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実車さながらのグラフィックスとリアルなドライビングフィールを手軽に楽しめる,ファン待望のシリーズ最新作。PSP版「グランツーリスモ」のレビューをUp
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印刷2009/11/06 15:58

レビュー

実車さながらのグラフィックスとリアルなドライビングフィールを手軽に楽しめる,ファン待望のシリーズ最新作。PSP版「グランツーリスモ」のレビューをUp

シリーズ一作めと同タイトルだが,PSP版は移植やリメイクではなく,新規作品となっている
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 ソニー・コンピュータエンタテインメントより,「グランツーリスモ」シリーズの最新作として,PSP用ソフト「グランツーリスモ」が10月1日に発売された。「グランツーリスモ」といえば,いまやドライビングシミュレータの代名詞的存在であり,特別にクルマ好きではないゲーマーでもその名を知っているほどのメジャータイトルだ。

 ドライビングシミュレータという性質上,グラフィックスとドライブ感のクオリティを極限まで突き詰めるべく,これまでのシリーズはPlayStation,PlayStation 2,PlayStation 3とすべて据置型ゲーム機でリリースされてきたが,本作はシリーズ初の携帯ゲーム機用ということで,その完成度に注目している人も多いのではないだろうか。

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収録車種数は830種(カラーリング違いを含まず)とシリーズ最多。なかには1台8億クレジットのクルマもあり,コンプリートするには時間がかかりそうだ
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鈴鹿やニュルブルクリンクなどの実在するサーキットや,実際の都市をモデルとしたシティコースなど,収録コースは35種類70バリエーションにも及ぶ。こちらもかなりの数だ

 もともとは2004年に「グランツーリスモ4 モバイル(仮称)」というタイトルで発表が行われ,その際には2005年発売予定とアナウンスされていたわけだが,あれから5年の月日が経過したとあれば,ようやくシリーズファン待望の日が訪れたことを喜ぶと同時に,やはりどれだけ作り込まれたのかが気になるところだ。

リプレイモードの映像は,PSPが携帯ゲーム機であることを忘れさせてくれるほどの美しさ。本体をスタンドに立てかけて,無限ループさせておきたくなってしまう
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まずは「ミッションにチャレンジ」をプレイして,PSP版の操作感覚を覚えたい


 本作の核となるゲームモードの一つが,「ミッションにチャレンジ」だ。これは「グランツーリスモ4」でのライセンスモードに当たるもので,与えられたミッションに挑戦していくことでドライビングスキルの向上が目指せるようになっている。

 ミッションの内容は,いろいろなコーナーを規定タイム内に走るものや,指定区間内でライバル車をオーバーテイクするものなどさまざま。各ミッションではクリア成績に応じてゴールド,シルバー,ブロンズの評価が与えられ,それに応じたクレジットも獲得でき,スキル向上と同時に車の購入資金が増やせるというありがたいモードだ。

最初のうちは指定の位置に止まったり,緩いコーナーを曲がったりするだけだが,段階を追うごとにミッションの内容は高度なものになっていく
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 難度的にはブロンズ評価であれば楽に突破できるレベルで,初心者でもさほど苦労することなく進めていけるはず。ちなみにシルバーはノーミスで走ることができればなんとか,ゴールドは何度か走り込んでベストラインを外さなければ,ようやくクリア可能といったところ。ゴールドを目標にすれば上級者でも存分に手応えを感じられるはずだ。
 基本的には初めて「グランツーリスモ」をプレイする人のための教習所的役割を果たすモードだが,今回はPSP版となって操作感が大きく変わっているため,シリーズを通じてプレイしてきた人も一度はチャレンジしておくことをオススメしたい。

 前シリーズまではステアリングコントローラを使ったり,デュアルショックのアナログスティックとトリガーを使ったりと,実車もしくはそれに近い操作感覚を得ることができたが,PSP版ではステアリングを方向キー,アクセルとブレーキをボタン操作で行うことになる。初代「グランツーリスモ」を思い出させるオンかオフかのデジタルなドライビングを余儀なくされるので,早いうちにこの感覚に慣れておくことが必要といえる。
 アナログパッドをステアリングに用いることも可能だが,正直なところ微妙なコントロールをこのパッドで行うのは厳しいので,どちらにしても慣れが必要となることには変わりがない。しかしながら一度感覚をつかんでしまえばそれほど大きな違和感もなく,実車の雰囲気を十分に味わえるようになるだろう。


ミッション中は,壁への接触およびコースアウトをしてしまうと失格。敵車への接触も,こちらから当たった場合はほぼアウト。このあたりの厳しさがなんともグランツーリスモらしい
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「ひとりで走る」でレースやタイムトライアル,ドリフトトライアルにチャレンジ


