,Optimus Padのハード/ソフトを概観してみることにしたい。

 Tegraシリーズは,CPUコアやグラフィックスアクセラレータ,HDビデオ&サウンドコーデック,そして各種周辺機器用インタフェースなどを1チップに集積したモバイル機器向けのSystem-on-Chip(SoC)だ。この種のSoCは俗に「メディアプロセッサ」などとも呼ばれ,スマートフォンやタブレットの需要の高まりとともに,重要な半導体製品になってきている。NVIDIAもGPUと並ぶ今後の事業の柱としてTegraシリーズに力を入れているわけである。

 Optimus Padに搭載されているTegra 250はTegraの第二世代にあたる製品で,いわゆるTegra 2と呼ばれるプロセッサ。CPUコアにはARM Cortex-A9/1GHzをデュアルプロセッサ構成で採用し,そしてグラフィックスアクセラレータとしては「Ultra-Low Power GeForce」(ULP GeForce)を集積している。
 ユニークな点としては,メインとなるCortex-A9×2のほかに,システムコントローラとしてシンプルなARM7コアも内蔵する一種のトリプルプロセッサの構成をとっている点が挙げられるだろう。例えば,HDビデオの再生時にはハードウェアHDビデオデコーダを駆使しつつ,(消費電力の低い)ARM7も援用し,メインのARM Cortex-A9のほうは周波数や動作電圧を下げることで消費電力を極小に抑える動作を行うという。
 この例のようにTegra 2を構成する各モジュールでは,それぞれ独立して負荷に応じて電圧と動作周波数を変える「Dynamic Voltage Frequency Scaling」(DVFS)という仕組みが導入されていて,バッテリー駆動時でも長時間のビデオ,音楽再生が可能と謳われている。

Tegra 2のブロック図
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 そんなTegra 2を搭載する製品は昨年2010年にもいくつか登場していて,例えば,日本では東芝から「Dynabook AZ」というクラムシェルタイプの搭載機が発売されているが,まだまだマイナーな存在といっていいだろう。

 だが,タブレット向けAndroid 3.0(Honeycomb)では,Googleが開発プラットフォームとしてTegra 2を採用。AndroidはマルチプラットフォームのOSなので,Tegra 2でなければならないということは無論ないが,開発プラットフォームとして採用されているだけにバージョンアップ速度や安定性の向上といったことが,ほかのプラットフォームより優先されることは確実で「事実上のリファレンス」といっても過言ではない。

 米国では今年2月にTegra 2+Android 3.0を採用する10インチタブレット「Motrola XOOM」がリリースされて話題になった。そして日本では,3月31日にNTTドコモが韓国LG Electronicsから供給を受けて発売したOptimus Padが,Tegra 2+Android 3.0の最初のデバイスになったわけだ。

8.9インチのタッチパネルディスプレイを搭載するOptimus Pad
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 Optimus Padは写真のような,8.9インチ1280×768ドットのディスプレイを採用するタブレットだ。サイズは公称150mm×243mm。iPadよりはひとまわり小さく,Galaxy Tabよりは二まわりほど大きいといった印象で,タブレットしては扱いやすいサイズといっていいんじゃないかと思う。

iPhone 4とのサイズ比較
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 厚みは最厚部12.8mmだが,背面が湾曲していて端の部分は薄くなっているため,見かけはさほど厚さを感じさせない。

裏面。外縁部が丸くなっていることが分かる
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 重量は公称,実測ともに620gだ。iPadとほぼ同程度で決して軽くはない。両手持ちで苦になる重さではないが,片手で持つことも多いタブレットだけに,もう少し軽ければなおよかったのだが。

 下に示した写真のように,ハードボタンは本体サイドの電源と音量ボリュームのみ。Android 3.0では「ホーム」「戻る」「タスク切り替え」という3つの操作ボタンが標準で設定されているが,Optimus Padでは,この3つはタッチセンサー式になっている。誤操作しやすいのが難点である一方,ハード的な故障が少ないというメリットもあるので評価は人によって異なるだろう。筆者個人は悪くない選択だと思っている。

