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印刷2009/12/10 10:30

レビュー

見た目は地味だけど,実は日本語化されるほど傑作な横スクロールアクション

トライン
〜失われし古代の秘宝〜日本語版

Text by Chihiro


 PC用の横スクロールアクションゲーム「トライン〜失われし古代の秘宝〜日本語版」(以下,トライン)が,12月4日にズーより発売された。

画像集#001のサムネイル/見た目は地味だけど,実は日本語化されるほど傑作,「トライン〜失われし古代の秘宝〜日本語版」のレビューを掲載

 本作は日本語版であり,メニュー周りやゲーム内のストーリーがしっかり和訳されている。以前,英語版のデモを遊んだとき,ゲームは面白かったがストーリーをあまり理解することができずにいたので,今回の日本語版発売はかなりうれしく思っている。

 開発会社は,過去に「Shadowgrounds」という見下ろし型のシューティングゲームを手がけた,フィンランドのFrozenbyte。フィンランドといえば,個人的にはヘヴィメタルやデスメタルといった激しい音楽のイメージが強かったので,トラインのようなファンタジーテイストのゲームが作られたというののは,内心驚きだった(個人的な偏見かもしれない)。

「トライン」の舞台は,荒れ果てた遺跡や薄暗い地下の洞窟など。2D風の横スクロールアクションゲームだが描画には3Dも使われており,グラフィックスはとてもきれいでクオリティが高い
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 ゲームの舞台は,死者が蘇って邪悪な土地になってしまった王国。この国に盗みに入った盗賊が,古代の秘宝「トライン」を見つけ,それに導かれるように魔法使いと戦士もやってくる。しかし秘宝にかけられた魔法により,3人は一心同体になってしまった。それぞれがまた一人の人間に戻るための手がかりを求めて,冒険を繰り広げるというのが本作のストーリーだ。

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 難度は「初級」「中級」「上級」があり,全ステージをクリアすると「最上級」が解除される。難度によって変化するのは敵の攻撃力ぐらいで,仕掛けが難しくなったりはしない。
 操作はキーボードとマウスのほか,Xbox 360のコントローラにも対応している。試しにXbox 360のコントローラをPCに接続して操作方法をゲームパッドに切り替えたところ,ボタンの設定など必要なしに,すぐプレイできたのは便利だ。本作はキーボードでの操作だと結構忙しく,キーの押し間違いなどのたびにストレスを感じていたが,ゲームパッドに切り替えたところスムースに遊べるようになった。

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 また,トラインはオンラインには対応していないものの,ホットシートの「Co-op」(協力プレイ)に対応しており,3人のプレイヤーがそれぞれ1キャラクターを担当してゲームを進められる。操作設定が3人分用意されているので,ここでプレイヤー1はキーボードとマウス,プレイヤー2と3はゲームパッドで操作,というように設定するだけでOKだ。


さまざまな仕掛けや敵の攻撃を攻略し,ゴールを目指そう


 本作の大きな特徴といえるのが,それぞれ異なる能力を持つ3人のキャラクターを,場所に応じて即座に切り替えていき,状況を突破していくところだ。では各キャラクターの特徴を紹介していこう。

●偉大な魔法使い:アマデウス
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 魔法の力で木箱を出現させたり,ステージ内のオブジェクトを魔法で動かしたりできるテクニカルなキャラクター。武器を手に敵と戦うということはできないが,木箱やおもりなど,ステージ内にあるアイテムを魔法で持ち上げ,高所から落とし敵にぶつけることで攻撃できる。そのほか,魔法で宙に浮く足場も作れる。

●静かなる盗賊:ゾヤ
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 弓矢を使った遠距離攻撃が得意なキャラクター。ゲームを進めると火の矢も扱えるようになるが,これは敵にダメージを与える以外に,消えたたいまつに火をつける効果もある。弓矢以外では引っ掛け鉤を使うことができ,ワイヤーで体を振り子のように動かして勢いをつけ,谷間を飛び越えたり,素早く移動したりできるのが特徴。

