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[E3 2016]小島秀夫監督インタビュー。「DEATH STRANDING」はどんなゲームになるのか,タイトルに込められた意味やジャンルなど気になる点を聞いた
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印刷2016/06/16 16:30

インタビュー

[E3 2016]小島秀夫監督インタビュー。「DEATH STRANDING」はどんなゲームになるのか,タイトルに込められた意味やジャンルなど気になる点を聞いた

 北米時間2016年6月13日に行われたSony Interactive Entertainmentのプレスカンファレンスで,突如として発表となった,コジマプロダクションの「DEATH STRANDING」(デス・ストランディング)小島秀夫氏の登壇もあり,大いに盛り上がった本作の発表だが,いったいどのようなゲームになるのだろうか。
 E3期間中,小島氏に日本メディアで合同インタビューを行う機会があったので,その模様をお伝えしよう。


画像集 No.007のサムネイル画像 / [E3 2016]小島秀夫監督インタビュー。「DEATH STRANDING」はどんなゲームになるのか,タイトルに込められた意味やジャンルなど気になる点を聞いた

コジマプロダクション 公式サイト


――久しぶりに新作の紹介を伴う形でカンファレンスのステージに立ち,大歓声と拍手で迎えられました。率直な感想をお聞かせください。

小島秀夫氏
画像集 No.003のサムネイル画像 / [E3 2016]小島秀夫監督インタビュー。「DEATH STRANDING」はどんなゲームになるのか,タイトルに込められた意味やジャンルなど気になる点を聞いた
小島秀夫氏(以下,小島氏):
 E3はアトランタでやっていた1997年頃から来ていて,大好きなショウなんですが,今回は2年ぶりに来られました。感覚的には10年ぶりぐらいでしたけど。
 ターミネーターのように「I'll be back」とは言えなかったので,「I'm back」と事後報告をしましたが,非常に暖かい拍手をいただけました。「帰ってきた」という気持ちです。

 今年で53歳になりますが,僕はずっとゲームを作りたいんですよ。でもこの歳になると,普通定年とか考えるじゃないですか。家族からは「まだやるのか」と,あまり賛成してもらえませんでしたね(笑)。
 僕は死ぬまでやりたいので,今回,2か月半で一生懸命ティザームービーを作ったんですが,皆さんの賛同を得られたようです。この選択は間違っていなかった,オッサンでもまだ頑張るぞ,と決意を新たにしています。


――あのムービーはたった2か月半で作ったのですか。

小島氏:
 そうです。新しく会社を立ち上げるにあたって,建物と人と技術がいるわけですよ。でも何もなかった。なので,まずは世界中にいっぱいあるテクノロジーを見に行って,候補のエンジンをいろいろと探していました。
 それと並行して,会社の立ち上げと企画,人集めをやって,3月末にはノーマン(ノーマン・リーダスさん)を口説いてキャプチャして,そこからデータが納品されて……という感じで作っています。
 昔と違って,インディーズでもテクノロジーを使えるんですよ。編集機なんか買わなくても,PCで編集できる時代ですから。だから,インディーズでもその気になれば,世界に向けてハイエンドのゲームが作れるぞ,ということを見せたかった。
 といっても,これから作るんですけど。

――コジマプロダクションの規模を教えてください。

小島氏:
 今は人を集めている段階なので,何とも言えません。今回の発表で,また増えるでしょうし。

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――タイトルのDEATH STRANDINGとは,どのような意味なのでしょうか。

小島氏:
 イルカやクジラ,アシカなどが大量に座礁することを「Mass Stranding」(マスストランディング)と言います。それで,生きている状態がライブ ストランディング,死んでいる状態がデス ストランディングです。アザラシのタマちゃんなんかも,ある種のストランディングですね。
 タイトルの意味は,ある世界から何かが座礁してくる,何回も来る,というのを暗示しています。
 またストランドには,心理学用語で「より糸」「絆」という意味もあって,このカイルさん(カイル・クーパー氏)に作ってもらったロゴも,垂れているのは血ではなく,つながっているものです。
 ムービーではカニとかクジラ,ノーマンや子供がコードみたいなものでつながっていましたよね。世界観と物語,ゲーム性が全部つながる……ストランドがテーマになっています。

 僕は安部公房のファンで,(彼の作品に)「なわ」という短編小説があるんですが,ここである定義がされているんですよ。人類が最初に発明した道具は棒で,自分に敵対するもの遠ざける特性をもったものであると。その次に人類が発明したのは縄で,これは逆に自分がつなぎとめたいものを引き付けて縛るものであると。そして,今も棒と縄という道具を,人類は使っています。