左側面部(横位置使用時)。左の穴は電源用,以下順に,イヤフォン端子,スピーカー,電源ボタンが並んでいる
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上面部。音量ボタンが2つ並んでいる。右側の穴はマイク用だ
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 スピーカーは本体サイドに合計3つ取り付けられている。3つ? と思うかもしれないが,Optimus Padは画面のローテーションに合わせて使用されるスピーカーが自動的に切り替わり,縦持ちでも横持ちでもちゃんと左右からステレオで聞こえるのだ。正直にいうと,このローテーションに合わせたスピーカー自動切換えこそ,Optimus Padで筆者がいちばん感心させられた機能だったりする。筆者が知る限り,ローテーションに合わせてスピーカーを自動で切り替えてステレオを維持するAndroidタブレットは,本機が初だ。

右面部。左右にスピーカーが取り付けられている
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 本体には3.5mmミニピンのヘッドフォン出力&マイク入力端子,ACアダプタ端子のほか,HDMI MiniポートとMicroUSBサイズのUSB On-The-Go(USB OTG)ポートを備えている。

 HDMI Miniポートは標準的な仕様で,PCショップなどでも売られているフルサイズHDMI変換ケーブルが利用できる。ただ,出力されている信号が少し特殊なので(720p相当だが,ライン数が違うようだ),接続するディスプレイやテレビによっては一部が欠けることがあるようだ。

下面部。HDMI,USB,クレードル用の接点などがある
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USBホスト変換ケーブルが本体に付属するが,現時点で使えることを確認したのはUSBキーボードのみ。USBストレージにも対応していなかった
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一般的なUSBキーボードで文字入力中
 USBホストとクライアントを共用するUSB OTGポートを備えるのは,本機の大きな特徴の一つ。スマートフォンで広く利用されている普通のMicroUSBケーブル(本体にも付属)でPCに接続すれば,PCからOptimus Padのストレージにアクセスできる。つまりUSBクライアントとして機能するわけだ。

 一方,本体付属のUSBホスト変換ケーブルを使うとUSB機器が接続できる……のだが,現時点で使える機器は限られていた。筆者が調べた限りでは,利用できたのはUSBキーボードのみ。USBマウス,USBゲームパッドも利用できず,意外にもUSBストレージさえ非対応だった。USB給電による充電にも対応していない。

 キーボードだけということで活用はかなり限られるUSBホスト機能だが,バージョンアップで対応機器が増える可能性はありそうだ。ちなみに,USBポートの周囲にはクレードル用と思われる端子もあり,実際にNTTドコモは専用クレードルの発売を予告している。4月中に発売するということで具体的なクレードルの仕様は不明だが,USBホスト機能で使える機器が増えると,クレードルと合わせて,PC感覚での利用が可能になるかも,という期待はある。

 公式には詳しく触れられていないスペックも簡単に紹介しておくと,まず内蔵ストレージの空き容量は26GBだった。一般的な用途では十分すぎるほどのストレージがあるといっていいだろう。

 また,メインメモリ容量は公称1GBだが,一部がグラフィックスに占有されるためOSから使えるメモリは662MBだった(/proc/meminfo調べ)。Android機としてはまあまあの容量で,メモリ不足で不自由することはないだろうと思う。
 十分なメモリ容量と高速なプロセッサのおかげで操作は非常に快適。デスクトップ,アプリケーションはほとんどがヌルヌルと動く。ブラウザのページ読み込みやスクロールもPCにかなり近い。

 Androidとしては初のタブレット対応となるAndroid 3.0の操作性も悪くない。これまでのAndroid2.xを搭載するタブレットは,やはりスマートフォン向けのOSということもあり,設定メニューが前画面を占有するなど違和感ありありの操作性だったが,Android 3.0は画面のレイアウトがタブレット向けに大きくリファインされている。

