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ファンの想像する余地を大切にするのが「ゆめにっき」らしさ。「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」開発チームインタビュー
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印刷2018/02/23 15:00

インタビュー

ファンの想像する余地を大切にするのが「ゆめにっき」らしさ。「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」開発チームインタビュー

 KADOKAWAは本日(2018年2月23日),ききやま氏が開発したフリーゲーム「ゆめにっき」を原作としたPC向け夢探索アドベンチャー「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」(以下,「DREAM DIARY」)の配信を,Steam/PLAYISMで開始した。

画像集 No.001のサムネイル画像 / ファンの想像する余地を大切にするのが「ゆめにっき」らしさ。「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」開発チームインタビュー

 本作は,2004年に初公開され,2007年に最新のver.0.10が公開された「ゆめにっき」をベースに,グラフィックスの3Dモデル化や,ゲームシステムの変更などを施し,現代のインディーズゲームスタイルで再構築したタイトルだ。

 KADOKAWAのツクール事業部と,「ゆめにっき」を愛する開発スタッフが数多く在籍するというアクティブゲーミングメディアとの共同開発で作られ,原作者であるききやま氏の許諾・協力・全面監修を受けているという本作。
 世界観はおろか,登場キャラクターの名称さえも一部を除いて明らかにされておらず,夢の中をただひたすら目的もなく歩き回るという独特なゲーム性から,さまざまな解釈を生んだ「ゆめにっき」の名を冠した新タイトルということで,一体どのようなタイトルなのか気になっている人も多いはずだ。そこで今回4Gamerは,「DREAM DIARY」がどのようにして作られたのか,本作の開発チームにインタビューを行った。

(右)KADOKAWA 「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」プロデューサー
一之瀬裕之氏

(左)アクティブゲーミングメディア 「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」ディレクター
水谷俊二氏
画像集 No.006のサムネイル画像 / ファンの想像する余地を大切にするのが「ゆめにっき」らしさ。「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」開発チームインタビュー

原作者ききやま氏のサイト KikiyamaHP

「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」公式サイト


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。早速ですが,「DREAM DIARY」の開発が始まった経緯をお聞かせください。

一之瀬裕之氏(以下,一之瀬氏):
 はい。まず,このプロジェクトが始まる以前のお話をさせていただく必要があると思います。私はツクール事業部の人間なのですが,「DREAM DIARY」以前から,RPGツクール発のタイトル「青鬼」がスマホゲームになったり,映画化されたりと2次展開されていたケースがありました。

4Gamer:
 青鬼は有名なタイトルですね。

一之瀬氏:
 そういう2次作品で,初めて青鬼に触れた人の中には「原作がRPGツクールで作られていること」を後に知り,RPGツクール自体に興味を持っていただいた方も多くおられました。
 私たちとしては,こういったRPGツクール発のレジェンド作品を再構築して,2次展開することで,RPGツクールというツールを知ってもらい,制作シーンを盛り上げ,新しいレジェンドタイトルが生まれる土壌を作り,大きなサイクルを作っていきたいという思いがあり,その流れで今回の「DREAM DIARY」の企画を立ち上げさせていただきました。

4Gamer:
 RPGツクールの制作シーンの活性化を目的としたプロジェクトだったと。
 ですが本作は,RPGツクールを使って作られたものではありません。RPGツクール製にこだわらなかったのは何故ですか。

一之瀬氏:
 企画の始まりはそこなのですが,「ゆめにっき」がなぜ世界で受け入れられているかを考えた時に,RPGツクール製にこだわらないという選択肢も見えたからです。
 「ゆめにっき」は,国内での人気はもちろんですが,海外にもファンが多いタイトルで,海外での人気は,ほかのRPGツクール製のゲームと比べても突出しています。「DREAM DIARY」のプロモーションでも,海外ファンからすさまじい反応をいただきました。それを見たときに,RPGツクール製にこだわらず,現代のインディーズゲームとして再構築したゆめにっきを作ることも,多くの人に喜ばれる選択肢の1つではないかと思えたんです。

4Gamer:
 水谷さんは話を聞いたときどう思われましたか。

画像集 No.003のサムネイル画像 / ファンの想像する余地を大切にするのが「ゆめにっき」らしさ。「YUMENIKKI -DREAM DIARY-」開発チームインタビュー
水谷俊次氏(以下,水谷氏):
 実は僕もゆめにっきファンで,ゆめにっきは日本におけるインディーズゲームのトップにあるタイトルの1つだと思っています。光栄なことに,弊社が運営しているPLAYISMでは2012年から原作を取り扱わさせていただいており,同時に海外版の翻訳も手掛けていました。
 その縁もあって,「僕らに何ができるかは分からないけど,ききやまさんにはずっと恩返しをしたい」という思いが開発チームの中でずっとあったんです。そういう土壌があるところに今回のお話が入ってきたので,新しいゆめにっきのプロジェクトならぜひということで,携わらせていただくことになりました。

