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[E3 2015]新型HMD「StarVR」を西川善司が体験。「5K解像度で視界角210度」はVR体験をどう変える?
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印刷2015/06/19 14:13

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[E3 2015]新型HMD「StarVR」を西川善司が体験。「5K解像度で視界角210度」はVR体験をどう変える?

 2015年という年は,仮想現実(以下,VR)対応型のヘッドマウンドディスプレイ(以下,HMD)が一気に盛り上がった年として,記憶されることになりそうだ。E3 2015でも,VR対応型HMDとそれに対応するVRコンテンツに熱い視線が注がれていた。

Starbreezeの展示ブース。順番待ちの列でごった返しているのが,この写真でも分かるだろう
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 そんなVR対応型HMDの2巨塔が,Oculus VRの「Rift」と,Sony Computer Entertainmentの「Project Morpheus」(開発コードネーム,以下 Morpheus)であることは同意してもらえると思うが,第3勢力も,2014年から2015年にかけて,いくつか登場してきている。そして,そんな第3勢力にあって,E3 2015の会場でとくに大きな注目を集めていたのが,スウェーデンのストックホルムに拠点を構えるゲームスタジオStarbreezeが発表した「StarVR」だ(関連記事)。

 今回,筆者は2時間半並んでStarVRを体験することができたので,仕組みやスペックから実際の使用感までをじっくりとレポートしたい。

StarVRの製品イメージ。もちろんこれは製品版で,会場で体験できたものとは異なる
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StarVRの特徴は「5K解像度」と「210度の広視野角」


StarbreezeはStarVRの隣で,PAYDAY2の特別版「PAYDAY2 Crimewave Edition」も展示していた。写真はそこでばらまかれていたPAYDAY2印の偽100ドル札
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 Starbreezeはもともと,クライムアクションゲームとして人気のPAYDAYシリーズなどで知られるゲームスタジオだ。2013年にリリースされた「PAYDAY 2」はヒットしたので,プレイしたことのある人もいるだろう。

 そんなStarbreezeがなぜVR対応型HMDを? という疑問はもっともだが,StarVRはもともと,フランスのInfinitEye VRが開発していた広視野角HMDだった。他社のVR対応型HMDを見たInfinitEye VRが,「我々ならばもっといい物が作れる!」と奮起して開発したのが,StarVRの原型なのだという。
 そして,そのInfinitEye VRがStarbreezeに買収されてStarbreeze Parisとなり,開発中だったHMDは,StarVRとして世に出ることになったというわけだ。

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StarVR展示コーナー前に掲げられた看板。StarVRのアピールポイントが列記されている
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 先行するRiftやMorpheusを追いかける立場にあるStarVRが,差別化の要因に挙げているのは,これらを上回る高いスペックである。

 1つめのポイントは,画面解像度の高さだ。Riftの製品版が片目あたり解像度1080×1200ドット,Morpheusは960×1080ドットであるのに対して,StarVRでは,5.5インチサイズで2560×1440ドットのディスプレイパネルを左右の目に1枚ずつ割り当てることで,計5120×1440ドットという超高解像度によるVR体験を実現するという。
 Starbreezeでは,「5K解像度のHMD」というキャッチコピーを与えて,StarVRのハイスペックぶりをアピールしている。

StarVRの解像度とアスペクト比を示したイメージ。横幅だけでも,フルHD解像度の2.6倍以上ある
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人間の視界とStarVRの視野角を比較した図。RiftやMorpheusは片眼あたりの視界カバー率が50%未満にすぎないが,StarVRは片眼あたり75%に達する
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 2つめのポイントは広大な視野角だ。RiftやMorpheusの視野角が,水平方向に100度前後なのに対して,StarVRでは2倍以上の210度を実現するという。この210度というのは,人間の視界と比較して,およそ75%程度になっているそうだ。5.5インチサイズというスマートフォンサイズのディスプレイパネルを2枚も使うことで,この圧倒的な広視野角が実現されているわけである。
 ちなみに,垂直方向の視野角も130度とのこと。こちらも,RiftやMorpheusよりも随分と広い。

 頭部の動きの追従(ヘッドトラッキング)は,前後左右と上下の移動,上下左右の首振り,時計回りと反時計回りの首傾きという6軸自由度に対応。この点はRiftやMorpheusと同等だ。この6軸自由度ヘッドトラッキングは,StarVRに内蔵された加速度センサーとジャイロスコープ,そして,外部に置いたカメラによって実現されている。