Optimus Padのホーム画面。Honycombというコードネームに合わせた六角(ハニカム)模様の壁紙がデフォルトに設定されていた。画面左下に並ぶのがタッチ式の操作ボタンで左から戻る,ホーム,タスクスイッチだ。また右側には時計やバッテリー,電波(3G,WiFi)やバッテリーのインジケータが並ぶ
画像集#023のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた

設定画面は左右の2ペイン表示に改められ,画面の広いタブレットでも操作しやすくなった。なお,画面例のようにOptimus Padはテザリングに対応しており,外出先でWi-Fiアクセスポイントとしても利用できる
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 画面例のように設定メニューは2ペイン表示とタブレットに適したものに改められている。画面が出たついでに触れておくが,Optimus Padのワイヤレス機能はNTTドコモのFOMAハイスピード回線(3G)のほかにWi-Fi(IEE802.11b/g/n)とBluetooth(V3.0対応)をサポートする。
 Optimus Padを3G回線を使ったPC用のUSBモデムやWi-Fiアクセスポイントとして利用する「テザリング」にも対応。ただし,NTTドコモによるとテザリングで利用するにはspモード(月額315円)の契約が必要になるそうだ。
 サイズの大きなOptimus Padをテザリングで利用することはあまりなさそうな気もするが,バッテリーのもちもよいので,いざというときのネット接続手段として,また外出先でポータブルゲーム機をつなぐ手段として利用できれば便利という人もいるかもしれない。

 先に基本動作がヌルヌルと述べたが,ブラウジングに関していえば,Adobe Flashが単に使えるだけでなくアクセラレーションを使って高速に動作することがTegra 2の魅力でもある。埋め込み動画の再生もほぼ完璧で,またYoutube HDのようなフルHDサイズのネット動画もフルフレームで再生できている。

本体をローテーションさせて縦横でブラウザの情報量を比較してみた。文字サイズは標準だが,おおよそPCと遜色ない情報量でブラウザが使えることが分かると思う
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4GamerのFlashによる埋め込み動画もヌルヌルと再生できる。Optimus Padには標準でFlash 10.2が搭載されており,Tegra 2のアクセラレーションも利用されている
画像集#028のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた

YoutubeにアップされているNVIDIA PureVideoのフルHDデモもフルフレームで再生できた
画像集#029のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた

 Android 3.0で新設されたタスクスイッチのメニューも強力だ。もともとマルチタスク仕様のAndroidだが,この機能を使えば,ポップアップするメニューで起動済みのアプリを瞬時に切り替えることができるため,操作のサクサク感に一役買っている。Android 2.xでもホームボタン長押しでタスク切り替えのメニューは出せたが,Android 3.0ではワンタッチで切り替えられるというのが気持ちよい。

 ヌルヌル,サクサクと繰り返してきたが,実感として分かりにくいと思うので,操作中の画面をキャプチャした動画も掲載しておきたい。これなら欲しいと思わせる快適さが分かってもらえるだろう。



Tegra 2に最適化されたゲームをプレイしてみた


 というわけで,Androidタブレットとしてはなかなかの完成度を誇るOptimus Padだが,4Gamerとして期待するのはゲームプラットフォームとしての可能性のほうだろう。NVIDIAだけにTegra 2は(モバイルとしては)強力な3Dグラフィックス性能を売りにしているわけで,ゲームを外して語ることはできない。

 Androidのゲーム事情に少し触れておくと,Android 2.0でOpenGL ES(組み込み向けOpenGL)2.0への対応を完了しており,3Dを含めたゲームを動作させる環境はほぼ整った(※細かいことを入ればいろいろあるのだが)。
 ただし,Androidはさまざまなハードウェアに乗っており,3Dの性能も機種によってさまざまだ。ゲームベンダーとしては,可能な限り対応できるプラットフォームを広げたいわけで,GPUをカリカリに使用するゲームはリリースしづらい。そのため現状では,シンプルな2Dゲームが中心で,3Dを使用するゲームもごく単純なものが大半を占める。

