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BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
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印刷2017/06/30 00:00

レビュー

世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか?

BenQ ZOWIE VITAL

Text by 榎本 涼


VITAL
メーカー:BenQ
問い合わせ先:マスタードシード(販売代理店) 問い合わせフォーム
実勢価格:2万4000〜2万5800円(※2017年6月30日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
 国内発売から少し時間が経ってしまったが,BenQ ZOWIE(以下,ZOWIE)ブランド初のUSBサウンドデバイス「VITAL」(ヴァイタル)を取り上げたい。
 ZOWIEらしく「プロゲーマー向け」で,プロ仕様がゆえの(?)2万円台半ばという強気の価格設定で目を引く製品だが,いったい何がプロゲーマー向けなのか。また,その実力は価格に見合ったものなのか。例によってじっくり検証した結果をお伝えしようと思う。

VITALはまるでスマートフォンのような製品ボックスに入っている。プロプレイヤーが持って歩くためのポーチ付き
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ドライバソフトウェアいらず。どんなPCでも差すだけで動作するVITAL


付属のUSB Type-B−Type-Aケーブルは全長実測174cm。つや消し黒の,とくに何の変哲のないケーブルだが,端子部分にはZOWIEのブランドロゴがエンボス加工で刻んである。ケーブルタイもロゴ入りだ
画像集 No.005のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
 VITALは,ZOWIEのマウスやキーボードと同様に,USBクラスドライバで動作する製品だ。追加の「設定用ソフトウェア」も,もちろんないので,ただPCに差せばサウンドデバイスとして動作する。4Gamer読者にはあまりいないと思うが,出力時のサンプリングレートを変更したいときはWindows側の「サウンド」コントロールパネルを使うことになる。
 なお,VITAL本体のボリュームとWindowsのシステムボリュームは連動していない。

 本体は机上設置が前提。実測サイズ65(W)×102(D)×22(H),実測重量80gという小型軽量な本体は全面がつや消しの黒で,天板部がタッチセンサーによる操作系,本体手前側側面にある2つの3.5mmミニピン端子がヘッドフォン出力およびマイク入力,本体奥側側面にある3.5mmミニピン端子がスピーカー出力という,非常にシンプルなデザインだ。

USB端子を除くと接続端子はわずかに3つである
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本体底面。製品の情報は滑り止めゴムにプリントされている
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 本体底面は一面が滑り止めゴムになっているが,ヘッドセットを接続した状況だと,ケーブルの張り具合によってはテンションによって容易に“お散歩”してしまう。プロゲーマーは使いたいときぱっと手に持つということなのだろうが,据え置きで使いたいときには,この軽さが気になる人もいるだろう。

操作イメージその1とその2。多くの読者は左を想定しているのではないかと思うが,本体が軽いので,こういう設置だとなんだかんだでけっこう動く。よって,本体が動いてしまうのが気になるなら,右のように手で持って操作するのもよいアイデアかもしれない
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 タッチセンサーを用いた操作系も実にシンプルで,1〜2タッチで目的の操作を行えるものになっている。

本体天板部を正面から見たカット。LEDは白一色で,変更機能などはない
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 本体奥側にある4つのボタンアイコンは,

  • VOL:出力音量
  • マイク(※イラスト):マイク入力音量
  • TRE:トレブル(高域,高周波数帯に山や谷を作る)
  • BAS:バス(低域,低周波数帯に山や谷を作る)

をそれぞれ選択するもので,タップするとその項目が光る。光った状態で天板中央部の[−/+]ボタンをタップすれば,選択項目の音量が増減し,かつ本体左右中央部の一列バーが増減して状況を知らせてくれる仕様だ。

一例として出力音量操作のイメージ。VOLアイコンをタップして光らせたうえで[−/+]ボタンをタップすると,13段階で音量を調整できる
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マイクアイコンでも音量操作法は同じ(左)。トレブルとバスの場合,標準は中央値となり,中央で3つのドットが光った状態になる(中央)。中央に対して±7段階で調整していくイメージだ(右)
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 一方,天板の手前側に並んだボタンアイコンは,

