インタビュー
なぜ「リング☆ドリーム」で,「DDT美少女化計画」とかいうどうかしているコラボ企画が進行中なのか。サクセスの松田秀夫プロデューサーと,DDTの高木三四郎社長に聞く
予想していなかったことに直面すると
人はリアクションの仕方が分からなくなる
大社長:
ただね,うちの嫁は,「これまでとは違うファン層を拡大するという意味で,これはアリ」ということを言っていたんですよ。
DD:
実際,反響はありましたからね。
後楽園ホールで発表したときは,お客さん達も微妙な反応だったんですけど。
4Gamer:
どう反応していいか分からないという,妙などよめき方でした。
大社長:
そうなんですよね。どよどよっとした感じで。でも直後に試合前だったんですけどTwitterのハッシュタグを追いかけてみたら,ものすごい数でRTされていたんですよ。それでようやく,インパクトを与えることに成功したんだなと実感できました。
DD:
みんな言葉を失っただけなのよ。反応の仕方を探しちゃうというか。
4Gamer:
で,少し落ち着いてTwitterで反応するという。
大社長:
そういえばDDTにとって3回目の両国国技館大会のとき,選手達がそういう反応をしたことがあったんですよ。
DD:
ああっ,あったわね。
大社長:
毎年,夏のビッグマッチの途中で翌年のビッグマッチを発表するんですけど,リハーサルの段階では選手達に「ごめんな。来年の両国は平日しかとれなかったわ」と言って,スクリーンにも「10月○日,平日両国大会決定!」という情報を出したんです。それを見て,みんな若干,どよーんとしてたんですよ。
でも実はそれはフェイクで,本番ではお客さんの前で「来年は日本武道館大会を開催!」と発表したら,選手がみんなぽかーんとしちゃって。
DD:
あれもリアクションがとれなかったわ。
大社長:
人って,本当に驚くとリアクションがとれなくなるんですよね。
DDTの美少女化に関しても,予想の斜め上を行きすぎたために,その場での反応は微妙な感じでしたが,そのあとにニュースサイトを通じて流れた情報が,これまたものすごい勢いで拡散していったんですよ。そのときには,「やってやったぞ!」という感触が確実にありました。
DD:
DDTサイドはこういう感じだったんですけど,サクセスさんは?
松田氏:
いや,同じですね。発表翌日に出社したら,社内がざわついていました。どうする? どうする? って。
プロモーション担当者も,「こんなに話題になっているんだから,すぐに何かやらなきゃいけない」と言い出したぐらいで。そこで鶴見さんに電話をして,「今日の今日で申し訳ないんですけど,中澤さんかアントンさんに,今夜のリング☆ドリームのニコニコ生放送にご出演いただけないでしょうか?」とお願いをしたんです。それで本当にアントンさんが来てくださって,緊急生放送ができたんですよ。
大社長:
これはやはり,どう考えてもあり得ない組み合わせじゃないですか。男子プロレスラーが美少女化しちゃうなんて,普通は思いつかないでしょう。
DD:
これが女子プロレスラーの美少女化だと,ここまでの意外性はなかったと思うのよね。
4Gamer:
実際,実在する女子プロレスラーが美少女として漫画に登場するようなケースは,そう珍しくもないですし。
大社長:
それにこれ,新日本プロレスさんなら絶対にやらないことで,たぶんうちだからこそ実現したものだと思うんですよ。そこには胸を張りたいですね。
松田氏:
ありがとうございます。新日本プロレスさんについては,ブシロードさんが格好良く取り上げているので,そちらにお任せすればいいと思うんですよ。でも僕達は,僕達にしかできないやり方で,DDTらしさをきっちり描きたいと思って。そう考えたときに,ただの美男子にしてしまったら,DDTさんの持つハチャメチャな面白さが消えてしまうという気持ちは強くありました。
でも美少女化という形が決まって以降,現場のテンションはどんどん高くなっています。
DD:
それは心強いわね。
第二弾は竹下選手&飯伏選手,
そして入江選手(のお姉さん?)