 Optimus Padが搭載するTegra 2にとっては,力が余り過ぎる状況で,Tegra 2のパワーを生かせるリッチなゲームが出てこないと,ほかのアプリケーションプロセッサとの差別化は難しいといえる。

Googleの公式Android MarketでTEGRAなどの語を検索してNVIDIA TEGRA ZONEをイントールする
画像集#030のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた
 そこで,NVIDIAはゲームベンダーに働きかけ,Tegra 2に最適化されたゲームのリリースを後押しする一方,「NVIDIA TEGRA ZONE」というTegra最適化ゲームの紹介&購入(の仲介)を行うアプリをリリースした。NVIDIA TEGRA ZONEアプリを起動すれば,いまリリースされているTegra最適化ゲームが一覧でき,概要を読んだり購入したりできるわけである。購入はGoogle公式のAndroid Market経由となるが,Android Marketでは扱われていない発売前のタイトルの紹介や予定も確認できる。

 このNVIDIA TEGRA ZONE(というアプリ)は,Optimus Padにはデフォルトではインストールされていないので,NVIDIAの公式サイトやAndroid Marketから「Tegra」などの検索語で探し,インストールする必要がある点は注意が必要だ。

これがNVIDIA TEGRA ZONEアプリ。「Spotlight」では新作ゲームの情報を得ることができるほか,「Games」をタップしてTegraに最適化されたゲームを購入できる。NVIDIA TEGRA ZONEは基本的にAndroid Marketのフロントエンドで,ダウンロードや決済などはAndroid Marketと共通だ
画像集#031のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた 画像集#032のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた

 ちなみに,タイトルの後ろにTHDと付いているゲームがあるが,これは「Tegra HD」の略だ。ただし,THDとついているからといってTegraに最適化されているとは限らないようで,最適化されているかどうかはいまのところDescription(概要)を読むしかないそうだが,目安にはなるだろう。

 というわけで,執筆時点でプレイできるTegra最適化ゲームを試してみた。動画も併せて紹介していくので,Tegra 2の実力をじっくりと見ていただきたい。以下のムービーはHDMI経由でキャプチャした実動映像である。キャプチャ側機器の問題で若干コマ落ちしている部分もあるが,実機ではこれと同等以上の動作だと思っていただいて差し支えない。


・Backbreaker HD
http://www.naturalmotion.com/backbreaker


 NaturalMotionがリリースしているアメフトゲーム。iPad向けもリリースされているゲームで,画面下のコントローラや本体の傾きで自キャラを操作しつつ,ディフェンス側の敵キャラを抜いてタッチダウンを狙うというゲームである。ステージを進めるごとに敵キャラが増え,難度が増していく。
 シンプルながら,内蔵されたセンサーを使って,傾きでも操作できるというタブレットならではの操作を取り入れているのが特徴だ。やってみると非常に楽しい。

 ただし,少々気になったところもある。Optimus Padはグレア加工された美しい液晶ディスプレイだが,蛍光灯などの映り込みが激しい。本体を傾けて操作していると角度によって蛍光灯が映り込んで画面が見えなくなってしまったりもする。このゲーム(に限らないと思うが)をプレイするのなら,アンチグレアタイプの保護シールを貼らないときついかなという印象だった。

 なお,Tegra THDタイトルとしてTegra 2への最適化が謳われる本作では,キャラクターや客席,フィールドに高品質のテクスチャが使用されているという。また,ダイナミックライティングによる陰影がほかのプラットフォームより高品質になり,リプレイも凝ったものになっているとのことだ。

・Samurai II: Vengeance
http://www.madfingergames.com/


 MADFINGER GamesがiPad向けにリリースしていたゲームのTegra最適化バージョンである。

 侍の主人公キャラクターを操って敵キャラをスパスパと切っていくアクションゲーム。キャラクターの操作は画面下の両サイドに表示されるコントローラで行う。技が決まると,敵キャラがすっぱりと半分に切れたりクビが飛んだりと,派手な演出が飛び出して小気味よい。

