2020年6月23日,Intelの日本法人であるインテルは,報道関係者向けイベント「
インテル・プレスセミナー Q2’20」をオンラインで開催した。
このイベントは,四半期ごとにIntelおよびインテルの取り組みを紹介するもので,主な話題は新型コロナウイルス感染症の広がりに対して,Intelがどのような取り組みを行っているかと,今後登場するプロセッサの話であった。本稿では開発コードネーム「
Cooper Lake」として知られるサーバーおよびデータセンター向けCPU「
第3世代Xeon Scalable Processor」(以下,コードネーム表記)と,開発コードネーム「
Lakefield」として知られるSoC(System-on-a-Chip)「
Intel Core processors with Intel Hybrid Technology」(以下,コードネーム表記)の話題を紹介しよう。
インテル・プレスセミナー Q2’20では,Cooper LakeとLakefieldの紹介が行われた
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Cooper Lakeは,1システムあたり4〜8ソケットという大規模システム向けのプロセッサだ。Intelは,2019年8月の段階で56コア112スレッド対応製品の投入を予告していたが(
関連記事),今回発表となったラインナップでは,28コア56スレッド対応のCPUが発表されている。
Cooper Lakeの概要。4〜8ソケットというかなり大規模なシステム向けの製品となる
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対応チップセットが従来の「Intel C620」から新たに「Intel C620A」へと変わったことにより,CPUソケットも変更となったので,Cooper Lakeは第1世代および第2世代Xeon Scalable Processor(
関連記事1,
関連記事2)とピン互換ではなくなっている。
また,Cooper Lakeでは,深層学習向けの拡張命令セット「Intel Deep Learning Boost」において,新たな数値表現形式である「bfloat16」をサポートしたのが特徴であるという。
Intelは,これまでもXeon Scalable Processorにおいて,深層学習向けの拡張命令セットを取り入れてきた。Cooper Lakeでは新たにbfloat16をサポートする
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bfloat16は,値が正か負かを示す符号ビットが1bit,指数項を8bitとしたうえで,仮数項を7bitに簡略化した計16bitの数値表現形式だ。8bit整数演算(INT 8)よりも精度が高い一方で,32bit単精度浮動小数点数演算(FP32)よりも小さいので高速な処理が可能であるという。ちなみに,同じものをNVIDIAは,「BF16」と呼んでいる(
関連記事)。
bfloat16の演算に対応することで,CPUは深層学習の推論やトレーニングに必要な精度を持ちつつ,処理速度の低下を抑えることが可能であるという。Intelによると,bfloat16を用いた場合,第2世代Xeon Scalable ProcessorのFP32演算と比べて,推論処理で最大1.9倍,トレーニングの処理で最大1.93倍の性能向上を実現したそうだ。
bfloat16は,処理速度は早いが精度が低いINT 8と,高精度だが処理に時間がかかるFP32の中間に位置するという
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今後のロードマップについても,簡単に説明された。まず,2020年後半に1〜2ソケットのサーバー向けCPUとして「
Ice Lake」ベースのXeon Scalable Processorが,さらに2021年には,「
Sapphire Rapids」との開発コードネームで呼ばれる次世代Xeon Scalable Processor(以下,コードネーム表記)が登場する予定だ。Sapphire Rapidsの詳細は明らかになっていないが,「AMX」(Advanced Matrix extensions)という深層学習向けの新たな命令セットに対応するそうだ。
Xeon Scalable Processorのロードマップ
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一方のLakefieldは,2-in-1型PCやタブレット端末向けのSoCとなる(
関連記事)。Intelの3次元積層技術「Foveros」を用いて,異なる役割を持つロジックダイやDRAMを積層することで,チップやそれを搭載する基板の小型化が可能となる。
Lakefieldの概要
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Lakefieldは8インチサイズの小型製品にも搭載できるとのこと
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LakefieldのCPUコアは,Ice Lakeで採用する「Sunny Cove」ベースのコアが1基と,Atom系CPUで用いる「Tremont」ベースのコアが4基という非対称なマルチプロセッサ構成だ。処理能力が必要なときはSunny Coveコアが,それほど処理能力が必要ではない場合はTremontコアを用いることで,従来製品と比べて電力効率が最大17%向上したという。
CPUコアはSunny Coveコアが1基,Tremontコアが4基の5コア構成となる
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また,CPUとOSのスケジューラとの間で,情報をやり取りすることで,タスクの割り当てを最適化する機能も搭載しており,Webアプリケーションにおける性能が33%向上したとのことだ。
Lakefield自体は,高性能を重視するゲーマー向けPCへの採用を狙うものではないが,GPD WINシリーズやOneGxシリーズのような超小型ゲーマー向けPCに採用されたりすると,面白いPCが実現できるかもしれない。