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  • CD PROJEKT
  • 発売日:2015/05/19
  • 価格:5588円(税込)
    ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディションが2022年12月14日に発売
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GOTY受賞作「ウィッチャー3 ワイルドハント」10周年。壮大なウィッチャーの世界を振り返り,ウィッチャー4に備えよう
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印刷2025/05/24 11:00

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GOTY受賞作「ウィッチャー3 ワイルドハント」10周年。壮大なウィッチャーの世界を振り返り,ウィッチャー4に備えよう

 2015年,もっとも有名なビデオゲームの賞であるThe Game AwardsのGame of the Year(GOTY)を受賞した「ウィッチャー3 ワイルドハント」PC/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PS4/Xbox One)。重厚なファンタジーと緻密な世界観,そして驚くほど丁寧に作られたクエスト群は,世界中のRPGファンを虜にした。

 だが,ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。本稿では,その誕生の背景から現在に至るまでの「ウィッチャー」という巨大コンテンツの歩みを,主要作品とともに振り返っていく。

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原作小説:サプコフスキの筆から生まれた“ウィッチャー”


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Amazonより引用
 「ウィッチャー」の源流は,1986年にポーランドで発表されたアンドレイ・サプコフスキの短編小説にある。当初は雑誌掲載から始まったが,好評を博し,やがて短編集としてまとめられた。

 のちに5部構成の長編サーガ(「エルフの血脈」「屈辱の刻」「炎の洗礼」「ツバメの塔」「湖の貴婦人」)が展開され,1999年に一旦の完結を迎えた。これに加えて,長編シリーズ以前の活躍を描いた「嵐の季節」というスピンオフも存在し,すべて早川書房から邦訳版が発売されている。


 物語の中心にいるのは,“ウィッチャー”と呼ばれる怪物退治専門の戦士,ゲラルトだ。剣と魔法,錬金術を駆使して魔物と戦う彼は,道徳的にも政治的にも中立であり続けようとする(もちろん,それがすんなり叶う世界観ではない)。物語は,ゲラルトが運命によって結びつけられた少女シリと出会い,彼女と奇妙な家族関係を築いていく様子とともに展開されていく。

 本シリーズは30か国以上で翻訳・出版され,累計発行部数は2000万部を超えている。このように「ウィッチャー」は,シニカルなユーモアと重厚な政治劇が織り成す東欧ファンタジーとして,広く人気を博している。

「ウィッチャー1」「ウィッチャー2」:CDPRの始まり〜布石と深化


 その「ウィッチャー」をゲーム化したのが,ポーランドのアパートでひっそりと始まったゲーム会社,CD Projektだった。CD Projektがのちに世界的なヒットメイカーになるまでには,いったいどのような流れがあったのだろうか。

 CD Projektの始まりを語る前に,まず会社発足当時のポーランドにおける政治や経済事情について語る必要がある。

 CD Projektは1994年にマーチン・イウィンスキ氏ミヒャール・キシンスキ氏によって設立された。1991年にソ連が崩壊するまで、ポーランドを始めとする東側諸国には、西側諸国のゲームが輸入されていなかった。よって彼らは他国のゲームの海賊版を売って生計を立てていたという。

 しかしながら,徐々にソビエト連邦の影響も薄くなっていき,市場経済が健全化していくにあたって,彼らは友人らのアパートを拠点として本格的なビジネスに乗り出した。というのも,ポーランドは1994年に法律が改正され,コンピュータプログラムやソフトウェアの権利を保護するようになったからだ。

 当時世界中で人気を博していたBioWareの「バルダーズ・ゲート」をポーランド語に翻訳して資金を獲得した彼らは,新たなゲーム作品の開発にも挑戦することにした。それが「ウィッチャー」である。このときに設立された開発スタジオこそ,「ウィッチャー3 ワイルドハント」「サイバーパンク2077」などのヒット作で知られる「CD Projekt RED」なのだ。

 開発開始から5年を経て,2007年に満を持して発売されたのがPC用タイトル「ウィッチャー」である。このゲームはREDエンジンというオリジナルの物理エンジンをベースに開発され,当時のRPGファンを驚かせた。