4Gamer:
 開発チームには,ゆめにっきのファンが多いと聞いています。

水谷氏:
 そうなんです。うちの開発には,海外出身の人間が多いんですが,特に今回アートディレクターを務めたのは,「ゆめにっきが好きで日本に来た!」というぐらいのファンです。

4Gamer:
 開発自体はいつごろから始まったのでしょうか。

水谷氏:
 ちょうど昨年の2月ごろに初めて企画のお話があって,実際の開発期間は約9か月です。

4Gamer:
 かなり短い期間ですね。発表からリリースまでの期間も1か月と短いですし,Steam版の原作も突然発表されて驚かれた方は多いと思います。

水谷氏:
 大々的に宣伝してリリースするのもいいですが,突然リリースするほうが「ゆめにっき」らしいのかな,と思ったので,Steam版に関してはああいう形を取らせていただきました。「DREAM DIARY」に関しては,実は東京ゲームショウ2017にもこっそり出していたんですよ。

4Gamer:
 え,そうなんですか! 全く気づきませんでした……。

一之瀬氏:
 あと,告知からリリースまでの期間が短いのは,皆さんの熱量が熱いうちにお届けしたいという思いもあってのことです。

4Gamer:
 今回は原作のようなドット絵ではなく,3Dグラフィックスを使っておられますが,これは何故でしょうか。

水谷氏:
 原作は「RPGツクール2003」で作られたタイトルですが,「DREAM DIARY」は,「もし,2018年にゆめにっきが作られていたらこういう形もあったのではないか」というイメージで作りました。今ならではのインディーズゲームのスタイルで,また違ったゆめにっきの見せ方ができるのではないかと。10年以上経った今だからこそできるものとして,今回3Dグラフィックスをベースにしたものを提示してみようと思いました。

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新作も“ゆめにっきらしく”自由に想像する余地を持たせる


4Gamer:
 今回,原作者のききやまさんが監修しているということですが,「DREAM DIARY」には具体的にどう関わっておられるのでしょうか。

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一之瀬氏:
 ききやまさんとは,本作の企画段階からお話をしていて,3D化やゲーム内容についてももちろんご存知です。
 ただ,ゆめにっきをプレイしていただければ分かると思うのですが,「ゲームの中で多くを語らない」というのが,ききやまさんのスタイルで,我々にも多くを語らない方なんです(笑)。もちろん,監修はしっかりしていただいていますが,最初から「ここをこうしてほしい」というように多くオーダーがあったわけではなく,「自由にしていただいて構いません」とおっしゃっていただいたところから開発が始まっています。

4Gamer:
 システムや演出に関して何か特別なオーダーがあったわけではないと。
 一方で,「ゆめにっきがゆめにっきたり得る,外せないポイント」のようなものはあると思います。そこに関してききやまさんは何かおっしゃられていましたか。

一之瀬氏:
 ききやまさんは,「ゆめにっきの根幹にあったのは,説明的なものをなくし,プレイヤーに自由に遊んでもらいたいという思いだった」とおっしゃられていました。
 「DREAM DIARY」も,説明的な部分をなくし,ある意味でプレイヤーを突き放していると言える作品なので,ききやまさんには「説明的な部分がなくて,原作に忠実でいいですね」とおっしゃっていただけました。

4Gamer:
 ゆめにっきは,ファンの間でさまざまな考察が繰り広げられてきた作品です。10年以上の長い月日で,それぞれに自分の中での“ゆめにっき像”が固まっていると思いますが,本作では,そういった考察が活発になりそうな要素はありますか。

一之瀬氏:
 なかなか答えづらい質問ですね(笑)。
 確かにゆめにっきについて考察されているサイトは多くありますが,恐らくききやまさん自身は「考察して欲しい」と思って,ゆめにっきを作られたわけではないと思うんですよ。なので私たちも「新しい考察要素を入れよう」といった思いは正直持っていません。
 ただ,今までと違った表現方法をとっているので,新しい考察が生まれる可能性も大いにあると思います。特にオープニングとエンディングに関しては,いろいろな議論を生むかなと。

