インタビュー
携帯電話で選手育成,PCブラウザゲームでチーム運営。連動機能を採用した「選手つく」と「野球つくブラウザ」とは
両者はそれぞれ独立したタイトルだが,選手つくで育成した選手のデータをコンバートし,野球つくブラウザの選手として登録して遊ぶことも可能だ。すなわち,移動時間や外出先で選手を育成し,自宅ではそのデータを使って野球チーム運営を楽しむといった遊び方ができるのである。本記事では,以下の開発スタッフ3名による解説を交えながら,選手つくと野球つくブラウザの内容を紹介しよう。
セガ モバイルニューメディア事業部 モバイルニューメディア研究開発一部 部長 瀬川隆哉氏 |
同 企画セクション 「野球つくブラウザ」プロデューサー 三木洋之介氏 |
同 企画セクション 「選手つく」プロデューサー 佐々木浩一氏 |
「プロ野球チームをつくろう!ブラウザ」
高校生活を通じて選手を育成する「選手つく」
全国のプレイヤーが競うシーズン戦も用意
「今のリアルな頭身のキャラクターでなく,過去のシリーズのデフォルメキャラを使うなどして,野球に興味があるけれど,それほど詳しくない方でも楽しめるようなライトな内容に仕上げています。まずは選手を育成するところを楽しんでいただきたい,と」(瀬川氏)
ゲーム内では1か月を4週,1年を48週と計算し,3年生の夏季大会が終了(優勝または敗退)すると,一人の選手の育成が終わる。
「練習」コマンドを1回選んで実行すると,1週間が経過。練習可能な場所は,エリアごとに6か所ずつ用意されており,それぞれ伸びるパラメータが異なっている。練習を実行すると,ミッションゲームが発生することがある。
ミッションゲームには野手用と投手用の2タイプがあり,さまざまな成功条件が提示される。ゲーム進行に伴い条件は厳しくなるが,選手のパラメータが上がると難度が下がるようになっている。そこで重要になるのが,習得すると飛躍的にパラメータが上がる特殊能力だ。特殊能力は,ガチャやほかのプレイヤーとの親善試合で獲得できる。また,モバ友(フレンド)がいれば,その人数や友好度に応じて応援してくれるケースもあり,この場合も難度が下がる。
そして見事,ミッションゲームをクリアすると,2タイプの報酬が手に入る。
「野球の神器」は,プレイヤーにさまざまな特殊能力を付与すると同時に,コレクション要素を持たせた報酬だ。
もう一方の「施設環境アイテム」は,練習施設を増強していくもので,練習によるパラメータ増加にボーナス効果を与える。なお施設にはレベルの概念があり,リセットされることなく維持される。つまりミッションゲームを多くクリアするほど,そして何人もの選手を育成するほど,施設のレベルが上がり,それだけ優秀な選手を育成できるようになるのである。
ミッションゲームをクリアすると,「野球の神器」「施設環境アイテム」などが手に入る |
練習を重ねていくことで,選手はレベルアップする。選手をどんどん強化していこう |
イベントシーン。高校3年間でさまざまなイベントが発生する |
また,一人以上の選手を育成すると,シーズン戦で遊ぶことができる。シーズン戦は,1大会にリアルの8日間を使って開催され,前半ではエントリーと地区予選が,後半は全国大会が行われる。地区大会は,全国を8つのエリアに分けて進行。エントリーしたプレイヤーは5つのグレードに振り分けられ,毎日定時に自動で試合が進められていく。全国大会は,グレード別に各地区大会の上位50チームがトーナメント形式で優勝を争う。
1チームは25人編成で,プレイヤーが育成した選手とNPCのほか,モバ友が育成した友好校チームの選手を補強選手として加入させられる。シーズン戦による選手の成長はないが,ほかのプレイヤーが自チームの選手を使った場合には,「出場手当」としてゲーム内ポイントを入手できる。
「シーズン戦は,かなり大掛かりで本格的な内容に仕上がっています。選手は1日に一人,頑張れば二人くらい育成できますから,1か月程度で1チーム分の選手が揃う計算です。とはいえ,選手を一人育成して,残り24人は全員NPCという状態でもシーズン戦に参加できますよ」(佐々木氏)
なお,育成が終了した選手は大会出場数が10回になると能力が減退し始めるので,シーズン戦だけでなく新規選手の育成も続けていく必要がある。また,通算成績は全プレイヤー間でランキングされ,好成績を記録した選手は「殿堂入り」となる。
シンプルながら奥深さを継承した「野球つくブラウザ」
「選手つく」との連動で高コスト選手の入手率が上昇?