 「ミッションにチャレンジ」と並び,もう一つの核となるゲームモードが「ひとりで走る」だ。このモードはさらに3種類のカテゴリーに分けられており,CPUが操作する3台のクルマを相手にレースを行う「シングルレース」,ドリフトを決めるごとにポイントが加算され,それが直接賞金額へと結びついていく「ドリフトトライアル」,敵車のいないクリアな状況でストイックにラップタイムを削っていく「タイムトライアル」が用意されている。

スタート直後は所持金1000万クレジットと,ガレージにクルマを1台所有している。筆者の初期車両はホンダ フィットW '01だったが,これはプレイヤーによって異なるようだ
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 「ミッションにチャレンジ」ではコースの一部しか走れず,使用車種も課題ごとに固定となるが,こちらでは好みのクルマに乗り込んで,好みのコースを思う存分走れるのだ。当然ながら,乗りたいクルマはあらかじめディーラーで購入しておかなければならないが,初期資金とミッションで稼いだクレジットを合わせれば,ある程度のクルマは手に入れられるだろう。またシングルレースとドリフトトライアルでも賞金を得られるので,これらを走り込んでいけば数千万〜億単位クラスのクルマを購入することもそう難しくはないはずだ。では各カテゴリーについて,さらなる詳細を見ていきたい。

ディーラーの品揃えは奇数日に更新される。日数は「ミッションにチャレンジ」や「ひとりで走る」をプレイし,そのモードを抜けると進行する(アドホック対戦であれば,日数は進行しない)。欲しいクルマがある場合は,モードから抜けないようにしてクレジットを稼ぐとよい
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●シングルレース
 シングルレースでは周回数を自由に設定できるほか,敵車を自分のクルマと同じものに指定できるワンメイクオプションも用意されている。周回数が多ければ多いほど入賞した際に得られる賞金も増額されるので,手っ取り早くクレジットが欲しいときには簡単なコースで周回を重ねていくというのも一つの手だ。
 そして入賞を重ねていくと,コースごとに,D,C,B,A,Sとランクが上がっていき,このランクによっても賞金が変動する仕組みとなっている。クレジット稼ぎに使うコースは,真っ先にランクSまで上げておくのがよいだろう。とはいえ,ランクが上がれば敵車も強くなるわけで,そのせいで勝てなくなってはまったく意味がない。自分の腕に見合ったランクを設定しておき,精神的に無理のない範囲で楽しみたいところだ。

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「グランツーリスモ4」のような細かなセッティングは行えないが,お気に入り登録した30台までのクルマに限ってクイックチューンが可能。車高やトー角などが変更できる
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ランクが上がるにつれて敵車も速くなるが,自車のタイヤのグレードを落とせば敵車のパフォーマンスも低下していく。この法則を利用すれば,勝てる確率がアップするかも?


●ドリフトトライアル
 ドリフトトライアルでは,コース選択後,あらかじめ設定された区間のみで採点を行うセクターモードと,コース全周で採点を行うフルコースモードを選択できる。ドリフトに不向きなコースでなければどちらを選んでも構わないが,手早くポイントを稼ぎたいのであればセクターモードで回数をこなしていくとよいだろう。1ポイントあたり200クレジットを獲得できるので,ドリフトが得意な人であればシングルレースよりも気軽に稼ぐことができそうだ。

ドリフトしている時間が長いほどポイントが加算されていくのだが,スピンや壁への接触があるとリセットされてしまう。あまり欲張りすぎないほうがよいようだ
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●タイムトライアル
 タイムトライアルでは,35種類70バリエーションの中から走りたいコースを自由に選択可能。コースごとに最速ラップのゴーストを保存しておき,再挑戦時に呼び出すこともできる。またラップタイムに関しては,コースごとに上位四つまでが保存されるようになっている。
 タイムアタックを行ううえで必要な機能は一応揃っているように見えるが,これで満足を得られるプレイヤーがどれだけいるのかは少々疑問に感じる。タイムアタックは自分との戦いとよく言われるが,本当にそれだけの枠にとどまってしまっているのが実に残念だ。

最初のうちはゴーストとの戦いにも熱くなれるのだが,やはりすぐに飽きてきてしまう。全国の猛者達とのタイムアタックバトルは,「グランツーリスモ5」までお預けのようだ
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 ネットワークを介してのタイムアタックランキングがあるわけでもなければ,全国のプレイヤーのゴーストをダウンロードできるわけでもない。競う相手がいるとすれば,PSPを直接手渡せる友達や知人に限定されてしまい,これではモチベーションを保つにも限界があるように思う。せめて車種ごとにラップタイムを保存できるような仕様であれば,好きなクルマでコツコツと走ることにも意味を見出せたように思うのだが……。シングルレースとドリフトトライアルはなかなか楽しく遊べるものの,タイムトライアルに関しては,正直なところ物足りなさを感じずにはいられない。