 ただ,キャラクターのコントロールはなかなか難しい。タッチパネル上に表示されるコントローラは,指を移動させる幅でアナログ的な操作ができるのはいいのだが,「動かし加減の調整」で感触による判定が一切使えないため,頻繁に指がコントロールエリアか外れてしまうのだ。かといって,指先を見ていると画面に集中できず,もどかしい思いをすることになる。

 ちなみに,Samurai II: VengeanceにおけるTegra THDタイトルとしての最適化ポイントは,テクスチャの解像度を従来の4倍に向上させて,ポリゴンも増やしてほかのプラットフォームより画面がリッチになっている点だ。また,キャラクターの動きもデザインし直され,エフェクトもクオリティが上がっているとされる。


・Dungeon Defenders First Wave Deluxe HD
http://dungeondefenders.com/


 「わらわらと攻めてくる敵キャラからクリスタルを死守せよ」といった感じの,タワーディフェンスとアクションRPGを合わせたようなゲーム。ゲーム中に稼ぐことができるマナを使ってフィールドに各種の防御アイテムを配置し,リアルタイムバトルで敵と戦う。
 防御アイテムの配置を考えながら,リアルタイムバトルの楽しみもあるというゲームとしては良質なものだ。Android以外に,iPadやPlayStation 3,PCといった幅広いプラットフォームでリリースされているのも本作の特徴だろう。

 ゲームとしては非常にいい感じなのだが,やはり操作性にかなりの難点がある。画面上の左側のパッドでキャラクターを操作するが,これが非常にやりにくい。思うところにキャラクタを動かせないこともしばしばで,ゲーム自体は面白いだけにストレスが溜まってしまうというのが正直なところ。

 本作はポピュラーなゲームエンジンである「Unreal Engine 3」のAndroid版を使用して開発されており,OpenGL ES2.0に対応する幅広い端末で動作するが,Tegra 2搭載機では,ダイナミックライティングとポストプロセッシングの強化によって,ほかのプロセッサを用いたAndroid端末よりもリッチな画面になっている。また,キャラクターのポリゴン数やエフェクトは,PCやPlayStation 3向けと同等にされており,画面のクオリティはこれらのプラットフォームとほぼ同等になっているという。
 ゲーム内容でも,Tegra最適化版はマップの数,ゲームレベルの数,武器などもPC&PlayStation 3と同一になっているそうだ。


・Vendetta Online
http://www.vendetta-online.com/


 宇宙を舞台にしたMMOSTG。自船を操って広大な宇宙でオンラインバトルなどを繰り広げることができるというゲームである。

 宇宙船の操作は画面上に表示されるコントローラで行うが,微妙な操作が必要で,慣れないとなかなかうまく操れない。また,おそらく最大のネックは日本語化されていない点だろう。画面上のメッセージはもちろん,オンラインチャットなどもすべて英語なので,英語のかなりの自信がないと楽しむのは難しいと思われる。

 Vendetta Onlineはこれまで,Windows,MacOS,Linuxでリリースされており,Android版が初のモバイル向けになる。メーカーによると,このAndroid版はJavaではなくネイティブコードで作成され,Tegra向けに強力に最適化されているという。基本的にWindowsやLinux向けのゲームを,Andorid……というよりTegra 2に移植したゲームと考えてよさそうだ。爆破シーンなどでフレームレートの低下が見られるものの,それなりに高いクオリティの3DゲームがTegra 2上で動作することが確認できると思う。


・Fruit Ninja THD
http://www.halfbrick.com


 下から投げ上げられるフルーツを,ザックザックと切っていくという実にシンプルなゲーム。フルーツを切る操作はタッチパネルを撫でるという直接的なもので,タブレット向きなゲームではある。効果音がなかなか爽快で,また3つ,4つとまとめて切ると追加点が入るなどの工夫もあり,誰でも楽しめるゲームといっていいだろう。