4Gamer:
 ひょっとしてオープニングとエンディングが原作と異なるんですか。

水谷氏:
 はい,その通りです。

一之瀬氏:
 実は今日オープニングの映像を持ってきているんですが。

4Gamer:
 いいんですか! ではお言葉に甘えて。


――――(試聴後)

4Gamer:
 確かにこれは話題になりそうですね……。原作をプレイした人が「ドキッ」としそうなオープニングです。

水谷氏:
 かなりギリギリを攻めてます。

4Gamer:
 今オープニングを見て改めて思うのですが,10年経った今になって新しい見せかたをファンに提示するのは,相当な勇気が要りませんでしたか。私が同じ立場なら尻込みしてしまいそうです。

水谷氏:
 もちろん不安はありますし,正直「すごいことをしてしまっているな」と自分たちでも感じますよ(笑)。挑戦的なプロジェクトだと思います。
 ゆめにっきの魅力は「想像の余地があって,プレイした人が,それぞれ自分なりのゆめにっき像を描けるナラティブなところ」だと僕は思うんです。
 本作には,「原作に対して何か答えを出そう」という意図はなくて,原作同様,それぞれのプレイヤーが想像してもらえるような余地があるような作品を目指して作っています。これを通じてファンの皆さんがそれぞれ持っているゆめにっきの世界が膨らめばいいなと思っています。

4Gamer:
 そもそもゆめにっき自体が,「これだ!」と一言で語れないタイトルなので,開発の方たちは相当苦労されていそうですね。どのように開発を進めていったのでしょうか。

水谷氏:
 開発に関してはおっしゃる通りかなり大変でした。
 最初にコンセプトアートを作って「こういう方向性で進めましょう」というのを決めてはいるんですが,先ほどの話にもあったとおり,アートディレクターがゆめにっきのファンですし,スタッフにもファンが多いので,細かい部分を作っていくうちにいろいろ気になってくるんです。「これはゆめにっきっぽくない」「これをゆめにっきに出してもいいのか」「そもそもゆめにっきとは何なのか」と試行錯誤しながら,作っては壊し,作っては壊しを繰り返して進めていきました。

4Gamer:
 いろいろなものをカッチリと決めて作っていたというよりは,作りながら開発チームで考えていったということですか。

水谷氏:
 むしろそういうスタイルで作るしかなかったという感じです。
 ききやまさん自身も「ゆめにっきというのはもはや,誰かの考え方を押しつけるようなものではなくて,みんなのものなんだ」という考えをお持ちのようで,ききやまさんから僕らにも「プレイヤーが自由に想像する余地を持たせること」以外には明確な前提は提示されませんでした。なので本当に悩みながら作りました。

4Gamer:
 お話を聞いていると,本作を“Remake”ではなくゆめにっきの“Reimagine”作品という言い方をされているのにも,何か特別な意味が込められているように思えます。

水谷氏:
 そうですね。本作は,原作の世界観をベースに,ゆめにっきというものを再構築した作品で,“Remake”とは言い切れないタイトルですし,ゲームシステムも原作と異なります。

4Gamer:
 ゲームシステムが違うのですか。

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一之瀬氏:
 はい。本作では横スクロール型や,俯瞰型のフィールドで謎解きや探索を行ったり,アクション的な要素を入れたりしています。

4Gamer:
 そこを変えるということに対しては,いろいろな意見もありそうですが。

一之瀬氏:
 確かにゲーム性の部分は原作と明らかに違うので,昔からのコアなファンには抵抗がある方もいらっしゃるだろうと思っています。ただ私がプレイした限り,ゆめにっきのポイントはしっかり押さえられていると感じました。先ほどの話にもありましたが,開発の方たちはゆめにっきのコアなファンが多いので,そこはさすがだと。

4Gamer:
 原作を愛しているからこそ「ここまで踏み込んでいいのか」といろいろ考えてしまいそうですね。

水谷氏:
 そうですね……そこは頭を抱えましたし,本当に“ゆめにっき愛”が試されているプロジェクトだなと思います。僕たち開発者も何が正解かは正直分かりませんし,正解を出すものでもないと思っています。今回は,「分からないけど,こうじゃないかな?」というものを僕たちなりに考えて作りました。僕たちの“ゆめにっき愛”がファンに伝わればいいなと思っています。

4Gamer:
 そういえば,気になっていることが1つあるんですが,原作にあったミニゲーム「NASU」は「DREAM DIARY」にもあるのでしょうか。

ゆめにっきのゲーム中に遊べるミニゲーム「NASU」
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水谷氏:
 もちろんあります。実はスタッフが頑張って作り込みすぎた結果「SUPER NASU」にバージョンアップしてしまったんですが(笑)。

