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「マイクラ」の開発元Mojang Studiosを訪問――空を飛ぶ“Happy Ghast”とグラフィックス刷新プロジェクト“Vibrant Visuals”を先行体験
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新時代の幕開けか。ゲームドロップ戦略が本格始動
Mojang Studiosは2024年から「ゲームドロップ」という新しいアップデート戦略を開始した。ゲームドロップでは年に約4回,比較的小規模なアップデートをリリースする形に切り替えられている。従来は夏に1回の大型アップデートというサイクルだったが,より頻繁な更新を求めるプレイヤーの声に応えた形だ。
「コミュニティからより頻繁に高品質なコンテンツを望む声が多く寄せられていました」とゲームディレクターのAgnes Larsson氏は,その理由を語っていた。
開発チームの設定した将来の方向性は大きく2つある。「Minecraftのポテンシャルを引き出す」ことと「Minecraftのポテンシャルを拡張する」ことだ。前者では創造性や建築,冒険,協力といった核となる価値をさらに高め,後者では多様な創造的可能性を追加して,Minecraftという「創造性の媒体」そのものを拡張していくという。
Minecraft Liveでは,2025年の第1ゲームドロップ「Spring to Life」(3月25日リリース)と第2のゲームドロップの詳細が明らかになった。
「Spring to Life」ではオーバーワールドに生命感をもたらす環境要素が追加される。具体的には鶏,牛,豚の寒冷地/温暖地バリアントのほか,落ち葉,野草,サボテンの花などが実装され,バイオームの没入感が大幅に向上する。
「ハッピーガスト」で空を飛ぶ
2025年内に予定されている第2のゲームドロップでもっとも注目すべき要素は,空を飛ぶマウント「Happy Ghast(ハッピーガスト)」の登場だ。これはMinecraft史上初の飛行マウントとなる。
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Larsson氏は「Minecraftの創造性,冒険,協力プレイといった核心的な価値をさらに強化したいと考えました。ハッピーガストはこれらすべての要素を高める存在です」と語った。
ハッピーガストを手に入れるには,「Dried Ghast」と呼ばれるブロックが必要となる。Dried Ghastはネザーで発見するか,ガストの涙と骨ブロックを組み合わせて作成可能だ。乾いた表情をしたこのブロックは,オーバーワールドに持ち帰り水に浸すことで変化する。
「水に浸すと,ブロックの表情が徐々に明るくなり,最終的に『Ghastling』という新しいモブが誕生します」とLarsson氏は話す。Ghastlingは敵対的なネザーのガストとは対照的に,プレイヤーに友好的に接近して追従する。プレイヤーが見当たらない場合はほかのモブを追いかけるという愛らしい一面も持ち合わせている。
Ghastlingは雪玉を与えることで成長を促進できるが,自然に任せても時間の経過とともに「Happy Ghast」へと成長する。名前のとおり,笑顔で涙を流していない友好的なガストだ。
ハッピーガストを飛行マウントとして活用するには「Ghast Harness」という装備を取り付ける必要がある。このアイテムは革,羊毛,ガラスで作成可能だ。
「Ghast Harnessのレシピを詳しく見ると,ガラス部分はゴーグル,革と羊毛はカーペットのようなシート部分を表現しています。Minecraftの世界で見つかる素材と実際の用途の結びつきが素晴らしい」とLarsson氏は述べていた。
ハッピーガスト最大の魅力は,一度に最大4人のプレイヤーが乗れる点だろう。友人たちと一緒に空の旅を楽しむことで,協力プレイに新たな次元をもたらす。
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「空を飛ぶことでクリエイティブな建築の可能性も大きく広がります。空中に大型建造物を作ったり,空中レースコースを建設したりと,新たな遊び方が数多く生まれるでしょう」とLarsson氏は展望を語っていた。
開発チームはゲームバランスを重視し,ハッピーガストの飛行速度にはとくに注意を払ったという。「熱気球のようにゆったりと空をただよう」感覚を目指したのは,エリトラとの差別化や,Minecraft世界の広大さを維持するための配慮からだ。
Larsson氏は,「ハッピーガストはエリトラより入手しやすくしつつも,依然として価値ある報酬と感じられるようにしたかったのです。ネザーにDried Ghastのブロックを配置し,入手までの過程を冒険として楽しめるよう,複数のステップを設けました」と説明した。