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 特徴はなんと言っても“選択と結果”の重みだろう。単なる善悪の二択ではなく,プレイヤーの判断が物語を複雑に変化させる設計が施されていた。永遠の炎を信奉し,非人間族を迫害する「炎の薔薇騎士団」と同盟を組むのか,それとも非人間族のゲリラ部隊である「スコイア=テル」の面々と組むのか,はたまたウィッチャーとしてどちらにも与しない道を選ぶのか……。どの選択においても,すべての人を幸せにすることはできないのだ。

 戦闘については現代のゲームと比べると未成熟に感じられるが,リアルタイム制とタイミング入力を併用した独自性のあるシステムはなかなかユニークだ。

 2011年に発売された「ウィッチャー2 王の暗殺者」では,グラフィックスが大幅に向上し,ルート分岐も大幅に拡大。中盤以降の展開が丸ごと変化する構造に,海外メディアも驚嘆した。国内展開はされていないが,有志が日本語化MODを制作しているため,問題なく遊べる。

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「ウィッチャー3:ワイルドハント」:最高峰のRPGと呼ばれた傑作


 そして2015年,世界中のRPGファンの度肝を抜く作品が誕生する。それが「ウィッチャー3 ワイルドハント」だ。シリーズ初のオープンワールドゲームとなり,プレイヤーはホワイト・オーチャード,ノヴィグラド,スケリッジなどといった広大で多様なエリアを旅する。

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 膨大な量のサイドクエストはどれも二転三転する面白さがあり,小さな選択のひとつとして気が抜けない。メインクエストも当然細かく分岐し,選択次第では仲間キャラクターの生死すら危うくなる。シリを含む重要なキャラクターたちの運命が複雑に絡み合い,プレイヤーを惹き付けるストーリーテリングがなされている。

 特に本作のサブクエストは数多のオープンワールドゲームに影響を与えたと言われるほどすばらしく,一つひとつがドラマとして完成している。街を脅かす魔物を討伐する王道のクエストから,殺人鬼の足取りを追うサスペンス仕立てのもの,サキュバスに魅入られた者たちの悲惨でしょうもない一夜の物語や,ウィッチャーという境界に立つ存在の価値観を揺さぶるストーリーまで,さまざまなエピソードが用意されており,どれもウェルメイドだ。

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 ちなみに筆者は「書類仕事」というDLCに出てくるサイドクエストが好きだ。過去の魔物討伐の報酬金をもらいに銀行に来たはいいが,延々と窓口をたらい回しにされ,ゲラルトがブチギレるという展開に笑ってしまう。

 また,日本語フルボイスによるローカライズの質の高さも特筆に値する。スパイク・チュンソフトによる丁寧な翻訳や,山路和弘氏田中敦子氏沢城みゆき氏らによる名演は,洋ゲーのローカライズにおいて新たな基準を打ち立てたと言っても過言ではないだろう。

 DLC「無情なる心」「血塗られた美酒」も圧巻の出来で,いずれもプレイヤーから高い評価を獲得している。

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「グウェント」:カードの中の戦場


 「ウィッチャー3」の作中に登場したミニゲーム「グウェント」は,カード収集と戦略性が融合したミニゲームとして人気を集めている。その反響を受けて,2017年には独立したデジタルカードゲーム「GWENT: The Witcher Card Game」が正式リリースされた。

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 ゲームは3ラウンド制で,カードの効果や配置,デッキ構築の妙によって勝敗が左右される。ボードゲームクリエイターのライナー・クニツィア氏がよく作るようなシンプルな数比べのわかりやすさがありつつも,場に出したカード同士のシナジーがゲーム後半の奥深い駆け引きを生み出している。そのゲームデザインは,ボードゲームファンやTCG経験者にも好評を博した。

 「グウェント」には,カードゲームにしては珍しくマナやエネルギーの概念がない。したがって1ターン目から強いカードを切ることができるが,その代わり原則としてターンごとに1枚のカードしか場に出せず,相手の除去カードによって簡単に消されてしまう危険性もある。相手の持っているカードを予測しながら,速やかに自軍を展開していくことが重要になる,スリリングなゲームなのだ。

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 また,ラウンド間に補充できる手札はお互い3枚と限られているため,ひとつのラウンドに勝利するためにカードを使いすぎると,次のラウンドでカード不足に陥ってしまう。勝てないラウンドでいかに引くか,勝てるラウンドでいかに節約するか,といった駆け引きが面白い。