●勇敢な戦士:ポンテウス
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 接近戦のエキスパート。剣がメインの武器で,アップグレードすることで炎をまとった剣になる。3人の中で唯一「盾」を装備したキャラクターで,敵の攻撃を防御可能。ゲームを進めるとハンマーを扱えるようになったり,岩やおもりを投げ飛ばせるようになったりする。重たい鎧を装備しているせいか,泳ぐことはできない。


魔法使いの基本アクション。木箱やおもりなどの動かせるオブジェクトは,カーソルが手に変化。動かしている最中はエネルギーポイントを消費する
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 ステージは全部で15あり,最初のステージには盗賊,魔法使い,戦士の順で,それぞれの能力を学べるチュートリアルが用意されている。ステージ2からは,3人が一心同体になってしまい,以降は状況に応じてプレイするキャラクターを切り替えつつ進めていくことになる。
 具体的な例を挙げると,まず魔法使いが魔法で木箱を動かし,天井近くにある二本の横柱の間に設置。続いて盗賊にチェンジし,引っ掛け鉤を先ほどの木箱に引っ掛けて,通常のジャンプでは飛び越えられない壁を突破する。着地後は戦士になって,出現する敵を倒していく……といった具合だ。どこで誰を使うか,という戦略的な判断を求められるのだ。
 また,ステージを攻略するうえで避けて通れないのが,パズル的な仕掛けだ。A地点の扉を開けるにはB地点にあるスイッチを押さないといけない,という簡単なものから,複数のスイッチを適切な順番で押さないと先に進めない仕掛けなど,しっかり考えないといけないものもある。

空中で四角形を描くと,魔法で作った木箱が出現し,これをさらに魔法で動かせる。スキルのレベルを上げると作れる木箱の数も増えていく
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 仕掛けを解いてゴール地点にたどり着けば,そのステージはクリアで,次のステージへとつながっていく。一度クリアしたステージは「経験値をどれだけ入手した」「どの難度でクリアした」など,さまざまな情報が記録され,ある程度ゲームを進めてキャラクターのレベルを上げてから,以前遊んだステージを再びプレイするということも可能だ。

盗賊の弓矢は,ボタンをクリックしたまま力を溜めると,より強力になる。火の矢は敵を攻撃するのはもちろん,たいまつに火を点ける効果もあり重宝する
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 なお,ステージ内に隠されていたり,特定の敵を倒すことで出てきたりする「緑色のポーション」を50個集めると,キャラクターはレベルアップする。レベルが上がるごとに能力ポイントを一つ得られ,これを使って同時に発射できる矢の数を増やしたり,魔法で作れる木箱の数を増やしたりなど,キャラクターのスキルを強化可能だ。

引っ掛け鉤を使って,普通のジャンプでは飛び越えられないところを突破。ステージ攻略に欠かせないスキルだ。ただし,木以外のものには引っ掛けることができない
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 このほか,ステージ内には宝箱が設置されている。この中にはキャラクター専用のスキルや,ライフ,エネルギーポイントを増やすアクセサリー,ダメージを軽減する装備などがあり,これらのアイテムはキャラクター同士で交換できる。宝箱はステージのどこかに巧妙に隠されていたりするので,いかに見つけて入手するか,といったことにも頭を悩ますことになるだろう。

戦士の魅力は,剣で敵をどんどん倒していける,その攻撃力の高さだろう。装備した盾は敵の攻撃を防ぐ以外に,落下物や火の玉から身を守るのにも使える
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 敵は骸骨の戦士(剣と盾を装備したもの,弓を装備したもの,火を吹くものなど)やコウモリ,クモなどが登場する。ときどき,巨大な骸骨の戦士や鬼のようなボスっぽいモンスターも登場するが,全体的にバリエーションが少ないのは,ちょっと残念に感じた。


