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[NDC19]2Dゲームのキャラ制作期間を大きく短縮した自動化技法とは。「Spiritwish」開発スタッフの講演をレポート
Nexon Developers Conference公式サイト(韓国語/英語)
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「Spiritwish」は,2018年11月に開催されたイベント「G-Star 2018」にプレイアブル出展されていたスマートフォン向けRPGだ。現在,韓国では正式サービスが行われているが,日本での展開については未定になっている。
パク氏はまず自己紹介として,かつてキム・ハッキュ氏に勧誘されてGRAVITYに入社し,PC向けRPG「アークトゥルス」の開発に携わったという経歴を語った。アークトゥルスに対するプレイヤーの厳しい評価のために心が折れて,逃げ出したこともあったという。
続いて,会場のスクリーンに1枚のスライドが映された。1万1200枚という数字が大きく記載されているが,これは「ラグナロクオンライン」でキャラクター1体を表現するのに必要なスプライトの数だという。同様に,「メイプルストーリー」は9200枚,「アラド戦記」は2500枚だと紹介された。
「アラド戦記」は比較的少ないが,スキンや色のバリエーションも合わせた場合は約50万枚にもなるとのことだ。もし「アラド戦記」のキャラクターを1人で制作するとなれば,毎日24時間の作業で57年かかる計算になるとパク氏は説明した。
パク氏は,「Spiritwish」で採用した自動化の技法を適用できれば,この作業時間を1割にまで減らすことが期待できるとした。当初「Spiritwish」では,キャラの頭部にビルボード(※3Dグラフィックスで使われる板のようなもの)を装着し,そこに,アニメーターが制作した3Dレンダリングの絵をかぶせていた。
結果としては満足のいくクオリティになったが,新たな問題が浮上した。デザイナーの負担は減ったが,今度はアニメーターの作業量が増大したのだ。
さらに,それぞれのアニメーターの能力が異なっているため,複雑なアニメーションになるほど品質にムラが出やすくなる。一定のクオリティを維持しつつ,全体の作業量を削減するには「自動化しかない」という結論にパク氏は至ったそうだ。
具体的にはヘアアニメーションや,キャラクターの表示角度の自動化などが行われたという。髪の毛は振り子のように動く仕組みにし,一部の髪の動きにほかの髪の毛が従うようにした。X,Y軸の動きの影響をZ軸も受けるようにし,さらにレイヤーを重ねて立体感を作っていったという。
表情はスクリプトを使った制作に変更され,すべてのキャラクターに適用された。頭部の位置が同じであるため一括して適用することが可能だったが,それでも細かい調整は必要だったという。頭部の動く方向に応じて視線を変えるようにしたので,どこに向かっているのかも自然に表現できた。
こうした技法を採用したことで,パク氏によれば,「50万時間が必要なところを1250時間にまで短縮できた」という。なお現在パク氏は,ディープラーニングの技術を取り入れて,よりクオリティの高い自動化が可能かを検証しているそうだ。
「Spiritwish」は,クオータービューとサイドビューのゲームだが,自動化を活用してVRゲームの制作に挑戦することも考えているとパク氏は付け加えた。
最後にパク氏は本講演の内容を振り返り,本来はもっと堅い講演を予定していたと述べた。専門家には不十分,初心者には難しい解説になったかもしれないが,うまく伝わっていることを祈っているとコメントして,講演は終了した。
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