 ただし残念ながら,プレイヤー人口の減少により,2023年末には新規カード追加を終了している。以後は「GWENTfinity」と呼ばれるファンコミュニティ主体のサポート態勢に移行した。

「奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ」:歴史に残らない戦い


 「GWENT: The Witcher Card Game」のゲームシステムをベースにしながら,1人用のカードバトルRPGとして展開されたのが「奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ」だ(1人用RPGのミニゲームを基本無料マルチプレイタイトルにし,それがまた1人用RPGに戻ってきたもので,少しややこしい)。

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 本作では,リヴィアとライリアの女王メーヴが主人公となり,ニルフガード帝国の侵攻に抗う戦いが描かれる。

 フィールド探索,キャンプでの会話,資源管理,そしてカードバトルによる戦闘が融合したゲーム体験は,独特で面白い。ゲームボーイやPlay Station期によく作られていたカードバトルRPGを現代風に進化させたようなものと思っていただければ伝わりやすいだろう。また,パズル面はミニゲームとして非常に優秀であり,毎回頭を捻ることになる。

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 相変わらず,イベントの選択肢には道徳的ジレンマが数多く盛り込まれており,周囲のキャラクターたちとの関係性も絶えず変化する。メーヴ女王の軍隊=カードデッキという建て付けなので,キャラクターと永遠のお別れをすれば,デッキからそのカードも削除されてしまうのだ。

 「ウィッチャー」の世界観にさらに深く踏み込みたい人だけでなく,カードゲームファンにもオススメの一本だ。

Netflixドラマ:整理整頓必須,だが剣戟は極上


 2019年からNetflixで配信が開始された「ウィッチャー」の実写ドラマ版は,原作小説をベースにしつつ,映像的演出と独自解釈を交えた大胆なリブート作品だった。主演はヘンリー・カヴィルである(2025年5月現在,シーズン3までが配信中)。

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トレイラーより引用

 シーズン1では時系列をシャッフルした構成が混乱を招いたものの,登場人物の内面や世界観の描写には一定の評価がある。特に剣戟の演出は非常にリアルかつスタイリッシュで,アクションドラマとしての見応えもある。ブラビケンでならず者たちを撫で切りにするシーンは,ぜひとも観てほしい。



 スピンオフとして2021年にはアニメ映画「ウィッチャー:狼の悪夢」が配信され,若き日のウィッチャー・ヴェセミルの過去が語られた。さらに2022年にはドラマのスピンオフ作品である「ウィッチャー: 血の起源」も公開。時代を遡り,エルフ社会と“世界の合流”が描かれるなど,シリーズの世界観を拡張する試みが続いている。

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漫画,スピンオフ,そして未来へ


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Amazonより引用
 「ウィッチャー」はアメコミ化も進んでおり,ダークホース社から複数シリーズが刊行されている。中でも「House of Glass」は,呪われた屋敷にまつわる短編ホラーのような構成で,原作やゲームに通じる人間の闇を描いている。


 開発中の「ウィッチャー4(仮称)」では,新たなサーガが始まることが予告されており,過去作との連続性は維持しつつも,新主人公としてのシリの活躍に期待が集まっている。

 今現在公開されているトレイラーでは,成長したシリが剣戟や印(ウィッチャーの扱う魔法のこと)でもって泥臭く怪物を討伐する姿が描かれている。また,ドラマの部分においても,今までのシリーズ作のように厳しい選択を迫られ,必ずしも思ったとおりにはことが運ばない悲惨な物語が描かれるようだ。


 また,CDPRを離れた開発者たちが設立したREBEL WOLVESでは,まったく新しいダークファンタジーRPGが開発中だという。「ウィッチャー」シリーズで培われたデザイン哲学が,新天地でも継承されることに期待したい。

 「ウィッチャー」は,ひとりの作家が書いた小説から始まり,ゲーム,カード,ドラマ,漫画と多彩に枝分かれしながらも,その芯では人間の業や選択の重みを見つめる姿勢を貫いてきた。

 「ウィッチャー3」はその結実であり,同時に新たな拡大の起点でもあった。だからこそ,筆者は次の「ウィッチャー」を心待ちにしている。

「ウィッチャー4」公式サイト

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