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  • Mojang
  • 発売日:2011/11/11
  • 価格:19.95ユーロ
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結局のところ「Minecraft」とは何だったのか? 数々の常識を打ち破ったモンスタータイトルが指し示す,ゲームのこれまでとこれから
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印刷2013/12/27 00:00

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結局のところ「Minecraft」とは何だったのか? 数々の常識を打ち破ったモンスタータイトルが指し示す,ゲームのこれまでとこれから

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 PCゲームに興味のある人なら――そして,もしかしたらPCでゲームを遊んでいない人でも――誰でも知っているメジャータイトル,それが「Minecraft」だ。Mojangというちょっと聞き慣れない会社から発売されているこの作品は,PC版Xbox 360版,モバイル版(iOS/Android)ともに1000万本オーバーの販売数を誇っており,これだけを見ても,なまじなビッグタイトルでは太刀打ちできない。

 最初の開発版が公開されたのが2009年,しかも日本でも大きなムーブメントを生み出している作品に対して若干,今さら感も漂うものの,Minecraftの概要を改めて紹介しつつ,「ゲームのこれまでとこれから」を重ねて見ていくことにしよう。

「Minecraft」公式サイト

「Minecraft - Pocket Edition」(iOS版)ダウンロードページ

「Minecraft - Pocket Edition」(Android版)ダウンロードページ



オープンワールドでものづくりとサバイバルを満喫


 Minecraftは,簡単に言えば「一定のルールの中で,自分がやりたいことをする」系のゲームである。いわゆるオープンワールドと言われるタイプのゲームだ。画面は3Dで,操作もW/A/S/D移動+マウスルックという標準的もの。だが,Minecraftにおいてプレイヤーができること,なすべきことは,普通のオープンワールド系ゲームとは少し違っている。

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 Minecraftには,明白なゲームの目的はないと言っていい。どこかにいる魔王を倒せばゲームクリアとか,そういうシナリオ的なものもない。プレイヤーは自由に世界を移動し,自分のやりたいことをして,自分の作りたいものを作ればよい。

 しかし,そんなMinecraftにも,2つの大きな縛りがある。それは「時間がリアルタイムで経過すること」と,「時間の経過にしたがって,キャラクターが空腹になる」ことだ。つまりMinecraft世界において「これをしなくてはならない」という目標はないにしても,「なるべく飢えないようにしなくてはならない」という目標はある(とはいえ,餓死はしないし,死んでもリスポーンするゲームなので,ゲームオーバーはない)。

 なおゲームモードによっては,「そもそも死なない」「死んだらロスト」といった,さまざまな設定が可能となっている。



世界のほぼすべてに干渉可能


 Minecraftの大きな特徴は,世界がすべて,同じ大きさの立方体ブロックによってできている,ということだろう。画面写真を見てもらうのが一番だが,イメージとしては「全部が積み木でできた世界」を想像してもらえば分かりやすい。

 そしてMinecraft世界に存在するあらゆるブロックに対し,プレイヤーはなんらかの干渉ができる。木や土,岩といったものであれば切ったり掘ったりできるし,水や溶岩といったものは流路を作ることで流れをコントロールできる。

分かりにくいが木を伐採しているところ。最初は道具を持っていないので,素手で幹を伐採している
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 そうやって世界から手に入れたものを,再構築することも可能だ。土や岩のブロックを掘削すると,アイテムとして「土」「岩」といったものが得られるのだが,それを再配置できるのである。これによって,単純な形の家などを作ることが可能だ。

 また一部の素材は,加工することでほかのアイテムに作り変えることもできる。
 例えば木材と石を組み合わせて石斧を作れば,伐採の効率は大きく上昇する。あるいは木材を組み合わせてドアを作ったり,岩を組み合わせて石の階段を作ったりすることもできる。

先ほど伐採した木を使って作業台を作り,作業台で「木のツルハシ」を作る
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 このように,道具を作り,建材を作り,世界をより「自分にとって居心地の良い場所」に変えていくこと,またそうやって広がる世界をひたすら探索していくこと,これがMinecraftの大きな楽しみと言える。