基本的には,選手カードを購入してチームを編成し,チームカラーでチーム力を強化し,スキルの設定で各選手を育成,サポートカードで調子を上げて試合に臨むという,「野球つく」シリーズの原点といえるものに仕上がっている。
「野球つくONLINEは,サービスを4年続けてきた結果,遊べる要素がてんこ盛りになっています。つまり軽く野球を楽しむには,ゲーム的な要素が多すぎるわけです。そこで今回,まずは根本にある野球の面白さだけを提供する形でサービスを始めてみようと考えました。今後はプレイヤーの動向に合わせて,さまざまな要素を追加していく予定です」(三木氏)
「野球つくONLINEのサービス開始時も,シンプルな内容だったんですよ。そこから留学やポスティング,ミッションといった要素を追加して,今の形になりました。また,野球つくブラウザでは,野球つくONLINEと異なる展開も考えています。例えば選手カードがダブった場合,野球つくONLINEではその選手の調子が上がるだけでしたが,野球つくブラウザはまた違った要素を追加することを検討しています」(瀬川氏)
しかし,ブラウザゲーム用にシンプルにまとめたとはいえ,4年間の野球つくONLINE運営のノウハウと,シリーズの実績をベースにした根底の面白さは変わらない。例えばペナントリーグは,プレミア/メジャー/マイナー/ルーキーと,プレイヤーのレベルに合わせて自動的にグレード分けがなされる。その中で勝ち進んでいけば,さらに強いプレイヤーとペナントを争うことも可能だ。
「表に出している数値,出していない数値を含めて膨大なデータをもとにしたAIは,シリーズで培ってきた財産です。ここはゲームの大きな特徴ですから,ブラウザゲームとはいえ,簡素にすべき部分ではないでしょう。今まで野球つくONLINEを遊んでいなかった一般の野球ファンの皆様にも,納得していただけるブラウザ野球ゲームになっていると思います」(三木氏)
また試合再生シーンは,野球つくONLINEのダイジェストシーンを活かしたものになっている。3Dムービーではなく,試合の重要な場面だけをセンスのある2Dアニメで表示しているのだが,必要十分な内容になっているといえる。
もちろんブラウザゲームということで,1日1回のログインやフレンドとの対戦ごとにゲーム内ポイントを入手できるといったバイラル要素も用意されている。
「そのほかの具体的なソーシャル要素としては,『応援』があります。フレンドから応援してもらうと,強さが上がるのではなくファン数が増加し,プレイヤー各自の画面に表示される自分の球場が変化していきます。今後,ゲームバランスを考慮しつつ,このソーシャル要素の特典は拡大していく予定です」(三木氏)
「野球つくONLINEはかなりマニアックな内容になっていますが,野球つくブラウザは時流を考えて人と人との繋がりを重視した内容にしていこうと考えています」(瀬川氏)
そして,野球つくブラウザの最も大きな特徴となるのが,前述の選手つくとの連動だ。すなわち,選手つくで優秀な選手を育成して,野球つくブラウザでチームに編入できるのである。
ただし,選手つくで育成できる選手は架空の存在なので,実名選手使用を一つのウリとする野球つくブラウザでそのまま使ってしまうと,ゲームバランスが崩れてしまう恐れがある。そこで野球つくブラウザに育成した選手を登録すると,そのデータをもとにレベルやコストが算出され,それを反映した実名選手のカードにランダムで変換される仕様となっている。
「選手つくで育成した選手が,野球つくブラウザでどんな選手に変わるのかという楽しみ方もできます」(佐々木氏)
逆に考えると,ダルビッシュ有投手のような好成績の選手のカードは極めてレアで入手困難だが,選手つくで非常に優れた投手を育成して登録すれば,入手できる可能性が高まるわけである。
ちなみに,野球つくブラウザに登録した選手であっても,そのまま引退まで選手つくで使うことができる。
「野球つくONLINEは,今年でサービス開始から5年目に入りますが,この間にオンラインゲームを取り巻く環境も変わりました。今では,クライアント型のタイトルだと,ダウンロード開始からダウンロード終了,そしてプレイするまでの間に離脱してしまうお客さんが一定の割合で存在することが,これまでのデータ分析から判明しています。つまり,もっと手軽に始められないとダメなんです。
そこで1年ほど前から野球つくブラウザの企画検討を始めていたのですが,ちょうど同じ頃,Yahoo!Mobageの発表がありました。そのときのキーワードにあった“連動”に,チャンスを見出そうと考えたわけです。携帯アプリ──特にフィーチャーフォン用のソーシャルゲームは非常に多くの会員を獲得できますから,うまく連動させれば野球つくブラウザに誘導できるだろう,と」(瀬川氏)
「プロ野球チームをつくろう!ブラウザ」
先日まで行われていた野球つくブラウザのクローズドβテストでは,これまでのシリーズのターゲット層とは関係なしに招待メールを送付したとのこと。その結果,初めてシリーズに触れた人も多く,開発チームが思いもよらないような基本的な操作でつまづくケースがあることに気付かされたと瀬川氏は話す。
単に野球つくシリーズをブラウザゲーム化してサービスするだけでなく,選手つくとの連動をはじめ,目的やターゲットの明確な差別化を図った試みであることが,本記事で取り上げた瀬川氏らの言葉から読み取れるのではないだろうか。
なお今後は,携帯アプリ,PCブラウザに加え,スマートフォンでの展開も視野に入れているとのことである。
- 関連タイトル:
プロ野球チームをつくろう!ブラウザ
- 関連タイトル:
プロ野球選手をつくろう!
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