開発に際しては「10年,15年後も魅力的な要素であり続けるか」という長期的視点を重視したという。「Minecraftを進化させながらも,核となる価値観を守り続けることが私たちの使命です」とLarsson氏は力強く語っていた。
プレイヤーロケーターバーで友人との協力プレイが進化
同じゲームドロップには「プレイヤーロケーターバー」の実装も含まれる。この機能は,他プレイヤーの方向と距離を小さなドットで示す。遠くにいるプレイヤーほどドットが薄くなり,直感的に方向感覚を掴みやすい設計だ。
「プレイテスト中に,プレイヤー同士が頻繁に見失う問題が発生していました」とLarsson氏は振り返る。「座標確認などの作業がゲーム世界への没入感を損なっていたのです」
この機能は必要に応じて設定からオフにできる。また,ゲーム内アクションと連動する仕様も興味深い。スニーク状態やMobの頭装備着用時,透明化のポーション効果中はドットが表示されなくなる。さらに,自分が他プレイヤーの背後にいる場合,そのプレイヤーの画面には自分のドットが表示されない仕組みだ。
「これらの仕様がゲーム内に多様な戦略的状況を生み出すでしょう」とLarsson氏は期待を寄せる。この機能はすでにBedrock BetaとPreviewに実装済みで,Javaエディションのスナップショットにも追加されている。
「Vibrant Visuals」は,Minecraftグラフィックスの新時代
もう1つの注目すべき発表は,グラフィックス刷新プロジェクト「Vibrant Visuals」だ。これは単なるアップデートではなく,「新しい旅の始まり」と位置づけられる長期的取り組みである。
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Vibrant Visualsは,Minecraftの象徴的な見た目を維持しつつ,視覚効果を大幅に向上させる新しいレンダリングモードだ。方向性のある照明,ピクセル化された影,水の美しいエフェクト,ブルーム効果,無限の雲,立体的な霧など,多彩な要素が導入される。
Larsson氏は,「ピクセル化された影は非常に“Minecrafty”な要素です。ブロックのピクセルに合わせて影が調整されるため,Minecraft本来の雰囲気を損なわずに美しさを引き上げることができます」と語った。
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重要なのは,これがあくまで視覚的な強化に留まり,ゲームプレイ自体には影響しない点だ。視覚的な影がゲームシステム上の「光レベル」に影響したり,敵対的モブのスポーン条件を変えたりすることはない。
「Minecraftのピクセルアートスタイルはゲームプレイと非常に調和しています」とJasper Boerstra氏(Vibrant Visualsのアートディレクター)は説明する。「ブロックのピクセル数はほかのすべての要素との関係において極めて重要なのです」
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Boerstra氏は開発の狙いについて「プレイ中に快適な視覚体験を提供することを目指しました。多くのストリーマーが既存シェーダーを使う際,建築中はオフにして完成後の見栄えチェック時だけオンにする傾向があります。そうした切り替えが不要で,常時活用できる視覚強化を実現したかったのです」と話す。
長期開発と過去の教訓
「Vibrant Visualsは何年もの歳月をかけて開発してきました」とIngela Garneij氏(エグゼクティブプロデューサー)は明かす。「Minecraftの美しさを世界に示したいという思いがありました。美しい光や水の表現を見ると,すぐにその魅力に慣れてしまうほど自然な仕上がりです」
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過去のグラフィックスプロジェクトからの学びも生かされている。Maddy Psenka氏(Vibrant Visualsのシニアプロダクトマネージャー)は,「今回は過去の教訓から逃げずに,むしろそれらを受け入れる姿勢で臨みました。望む機能セットを実現するためのエンジン基盤構築に十分な時間をかけ,約1年半にわたってクリエイターと共に技術プレビューを重ね,最適な方向性を見出してきました」と振り返る。
Vibrant Visualsははじめに,Minecraft: Bedrock Editionの対応プラットフォームで数か月以内に公開される予定だ。Java Editionへの対応も将来的に計画されている。
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この機能はメニューから簡単に切り替えられるよう設計されている点も特筆すべきだろう。「できるだけ多くのプラットフォームで,高品質かつパフォーマンスに優れたグラフィックスを提供したいと考えています」とLarsson氏は述べた。