世界は地下にも広がっている


 さて,Minecraftと言うだけあって,「穴を掘る」ことは,このゲームにおいて重要な位置を占める。というのも,石や土,木材であれば地表をうろついているだけでも手に入るが,鉄や金銀となると,地中深く掘り下げなくては見つからないからだ。鉄の道具を使うと正直効率がまったく違うので,できればやはり鉄くらいは掘り出したい。かくしてプレイヤーは穴を掘るのである。

 が,安心していただきたい。Minecraftにおいて,穴を掘るというのは,単純作業からは程遠い。なぜならMinecraft世界には地中にいくつも洞窟が隠れており,そこには報酬と危険が詰め合わせになっているからだ。

洞窟の中はこんな感じ。松明をあちこちに立てているので照明の確保は十分
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 報酬は鉱石だとして,危険とは何か? Minecraft世界にも,ちゃんとモンスターはいるのである。彼らはプレイヤーを見つけると攻撃を仕掛けてきて,きちんと武器などを作って準備をしておかないと,最悪死ぬことになる。

 そもそも死んでもリスポーンできるから……と思うかもしれないが,Minecraftの洞窟探検はなかなかスリルがある。モンスターも危険だが,溶岩や水,そして「落下」という危険があちこちに潜んでいる。鉱石を見つけて床を掘り進んでいたら,その下に広がっていた空洞の天井を掘り抜いて転落,ということも珍しくはない。

こちらはダイヤモンド。非常に深いところまで潜ると,こういった貴重な資源を発掘できる
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 また地下は基本,暗闇の世界(当たり前)なので,松明の準備が必要だ。松明は石炭と木材から作れるが,松明が照らす範囲はあまり広くない。このため,暗闇の中を松明を置きながら進むドキドキ感は,十分に堪能できる。


汝の欲することを為せ!


 もう一つ,Minecraftで重要なのは「時間がリアルタイムで経過する」ということ,そのものである。そしてMinecraft世界には,昼と夜がある。夜になると危険なモンスターが地表も徘徊するようになるので,安全なシェルターを作っておくことはとても大事だ。

 とはいえ,最初から気張って大きな家を建てる必要はない。とりあえず最初は松明の材料となる石炭を探しつつ,夕闇が迫ったら適当な岸壁なり山肌なりを掘削,小さな横穴を作って,そこで夜をしのぐといいだろう。

愛しの我が家。殺風景だが,とりあえず実用的
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 また,Minecraftには「絶対にこうでなくてはならない」という遊び方は存在しない。世界の探索に重点を置くのであれば,釣りで食料を確保しながら,家財道具一式を持ってひたすら世界を旅するのもいいだろう。それこそ,夜が来るたびに小さなシェルターを掘って,持ってきたベッドに横になって朝を待てばいい。

 一方,あくまで一か所に定住し,家を大きくしていくのも手だ。この場合,初期の食料となる豚などは徐々に数を減らしていくので,牧畜や農耕に手を伸ばし,豊かな食生活を堪能してもよい。

豚を追う。肉じゃ,肉をよこせ!
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 最終的には,行こうと思えば異世界的なところにも行ける。ただこれは,行かねばならないというものではない。まあ,一生に一度くらいは観光旅行がてらにいいんじゃないですかね,目的がまったくなくなっちゃうのもアレだし,という程度であって,何が何でも極限状態に突入して,そこで生存を模索するべきゲーム,というわけではないのだ。

 なおオンラインマルチプレイも可能で,これはこれで別の面白さがあるので,友人がMinecraftを持っているのであれば,ぜひ一度体験してみてほしい。


集合知を駆使したいゲーム


 ここで,一つ重要な注意をしておきたい。Minecraftには,懇切丁寧な「こうしましょう」的なガイドは存在しない。確かに飢えるし,モンスターに殺されたりもするが,それでゲームオーバーになるわけではないので,「死んで覚えればいい」のである。

 ……というだけだとかなり苛酷なので,最低限,どうやったら松明を作れるのか,どうやったらより多彩なアイテムを作るために必要な作業台が作成できるのか,といったところは,Wikiやプレイ動画などを見て把握しておいてもいいだろう。そこから全部自分で模索するというのは,ちょっと無駄にハードルが高い気がする。