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 よくよく考えてみると,今のゲームはオンラインでマルチプレイやCo-opなどができますが,これは棒なんですよ。人を殴ったりすることでコミュニケーションがなされている。DEATH STRANDINGは,その次に行こうとしています。当然,棒も出てきますが,ゲームをしながら,縄的な思考でつながるんです。それはストーリーも世界観も,ユーザー同士も,あるいはプレイを見せる実況者なども含めて,全部ストランドします。

 あと,ムービーについて「なぜノーマンを使ったのか」と聞かれるんですが,ノーマンは「P.T.」のときに仲良くなれたのに,ああいう結果に終わってしまって,彼も悲しんでいました。僕もつらい時期があって,彼には相談に乗ってもらっていたんですが,DEATH STRANDINGを作るにあたって話をしてみたら,「やりたい」と言ってくれて。
 また,カイル・クーパーさんは17年,マーク・サーニーさんも15〜16年,そしてソニー(・インタラクティブエンタテインメント)さんとも20年以上と信頼できる長い付き合いなので,開発側もストランドしてますね。

――DEATH STRANDINGのジャンルはどうなるのでしょうか。

小島氏:
 ジャンルは問うべきではないと思うんですよ。ゲームのインタラクティビティを一番問うことができますし,ノーマンを動かすからにはアクションではあります。
 ただ,アクションというジャンルには,シューター系なども含められますよね。アクションを車に喩えると,いろんな車があっても,だいたいの作りは一緒です。扉を開けて,椅子に座って,鍵を挿して,アクセル踏めば進んで……これが基本じゃないですか。でも,ハンドルが三角形とかの変な車だと誰も乗りません。

 そういう意味では,DEATH STRANDINGは尖った車ではありません。乗り込んで発進するところまでは,ちょっと目を引くぐらいの車(=アクション)です。でも,そのまま進んでいくと,見える風景が違ったり,縄的な喜びを感じられるゲーム性があったりします。

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 あと,「メタルギア」はスネークをコントロールするアクションですが,ステルスジャンルでもあります。当時は撃ちまくるアクションしかなかったところに,隠れて進むゲームを作ったら,それが定番になってステルスというジャンルができました。
 DEATH STRANDINGも同じで,ノーマンを動かすアクションではありつつも,その先にあるものは,未だ名前のないゲーム性です

――新しいゲーム性を作り出そうとしているわけですね。それは,以前から監督の中でチャレンジしたいと思っていたものでしょうか。

小島氏:
 いえ,チャレンジしたいものはいっぱいありすぎて,すぐ忘れてしまいますね。
 12月頃にコジマプロダクションを立ち上げて,当時は4人しかおらず,6畳もない仮事務所で何をしようか考えていたときに,皆さんの期待に応えることができて,作りたいと思えたもの,これを作ったら皆が驚いてくれるかな,と思ったものがDEATH STRANDINGです。

 最初は4人から始まったので,「ゼロからのスタートで大丈夫ですか」と心配されますけれども,今は自分達で作らなくても世界中にテクノロジーがあり,何よりも30年間ゲームを作ってきた経験があります。毎回ハードも開発チームもテクノロジーも違いましたが,その都度,精査してゲームを作ってきたので,今回もまったく不安はないです。絶対に成功すると思っています。

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 今はいろいろと実験をしているところで,使うエンジンをどれにするか,候補を2つに絞りました。今回のムービーは,僕らが作りたいビジュアルを表現するため,そのうちの1つのエンジンで作っています。もう1つのエンジンは新しいゲーム性を精査するためのもので,もうすぐ結果が出ます。それが終わってエンジンが決まれば,本格的に開発をスタートできるでしょう。

――以前,ゲームというのは大作ばかりではなく,海外ドラマのように短いスパンで作っていくことになるのではないか,とお話されたことがあったと思います。DEATH STRANDINGでは,そういった作り方は考えているのでしょうか。

小島氏:
 DEATH STRANDINGでは,(それは)ないですね。

――最後に,日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

小島氏:
 メッセージですか。僕はまだ頑張ってますよ(笑)。

――そのモチベーションはどこから来るのでしょう?

小島氏:
 皆さんが待っていてくれるからですね。見たこともない,世代も違う男性も女性も待っているというのは,すごく嬉しいです。自分が作るものを楽しみに待っている人がいるのだから,まだ死ねないと思いますし,自分を犠牲にしてでもゲームを作りたい。一昨日の発表でも,それが僕の使命だと感じました。

「コジマプロダクション」公式サイト

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