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[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは
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印刷2011/08/16 17:49

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[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは

 ドイツのケルンでは,ゲームイベント「Gamescom 2011」が2011年8月17日(現地時間)にスタートする。それに先がけ,「Game Developers Conference Europe 2011」が8月15日から開催中だ。
 レクチャーや来場者の数は,サンフランシスコで行われるGame Developers Conferenceより少ないが,3日間にわたり,ゲーム開発者によるさまざまな講演が行われている。

 本稿では,その初日に実施されたレクチャーの中から,「From Box to Life! How to Prototype and Develop Creatures: Mass Effect 2 and 3 Case Study」の内容を紹介しよう。やたらと長いタイトルだが,その割にはかなり意味不明。「ボックスからライフへ」とはどういう意味だろうか?

Scylla Costa氏
画像集#001のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは
 講演を担当したのは,BioShockシリーズを制作するBioWareのDevelopment Director,Scylla Costa氏。同氏はブラジル出身で,MMORPG好きが高じてゲーム会社を設立したあと,ブラウザゲームなどを制作していたが,紆余曲折を経てカナダのBioWareで働くことになったという。
 「BioShock 2」PC/PlayStation 3/Xbox 360)ではプログラミングやツール制作,GUIの制作/調整,動作テストを,「BioShock 3」ではそれらに加え,キャラクターアート,アニメーション,ビジュアルエフェクトなど,ともかくいろいろなことを担当しているとのこと。それまで低予算のゲームばかり制作してきたCosta氏にとって,Mass Effectシリーズは,初めての“ビッグバジェットタイトル”なのだそうだ。

 そんなCosta氏による今回のレクチャーのテーマは,クリーチャーの制作について。説明するまでもないと思うが,クリーチャーというのはシェパード少佐やミランダ ローソンのことではなく,さまざまな形や能力を持った宇宙人達のことだ。
 Costa氏によれば,「Mass Effect 2」PC/PlayStation 3/Xbox 360)に登場するクリーチャーは,以下のような手順で作られたという。

コンセプト→キャラクターアート→アニメーション→ゲームプレイ→ビジュアルエフェクト→オーディオ

画像集#002のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは

 ゲームに限らず,ソフトウェア制作は果てしない反復作業の連続になる。クリーチャーにアニメーションまでつけて,実際のゲームに登場させたところ,マップの地形になじまないとか,戦闘シーンで迫力に欠けるといったケースが生じ,一から作り直すことも珍しくないそうだ。
 キャラクターアートやアニメーションの段階では迫力満点で,「これはいける」と思っても,屋内にある傾斜路で天井などに引っかかって坂道をうまく上れないためボツにせざるを得ないなどの例も多いという。

制作されたものの,Mass Effect 2では使用されなかったクリーチャーの例
画像集#003のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは 画像集#004のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは

 そこでCosta氏は,「Mass Effect 3」PC/PlayStation 3/Xbox 360)の開発にあたり,前作と異なるアプローチをとることにしたという。
 しかし,大きなプロジェクトということもあり,手法自体を変えることには難色を示すスタッフも多かった。考え方がつい保守的になり,無批判で以前のやり方に固執してしまう傾向が見られたそうだ。

画像集#008のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは
 Mass Effect 3で採用されたのは,今回のレクチャーのタイトルにもある「プロトタイプを作る」という手法だ。どんな手法か説明しよう。
 まずは前作と同様,「クリーチャーバイブル」が用意された。これは,各クリーチャーの細かい設定を書き記したもので,例えば,そのクリーチャーのバックグラウンドや,属するクラン(同じクランのクリーチャーには統一感を持たせる必要がある),戦闘スタイル(突撃型/遠距離攻撃型など)といったデータが含まれる。
 その後,クリーチャーバイブルに基づいてラフスケッチが描かれた。

 次に,プロトタイプの制作フェーズへ。
 プロトタイプは,長方形を組み合わせることでクリーチャーの形をざっくりと表したもので,それがクリーチャーであることすら分からないくらいシンプルな形状だ。ちょうど,テクスチャを取り除いた,「Minecraft」のキャラクターみたいな感じである。
 ここでCosta氏が紹介したムービーには,Mass Effect 2で使用されているシェパード少佐のキャラクターモデルが,角ばったクリーチャーとバトルを繰り広げるシーンが収められていた。

画像集#005のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは 画像集#006のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは

 見た目にはちょっとシュールだが,このようなプロトタイプをマップ内に登場させるだけで,そのクリーチャーがどう動き回り,どう攻撃/防御するかが十分確かめられるという。クリーチャーには,近接攻撃を繰り出すものや,分身するもの,防御用の盾を携えたものなどがおり,プロトタイプを用意すれば,デザインを作り込む前にそれぞれの動きが確認できるのだ。
 BioWareでは,移動,攻撃,防御といった動作別にキャラクターのモーションを検証したあと,最終的にはそれらをひとまとめにして,動きに問題がないか,プレイして面白いかといったことを確認しているという。

 その過程では,もちろん,実際のマップを用いてのテストも繰り返し行われている。Costa氏は,「マップデザイナー達は,自分が苦労して作り上げたマップで,シェパード少佐が箱みたいなクリーチャーと戦っているシーンを見るとショックを受けてしまう。だから,デザイナーが見て確認する段階では,ある程度モデリングを進めたものを使ったほうがいいだろう」と述べていた。どこまでが冗談なのか,ちょっとよく分からなかったけど。
 ともあれ,プロトタイプを作る手法を採用したことで,以前と比べてシステマティックに作業が進められるようになったとのこと。スタッフ自身,作業の進捗を確認しやすいため,モチベーションをキープできるというメリットもあるそうだ。

プロセスの進捗が容易に分かるようになり,スタッフの士気も上がったという
画像集#007のサムネイル/[Gamescom]「Mass Effect 3」のクリーチャーはこのようにして作られた。前作の反省を生かして生み出された,新たな開発手法とは

 なお,各クリーチャーの細かいデザイン作業はプロトタイプによる検証と並行して進められ,次のフェーズで,そのデザインのクリーチャーモデルが「ラフクリーチャー」としてゲーム内に登場することになる。
 このフェーズに入るまでに,各クリーチャーのアニメーションや行動パターンなどはすべて決定済みなので,問題はほとんど起きないという。そして,このフェーズを無事通過したクリーチャーモデルに磨きをかけ,完成させるわけだ。

 さて今回,Costa氏の講演を聞き,3部作の最終章である本作にかける並々ならぬ気合いが感じられた。
 欧米では,Mass Effect 3のリリースは2012年3月に予定されており,遊べるのはまだずいぶん先となるが,今から待ち遠しい限りだ。

「Mass Effect3」公式サイト

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