思わぬところで死ぬこともしばしば。死ぬと装備を失うのが痛いといえば痛い。上等な装備を使っているときは,とくに注意したい
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 そのうえで,ゲームに慣れてきたら,積極的にMODを使っていきたい。もちろんMODなしでもMinecraftは楽しいゲームだが,不満を感じる部分がないではないし,「こんなのがあったらなあ」「せめて自分のキャラはもうちょっと何とかしたいなあ」という欲求も出てくる。そういった不満はほぼ100%,MODで解消できるはずなので(極端に特殊な不満でない限り),イライラする前にMODを探すようにしたい。
 なお,MODの導入にあたっては,どんなに簡単なMODであっても「自己責任」の4文字を忘れないようにしたい。また「セーブデータの複製と退避」もおすすめだ。

 製品の種類についても補足しておこう。
 基本となるのはPC版と考えていい。PC版にはクラシック版,体験版,製品版があり,クラシック版は無料で遊べる(ただしバージョンが非常に古い)。体験版は製品版と同じ仕様だが,プレイ時間が制限されている。製品版はダウンロード販売となっており,購入にはクレジットカードかPayPalアカウントが必要だ(Vプリカも使用可能)。そのあたりが大変という人であれば,ギフトで贈ることも可能になっているので,購入できる人に頼んでみるのも手だ。
 コンシューマ向けとしては,PS3とXbox 360でリリースされているほか,PS4,Xbox One,PS Vitaなどでも開発が告知されている。加えて,スマートフォン/タブレット用に,「Minecraft Pocket - Edition」がAndroidとiOSの両方でリリースされている。



インディーズゲームの勃興


 さて,Minecraftはこの数年における「ゲームのあり方」に,大きな影響を与えてきた。無論,何もかもがMinecraftに由来しているわけではない。むしろ時代の潮流そのものが変化していることに対して,そこに(結果論的に)最もうまく乗ったのがMinecraftだった,という側面は大きいだろう。だが少なくとも,Minecraftがゲーム産業における新しい試みの,大きな成功事例となったことは間違いない。

 まず最初に言えるのが,インディーズゲームとしてのMinecraftである。
 インディーズゲームという言葉は,最近日本でもよく聞くようになってきた。PS4やXbox Oneがインディーズゲーム市場を取り込みに向かっているという傾向は明白だし,2013年のGDCを席巻した「風ノ旅ビト」はインディーズゲームであると理解されている。とはいえ,インディーズゲームとは何なのだろう?

「風ノ旅ビト」
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 インディーズゲームとは何か,というのを厳密に定義するのはいささか難しい。そもそも「インディー」の定義自体が結構ふわっとしていて,そこには「大手に属していない」「独立性が高い」といった言葉が並ぶ。では「大手ってどこからが大手なの?」「独立性が高いというのは,どこからなの?」という話になると,具体的なボーダーラインは見えてこないというのが実情だ。

 ただとりあえず日本では,「個人または小規模な集団」のうち,「法人ではないもの」が作った作品を,インディーズゲームと称することが多い。世界的に見ると「法人ではないもの」という規定が外れて,小規模開発された独創的なゲーム全般を指すのが一般的だ。

 ともあれ海外で最も権威のあるインディーズゲームフェスであるIndependent Games Festival(IGF)においても「インディー魂があること」が重視されており,とりあえず全世界的に見て,割と「ふわっとした」言葉であると言える。「同人ゲームとインディーズゲームはどこが違うのか」といったところを厳密に議論しても,おそらく状況の変化の速度が,議論の速度を追い越すだろう。

 インディーズゲームが注目されるようになった過程は,ゲーム産業が巨大化していった過程と軌を一にする。
 コンピュータの処理能力が向上し,より手の込んだ演出やゲームギミックを組み込めるようになっていったことで,「ゲームを作る」という事業に必要となる予算はどんどん大きくなった。近作で言えば「Grand Theft Auto V」PS3/Xbox 360)は制作費と宣伝費に合わせて2億6500万ドル(約275億円)を投入しており,これは普通の映画が必要とする予算を大きく上回っている。

