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「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界
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印刷2019/04/13 00:00

インタビュー

「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界

 2019年1月8日に公開されたMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」PC / PS4 / Mac。以下,FFXIV)のパッチ4.5「英雄への鎮魂歌」。さまざまなコンテンツが追加され,FFXIVプレイヤー以外からも大きな注目を浴びたコンテンツが誕生した――ドマ式麻雀だ。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界

 平たく言えば「FFXIVの中で麻雀が打てます」というコンテンツである。MMORPGの内部で麻雀が打てるというのは,実のところこれが初めてではないが,この驚きの発表は世界的な注目を集め,海外では麻雀のルールを検索した件数がランキング上位に入るという珍事なども発生した。ともあれ,ドマ式麻雀は実装後に,エオルゼアの地であっさりと浸透。日夜,光の戦士達が卓を囲んで麻雀を打っているのだ。

 そんなドマ式麻雀だが,一人の挑戦者がいた。日本麻雀101競技連盟という組織に所属する,山田史佳氏だ。「プロの犯行」以外に言葉も出ないこのチャンレンジは,結果的に麻雀プロのすさまじさを見せつけることになった。多くのプレイヤーが「困難」と太鼓判を押した「Mahjong Master」の称号を獲得するのみならず,さらにその先にあるレート2200という1つの壁を突破してみせたのだ。

※以下の「FFXIV」スクリーンショットは山田史佳氏がツイートしたものからの転載となる
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 しかるに山田プロのTwitterアカウントを見ると,どうやらただならぬ規模でFFXIVの深みにハマっているだけでなく,モバイルからコンシューマまで多数のゲームをプレイしているガチゲーマーのようだ。
 ということで今回は麻雀プロにして,コアゲーマーでもある山田史佳プロに,麻雀プロの世界と,麻雀の面白さ,そしてFFXIVで打つ麻雀の魅力について,たっぷりと語ってもらった。長いインタビューになるが,最後までお付き合いいただきたい。

左側が山田プロの操作するキャラクターだ。氏のTwitetrアカウントを見るとグループポーズ機能を利用したスクリーンショットが多数掲載されており,SS撮影もかなり楽しんでいることがうかがえる。どうやらララフェル推しの模様
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リアルで打つ麻雀に「ドキドキ」した


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。本誌読者は必ずしも麻雀に詳しいわけではありませんので,まずは簡単な自己紹介からお願いできますでしょうか。

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山田プロ:
 第34期順位戦(※2013年末)から日本麻雀101競技連盟に所属しました山田史佳です。いま僕は30歳なんですが,麻雀そのものを覚えたのは20歳のとき,ちょうど10年前ですね。プロとして登録してからは次で7年目ということになります。

4Gamer:
 麻雀を覚えたきっかけは何だったのでしょうか?

山田プロ:
 弟が自宅で友人と手積みで打っていたんですが,何やら楽しそうで。「そんなに楽しそうなら,ちょっと教えてくれ」と頼んでみたら,弟から「自分でゲーム買って覚えろよ」と言われました(笑)。それで,PSPの麻雀ゲームを買って,初めて遊んでみたんですよ。

4Gamer:
 最近では一般的ですが,麻雀ゲームがスタートだったわけですね。

山田プロ:
 はい。ただこれもよくあることだと思うんですが,そもそもルールも役も理解してませんし,ポンとかチーとかできるタイミングになると,とりあえずボタンを押して鳴いてしまう。なので,たまたま役がついたら上がれる,みたいな遊び方でした。

4Gamer:
 ありますね(笑)。「なんで揃ってるのに上がれないんだ?」とか。

山田プロ:
 そうそう,それで裸単騎()になるんですよ(笑)。そして上がろうとしても「ロンできません」とか言われてしまう。でもたまに上がれることがあって,「上がれたり上がれなかったりするのは,きっとゲームの不具合に違いない」とか思っていました(苦笑)。