  • スピーカー(※イラスト):スピーカー出力を選択(※ヘッドフォン出力と排他)
  • ヘッドフォン(※イラスト):ヘッドフォン出力を選択(※スピーカー出力と排他)
  • 斜線入りマイク(※イラスト):マイク入力ミュート有効/無効切り替え
  • 南京錠(※イラスト):タッチセンサーのロック有効/無効

用となっている。

左から,スピーカー出力を選択した状態とヘッドフォン出力を選択した状態,マイクミュートを有効化した状態,本体の操作をロックした状態だ。南京錠アイコンをタップするとそれ以外の表示が消え,直前に設定していた内容で音量や選択内容は固定となる。ロック解除はもう一度南京錠アイコンをタップすればいい
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ヘッドフォン出力もスピーカー出力も非常に低遅延


画像集 No.024のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
 遅延のチェックに入りたいと思うが,それに先だってお伝えしておくと,今回,比較対象としての「Sound Blaser ZxR」は取り扱わない。というのも,Windows 10のCreators Update適用後から,Sound Blaster ZxRの遅延状況がそれ以前と比べて極端に悪化したからだ。Creators Updateによってバックグラウンドのサウンド関連仕様が何か変更になり,それが影響していると思われるが,ともあれ比較の意味があるとは思えないという事情から,今回はリファレンス機材であるRME製USBサウンドデバイス「Fireface UCX」とのみ比較することになる。
 この点を除くと,テスト方法は別途示している「ダミーヘッドを用いた周波数特性および遅延検証法」に準拠となるので,詳細なテスト方法を知りたい人はそちらを参照してもらえれば幸いだ。

 というわけで結果はのとおり。ヘッドフォン出力時は[HP],スピーカー出力時は[SP]と記して区別しているが,すべてのテスト条件でFireface UCXより低遅延であることを確認できる。とくに,DirectSoundやXAudioと比べて遅延が少ないとされ,また挙動に比較的一貫性のあるWASAPI(の「排他モード」)で10ms以上低遅延というのが見事だ。ヘッドフォン出力時とスピーカー出力時で挙動にほとんど違いがない点にも注目しておくべきで,ハードウェアレベルでの遅延状況はかなり優秀と言っていいだろう。

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いい意味で「普通」の出力音質傾向


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 低遅延なのは分かったが,音質のほうはどうだろうか。
 VITALはヘッドセットではなく,その前段のサウンドデバイスなので,ここでのテストに,4Gamerが導入したダミーヘッドの出番はない。テストに用いる信号も,ダミーヘッドを用いたテストで使うピンクノイズではなく,最もピュアな波形であるサイン波を20Hzから24kHzまで滑らかに変化させた,いわゆるスイープ信号である。
 テストの流れは以下のとおり。空気を通らないテストなので,位相計測も行う。サウンドデバイスのところで位相がズレているようでは話にならないからだ。

  1. PC上のプレーヤーソフト「Foobar 2000」からこのスイープ信号を再生
  2. VITALからアナログ出力
  3. RME Audio製マイクプリアンプ「Quad Pre」へ入力してゲイン調整
  4. Pro Tools | HDXシリーズの「HD I/O 8x8x8」へアナログ入力
  5. 「Pro Tools HD Software」で信号を録音
  6. 録音したデータをPro Tools HD Software上で動作するWaves Audio製プラグイン「PAZ Analyzer」で表示し,周波数と位相を計測

 ここまで紹介してきているとおり,VITALはヘッドフォン出力とスピーカー出力の2系統があるので,両方でテストを行う。また,高域と低域の減衰や増幅に対応しているので,それぞれ±ゼロの状態と,最大まで増幅させた状態,最小まで減衰させた状態でも計測を行うことにした。

こちらがリファレンス波形
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 以下,テスト結果はスクリーンショットとキャプションで一気に見ていきたいと思う。
 波形スクリーンショットの右に示した画像は,それぞれ「得られた周波数特性の波形がリファレンスとどれくらい異なるか」を見たものだ。これは4Gamer独自ツールでリファレンスと測定結果の差分を取った結果で,リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