「Grand Theft Auto V」
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 当然ながら,これだけの大事業となれば,「完成してみたらクソゲーでした」は許されない。責任問題である。となると,どうしてもゲームの内容は「より多くの人に楽しんでもらえる」ことが大前提となる。

 また制作チームも巨大になるので,そのチームに属する一人がゲーム全体に与える影響は小さくなりがちだし,その能力の発揮のされ方は一定の統制のもとになくてはならない。つまり,クリエイターとしての個々のスタッフが,それぞれ「ぼくのかんがえた最高のゲーム」のパーツを作る,というわけにはいかない。そんなことをすれば,ゲームはたちまち支離滅裂なものになってしまうだろう。

 こういった動きの中で,インディーズゲームは必然的に一定の注目を集めていく。これは当たり前のことで,インディーズゲームは本職のゲーム開発者が副業として制作を進めることも珍しくないくらいの小規模開発であり,それゆえ発表点数も多い。そして「数撃ちゃ当たる」ではないが,発表点数が多ければ多いほど,そこに当たりが含まれる可能性は高くなる。かくして結論部分だけを見れば,「低予算で,十分にヒットする作品」の沃野として,インディーズゲームという市場が開けることになる。

 と同時に,そこにはIGFが掲げる「インディー魂」の存在も無視できない。「一般的に言えば,このゲームは売れない」という正しい推測ではなく,「こういうゲームを作るのだ」というデザイナーの強烈な意思によって作られたゲームは,大規模制作ゲームにはない面白さを持つことも多い。そういった型破りな面白さは,大規模開発によって「ゲームの型」が提示されればされるほど(そしてその「型」が実際に面白ければ面白いほど),輝きを増す。


 さて,ここでインディーズゲームの歴史を一から振り返ると,いつまで経っても現代にまで辿り着かないので割愛するが,インディーズゲームのここまでの道のりは,必ずしも平坦なものではなかった。

 日本の場合,かつては「マイコンBASICマガジン」を基盤とした巨大なサンデープログラマー層が存在した。また同時期には,さまざまな形でそういったアマチュアプログラマーの作品を発表/共有する場を作っていく試みもなされた。
 だが,PCに押し寄せた「Windows」の波が,多くのサンデープログラマーの趣味から,プログラミングを奪っていった。それまで多くのサンデープログラマーは,日本のPCメーカーが独自に作った規格の上でゲームを制作していた。それに対して初期のWindowsは,お世辞にもゲームが作りやすい環境ではなかったのだ。

 しかしながら,Windowsは日本のPCプラットフォームを席巻し,サンデープログラマー達は「新しい環境をゼロから勉強しなおすか,広く共有されるような作品を作ることは諦めるか」の二択を迫られることになる。
 その後の日本の同人ゲーム市場は,「月姫」「ひぐらしのなく頃に」のようなノベルゲーム,あるいは「東方Project」を頂点としたシューティング,またはFlashを使ったミニゲームなどが大きな力を持つに至った。また,さまざまな「簡単に使える高級言語」が発表され,Windows上におけるプログラミングのハードルも下がってはいる。

 しかし「マイコンBASICマガジン」時代に見られた「コンピュータはゲームを遊ぶためのものではなく,作るためのもの」という発想は,「でも実際に作るのは難しい」という,ぶ厚い現実の壁を前に,広く受け入れられることはなかった。残念ながら日本においては,一般的に言って「ゲームを遊ぶ」の次の段階が「ゲームを作る」であり,そのあいだに横たわる隔絶は,どんなに言い繕っても小さなものではないのだ。

 海外の事情は,これとはやや異なる。
 海外においてもやはり,Windowsでゲームを作るというのは決して簡単なことではなかった。だが20世紀の終わり頃から,欧米を中心として「既存のゲームを改造する」,いわゆるMOD文化がブレイクする。