※ポンやチーなどですべて手牌をさらし,頭になる牌1枚で待っている状態。

4Gamer:
 そこからどのようにしてルールを学んだのでしょう。

山田プロ:
 コンピュータ対戦なので,そういう無茶苦茶な打ち方でも,ときどきは勝つんですよ。そうやってまぐれで勝ち続けていると,ゲーム内での段位なんかも上がっていくわけです。それで「こういうゲームっぽいぞ」と思うように。

4Gamer:
 「麻雀,完全に理解した」的な流れですね。

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山田プロ:
 ええ(笑)。それで「分かった」と思った僕は,弟が遊んでいたみたいに,友人と打ってみたくなったので,大学の友人を集めて4人で雀荘に行きました。いわゆる「セット」ですね。
 それで実際に卓について打ってみると,ゲームでは高段位な僕ですが,まだまだ役も分かってないし,そもそも牌をどこから持ってきていいのかも分からない(苦笑)。しかも4人全員,符計算ができなかったから,上がっても「これ何点?」ってことになりまして。

4Gamer:
 そうなりますよね。

山田プロ:
 なので,とりあえず「1000」「2000」「3900」「8000」みたいな点数でやろうと決めまして。そんな感じで適当に遊んでいたんですが,結局僕が一番負けまして。それが悔しくて,ルールを覚えてやろうと決意したんです。

4Gamer:
 コンピュータ相手ならともかく,人同士だったから悔しさもひとしおだったわけですか。

山田プロ:
 そうなんです。でも同時に「麻雀は人と遊ぶとすごく面白い」という体験もしたんです。なので,その日のうちに麻雀の本を買って,ルールをしっかりと読み込んでと,ハマる一方でした。あとはもう順当な流れですね。雀荘に行くようになって,フリーで打つようになって。

4Gamer:
 10年前ということですと,もうオンライン対戦麻雀もありました。それでも雀荘を選ばれたのはなぜでしょうか?

山田プロ:
 やはり雀荘の,とくにフリーで打つドキドキ感というのに魅力を感じたんです。最初に打ったときみたいに気心知れた友人と打てば,ペースもゆっくりですし,雑談しながら打つというのも普通じゃないですか。
 でも初めて知らない相手3人と打ったときに,みんなすごいスピードで打つわけです。鳴き()なんかも動きが早いですし。だから自分だけそのスピードから取り残されて,「あなたの番ですよ」と催促されちゃったりして。

※対戦相手が捨てた直後の牌をポン,チー,カンで自分の手牌にすること。

4Gamer:
 これまたあるあるですね。

山田プロ:
 そんな有様ですから,そのときも負けたんですけど,それでも楽しかった。とにかくドキドキしてました。オンライン対戦の麻雀ゲームも遊んでいましたけど,やっぱりリアルで牌を触っているほうが楽しくて。
 あのとき麻雀にドキドキしたから,僕はオンラインではなくリアルの麻雀にのめり込んだのかなと思います。


思い立ったら即実行,山田プロ誕生


4Gamer:
 そこからプロを目指したのは,何がきっかけだったのでしょうか?

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界
山田プロ:
 ある日,競技麻雀という存在を知ったんです。当時はいろいろな麻雀を打ってみたく調べてみたら「競技麻雀の店」というのがあって,まず「競技麻雀って何だろう?」と。なにせ当時は「麻雀には赤あり()と,そうでないものがある」くらいしか知らなかったので。

※持っている(鳴き牌も含む)だけでドラ牌扱いになる牌を使うルール。

4Gamer:
 確かに,普通にフリーで打っている範囲では,競技麻雀のルールに触れる可能性はあまり高くないかもしれません。

山田プロ:
 なので,試しにその店に行ってみたんですが,所作を注意されて。「牌をカチャカチャしないでください」「牌を切るときは強打しないでください」「卓に肘をついてはいけません」「上がりのときは『満貫』ではなく『8000点』と申告してください」とか(笑)。

4Gamer:
 あー(苦笑)。

山田プロ:
 それを教えてくれたのが,今はもう引退されてしまったんですが,僕が所属している101競技連盟の大貝博美さんだったんです。
 大貝さんは本当に所作が綺麗でした。牌を持ってきて切る動きに乱れもなく,物腰も柔らかくて……それで,「プロってこんなに格好いいんだ」と思わされたんです。
 それまでも「麻雀にはプロが存在する」ということは知っていましたが,“大貝プロ”を見てからは「プロ雀士」が一気に憧れの対象になりましたね。「俺もプロになってみたい」,と。

