レビュー
人気SRPG「サモンナイト」シリーズ初の“本格RPG”が登場!
サモンナイトX〜Tears Crown〜
ちなみに本作は,サモンナイトシリーズでの実績が高く評価されているフライト・プランが企画・監修,「ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウィング」などの制作を手がけるシンク・アンド・フィールが開発した,バンプレストブランドのRPGだ。豪華声優陣の参加や,mihimaru GTによるオープニングテーマソングなど,プロジェクトとしても実に本格的。この秋〜冬,じっくり楽しめるNDS用RPGを探している人にとっては,有力な選択肢の一つになることは間違いない。
予想以上に重みのあるメインストーリーを
豪華声優陣によるフルボイスが見事に演出
一時的な平和のために人質となったデルティアナの皇子ディランは,セレスティアでの暮らしの中で王女ファラと出会い,有翼人種ランカスタと対立する帝国の考えに疑問を抱くようになっていた。
そして,人質交換期間終了となる10年後,世界を揺るがすある事件が起きてしまった。プレイヤーは,“国を追われた皇子”ディラン,あるいは“国を失った王女”ファラのいずれかを主人公として選び,さまざま種族や思惑が入り乱れるルーンハイムにて,過酷な運命に立ち向かっていくこととなる。
以上が,本作のざっくりとした導入ストーリーだ。背景設定/物語に関して,サモンナイトシリーズのナンバリングタイトルとの密接なつながりはないと考えてよく,同シリーズに初挑戦する新規プレイヤーでも,何の問題もなくゲームを楽しむことが可能だ。
もちろん,召喚を軸とした世界観や,国/種族間の対立をテーマとする物語,後述する“夜会話”など,シリーズ特有の魅力は健在。サモンナイトファンも,シリーズ10周年記念作品としての本作をスムースに楽しめるはずである。
なお,ストーリー主導型RPGとしての性質上,ストーリー展開に関する詳細は本稿では割愛させてもらうが,筆者個人としては,ゲーム序盤から「え,そんなに重い話だったんですか……」と,良い意味で裏切られ,予想以上に“先の話”が気になったものだ。主人公に感情移入するタイプのプレイヤーであれば,ニンテンドーDSならではの小気味良いプレイ感とも相まって,ディランやファラと共に一喜一憂しながら物語を進めていけるだろう。
とはいえ,シリアスなテーマを取り入れつつも,登場人物達の前向きな言動によって,重苦しい空気がうまく緩和されているので,その点はご安心を。豪華声優陣達による,ときに真面目な,ときにコミカルな掛け合いは,今や代表的なJRPGとなった「テイルズ オブ」シリーズにも通じる魅力を放っている。できればイヤフォンでフルボイスを楽しみつつ,バンダイナムコゲームスが標榜する“汚れなき感情が満ちる、超純度ストーリー”を満喫してほしい。
一見“普通”のRPG。しかしさまざまな工夫が
独特の面白みを生み出している
基本的に,ごくオーソドックスなRPGの文法に則って作られたタイトルであるため,同系統の作品を一度でも遊んだことがあれば,誰でもスムースにゲームを進めていけるだろう。SRPGとしてのサモンナイトシリーズを遊び続けてきた人でもそれは同様だ。
とはいえ,本作にはシリーズならではともいえる工夫が随所に盛り込まれており,一風変わったプレイ感覚をもたらしてくれるのも確かである。戦闘でいえば,ストーリーにも密接に関係してきている有翼人種ランカスタの存在が光る,地上/空中に分かれての2画面バトルや,攻撃を当てることで,周囲の敵にダメージや状態異常を与える(場合によっては味方にも効果が及ぶ)ギミックなどが,単調になりがちなターン制コマンドバトルにいい影響を及ぼしている。
また一日の終わりに,複数提示される仲間の中から一人を選び,フルボイスによる会話を楽しみつつ“信頼度”を高められる夜会話も,エンディングに変化をもたらすだけでなく,“協力技”“究極協力技”の習得に関わってくる重要な要素。協力技は,キャラ同士の信頼度が一定以上になると使える必殺技のようなもので,戦闘中に敵を攻撃したり,味方がダメージを受けたりすることで上昇するユニゾンゲージ(最大3段階)を消費し,繰り出す。とくにゲーム序盤,最大MPが低く,有用な召喚術が連発しにくい場面や,対ボス戦での切り札として,協力技/究極協力技は実に有効だ。各キャラのMPやユニゾンゲージをうまく管理するという戦略要素を考慮しつつ,バトルをうまくこなしていきたいところである。
RPGならではの進化を遂げた召喚獣/召喚術
自分好みに育て,装備者を自由に選ぶ楽しさが○
面白いのは,召喚獣を好きなキャラクターに装備させられるところ。これにより,好きなキャラを,好きな特性にカスタマイズできるというわけだ。召喚獣は,戦闘の勝利回数などに応じて成長し,さまざまな術やパッシブスキルを覚えていくので,どのキャラに,どんな術を覚えさせれば戦闘を有利に進められるか,常に考えていく楽しみが味わえる。
また,特定のマナストーンを育成パネルの育成スロットにはめ込んでいくことで,スキルそのものをパワーアップさせることもできる。スキルを強化するためのマナストーンは簡単に入手できるものではないし,強化したスキルは威力だけでなく消費MPも高くなる。そのあたりの問題を踏まえ,一つのスキルを強化していくのか,それともバランスよくスキルを伸ばしていくのかを,たっぷりと悩みつつゲームを進めていこう。
シリーズ10周年記念作品としては申し分ない出来
ディラン/ファラが活躍するSRPG版もプレイしてみたい!
確かに,SRPGとしてのサモンナイト最新作を期待していた人にとっては,RPGというジャンルのテンポや,ストーリーを追う/ザコ戦を繰り返すというプレイスタイルが,やや冗長に感じることがあるかもしれない。
しかし,NDS用RPGとして本作を見た場合,意外とシリアスなストーリーや,さまざまな工夫が盛り込まれた戦闘システム,プレイヤーの好みが反映されるパーティ構成/召喚獣などなど,じっくり遊ぶにはうってつけの秀作に仕上がっていると言っていい。移動速度やDSならではの快適な動作で,ストーリー重視のRPGとしては,かなりテンポよくゲームが進められるところも魅力だ。間違いなくいえることは,サモンナイトXは,シリーズ初の本格RPGとしては,非常に良くできている。シリーズファンはもちろん,シリーズ作をプレイしたことがないRPGファンにとっても,安心してオススメできる1本だ。
加えて,本作で搭載されたシリーズ初の新システム“議会システム”や,Wi-Fi通信に対応したミニコンテンツなども,今後どのような形でシリーズ作に盛り込まれていくのか,非常に気になる。とくに議会システムは,3人の大臣を決定後,議題提案(クエスト提案)の通知が届き,議会を開いて質疑応答を行うことでクエストを発生させられるという興味深いシステム。これは,SRPGにも親和性の高いシステムのように思えたので,今後のシリーズ作でどのような発展を遂げるか楽しみだ。(もしあるなら)ディランとファラの新たな物語と併せて,そういった展開にも大いに期待したい。
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