「Counter-Strike」
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 この最も顕著な例が,「Half-Life」の巨大MODである「Counter-Strike」だろう。ゲームをゼロから作るだけの技術を持たない人にとっても,絵を描けるならテクスチャMOD,音楽が作れるならサウンドMOD,レベルデザインに自信があるならマップMODと,「ゲームを作る」という文化に接触できる機会は大きく広がった。「ゲームを遊ぶ」と「ゲームを作る」のあいだに,「MODコミュニティに参加する」というステップが確立したのだ。
 このことが「ゲームを作る」というコミュニティに与えた影響は,非常に大きかった。ピラミッドの中間層が形成されたため,「その上」を目指す人口もまた増えたのである。

 だがその一方で,別の問題もあった。簡単に言って,カネの問題である。
 IGFは1998年に始まっているが,最初の数年のあいだに集まった作品は,あまり出来の良いものではなかった。なんのかんのでゲームを作るには結構な手間暇がかかるわけで,作ったところでまるでカネにならないとなると,「作ってみる」ことはできても,「作り続ける」のが難しい。しかも,たとえ良い評価を受けていざ販売ということになっても,あっというまに違法コピーがネットにあふれ,製品版はまるで売れないということも珍しくなかったのだ。

 この問題は,Steamなどのダウンロード販売サイトが,インディーズゲームを扱うことによって変わっていった。いくつかの成功例によって「インディーズゲームもお金になる」ことがはっきりした段階で,インディーズゲームは現在につながるルートをようやく確保したと言える。

 Minecraftは,「インディーズゲームはカネになる」という成功事例だ。実に生臭い話で恐縮だが,3000万本という販売本数は,「インディーズではどんなに頑張っても限界がある」という説を一蹴するに十分な数だろう。
 もちろん,そこには「インディーズゲームだから成功した」のではなく「Minecraftだから成功した」というロジックが隠れているのだが,それはそうとして「大手メーカーが,有力な広告代理店と組んで仕事をしなくては,ミリオン達成など不可能」という話を否定するには十分なデータだ(ただしこれは「可能」という話であるに過ぎないが)。


MODコミュニティという資産


 Minecraftを語るにあたって,MODを抜きに話を進めることはできない。
 もともとMODという文化そのものは,前述のとおり,「Counter-Strike」の頃には明白な流れとして顕在化していた。多くの作品がMODを受け入れ可能なように設計され,SDK(Software Development Kit)が配布されるのも珍しいことではない。

 Minecraftはそれそのままでも楽しめるゲームだが,MODを導入することで遊び方の幅が大きく変化する。ファンタジー系の要素(魔法など)を追加したり,現代的な乗り物や武器を追加したり,SF要素を足したり,それらをミックスさせたりと,自由自在だ。

 またゲームの操作性について不満があるなら,UIを改善するMODも多い。ゲームバランスに疑問があるなら,バランス調整MODもいくらでも見つかる。あのアイテムがない,この装備がないといった問題は,ほとんどの場合,MODを探せば見つかると思っていいだろう。


 日本のPCゲームはいまだMODに対して閉鎖的な作りであることが多い。またMODによる改善を「本来はデベロッパが提供すべき機能であり,ゲームを未完成なまま売っている証拠」と批判する筋も,時折見かける。だが,プレイヤーの不満を究極まで追い詰めていくと,それは結局,個人的な欲求である。「MODを導入すれば解消する」のと,「デベロッパに頼むしかなく,頼んだところで絶対に叶えられない」のとでは,どちらのゲームが選ばれるかなど考えるまでもない。

 ……というMOD全般の話はさておき,MinecraftのMODには大きな特徴がある。ほかの作品よりも圧倒的にMODが作りやすいのだ。

 MODにはさまざまな種類があるが,筆者の個人的な感想としては,最も簡単に手が出せるのがスキンMOD,いわゆる「グラフィックスの改造」である。3Dポリゴンのキャラクターを改造するとなるとモデリングの知識が必要そうだったり,いろいろ厄介に思えるが,テクスチャの貼り替えに限れば,ちょっとしたグラフィックスツール(フリーウェアで十分)が使えれば,作業的にはかなり簡単なのだ。