 画面がシンプルすぎてTegra 2に最適化する意味があるのか,いま一つよく分からないが,メーカーによると,Tegra 2ではフルーツのジオメトリが最大8倍に増やされているほか,フルーツのテクススチャやライティング,影のエフェクトがほかのプラットフォームより高品位になっているとのこと。さらに,飛び散る果汁のエフェクトもよりリッチなのだそうだ。


ゲームプラットフォームとしての期待と課題


 というわけで,Tegra 2に最適化されているゲームをいくつか紹介してみた。Vendetta OnlineやDungeon Defenders First Wave Deluxe HDのように,PCなどとほぼ同等のクオリティで提供されているゲームがあるなど,従来のタブレットと比較すると高い性能が実ゲームでも確認できたことは収穫だ。

 タブレットは,ポータブルゲーム機に比べると画面が大きくて迫力あるゲームが楽しめるのが大きな利点になりそうだ。ただ,一方で課題も見えてきた。
 最大の課題は,やはり操作性だ。すでに何度か触れたように,画面上に表示されるコントローラは指の感触を当てにできないので,頻繁にコントロールエリアから外れてしまい,操作しづらいことこのうえない。


画像集#010のサムネイル/Androidタブレットはゲームで使えるか? Tegra 2&Android 3.0搭載タブレット「Optimus Pad L-06C」を使ってみた
 Optimus Padは,USBホスト機能を持っているし,Bluetoothも内蔵している。市販のゲームパッドが使用できるようになれば操作性は大きく改善されるはずで,将来のバージョンアップに期待したいところだ。ちなみに,Android 2.3以降では外部ゲームコントローラのAPIが用意され,ゲームがそのAPIに対応してさえいればコントローラが使えるようになる。ソフトウェア側の対応は整っているので,あとはハードウェアが整えばいいだけという点は期待が持てるかもしれない。

 もう一つの課題は,バッテリー持続時間かもしれない。Optimus Padの場合,利用の仕方によってバッテリーの持ちは大きく変化し,通常の利用や動画再生では8時間程度持つようだが,ゲームプレイ時は本体がそれなりに熱を持ち,4時間程度で再充電が必要になるようだった。モバイルゲーム機としては,ぎりぎり合格というところだろうか。

 さらにいえば価格も課題かもしれない。Optimus Padは2年契約を前提とした割引込みで3万円台半ばだが,割引なしでは7万円台とかなり高価だ。カジュアルゲームがプレイできるノートPCなら,ほぼ同額で手に入る価格でもある。
 タブレットなりの魅力というのは無論あるとは思うが,ゲームプラットフォームとしてみるとやや高価といっていいだろう。現時点で存在するAndroid用ゲームタイトルは,ほぼすべてがスマートフォン向けだ。その状況が改善され,より高性能かつ大画面のタブレット用に作られたものや,Tegra 2へ最適化されたタイトルが数多く出てきたりしない限り,「ゲーム機」としてはなかなか手を出しづらい印象を受ける。


 ……という具合に,現時点ではいろいろと課題はあるものの,Tegra 2,そしてOptimus Padが,ゲームプラットフォームになりうる性能的ポテンシャルを十分に持っているのは確かだ。魅力的なハードウェアが出揃い,さらには価格も手頃になってくれれば,面白い存在になってくれそうである。
 Androidタブレットは,Honeycomb世代でようやく幕を開けたばかりであり,タブレットの性能を生かしたゲームが出てくるのはこれからである。最近Androidのゲームリソースとして話題になっているものに,初代PlayStation用のソフトをエミュレータで動かすというSCEのPlayStation Suiteがある。すでにTegraのサポートが発表されており,もうしばらくすると一気にゲームタイトルが増えてくる可能性は高い。
 今後,Tegraでは,CPUとGPUのコア数を増やして大幅に性能を引き上げたKal-El(コードネーム)の投入も予定されており,ゲーム表現もますますリッチなものになっていくことが予想される。Androidタブレットが,ゲームプラットフォームとして無視できない存在となっていくことを期待したい。
  • 関連タイトル:

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