DD:
ちなみに,4月12日には第二弾も発表されたんだけども……。
これもまさかの人選でしたね。次は誰だ? と楽しみにしている人が大勢いたと思うんですよ。それがまさか……。
松田氏:
いきなり竹下幸之介選手です。
実はうちのデザイナーやプロモーション担当者は全員女性なんですが,彼女らが会場で見たときの一番人気が竹下選手だったんです。第二弾を誰にするか決める前から,女性陣からは「竹下選手でお願いします!」という熱烈な声が上がっていたほどで。
ただ,実際に竹下選手を美少女化しようとなったとき,けっこう困ったんですよ。
DD:
竹下はまだデビューして日も浅いし,ビジュアル的な部分ではパンチがないというか。
松田氏:
純粋ゆえの無印というか,無色透明で。
DD:
実物を見れば若さなんかも分かると思うんだけど,絵としては表現しづらそうよね。
松田氏:
そうなんです。どんな髪型を考えてみても,どうもしっくりこなくて。でも2週間ぐらい考えていて,「竹下」という名字から「竹取物語」を連想して,かぐや姫みたいなイメージをデザイナーに伝えて髪の毛を伸ばしてみたところ,何となくうまくはまってきたんですよ。
DD:
髪型によって特徴が出たのね。
松田氏:
ええ。髪型を和風にすることで,無色透明であるからこそ,凜としたイメージになって。竹取物語も,ちょっとSFっぽいお話じゃないですか。そういう未来っぽさみたいなものも,竹下選手の持つ,“ザ・フューチャー”というキャッチフレーズにマッチしているな,と。
ここまで来るとデザイナーの筆も速くなって。で,もっと和のイメージを強調しようということで着物を着せてみて。髪の毛の分け方も,ちゃんと竹下さんになりました。
DD:
なんか,竹下っぽいのよね。不思議なことに。
で,もう一人は飯伏ね。
松田氏:
はい。飯伏幸太選手は現在,DDTさんと新日本プロレスさんの二団体所属じゃないですか。新日本プロレスさんの飯伏選手グッズって,格好いいんですよね。
なのでこちらは,路上プロレスなんかのときの飯伏さんが見せる,あの……。
DD:
狂気ね(笑)。
松田氏:
はい。それを表現したいと思って,「ただ格好良く描くのではダメだ」とデザイナーに伝えました。ちょっと危なっかしいところが見え隠れするようなイメージで。
でも最初のうちはまだ格好良さのほうが強かったので,ここに松井レフェリーを乗せて,首輪を付けて。
DD:
必死に止めてるわよね。
松田氏:
鶴見さんからは,「この方向でOK」というお墨付きをいただいたんですが,「無邪気さ,天真爛漫さ,子供っぽさを出してほしい」ということと,「花火はもっと火を出してほしい」というオーダーをいただきました。
4Gamer:
花火といえば飯伏選手の狂気を象徴するアイテムですもんね。
DD:
一般人だろうとプロレスラーだろうと,人間として真似しちゃいけないやつだけどね。
でもこれ,足のほうから見ていくと妙に飯伏っぽいの。太股のあたりのラインが飯伏っぽいというか。
松田氏:
そして第二弾の最後が,この入江選手です。
DD:
これは最高よ!
大社長:
これは我々も一番どよめきましたね。入江のお姉ちゃん,実際にこんな感じだし。
DD:
だから! そういうことを言い出すとまたコラボの形が歪んでるように見えちゃうから!
でもこれは本当にみんな,一瞬で納得したわよ。
大社長:
満場一致でしたね。
DD:
いい感じでモヒカンも生きてるし。
これに関しては何の説明もいらないと思うのよ。見比べたら,「なるほど」以外の言葉が出て来ないもの。
この美少女達がゲームの中から飛び出して
プロレスの魅力を世に伝えるきっかけになれば
4Gamer:
ちなみに,このコラボの今後の予定は……?
一応,第一弾から数えて一年間は継続することになっているんですが,それよりも僕としては美少女化したDDTの選手達が,リング☆ドリームを飛び出して,別の世界に羽ばたいてくれたらいいなって思ってるんです。
4Gamer:
それはどういうことでしょう?