 Minecraftの場合,世界はすべて正方形のポリゴンである。これはスキンMODを作る人間にとっては非常にありがたい話で,原型となるモデルへのフィッティング作業の手間は最小限で済む。またスキンはエディタも配布されており,「とりあえずちょっといじってみる」のも容易だ。

 また,本格的なMODの作成(アイテムを追加するなど)に関しても,非常に充実したマニュアルがあるのがありがたい。MODは導入するだけでも結構イバラの道になることがある(セーブデータのバックアップなどは必ずとっておきたい)が,作るとなるとイバラ度はもう一段階アップする。
 だがここで先人達のノウハウが調べ放題,盗み放題となると,難度はぐっと下がる。Minecraftの場合,「一般的なMODを作るためのエディタ(API)」まで存在しているので,いよいよ自分好みのMODが見つからないときは作ってしまうという選択も,ほかのゲームとは比べ物にならないくらい簡単だ。

 ゲームにとって,MODコミュニティは重要な資産と言える。なにしろデベロッパから見れば,黙っていてもゲームを改良してくれるボランティアの集団なのだ。ゲーム開発のコストのほとんどは人件費であり,もしそこで世界中の有志が個々の時間を持ち寄ってゲームを改良してくれるのであれば,その費用対効果は計り知れない。
 プレイヤーにとってみれば,MODがどれくらい充実しているかは,PCゲームを選ぶにあたって重要な要素となりうる。ゲームを自分好みにカスタマイズするというのは,それそのものが楽しいことだ。

日本人プレイヤーによる活発な交流が行われている「マインクラフト 非公式日本ユーザーフォーラム
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 もちろん,MODにも問題はある。開発側にとってみれば,ゲームの内側に手を出されるというのは,そのまま違法コピーにもつながりかねない危うさがある。また「どんなMODが発表されるか」がコントロールできない以上,ユーザーから「MODを導入したら,御社のゲームが起動しなくなりました,どうなっているんですか!?」という苦情が集まってくる可能性も否定できない(というか実際に日本では過去そういう事例が多発した。日本にもゲームに「エディタ」がついていたり,「ゲーム改造」という趣味があったりした時代は,確かに存在したのだ)。

 また,これはMODに関してしばしば楽天的な誤解をされる部分だが,「MODが作れる環境を用意すれば,そのゲームをみんなが遊んでくれる」というのは,まったくもって本末転倒な発想である。MODコミュニティが形成されるゲームは,MOD作成が容易なだけでなく,「そもそもそのゲームが面白い」のが大前提だ。遊んで面白くないゲームに,MODを提供しようという人が大挙して押し寄せることは,まずあり得ない。

 ちなみに個人的には,ゲームのストリーム配信が普及したら,MOD文化はどうなるのだろう,という点には非常に興味がある。最近では欧米生まれのゲームにもMODを拒絶する作品が散見されており,MOD文化の今後については予断を許さない空気が漂っている。
 「ゲーム制作の登竜門としては,MODではなくゲームエンジンが代替する」という見方もできるが,現状,ゲームエンジンを使ってゲームを作る難度は,スキンMODをポツポツ作って楽しむ難度に比べると,圧倒的に前者のほうが高い。


変化する「ゲームの遊ばれ方」


 Minecraftは,プレイヤーの創造力を問われるゲームである。多くのプレイヤーが巨大な建造物を作り,MODを利用してさまざまな乗り物を作り,中には機械式のコンピュータを作ってしまったプレイヤーもいる。こういった「作品」は,しばしばYouTubeなどで動画として共有され,世界の多くのゲーマーを驚かせてきた。


 この「ゲームの成果(ないしプレイ)を,ゲームの外で共有する」という文化は,かつてはハイスペックなPCを持つユーザーの特権だったが,PCの性能が全般に向上したこと,需要の増加によって操作の簡単な機材やアプリが市場に出てきたことなどにより,比較的一般的な「ゲームの楽しみ方」になりつつある。

 ちょっと変わったところでは,硬派で知られる「World of Tanks」もリプレイモードを有しており,自分のプレイを独立したデータとして記録して,あとから再生が可能だ(再生した状態で録画ソフトを動かせば,PCのスペックが多少低くても,ゲームプレイそのものに影響を与えることなく,プレイ動画が作成できる)。