4Gamer:
 とはいえ憧れたからすぐプロになれる,というものでもないと思います。山田プロはいま30歳でプロ7年目になるということは,かなり早い段階でプロ入りされてますよね。

山田プロ:
 そうですね,ただ,20歳の頃は「覚えた」というよりは「始めた」程度でしたけど(笑)。
 僕の場合,競技麻雀に辿り着いたのが早かった,というのはあると思います。競技麻雀と最初に出会ったのは,まだ学生の頃でした。それから大学を卒業して,最初は高校の教師になりましたが,仕事が終わったら麻雀を打ちに行くみたいな感じで,その競技麻雀の店に通っていたんです。でも,「プロになりたい」という気持ちが抑えられなくて,教員を辞めてプロになりたい,と。

4Gamer:
 大胆ですね。

山田プロ:
 それで大貝さんに「私に麻雀を教えてください」とお願いして,店に通い続けました。自分の打ち方について,「あの手はどうでしたか」「あそこはリーチすべきでしたか」など,大貝さんに講評していただき,疑問があったら「これはどうしたら良かったでしょうか」と聞いたりして。
 結局,教員は1年で辞めてしまい,通っていたお店で働くようになりました。その翌年,プロとして101競技連盟に所属するに至った,という流れですね。

4Gamer:
 プロになるための試験というのは,どんなものだったんですか?

山田プロ:
 団体や時期にもよりますが,僕が101競技連盟に入ったときには「101という麻雀に対してどう思っているか」という小論文が求められました。あと自分と同期がいなかったので,特別な実技試験といったものはなかったんですが,いわば「平常点」的なものはあったのではないかと。

4Gamer:
 と,言いますと?

山田プロ:
 毎週土曜日に「麻雀101 in Tokyo」という道場が開催されるんです。
 そこでは当連盟のルールで打てるんですが,その道場における成績だったり,あるいは道場への一般参加者からの評価だったりといったものはあって,それは評価に加味されているのではないでしょうか。

4Gamer:
 101競技連盟における,プロとしてのマナーが問われるわけですね。

山田プロ:
 そのとおりです。ルールだけがちゃんとしていても,態度が悪いとか,衛生的でないとかいうことになったら,合格は厳しいと思っています。

4Gamer:
 プロになられてからは,普段はどんなお仕事をされているのでしょうか? 麻雀プロの日常業務というのは,一般にはなかなか想像し難いところもあるかなと。

山田プロ:
 基本的には麻雀関係の仕事になります。例えば「麻雀101 in Tokyo」であれば,運営スタッフとして働くことがあります。あと,これはどの麻雀プロにも共通していると思いますが,麻雀教室の講師や雀荘勤務もよくある仕事です。このあたりが“日常的な仕事”ということになるでしょうか。

4Gamer:
 言われてみれば最近,カルチャースクールのようなところでも麻雀教室が開講されているのを見ることが増えた気がします。

山田プロ:
 増えていますね。とくに平日の昼間に開催される教室の場合,高齢の女性の参加が目立ちます。新しい趣味を見つけたいとか,人と触れ合う機会を作りたいとか,そういう目的で麻雀教室に通っている方は多いですね。

4Gamer:
 お話を伺っていると,「麻雀」というものに対する人の接し方が,一昔前とはだいぶ変わってきたように感じます。

山田プロ:
 今も昔も「楽しむ」というところは同じだと思うんですが,「怖い」「暗い」というイメージからはずいぶん離れました。僕もやはり,最初に雀荘に入るとき,怖かったんですけど(笑)。

4Gamer:
 雀荘自体も変わったと,よく聞きますね。

山田プロ:
 ええ,まずは入口が変わりました。扉がガラス張りになって,中の様子が分かりやすくなっています。昔は鉄や木の扉に,店名なり「雀荘」なりと書いてあるだけで,中で何をやってるか本当に分からなかった。でも,そういうお店は減りました。


「必要な息抜き」としての娯楽


4Gamer:
 麻雀プロの団体はたくさんありますが,どの団体も「麻雀の普及」という目標は一致していると思います。でも,団体ごとでルールは違っていたりするんですよね?