■ヘッドフォン出力,「TRE」「BAS」上下中央

周波数特性は見事としか言うほかない。リファレンスとの違いはほぼないといって言ってしまっていいだろう。超低域の16Hz以下は若干弱めだが,そもそも16Hz以下はCD-DAで再生されない帯域なので,問題はまったくない。細かく見ていくと,100Hz付近に若干大きめの乖離があり,そこから1.8kHz付近までは若干の乱れもあるが,それより上はきれいなものである。20kHz以上でも落ち込まず,位相も完璧だ
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■ヘッドフォン出力,「TRE」「BAS」いずれも+7

「TRE」「BAS」をそれぞれ+7して最大まで増幅し(かつレベル調整を行わなかっ)たときのテスト結果だ。「TRE」では700〜800Hzあたりからそれ以上,「BAS」では200Hz以下の帯域で,ざっくり15dBくらい増幅できるのを確認できた。なお,テストのため「最大」という極端な増幅を行っていることもあり,位相はさすがにズレている
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■ヘッドフォン出力,「TRE」「BAS」いずれも−7

「TRE」「BAS」をそれぞれ−7して最小まで減衰させ(かつレベル調整を行わなかっ)たときのテスト結果。高域では700〜800Hzあたりからそれ以上,低域では200以下で,約10dBの減衰を確認できる。16Hz以下はもっと落ちているが,「TRE」「BAS」を上下中央にしたときもそうなので,その影響を受けているのだろう。減衰なので,増幅時のように位相がズレたりはしていない
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■スピーカー出力,「TRE」「BAS」上下中央

ヘッドフォン出力時に近い,リファレンスとの差分があまり生じていない周波数特性が得られた。2kHz以下はむしろヘッドフォン出力時よりも乖離が少ないくらいだ。16Hz以下でやはり落ち込むのは共通だが,繰り返しておくと,この帯域がデジタルサウンド再生音質に影響することはない。なお,ヘッドフォン出力より出力レベルが小さく,周波数上の乖離が少ないのは,ヘッドフォン出力は内蔵のヘッドフォンアンプで,ヘッドフォン用に出力を増幅しているからである。増幅している分だけスピーカー出力より音量は大きく,一方で周波数の乖離は若干大きくなるわけだ
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■スピーカー出力,「TRE」「BAS」いずれも+7

テスト結果はヘッドフォン出力時と同じ。というか「TRE」「BAS」を実現するイコライザはヘッドフォン出力とスピーカー出力とで同じものと理解するのが正解だろう。ただ,ヘッドフォン出力のような「アンプを用いた増幅」がなされていないので,最大増幅しても位相はズレていない
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■スピーカー出力,「TRE」「BAS」いずれも−7

おおむね予想どおりの結果と言っていいだろう。基本的にはヘッドフォン出力時と同じで,かつ位相ズレもない
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ヘッドセットの音質傾向をダイレクトに味わえる,色づけがほとんどない出力品質


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 ヘッドセット出力を選択のうえ,「TRE」「BAS」を上下中央のデフォルト設定にして,Sennheiser Communications製ゲーマー向けヘッドセット「GAME ONE」と組み合わせてまず音楽を試聴してみると,GAME ONEの色というか味というか,音質傾向がかなりダイレクトに反映される印象を受けた。超低域も超高域もロールオフしておらず,不自然な強調もない。なので,何かからVITALへ乗り換えることで音質傾向がドカンと面白く変わることを期待していると,肩すかしを食らうかもしれない。おそらくそういう場合は「TRE」と「BAS」をそれぞれ2〜3段階増減させてやることで,好みの音になる可能性は高いだろう。
 筆者の試した限り,VITALの高域および低域イコライザは,2〜3段階くらいなら,とくに歪んだ感じにはならなかったので,この範囲で積極的に弄ってみるのはアリだと感じた。