「World of Tanks」
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 こうした,いわば新しいゲームの楽しみ方の一つの極にあるのが,いわゆる「ゲーム実況」だろう。ニコニコ動画を中心に,Ustreamなど多くのネット生中継メディアでユーザーが配信する「ゲーム実況」は大きな人気を集めており,固定ファンがついている実況者も多い。
 新しいものに対しては常にそんなものだが,この「ゲーム実況」という文化には,賛否両論が渦巻いている。が,個人的にはこの流れは,好き嫌いに関係なく,もう止められない流れであると思う。

 というのも,カジュアルなゲームファン(失礼ながら4Gamerを読まないような「ゲームが好き」な人)がゲームを遊ぶ時間は,年々短くなっているからだ。2010年頃の統計で,いわゆるAAA級のビッグタイトルがプレイされる平均時間は,30分から1時間であることが分かっている。多くのプレイヤーは,長くても1時間程度プレイした段階で,そのゲームに満足するのだ。
 この傾向は,別の側面からも観測できる。モバイルソーシャルゲームのプレイ時間はこの典型で,7〜8分を1回のアクセスとして,1日に5回程度のプレイというのが,2012年頃の統計だった。連休はゲーム三昧だ! 食事とトイレ以外はひたすら遊ぶぜ! というプレイヤーは,あくまで少数派なのである。

 そして同じ頃に注目され始めたのが,例えば「ゲーミフィケーション」といった技術である。ゲーミフィケーションはゲームそのものではないが,ゲームの技術を用いて,より社会を円滑に駆動させるという発想だ。しかし,これはゲーム側から見れば,「ゲームを遊んでいないのに,ゲームのように楽しい」エンターテイメントの可能性を示唆する。つまり,「ゲームを遊ぶ」ための時間が短くなり続ける中,次に大規模に普及するのは,「“遊んでいる時間がゼロ”なゲーム」なのではないか,という推測が可能なのだ。

ゲーミフィケーションの先駆けとも言われる「Foursquare」。位置情報とゲームを結びつけたサービスで,さまざまなスポットにチェックインすることでポイントやバッジなどがもらえる
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 筆者的には,長らくそれがどんなゲームなのか,想像もできなかった。だが,考えてみればゲーム実況は,「ゲームを遊んでいないのに,ゲームを遊んでいるように楽しい」エンターテイメントとして成立している。
 ゲーム実況を見る場合,実況画面に集中している必要はない。同じPCでほかの作業をしながら,あるいはスマートフォンで実況を流しつつ本を読みながら,といった「ながら」視聴が可能で,それで十分に楽しい。それこそ,携帯ゲーム機でほかのゲームを遊びながら,スマートフォンでゲーム実況を聞く,ということすらできる。

 現状,ゲーム実況はまださまざまな混乱の中にある。ノベルゲームをまるまる実況してデベロッパに訴えられるといった極端な事例もあれば,実況者に対する人気が先走りしているのではという批判も見られる。また,実況をどうやって「目に見えるお金」に変えていくのか,という点がクリアされなければ,ゲーム実況が本当に「プレイ時間ゼロのゲーム」として普及することはないだろう。

 だがこの点については,現実が2つほど先んじている。
 まずそもそも,日本の代表的プロゲーマーである高橋名人は,ゲームの腕前もさることながら,「ゲームの面白さを伝える」プロであるということ。プロゲーマーという概念が根付きにくい日本だが,ゲーム実況者は日本における最も一般的なプロゲーマーとして普及していく可能性がある。

 次に,PS4の「Share」ボタン。このボタンによってワンタッチでUstreamに配信された「実況」は,すでに延べ時間で数十年単位に及ぶという。ゲーム実況は日本固有の文化などではまったくなくて,「やれることなら誰もがやってみたかった」ことだったのだ。ましてやこれがゲーム実況文化を一定レベルで育成してきた日本に導入されれば,その効果はどれほどのものとなるか。