ビフォーアフター画像を比較すると,その違いは一目瞭然だ。奥行きを表現する霧や豊かな水表現,そして特に日の出や日没の美しさが格段に向上している。これらの要素がMinecraftの世界に奥行きと広がりを視覚的に与えている。
Dejan Dimech氏(Vibrant Visualsのプロデューサー)は「これらの視覚効果が建築活動や創作活動に新たなインスピレーションをもたらし,友人との共有体験もより豊かになることでしょう」と期待を寄せていた。
映画「A MINECRAFT MOVIE」とゲーム内コンテンツ
2025年内に公開される実写映画「A MINECRAFT MOVIE」に関連して,ゲーム内コンテンツも計画されていることが明らかになった。
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3月25日から4月7日まで開催される「Movie Live Event」では,プレイヤーがSteveたちと共にMidport Villageを守るマルチプレイヤーイベントに参加できる。
資源の採掘やピグリンとの戦闘,ペイロードの防衛といったミニゲームに挑戦し,5つのチャレンジを完了すると「Yearn」ケープを獲得できるという仕組みだ。
映画の公開に合わせて,追加のゲーム内コンテンツも予定されているが,詳細は後日発表される。
Larsson氏は「映画はゲームへの愛を多くの人と共有する新たな方法です。ゲームがすべてのMinecraft物語の出発点ですが,映画もまた世界中に存在する素晴らしいMinecraftストーリーの1つなのです」と述べていた。
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さらに,「映画を観ると,ゲームへの参照が数多く含まれていることに気づくでしょう。例えばトレイラーで登場人物たちが落下中にバケツを使うシーン。あれはまさにMinecraftプレイヤーがよく行う行動です。ファンが喜ぶ仕掛けもありますが,それは秘密にしておきましょう」と笑顔で付け加えていた。
240年前の醸造所が創造の場になったMojang Studios
Mojang Studiosのオフィスは,約240年前に建てられた醸造所を改装した歴史的建造物だ。「Munich Brewery」という名のこの建物には,現在約200の企業が入居し創造的な空間として活用されている。
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この建物は文化財指定を受けており,王宮と同レベルの保護対象になっているそうだ。外観変更は一切不可能であり,内装の変更も多くの手続きが必要ということで,苦労して使っている様子だった。
オフィス内にはランチエリアやカフェテリア,図書館,アーケードゲームコーナーなどが設けられている。興味深いのは建物の歴史的側面が尊重されている点だ。かつて馬車が出入りしていた大きな窓や,今でも稼働するマイクロブルワリーが残されている。さらに,入居企業には自社オリジナルビールを製造する機会も提供されており,過去にはMinecraftビールも存在したそうだ。
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現在,スタジオには約5000人のスタッフが所属し,うち約200人が正社員,90人がコンサルタントとして働いている。大多数はワシントン州レッドモンドを拠点としているが,世界各地にも少数のスタッフが点在しているという。
Minecraftは16年目を迎えた今も進化を続けている。飛行マウント「Happy Ghast」の導入や,グラフィックス刷新「Vibrant Visuals」の開発は,長い歴史を誇るゲームながら,新たな可能性に挑戦し続ける開発チームの姿勢を象徴していると言えるだろう。
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「Minecraftがあと15年以上続くことを願っています」とLarsson氏は語る。さらに,「ゲームを進化させながらも核となる価値観を守り続けること,そして将来Minecraftを次世代の開発者に引き継ぐ際には,ゲームの本質がしっかり保たれた状態で渡すことが私たちの使命です」と続けた。
長期的ビジョンを持ちつつプレイヤーコミュニティの声に耳を傾け,定期的なゲームドロップで新鮮さを保つバランス感覚。これがMinecraftが16年を経て3億本以上を売り上げ,今なお多くのプレイヤーを魅了し続ける理由の1つだろう。
3月25日には,第1のゲームドロップ「Spring to Life」がリリースされ,そのあとはグラフィックスも刷新される。Minecraftの世界は今後も着実に,そして驚くべき方向へと進化を続けていくはずだ。
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