画像集 No.016のサムネイル画像 / 「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界
山田プロ:
 ルールはそれぞれ,だいぶ違いますね。でも,どんなルールで遊んだとしても,「今日は楽しい麻雀が遊べた」と感じてもらえるなら麻雀競技者として嬉しいことです。
 僕が101競技連盟を選んだのは,“勝負として戦うのであれば,このルール()が一番面白いと思ったから”で。でも,他団体のオープンタイトル戦に出たりもしますし,そういった試合も大いに楽しんでいますよ。

※裏ドラやリーチ一発,数え役満など,運要素の強い役をアガリ役に含めないという“役を作る実力”が試されるルール。また,成績は1位が勝ち(プラス1),4位が負け(マイナス1)となり,ポイントを得るためには,必ず1位を取らなければならない。

4Gamer:
 思った以上に,横のつながりもありそうですね。囲碁や将棋ですと「○○新聞杯」のような大会がありますが,麻雀ではそのような大会はあるのでしょうか?

山田プロ:
 今だと「Maru-Jan」が開催している全国麻雀選手権がそれに該当するかと思います。あとは最近噂の「Mリーグ」ですね。ここでさらに,例えば大手企業がスポンサーしている団体であるとか,協賛しているタイトル戦であるとかができてくると,また違った面白さが生まれるかなと思うのですが。

4Gamer:
 でもそれを実現するのは,なかなか難しそうです。

山田プロ:
 間違いなく難しいですね。協賛企業様の名前は当然表に出るわけですから,例えば「〇〇杯を開催したけれど見るに耐えなかった」ということになると,その協賛企業にとってマイナスになります。あるいは「今は麻雀のイメージが悪いから,そんな大会に名前を出したら株価にマイナスの影響が出る」という話が出てくるのも,マズいですよね。そういった懸念をなくしていくために,どの団体も尽力すべきかなと思います。

4Gamer:
 とはいえ今の日本社会では,麻雀のみならず「ゲーム」の社会的認知はなかなか向上しないというのは,実感としてあります。

山田プロ:
 そうですね。ゲームと聞くと,大抵の人は「遊び」「趣味」と認識して,「仕事にはつながらない」と考えるというのがあると思います。
 例えばサラリーマンが4人で麻雀を打ちに来たとき,その卓が堅苦しい雰囲気にはまずならないと思うんです。なにせ息抜きで来ているわけですから。でも「息抜き」は,けっして「必要ないもの」ではないですよね。

4Gamer:
 と,言いますと?

山田プロ:
 例えばですが,食事だって我々はときに高いお金を払って美味しいものを食べたりしますが,生きていくためだけであれば豪華な食事である必要なんてないんです。でも,特別な日に豪華な食事を食べて,楽しい時間を過ごしたという体験は,とても大事じゃないですか。食事に必要なのはカロリーと各種栄養素だから,機能性食品だけ食べていればいい,とはならないはずです。

4Gamer:
 味だったり,気分だったりを楽しみたいですね。

山田プロ:
 同様に,麻雀であれ,ゲームであれ,そうした時間を過ごす「息抜き」が生きていく上で必要なものだと思うんです。でも「麻雀を仕事にする」という話をすると,やはり「麻雀って遊びでしょ?」と言われてしまう。
 そうではなくて,プロらしさを披露することであったり,プロとして初心者を含めたプレイヤーをサポートしたり,息抜きの場を提供したりというのは,どのエンターテイメントでも変わらないでしょう。そのためのプロがいても良いというのは,麻雀やゲームでも同じではないか,と思っています。


プレイ時間:6000時間


4Gamer:
 さて,ゲームの話が出たところで,FFXIVのドマ式麻雀の話も聞かせていただきたいのですが,そもそも山田プロはFFXIVをかなり遊んでおられるようですね。

山田プロ:
 はい!(笑)。先程も言ったとおり僕はゲームが大好きでして,FFXIVも友人に勧められて始めたのですが,ガッツリ遊んでいます。

左画像のキャラクターが乗るマウント「オメガ」は,パッチ4.4実装の高難度レイド「次元の狭間オメガ アルファ編:零式4層」で入手できるもの。ほかのプレイヤーに譲渡はできないので,FFXIVにおけるエンドコンテンツをやり込んでいるプレイヤーの証でもある
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4Gamer:
 いつ頃からプレイされているのでしょうか?