 Riftの場合,HMD上に実装された複数の赤外光LEDマーカーを,単眼カメラで撮影してトラッキングする方式を採用している。Morpheusでは,HMD上に実装された複数の可視光LEDマーカーを,ステレオカメラで撮影してトラッキングする方式だ。
 それに対してStarVRでは,LEDのような自照式マーカーは使わず,HMD上に取り付けた白黒の幾何学マーカーを,外部の赤外光カメラで撮影する方式になっている。

幾何学マーカーを取り付けたStarVRのイメージ
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デモ機のマーカー(左)。右はマーカーを撮影するための単眼式赤外線カメラ
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 今回はStarVRプロジェクトのプロデューサー,Tyler Sparks氏に話を聞くこともできたのだが,氏によると,今回持ち込んだシステムは,試作一号機という位置付けとのこと。気になる対応プラットフォームは「当面はPCに限られる」とのことだった。StarVRは両眼合わせて5120×1440ドットもの画面描画が必要なるため,現行世代のゲーム機には重荷なのだ。
 ちなみに氏いわく,最終製品ではいくつかの点で仕様を変更する予定。たとえば,解像度2560×1440ドットのディスプレイパネルは,試作一号機だと液晶なのを,有機ELへ変更する可能性があるという。

StarVRプロジェクトを指揮するTyler Sparks氏(左)。StarVRの体験コーナーには,Dellの「ALIENWARE Area-51」(仕様は不明)が2台ずつ設置されていた。ただし,1台はプレイの実況用とのことで,StarVRを動かすには2台のPCが必要というわけではない
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 価格は当然ながら,現時点では未定とのこと。StarVRは高解像度のディスプレイパネルを2枚採用することから,1枚のディスプレイパネルでまかなうRiftやMorpheusよりも,確実に高価な製品になるはずだ。
 また,2枚のディスプレイパネルとその駆動回路も含めると,HMD本体の重量がRiftやMorpheusより重くなる可能性もあるがと質問したところ,HMD筐体の素材にカーボンファイバーを採用することで対応するとSparks氏は答えていた。しかし,これもまた価格を押し上げる要因になりそうである。

 あくまで筆者の予想だが,StarVRはコストパフォーマンスを度外視してスペックや性能重視の設計をしているようなので,RiftやMorpheusよりも上の,ハイエンドHMDというポジションを狙っているのかもしれない。
 なお,気になる製品版の発売時期について,Sparks氏は「2016年後期を目標にしている」と述べるに留めていた。


ドットの見えない高精細さと上下左右に広がる視界の没入感はスゴイ!


StarVR体験コーナーは常に長蛇の列。筆者は二時間半待った。疲れきってこちらがゾンビになりそうなくらいに
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 スペックの高さは理解できたが,大事なのは実際にどんな体験ができるかだ。デモの順番を待つ大行列に2時間半並び続けて,筆者にもようやく順番が回ってきた。

 体験できたのは,StarbreezeがOVERKILLブランドで開発した新作ゲームOVERKILL’s The Walking Deadだ。

 デモでプレイすることになったのは,ゲーム本編から抜粋したFPS風の1シーン。プレイヤーは足を負傷して車椅子に乗っているという設定なので,ブースでも実際の車椅子に座って,StarVRを体験するという仕組みだ。ゲームの舞台は廃墟と化した病院で,足を負傷したプレイヤーがそこから脱出するというシチュエーションで展開する。女性のキャラクターがプレイヤーの座る車椅子を押すという設定のため,移動操作は基本的に自動で行われる。
 ゲームは前後左右から襲い来るゾンビ――The Walking Deadでは「Walker」と呼ばれている――と弾数制限のあるショットガンで戦い,どれだけの敵を倒し,長く生き延びられたかを競うという内容だった。