友達との対戦や,クルマのトレードを行うことができる「アドホックモード」


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 メインメニューから選択できる「アドホックモード」には,PSPを持ち寄って最大四人での通信対戦ができる「アドホックレース」と,ほかのプレイヤーとクルマの授受や交換が行える「シェア&トレード」が用意されている。

 アドホックレースは必ずしも四人集まる必要はなく,1対1でレースを行ったり,残り2台をCPUに担当させて4台のレースにしたりといったことも可能だ。レースモードは3種類で,ハンデなしの実力勝負となる「スタンダードレース」,スタート時に時間の差をつけることでプレイヤーの実力差を補う「パーティーレース」,クルマの性能差でプレイヤーの実力差を補う「シャッフルレース」が選択できる。

 自分と同じくらいの腕前の友達と対戦するときはスタンダードレース,初心者と上級者の対戦であればパーティーレースやシャッフルレースで熱い駆け引きが味わえる。それでも腕に自信が持てないという人は,AIに運転をまかせてしまうという手もあり。AIの運転レベルは「ひとりで走る」のコースランクと比例しているので,Sランクまで上げたコースではかなり役に立ってくれそうだ。またPSP単体ではインターネットを経由しての対戦は不可能だが,PS3を所持しているのであれば話は別。PS3に「アドホック・パーティー」をインストールしておけば,PS3を介してアドホックモードのオンライン対戦を楽しむこともできるのだ。

出走台数が4台というのは,やや物足りない感じがしなくもない。せめて8台までエントリーできれば対戦もさらに盛り上がるように思うのだが,ハードの性能的に厳しいところか
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 そして「シェア&トレード」では,「クルマを交換する」「クルマをあげる」「クルマをもらう」が選択可能。「クルマをあげる」「クルマをもらう」は所持しているクルマをシェアするもので,相手にクルマをあげても自分のクルマはガレージからなくならない。ただし,あげることができるクルマは「シェア可」と明記されているものに限られる。
 「クルマを交換する」はその名の通りのトレードで,「トレード可」と明記されているクルマに限って1対1のトレードが行えるというもの。トレードに出したクルマはガレージからなくなってしまうため,実行する際には注意が必要だ。ちなみに「シェア&トレード」もアドホック・パーティーが利用できるので,ルームを立てたり訪れたりして,クルマ集めに役立てたい。

「シェア&トレード」で,クルマのやり取りが行えるのも本作の特徴。クレジット稼ぎに疲れたら,友達とシェアを行うというのもコンプリートへの近道だ
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携帯ゲーム機でここまでのものが遊べると感じるか,ここまでが限界と感じるか


PSP版のゲームモード構成は,是か,否か。プレイする人によって大きく意見が分かれそうである
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 さて,ここまで本作のメインとなるモードについて一通り紹介してきたが,シリーズファンの中には,いわゆるキャリアモードにあたるものが存在しないことに違和感を覚えた人も多いのではないだろうか。下位クラスからレースを勝ち抜いていったり,勝利報酬として新たなクルマを手に入れたりといった,いわばレースゲームのメインともいえる達成感を得るためのモードが存在しないという事実は,筆者も含め,多くの「グランツーリスモ」ファンを困惑させたに違いない。

 もちろん賞金を稼いで車種コンプリートを目指すことに喜びを見出せる人も多いと思うのだが,それを楽しみにしていた人ばかりではないはずだ。収集癖のある人,タイムアタックに燃える人,自分の好きなクルマで淡々と走りたい人,ドライバー気分でキャリアモードを楽しみたい人,リプレイを眺めてニヤニヤしたい人,そういったすべてのクルマ好きを満足させてくれるのが,「グランツーリスモ」というタイトルだったのではないだろうか。

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 収録車種や収録コースが非常に多く,グラフィックスも美麗で動きもスムーズと,携帯ゲーム機でこれほどのドライビングシミュレータをプレイ可能にしたという点は本当に驚きに値するし,ドライビングフィールはもちろんのこと,リプレイ画面を見ていても,PSPでここまでやれるのかと目を見張ってしまうほどだ。

 しかし,だからこそ,タイムトライアルの中途半端な作りや,キャリアモードの撤廃が残念で仕方がない。容量的な問題なのか,ハードの仕様上の問題なのか,そもそもこれがPSPの限界なのかと,いらぬことまで気になってしまう。絶賛したい気持ちと物足りない気持ちが同時に湧き上がり,なんともいえない複雑な心境ではあるが,R35で鈴鹿サーキットを周回することが日課となりつつある筆者は,なんだかんだと言いつつもPSP版の手軽さにハマってしまったようだ。

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