4Gamer:
 SUPER NASU! それは楽しみですね。

水谷氏:
 開発スタッフが忙しいのに「NASU」をものすごく作り込んでしまったんですよね。
 正直,「時間がないのになんでそっちを頑張るんだ!」と思いましたが(笑)。

一之瀬氏:
 あと,実は今回RPGツクールつながりで,「青鬼」とコラボしたミニゲームが遊べるようにもなっています。ある条件を満たすと,夢の中のゲーム機で遊べるようになるので,ぜひ見つけて楽しんでください。


ゆめにっきのベースは,ききやま氏が実際に見た夢


4Gamer:
 今回新たに,ききやまさんが原作の制作当時に描いた未発表キャラクターが登場すると告知されましたが,どういった経緯で登場することになったのでしょうか。

一之瀬氏:
 もともとは,こちらからキャラクターが欲しいとお願いしたのがきっかけです。ききやまさんは快諾してくださり,すぐにイラストを提供していただきました。これは後から知ったのですが,このキャラクターは,原作に登場できなかったキャラの中でも特にききやまさんがお気に入りだったのだそうです。

原作の制作当時,ききやま氏が描いた元のデザイン(左)と,「DREAM DIARY」用にリデザインされたイラスト(右)
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4Gamer:
 思い入れのあるキャラということは,原作の設定や,どこに登場する予定だったかなど,ききやまさんから説明があったのでしょうか。

水谷氏:
 いえ,それがまったくなかったんですよ。あのイラストがすべてです(笑)。
 「そもそもこのキャラって何なんだろう……?」というところから始まり,そこから3Dだとどう見えるかを考えてモデルを作ったり,体の色は何色なんだろうと打ち合わせをしたりしながら作っていきました。

4Gamer:
 イラストが送られてきてから立ち位置を決めていったと。

一之瀬氏:
 ききやまさんのご自宅には,ゆめにっきの制作にあたって作られた「創作ノート」というものがあり,その中に描かれていたキャラの1体だそうです。

4Gamer:
 今も創作ノートを残しておられるんですか。

一之瀬氏:
 私も実物を見たわけではないんですけどね。
 恐らくこれはききやまさん自身も公式にお話されていないと思うんですが,ゆめにっきの世界観は,“実際にききやまさんが見た夢”がベースになっていて,それを創作ノートにまとめているのだとおっしゃっていました。

4Gamer:
 まさにタイトル通り「ゆめにっき」だったんですか。
 PlayStationで発売された「LSD」は,同じ夢を題材にしたゲームとしてよく一緒に名前が挙がりますが,あれも“開発スタッフが見た夢をメモに書きためたもの”がベースになっているという話を聞いたことがあります。まさか出発点まで同じだったとは……。

「LSD」
(C)1998 Asmik Ace EntertainmentInc./Out Side Directors company ltd.
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多くを語らず,作品や行動で表現するのがききやま氏


4Gamer:
 さて,いろいろと悩み抜かれながら作られた「DREAM DIARY」ですが,ファンの反応はいかがですか。

水谷氏:
 まず,ものすごく多かったのは「ききやまさんは生きていたのか!?」という問い合わせでした(笑)。

(一同笑)

4Gamer:
 ちょくちょく「亡くなったんじゃないか?」と噂されていますよね(笑)。

水谷氏:
 何故か死亡説が流れるんですよね。はじめは「偽物なんじゃないか?」とも言われましたし。

一之瀬氏:
 ききやまさんとツクール事業部は,以前から交流があり,KADOKAWAの新年会にお越しいただいたこともあるんですよ。昨年の東京ゲームショウ2017のときもブースまで来ていただきましたし。「ききやまさんはご存命で,本作を監修されているのは本物です」とお伝えしておきます(笑)。

4Gamer:
 新作の内容に関してはどんな反応がありましたか。

水谷氏:
 ききやまさんが監修されていることもあって,多くの方に喜んでいただいています。もちろん,皆さんそれぞれにゆめにっき像を持っていらっしゃるので,肯定的な意見だけでなく厳しいご意見も中にはありますが,ファンの皆さんが10年間ずっとゆめにっきが好きで,熱い気持ちでこの作品を見てくださっているのがすごく伝わってくるので,本当にありがたいなと。

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4Gamer:
 海外ファンからの反応はいかがでしょうか。