デモを体験中の来場者。ショットガン型コントローラを振り回しながら,襲いかかってくるゾンビと戦っている
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こちらはゲームのスクリーンショット。StarVRで体験したのと同じシーンで,病院から脱出するという内容
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体験者には,持ち帰り可能なNFCタグ付き帽子が配られ(左),体験前にはプレイヤーの名前がNFCタグに書き込まれる。すると,ゲーム中に自分の名前が入った帽子が登場するという,やたらに凝った演出があった。右はStarVRを装着中の筆者
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 StarVRを装着してまず驚かされたのは,圧倒的な解像感だ。片目あたり2560×1440ドットは伊達ではなく,RiftやMorpheusをはるかにしのぐ高精細映像が眼前に広がっていた。RiftやMorpheusでは,ドットピッチの関係で直視型ディスプレイパネル特有のサブピクセルが見えてしまうのだが,StarVRは1画素あたりのドットピッチが狭いので,それがあまり気にならない。細かい文字表現や材質表現も非常に鮮明で,ケーブルのような線分表現にもジャギー感が少なかった。

ショットガン型コントローラを渡される筆者。銃にもマーカーが付いてることに注目してほしい。ゲーム中で男性キャラクターが「自分の身は自分で守れ」とショットガンを差し出してくるのだが,その演出と連動しているため,本当にゲーム内キャラにショットガンを渡された気になる
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 210度の広視野角も感動的だ。視野角100度前後のRiftやMorpheusでも,左右を向けばそちらの方向が見えはするのだが,左右をしっかり見るためにはそちらにちゃんと首の向きを変えなければならない。一方,StarVRなら,左右の視界も開けているので,頭を横に向けなくても,目線を横にずらすだけで横方向がしっかり見えるのだ。正面を向いたままで,側方の敵を狙って撃つこともできる。すばらしい。
 人間の視覚において,視界左右端はぼんやり見えている程度にすぎない。にもかかわらず,VR対応型HMDで視界の左右が広がって見えていることは,没入感をここまで高めてくれるとは,正直,思いもしなかった。

視界が広いので,正面を向いたままでも側方の敵を狙って撃てる
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 StarVRの視野角は上下方向にも広いのだが,これも没入感の増強に大きく貢献している印象を受けた。ちょっと目線を下に向けるだけで,車椅子のタラップに乗せた自分の足(CGで描かれた足だが)が見え,目線を上に上げれば,壊れた天井やエアダクトを確認できる。
 VRコンテンツといえば,頭を上下左右に動かして没入感を楽しむものと思っていたが,StarVRでのVR体験では,現実世界と同じように,目線をまず動かしてから,次に首を動かすようになるのだ。

 ちなみに,デモは短いながらも,ゲームの完成度やストーリー進行がよくできていた。プレイヤーの車椅子を押する女性キャラクターは,「車椅子が思ったよりも重い」とか「私1人でこんなの動かすのは無理」などと愚痴をこぼすのが,パニック状況下ではむしろリアルな心理描写であるように感じられる。後ろを見れば,車椅子を押しながら不安そうな表情を浮かべる女性がちゃんと見えるので,なおさらゲームに引き込まれる。
 デモは,最後に弾切れとなってゾンビの群れに殺されてゲームオーバーとなるのだが,ここでも,上下左右に広がる視界がゾンビに埋め尽くされていくので,StarVRの広視野角という特徴をうまくアピールできていた。

覆い被さってくるゾンビをショットガンで叩こうとする筆者。これにはSparks氏も大笑い
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 では,StarVRには欠点はないのだろうか。
 1つ気になったのは,視界の中央が,ややぶれ気味に見えることだ。StarVRでは,2枚のディスプレイパネルを「へ」の字型に配置しているため,左右それぞれの目線がディスプレイパネルに対して直行しない。そのためか,意識して寄り目で見るようにしないと,映像の中央がボケた印象になることが多かった。

 個人差もあるとは思うが,RiftやMorpheusではそのように感じたことがなかったので,これはStarVR特有の現象ではなかろうか。光学系の工夫で解消できる問題のように思えるので,製品版では改善されることを期待したい。

StarVRは,2枚のディスプレイパネルを「へ」の字型に配置している。そのためか,寄り目気味に見ないと中央がぼやける
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 StarVRは,VR対応型HMDが高解像度と広視野角という特徴を備えることで,VRコンテンツにおける没入感を大きく進化させる可能性を垣間見せてくれたように思う。VR対応型HMDの第3勢力として,StarVRは,E3 2015で大きなインパクトを残せたのではないだろうか。

StarVR公式Webサイト(英語)

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