山田プロ:
 だいたい2年前ですね。インタビューの前にプレイ時間を調べたんですが,280日と書いてありました。6000時間ですね。

4Gamer:
 2年で280日……まあ,MMORPGあるあると言えばそうですが(笑)

山田プロ:
 単純に割り算すると1日8時間ペースですね(苦笑)。
 ただ,寝落ちとかもしていて,目が覚めたら急いで仕事に行かなくてはならない時間で,ログアウトせずに家を出たりもあります。……ありますが,そういうところまで含めて2年で6000時間遊んでしまうくらいには大好きです(苦笑)。

4Gamer:
 普通に“廃”と呼んで差し支えないレベルではないかと思います! 逆に言うと,ドマ式麻雀はまさに奇跡のめぐり合わせ的な感じだったわけですよね?

山田プロ:
 そうです。FFXIVに麻雀が実装されるなんて,僕にとっては幸運かつ嬉しい限りです。

4Gamer:
 山田プロはドマ式麻雀でレーティング2200に到達したということですが,これがどれくらい大変なことか,ざっくりと説明していただけますか。

山田プロ:
 まずレーティングは全員1500からスタートします。そして順位に応じて増えたり減ったりします。原則的には2位以上でプラス,3位以下でマイナスですね。卓の平均レートによって上下するレーティングが変わると思うんですが,参加者が全員2000代なら,1位で+20くらいは上がると思います。でも自分以外が平均して1600くらいだと,1位で+13,2位で−2か,良くて±0。

これはなかなか厳しい……
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4Gamer:
 え,レートの差がそれだけあると,2位で下がるんですか。

山田プロ:
 そうなんですよ。3位で−20,4位で−40なので,1回4位を取ると3回トップを取っても借金が返せるかどうかで。

4Gamer:
 ということは,仮に2000に到達したとして,そこからレーティングを200上げるには,単純計算で1位を15連続……いや,だいぶ無理がありますね,これ。

山田プロ:
 さすがに,最近はそこまでレーティングにこだわらずに打っています。2200は,自分で定めた達成目標だったという感じですね。

4Gamer:
 麻雀は運要素が強いゲームだ,という認識は多くの人が持っていると思いますし,そこまで間違ってもいないかなと思います。でも実際にはスキルの要素がかなり強く出てくるというのがうかがえるようで,とても興味深いです。

山田プロ:
 そうですね。ドマ式麻雀ではレーティングの上がり方が着順で評価されるんです。ある意味で101ルールに通じるところがありますし,僕の体質に合っているのかな,と。
 まずは4位にならないようにすれば大きくレーティングが下がることはないので,4位と3位を確定させてから上を狙えばいいと考えてます。
 なのでリーチをかけられたら,追いかけリーチはせずに静観して,もし誰かが追っかけてくれるなら2人で競ってくれればいい,と判断します。そしてこの状況で脇が8000点とかを振り込めば,これで4位候補ができたわけですから,その人に対しては甘い牌を打たないようにする。あとは他家(※ターチャ。自分以外の3人のプレイヤーのこと)の動きにうまく協調して,その人と1位・2位で終わることを目指す。そういう戦略を立てながら打ってますね。


偽ラグと,リアルで感じる「呼吸」


4Gamer:
 ところで,プロ雀士の間でMMORPGやオンラインゲームを遊んでいるつながり的なものはあるのでしょうか?