PlayStation 4のShare機能
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 Minecraftは,ゲーム実況においても大きなポジションを占めてきた。ニコニコ動画の実況でMinecraftを知ったという人も,決して少なくはないだろう。またニコニコ動画は小中学生の視聴者が多いため,Minecraftが小中学生に普及しているという見解もある。
 この「実況による広告効果」は,これまでは基本,実況者が訴える「効果」であったと言える。そして実際のところ,宣伝効果があるかどうかは,製品の権利を持っている側が決めるものだ。

 だが今後,ゲーム実況は「宣伝」という枠組みを越えたところで発展していく可能性を持っているように思う。そしてそれは,決して日本に限らない。YouTubeでMinecraft動画が人気を博するように,世界中で「実際には遊んでいないのに,ゲームを遊んでいるかのように楽しい」エンターテイメントとしてのゲーム実況が,受け入れられていく素地はある。あとは,これをどう「目に見えるカネ」にできるか,であろう。


ゲームが面白ければこそ


 Minecraftは,これら以外にも,さまざまなムーブメントにおける「成功例」として記録されている。
 例えば,Minecraftは古典的なスタイルのFree-to-Playゲームである。これは現状も同じで,機能制限されたバージョンであれば,Minecraftは無料でプレイできる。ゲーム内課金で機能をアンロックできるのか,それとも「完全版」を購入するのか,そういうシステムの違いであると考えることは可能だ。

 またMinecraftは,「ゲームは,ゲーム産業の中心地で作られたものだけがヒットする」という既成概念を破壊した,一つの象徴でもある。
 Minecraftを作った“Notch”ことMarkus Persson氏はスウェーデン人であり,Minecraftはスウェーデンで作られている。今でこそスウェーデンはPCゲーム産業の中心地の一つだが,その背景にはスウェーデン政府がMinecraftの成功を見て,政策的/財政的なシフトを行ったという背景がある。

 もはやゲームは「世界のどこで作られているか」を,まるで問題としない。「Clash of Clans」iOS/Android)で世界的なヒットを飛ばしたSupercellはフィンランドの会社だし,「風ノ旅ビト」を作ったthatgamecompanyは中国のデベロッパだし,東欧発のゲームエンジン「Esenthel Engine」が業界人の注目を集めたりもする。

「Clash of Clans」
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 しかしここには,絶対に欠かせない視点が一つある。それは「これらはすべて,Minecraftが面白かったからこそ」という視点だ。
 Minecraftはインディーズゲームにおける最大のヒットといえるし,巨大なMODコミュニティを運営している。ゲーム実況においても人気のタイトルだし,F2Pの成功例であり,ゲーム制作が特定地域に縛られないことを示した作品でもある。

 だが,これらすべてにおいて,因果の順番を間違えてはならない。インディーズゲームだから,MODコミュニティが充実したから,ゲーム実況があったから,F2Pだったから,スウェーデンで作ったから,Minecraftは成功したのではない。Minecraftが面白いゲームだったから,Minecraftは成功したのだ。その成功を,さまざまな事例が,「己の分野における成功例」として引用している,そう考えたほうが自然だろう。

 これからも,ゲームのあり方,遊ばれ方は変わっていくだろう。その中で新しく生まれるゲームもあれば,すたれていくゲームもあるかもしれない。だが「面白いゲームだけが,本当にヒットする」,これだけは変わらない。
 そしてまた,そこには常に,「今までになかった」あるいは「PCゲーム領域では長らく見過ごされてきた」面白さ,というものがあり得る。同様に,「面白いのは分かっていたけれど,技術的に難しかった」「別の角度から切ったり別のものと混ぜたりしたら,さらに面白くなった」ということもあるだろう。

 ここで大事なのは,これらがどう面白いのかは,結局のところ,遊んでみなければ分からないということだ(その「遊ばれ方」のバリエーションは増えるにしても)。
 ゲームがプレイされる時間が短くなっている昨今,まったくゲームを遊ばずにその面白さを評価したくなるというのも,自然な流れではある(そもそも現代人は忙しいのだ)。だが,今までにない面白さをキャッチするには,2014年もまた,とにかく遊ぶしかないのではないだろうか。
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集計:12月25日〜12月26日