水谷氏:
 同じく大きい反響をいただいています。実は僕らも海外のファンがたくさんいるとは聞いていたんですが,具体的にそれがどれほどのものか,Steam版の原作をリリースするまで分からなかったんです。
 いざふたを開けてみたら,国別ダウンロード数ではアメリカが1番で,南米でも多くの方に遊んでいただけていました。それを見て「ああ,ゆめにっきって世界的なIPだったんだ」と改めて実感しました。

4Gamer:
 予想以上の反響だったと。

水谷氏:
 ゆめにっきは,日本と同じで海外もゲーム実況で火がついたんですよね。世界的に有名なYouTuberのPewDiePieさんも実況プレイをしていて,そういった反響があって知られていったのではないかと思います。言葉がないゲームだからこそ,世界中の多くの人の心をつかんだのかもしれませんね。

一之瀬氏:
 日本と同じく海外のコミュニティでも,ゆめにっきについて語る人は多くいらっしゃって,ききやまさんの性別や,そもそも個人なのかグループ名義なのかという論争をされている人もいると聞きました。確かに言われてみれば皆さんには分からないですよね。

水谷氏:
 海外から「Heですか? Sheですか?」「どんなやり取りをしてるんですか?」という問い合わせは結構ありますね。

4Gamer:
 確かに姿はおろかハンドルネーム以外にまったく情報を出されていません。

一之瀬氏:
 プロジェクトが立ち上がったときも,今回のようなインタビューがあるので,「コメントをお願いします」とか「後ろ姿だけでも出ていただけませんか?」とかお願いしたんですが,ご自身の露出に関しては全部NGでした(笑)。

4Gamer:
 あくまでも今までのお話を聞いた私の予想ですが,「ゆめにっきに対して,自分自身が出てきてはっきりと答えを出すべきではない」と思っていらっしゃるのかもしれません。

一之瀬氏:
 そうだと思います。自分自身が表に出るべきではないというスタンスを貫き通していらっしゃるんですよね。今まで表に出てこられたことは一切ないですし。

4Gamer:
 ゆめにっきという作品の純粋性やミステリアスな雰囲気を保たれているのかもしれませんね。

一之瀬氏:
 ただ今回,本作の発表に合わせてまさに今日(※インタビューは2月7日に収録)ききやまさんが,約10年ぶりに自身のホームページを更新してくれたんですよ。
 よく見ないと分かりませんが,ホームページのタイトルバナーが原作のものから「DREAM DIARY」のものに変わっています。

ききやま氏のホームページ。ゆめにっきのゲーム紹介ページを確認すると,タイトルバナーが「DREAM DIARY」のものになっている
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4Gamer:
 あ,本当ですね! これは……ききやまさんの応援メッセージなのでしょうか?

一之瀬氏:
 言葉にしないところが,すごくききやまさんらしいなと思います(笑)。

4Gamer:
 多くを語らないのが“ききやまスタイル”なのですね。
 さて,そろそろお時間も迫ってまいりましたので,今後の展開について聞かせてください。現在はPCでのみの発売ということですが,コンシューマ機に移植される予定はあるのでしょうか。

一之瀬氏:
 率直に申しますと,コンシューマ機への移植はPC版の売れ行き次第です。もちろん私たちとしては,PCを持っている方だけでなく,いろいろな方にプレイしていただきたいという思いは当然ありますので,GOサインを出せる状況になったら移植は視野に入れていくつもりです。

4Gamer:
 コンシューマ機での展開も期待しています。
 では最後に,ゆめにっきファンに向けてメッセージをお願いします。

水谷氏:
 ファンの方々がゆめにっきを愛し続けてくれたおかげで,僕たちもこのようなプロジェクトに携わらせていただくことができました。「ゆめにっきを知らない人にも触って欲しい」「もう一度ゆめにっきを世界に届ける」という思いを込めて作ったので,きっと喜んでもらえると信じています。
 ぜひプレイして,新しい視点からのゆめにっきを体験して欲しいですし,もし周りにゆめにっきを知らない人がいたら,ぜひ紹介していただいて,世界がどんどん広がっていけばいいなと思います。それが我々のできる,ききやまさんへの恩返しだと思いますので。

一之瀬氏:
 このプロジェクトを最初に持っていったとき,開発の方のモチベーションが,熱気を感じられるぐらい非常に高かったのを今でも覚えています。
 ツクール発のIPがリッチコンテンツ化して世に出ることは,初めてのケースだと思いますし,開発の方々もゆめにっきを“Reimagine”化したいという思いに溢れている開発チームです。その思いをぜひファンの方々に受けとめていただき,プレイしてほしいと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。
  • 関連タイトル:

    YUMENIKKI -DREAM DIARY-

  • 関連タイトル:

    ゆめにっき

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