物理演算エンジンによるリアルなオブジェクトの動き


戦士はとあるスキルを入手することで,木箱やおもりなどを持ち上げて,投げ飛ばすことができるようになる。物をぶつけて敵を倒すことも可能だ
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 トラインには,物理演算エンジンとしてNVIDIAのPhysXが搭載されており,これを利用したオブジェクトのリアルな動きにも注目したい。例えば天井から鎖でつながれた木箱を,魔法で斜め上に持ち上げて放すと,振り子のように左右にゆらゆら動く。持ち上げる高さが低ければ振り幅は小さいし,高い位置からなら大きくなる。また,回転する板の下から矢を放つと,矢が板にぶつかった力で勢いよく回転したり,魔法でオブジェクトを動かして壁にぶつけると,崩れた壁の破片が派手に飛び散ったりといった描写が見られる。

木の板をただ倒しただけでは,このように槍に刺さってしまい,先に進むことができない。まずは先に槍に木箱を刺して,板の支えにしよう。こういう仕掛けがいくつもある
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 この物理演算エンジンはゲームの肝である,謎解きにもふんだんに利用されている。観覧車のような乗り物におもりを載せて回転させ,その勢いを利用して高所に飛び移ったり,左右に大きさの異なる岩がぶら下がった板の上に,さらにおもりを置いて,シーソーのように片側を持ち上げて通り抜けたり,といった具合だ。このように,物理法則に従って動くオブジェクトがステージのいたるところに用意されている。一見不可解でも,プレイヤーが干渉することで仕掛けを突破するヒントを得られることもあるので,怪しいものを見つけたら,「これはどんな動きをするんだろう?」と攻撃してみたり魔法をかけてみたりするといいだろう。

上部に横柱が二つある。まずはこの間に木箱を設置してから,盗賊の引っ掛け鉤でぶら下がり,勢いをつけて飛ぼう。これはいくつかある突破方法の一つだ
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よくできた作品だが,少々物足りないところも


 トラインは最初,クラシカルな2Dアクションゲームという印象を受けたが,いざ遊んでみると物理演算エンジンによるリアルなオブジェクトの動きがゲームに生かされ,古臭さを感じさせない作りになっていた。

ステージ内のところどころに宝箱が隠されており,ゲームを進めるうえで有利になるアイテムが入っている。入手したアイテムの効果はインベントリから確認できる
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 3人いるキャラクターを随時切り替えて,ステージ内の仕掛けを突破していくというのも楽しい。仕掛けや罠に行き詰ったとき,どうやれば先に進めるだろうと試行錯誤し,それがうまくいったときは快感だった。ただ,自分で謎に挑んで答えを導き出すことに楽しさを感じられる人はいいが,「分からないし,もういいよ!」と投げ出してしまう人もいるかもしれない。
 また,すでに触れてあるように,敵のバリエーションは決して多くなく,横スクロールアクションには欠かせない,ステージの最後に待つボス戦のようなものもない。そのため,戦闘が単調で演出面でも地味な印象が残った。結局,ステージの仕掛けをどうやって突破していくか,を繰り返すことになるので,もうちょっと盛り上がる要素が欲しかったなあと思う。

一部ステージでは,巨大な敵がプレイヤーの前に立ちはだかる。ただし見た目に反し,倒すのはそれほど難しくなかったりする
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 このようにいくつか惜しいところはあるが,全体的によくできたアクションゲームだと感じた。グラフィックスやエフェクトは非常にキレイだし,ファンタジーの世界にマッチした壮大な音楽も個人的にかなり気に入っている。4Gamerには日本語版のデモも掲載しているので,気になる方はまずはこちらを遊んでみてほしい。

 余談だが,欧米ではPSN向けのタイトルとしても配信されているようだ。XBLA版はアトラスが権利を獲得したというニュースもあるが,現状日本での配信は不明。PC版のローカライズがされたのだから,コンシューマ版も日本で配信してもらいたいと思う。

後半のステージほど,仕掛けのレベルが上がって難しくなっていく。そのときの状況に応じて,キャラクターを切り替えていろいろ試してみよう
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