山田プロ:
 僕が知っている範囲で言えば,別団体の方が「ドラゴンクエストX」を遊んでいますね。それ以外はあまり知らないですが,表立って口にしてないだけで,遊んでいるという人は結構いるんじゃないかなとは思います(笑)。

4Gamer:
 もともとゲーム好きな人が多そうですよね。

山田プロ:
 なにせ麻雀が好きな集団ですから。ほかのゲームが好きでも不思議はないです。

4Gamer:
 プロ雀士がオンライン対戦麻雀を遊んでいるという噂はちょくちょく耳にするのですが,実際にはどうでしょう。

山田プロ:
 多いと思います。「天鳳」「Maru-Jan」,ハンゲームの麻雀,あと,今はもうないですが「東風荘」とか。もっともこれは「ゲームを遊んでいる」というよりは,自分の鍛錬としてプレイしていることのほうが多いんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 リアルの麻雀とオンラインの麻雀で,打ち方は変わってくるものなんですか?

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山田プロ:
 個人的には,麻雀の打ち方は評価方法でしか変えないようにしています。ネットでもリアルでも,評価方法が同じなら,同じ打ち方を意識しています。
 例えば101競技連盟ルールであれば,1位が+1,2位と3位が0,4位が−1という評価になりますが,この評価方式で打つならネットでもリアルでも打牌は変わりません。「何よりも4位にならない」ことを重視した打牌ですね。
 なので,ネット麻雀だからといって「まだテンパイしていないだろう」と強打する,みたいなことはしません。自分の打ち方が崩れてしまいますから。

4Gamer:
 麻雀は非常に多くの公開情報と非公開情報が入り交じる,情報戦という要素が強いゲームだと思いますが,オンラインの場合は誰かが鳴けるタイミングで微妙にコマンド入力の待受時間が取られたりするじゃないですか。あれって情報としてとても重要だと思うんですが,その点は意識されていますか?

山田プロ:
 その点については,天鳳だといわゆる「偽ラグ」というのが入っているそうで,誰も鳴けないタイミングでゲームの進行が微妙に止まったりするんですよ。なので少なくとも天鳳ではラグを頼りにはできないんです。
 ドマ式麻雀では偽ラグがない(と思われる)ので,ゲームの進行が微妙に止まることを情報として活用することは可能です。でもこれを頼りにすると河(※ホウ。捨て牌を並べる場所)から読み取れる情報が狂うことがあるので,僕はあまり頼りにしません。もう本当にどうにも追いきれないときだけ,頭の片隅に入れたりはしますが……その程度ですね。
 でも,この「ラグ」的なものについては,僕の場合は逆のことを感じることがあります。

4Gamer:
 逆,と言いますと?

山田プロ:
 僕らはリーグ戦を1年通じて戦うわけですが,場合によっては2年・3年と同じ相手と戦うこともあります。そうすると,なんとなく「あの人はいまポンを見送ったな」とか「どうやらテンパイしてるな」とかいうのが,透けて見えてくるんです。本当に何かラグがあったりはしないのに(笑)。
 そういう感覚は,ネットよりリアルで打っているときのほうが感じられます。たぶん相手の細かい目の動きとか,指の動きとかから読み取っているんだと思いますが,「いまチーしなかったな」みたいなことが分かるんです。そういった感覚なら,リーグ戦を戦っていく中では参考にしたりしますね。


AIにサポートされつつ楽しめる麻雀


4Gamer:
 FFXIVのドマ式麻雀ですが,ほかのオンライン麻雀と比べてここが面白い,といったところはありますか?

画像集 No.017のサムネイル画像 / 「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界
山田プロ:
 僕がまず躍起になったのは称号ですね。レート1500スタートで,2000で「Mahjong Master」の称号が得られるので,「称号がある以上は取るしかない!」と(笑)。打つからには勝たなあかんと,ほかのコンテンツにしばらく手を出さなかったくらい躍起になってました。フレンドからは「大丈夫?」「それ楽しい?」って心配されたりもしました(苦笑)。

4Gamer:
 心配する気持ち,すごく分かります!