松田氏:
ゲームとのコラボレーションで生まれたキャラクターって,そのゲームの中だけでしか存在できないみたいなイメージがあると思うんですけど,それはもったいないと思うんですよね。
ほかのゲームとか,ほかの雑誌とか,そういう媒体にこのシリーズがそのまま外に出て行けたら,こういう形で生まれた美少女達も報われるんじゃないかなと思っていて。
大社長:
そこまで思っていただけるのは,ありがたいですよね,本当に。
こういう企画のおかげで,プロレスに興味を持っていない方にも,違う印象を与えられるわけですから。結局,プロレスの中だけだとパイも限られていますから,違う層に違う形で訴えるのが大事なことなんですよ。
僕らもこれまで,アイドルとのコラボなんかを通じて,プロレスやプロレスラーの持つ魅力を少しでも世に伝えていこうという気持ちを持ってやってきていますし。
DD:
今支えてくれているファンだけじゃなくて,もっといろんな人に知ってもらいたいのよね。プロレスのことを。そういう意味で,このコラボって,本当にありがたいのよ。たぶん,DDTの存在をこのコラボで初めて知った人もいるでしょうし。
だから……この美少女キャラがアニメになったりしたら,またさらに大きなうねりが生まれそうよね。
松田氏:
そういうのもいいですよね! 美少女化されたDDTの選手達による学園モノなんかも考えられると思うんです。
そうなったとき,現実のDDTの人間模様なんかもそのまま生かせると思いますから。
大社長:
そこまで思ってくださって,ありがとうございます。
DD:
なんか照れくさいわね。
松田氏:
いやーもう,本当にこの仕事をしていて良かったと思っていますし,DDTさんとコラボができて良かったなって!
大社長:
いや,このコラボね,いろんな方から「DDTさんは凄いですね。いろいろと考えていて」みたいに言っていただけているんですけど,これに関して我々は何も考えてなかったんですよね。リング☆ドリームさんあってのお話で。
DD:
こちらの要望をきっちり聞いてくれたうえに,予想以上のものを作ってくれるのよ。いつも。それこそTシャツにしてもね。
松田氏:
ああ,そうでした。最初はDDTの会場には女性のお客さんもいらっしゃるということで,ちょっとオシャレっぽいデザインにしていたんですよね。それを事務所でプレゼンさせていただいたとき,「思っていたのと違う!」みたいに言われてしまって。
せっかくアニメ的になったんだから,この絵を最大限に活かしたほうがインパクトがあるよ! と。
DD:
こういうのって,普段着としては恥ずかしいぐらいが,開き直れていいのよ。
4Gamer:
それにしてもお話を聞いていると,双方がどうかしているコラボなんですね。
大社長:
お互いに狂ってないと,できませんよね。やっぱり。
DD:
もう本当に美しい関係よね。どちらも思い切りが良くて(笑)。
じゃあ最後に,お互いがお互いに望むことを話して,終わりにしましょうか。
大社長:
松田さんがおっしゃったように,DDT美少女化の世界観で,何か一つオリジナルのものが生まれたら,それは僕らにとって凄く嬉しいです。プロレスとまったく関係ないものでも構わないので,そういう形が生まれれば面白いですよね。
DD:
今まで,うちが手を付けてこなかった部分だものね。そういう一人歩きは期待したいわ。
大社長:
これまではどちらかというと,パロディものが多かったし。「DDTスーパースター列伝」とか(笑)。
DD:
私が原作を書いて,原田久仁信先生に漫画を描いていただいてね(笑)。
じゃあ松田さんは?
松田氏:
まずこのコラボをリング☆ドリームのプレイヤーの皆さんに楽しんでいただきたいです。
で,ほかにもいろいろとやりたいことがあって……。
DD:
ほう,例えば……?
松田氏:
よく大手のゲームメーカーさんが「○○酒場」みたいな飲食店をやったりするじゃないですか。ああいうのを,DDTさんが経営しているエビスコ酒場さんでできないかな……とか?
DD:
いや,それはお話をいただければ問題なくできるわよ。すぐにでも。
大社長:
そこにハードルはまったくありませんからね。問題ないです。
松田氏:
ええっ,本当ですか? じゃあちょっと,企画をまとめて相談させてください。
大社長:
ええ,ぜひ。今後ともよろしくお願いいたします。
松田氏:
こちらこそ,よろしくお願いします!
ああっ……生きてて良かったぁ。
DD:
そんなにっ?
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