 おそらくZOWIEとしては,VITALの存在感を消して,プロゲーマーが何かゲーマー向けヘッドセットを選んだとき,その音を素直に出せるというのを目標にしたのだと思う。それを踏まえて評価するなら,「ヘッドセットの音質傾向を楽しみたい,もしくは活用したい」「サウンドデバイスレベルの不自然な色づけは不要」「ただしノイズ混じりの低品質な音はNG」というタイプの人にいいのではないかという印象である。
 セルフパワー型USBサウンドデバイスの宿命で,ヘッドフォン出力は大音量とまでは言い切れず,出力の小さいヘッドセットだと音量に不満が出るかもしれない。ただし,通常の使用範囲に限って言うなら,Windowsのサウンドボリュームを最大にすれば,たいていのプレイヤーには十分な音量だと思われる。

Razer Surround Pro,今回の較正結果がこちらである。センターが少し左にズレているのは,テストしたときの筆者の耳の状態がそうだったという理解で構わない
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 「Razer Surround Pro」は,とくに問題なく掴むことができる。最低限,フロントスピーカーだけでもキャリブレーションすれば,十分にRazer Surroundの効果を確認できるはずだ。VITALでは超高域まで落ち込まず再生されていることの効果を実際に確認できるだろう。

 筆者は最近,「Fallout 4」のプレイヤーキャラクターがヘリコプターに乗り込んで移動するシーンと,「Project CARS」のリプレイをサラウンドサウンドのテストに用いているわけだが,まずFallout 4ではヘリコプターのローター回転音が秀逸だ。GAME ONEは低域の再現性を重視しつつ,Sennheiserブランドらしく中高域までしっかり再生できるヘッドセットだが(関連記事),VITALでは超高域成分が失われないため,GAME ONEでしっかりサラウンド感が得られるのだろう。

 Project CARSでは,後続車の「ガヤ」ノイズが後方定位するところや,左右の敵車を通り抜けるときの感覚などがしっかり感じられた。もちろんこれは「GAME ONEの特性が素晴らしいから」なのだが,GAME ONEに対し,超高域から超低域まで,変に色づけすることなくVITALが音を送れているからこそでもある。


入力時は高域と低域がロールオフし,位相がズレる


 続いてはマイク入力テストだ。基本的な方法は解説ページに準ずるが,VITALでは「空気を通す」必要がないことから,

  1. Pro Tools HDXでテスト信号を再生
  2. HD I/O 8x8x8でアナログ出力
  3. VITALのマイク入力でアナログ信号を受ける
  4. PC上の「Sound Forge 11」で信号を録音
  5. 録音したデータを(Pro Toos HD Software上の)PAZ Analyzerから計測

という流れになる。

 さて,テスト結果は以下のとおり。波形の見方は出力時と同じだ。
 出力が相当にフラットな特性なので,入力もそうだろう,なんて思っていたのだが,下に示したとおり高域と低域がロールオフ(roll off,減衰)する,かまぼこ型の周波数特性となった。なので,出力のように「素のまま」ではない。また位相は若干ズレている。つまり,VITALの入力はステレオ対応している。
 もっとも,位相ズレは「AntiPhase」の赤いエリアには入っていないため,「間違ってもライン入力として使うべきではないが,マイク入力なら問題ないレベル」ということになる。

上は3kHz以上,下は60Hz以下でロールオフする,かまぼこ型の形状だ。減衰していない部分はほぼフラットなので,意図的にこういう波形にしているのだろう。位相は若干ズレている
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 もう少し考察を加えてみると,オンラインでのボイスチャットにおいて有効な周波数はたいてい上限4kHzくらいまでであり,かつ,一般的な家庭の部屋は「ルームノイズ」と呼ばれる低周波ノイズが多く,低周波は邪魔なので,高周波と低周波を丸めてあるのだろう。
 もっとも,よくあるUSB接続型ヘッドセットのように「8kHzから上をばっさり」ということもなく,20kHz以上まで集音自体はできているので,音質的には有利だ。しかも2kHz以上は徐々に丸まっていく,よくあるUSBサウンドデバイスのように「4kHzでいきなりばっさりフィルタリングされ,ガサガサの音になる」ことがない。加えて高周波のノイズと感じやすい帯域は「徐々に下がっていく」ので,気になりやすい高周波のヒスノイズは目立ちにくくなる,という,なかなかよく考えられた設計になっている。