山田プロ:
 もちろん楽しんでるんです。でも「くっそ3位だった」とかチャットに流しちゃったりすると,苦しんで見えますから。やる以上はほかの人に負けたくはないんですけど(苦笑)。
 あとはそうですね……やはり自分のキャラクターが卓に座って打っている風景が見られるというのは魅力です。アバター麻雀感覚ですね。

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画像集 No.011のサムネイル画像 / 「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界

4Gamer:
 MMORPGだけあって,アバターは豊富ですからね(笑)。

山田プロ:
 それから,これはほかのオンライン麻雀にもありますが,チャットができるというのは大きいです。友人4人でチャットしながら楽しめるのは,リアルでのセット麻雀と変わらないですし。むしろ点数計算とか配牌とか全部やってくれるので,コミュニケーションツールとして優れていると思います。

4Gamer:
 ドマ式では捨て牌候補と危険牌の表示をしてくれる機能がありますが,あれは参考にされていますか?

山田プロ:
 すぐにオフにしました(苦笑)。ただ「これってどういう機能なのか」を試すために使ったことはあります。どうしたら危険だと認識するのかとか,何をもって「この牌は必要」「この牌は不要」と判断しているのかとか,そういうところは友人3人とのセット卓で試してみましたね。

4Gamer:
 アシストAIを攻略する感じで?

山田プロ:
 もし河に迷彩を張っていても危険牌を検知するなら,自分以外の3人が危険牌表示を使っている場合,迷彩するだけ無駄っていうことになりますから。
 ともあれ,それでいろいろ実験してみたところ,危険牌検知は結構優秀だなと感じました。例えば序盤に索子を大量に切った上で,索子で待ってみたりしましたが,索子が「危険」として止まるんですよね。捨て牌候補にしても,わりと効率どおりに捨てさせるようになっています。

4Gamer:
 優秀ですね。

山田プロ:
 そういう意味では,ドマ式麻雀を打つときは「捨て牌候補」と「危険牌表示」の機能は加味して打ってますね。相手がそれらの機能を使っているのであれば,このリーチには打たないだろう,とか。あるいは逆に,このリーチを打てば振り込んでくれるだろう,とか。

4Gamer:
 捨て牌候補は,若干「揃う」ことを優先しすぎている印象もあります。あまりに一直線というか。

山田プロ:
 そうですね。ある程度麻雀が分かっている人であれば,捨て牌候補は使わないほうがいいかもしれません。でも麻雀を始めたばかり,ないしこれから始めようという方であれば,便利だと思います。麻雀の勝敗はオーラスが終わった段階で決着するわけですが,「ロン,○○点」と一局上がれたらそれが楽しいというのも麻雀ですから。

4Gamer:
 確かに。

山田プロ:
 「山田プロ,一緒に打ってください」みたいに誘われることもあるんですが,僕はそういうときに例えば東一局だと,他家のリーチに対して多少危なくても真っ直ぐ行くことがあります。そうなると当然,振り込んでしまうことも多くなります。で,そうやって僕が振り込むと,「プロから上がれた!」みたいにみんな盛り上がるんですよね。
 なので真っ直ぐに手を進める捨て牌機能というのは,みんなが一局単位で楽しめるように,うまくできているものなのかなと感じます。

4Gamer:
 手の中で役ができていくことからして嬉しい,というのもありますよね。

山田プロ:
 あります! 最終的に1位になれたらもっと嬉しいですが,それはまた別の話で。
 麻雀は攻めと守りのバランスが難しいゲームでもあるんですが,最初はまず真っ直ぐ行くのがいいと思うんです。「上がれた」「上がられた」の一喜一憂が面白いし,仮にいわゆるアガラス(結果が最下位から変わらない役で子の最終局を上がること)になってしまったとしても,みんなが楽しめているのであれば,その上がり方を責めるべきことではないと思うんです。

4Gamer:
 なんとかポイントを得ようと3位からの脱出を狙っていたときに,あっさりと4位のプレイヤーに流されて「えー,そうなの?」と思うことはありますね(笑)。それまでに2位以上を確保しておけばという話ではありますけど。

山田プロ:
 もちろん段位戦でガチになって称号獲得を目指すというなら,他家の上がり方は気になるところだと思います。ですが,友達と打って「楽しかった」と息抜きできたのなら,そうして過ごした時間が何より大事なものじゃないでしょうか。
 
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