画像集 No.046のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
 マイク入力周りで純然たる品質以外に注意が必要なのは,おとなしめの出力と違って,入力音量がバカデカいことである。GAME ONEの場合,VITAL側の入力を半分以下,4〜5くらいにまで落とし,さらにWindowsのサウンドコントロールパネルから入力レベルを40に下げて,ようやく歪まないレベルにすることができた。正直,この極端な仕様について,ZOWIEは何らかの注意書きをどこかに示すべきではないだろうか。
 いずれにせよ,VITALを使っていて「ボイスチャット相手からマイク品質について文句を言われた」という場合は,VITAL側とWindows側の両方で入力レベルを3〜4割に下げることをお勧めする。


低遅延で素直なサウンドデバイスとしては大いに価値ありだが,やはりどこまでも価格がハードルか


製品ボックス外観
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 4Gamerのゲーマー向けヘッドセットレビューを継続的にチェックしてくれている読者には釈迦に説法だが,現在,ゲーマー向けヘッドセット市場の最先端では,猛烈な勢いで各社の開発競争が行われている。同程度の価格帯にあるオーディオ用ヘッドフォンと遜色のない出力品質を持つ製品も増えてきた。ただ,デジタル技術開発の結果としてUSB接続型ばかりになるかというとそんなことはなく,アナログ接続タイプのものも依然として多い。

 そこで問題になるのは,実のところサウンドデバイスのほうだ。2万円や3万円という,少なくとも安価ではない金額をゲーマー向けヘッドセットに投じても,組み合わせる先がいわゆるオンボードサウンドでは,実力は半分も出せない可能性が高いのである。
 もちろん,最近のゲーマー向けマザーボード上位モデルではサウンド出力品質自慢のものが増えてきたわけだが,ゲーマーの全員がマザーボードを指定できるわけではなく,ならサウンドカードはと言えば,小型のデスクトップゲームPCやノートゲームPCには物理的に装着不可能だったりする。さらに言えば,それこそZOWIEがターゲットとしているようなプロゲームシーンでマザーボードやサウンドカードを大会へ持っていくなどということは不可能だ。

画像集 No.044のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「VITAL」レビュー。世界初の「プロゲーマー向けUSBサウンドデバイス」は一般ゲーマーにも向くのか
 そこに出てきたVITALは,低遅延,ドライバレス,セルフパワーと,プロゲームシーンで「持ち込み機器としてレギュレーションに準拠しやすい」仕様になっており,それはそのまま,一般のゲーマーにとっても導入しやすく使いやすい仕様となっている。いい意味で「普通」の音質傾向なので,「変な味付けがなくて良い」と思うか「色気を欠く」と思うかは人それぞれだと思うが,とくにお気に入りのヘッドセットを持っていて,それをどんな環境でもベストな条件で使いたいという場合に,VITALの持つ完成度は,大きな助けになってくれるだろう。
 Windowsのサウンド設定回りに関する経験値がないと設定しづらいマイク入力音量は,初期値をもう少し適切な値にあらかじめ設定しておいてほしいが。

 そんなVITALの抱える最大の問題は,一にも二にも価格だろう。VITALの総合力は十分に価値があるものだと思うが,だからと言ってぽんと2万数千円をそれに支払える人は,正直,ほとんどいないのではないかと考えている。
 その意味でVITALは,これまでに登場したどのZOWIE製ゲーマー向け周辺機器よりもZOWIEらしい製品と言えそうだ。つまり,その価値に納得できる人にとっては間違いなく「いいもの」であるものの,一般受けは残念ながらしない製品ということである。
 あとせめて1万円安価なら,ゲーム用の標準USBサウンドデバイスとして相応に広く勧められたのではないかと思うのだが。

VITALをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)

VITALをパソコンショップ アークで購入する


ZOWIEのVITAL製品情報ページ(英語)

  • 関連タイトル:

    ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)

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