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王道の皮を被ったゴリゴリの悪魔(ハクスラ)だった。新作RPG「ラストイデア」でガチャなし,やめどきなしのトレハン体験
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印刷2019/03/22 00:00

プレイレポート

王道の皮を被ったゴリゴリの悪魔(ハクスラ)だった。新作RPG「ラストイデア」でガチャなし,やめどきなしのトレハン体験

 スクウェア・エニックスは,新作スマホゲーム「ラストイデア(LAST IDEA)」iOS / Android)を,2019年春に配信する。

 今回はトレジャーハンティングRPGを謳う本作を先んじて触れてみたのだが,どうやらこのゲームは「冒険ファンタジー」「手軽にトレハン」「ガチャなし」などの生易しい表現で素顔を隠す,“王道の皮を被ったゴリゴリの悪魔(ハクスラ)”のようである。

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※本稿で使用しているゲーム画面のスクリーンショットは開発中のものです

「ラストイデア」公式サイト



美しいビジュアルの裏で,悪魔が嗤っている


 君は,飛空艇で大空を駆け巡る“新米のトレジャーハンター”だ。

 君は仲間のひとり,占い師ラ=メルザが察知した宝物の気配を探るべく,彼女たちと孤島の古城「沈黙の城」へと向かった。しかし,城の周辺から突如として闇が噴出し,城に魔物の大群が押し寄せた。慌てて引き返そうとする君の目に映ったのは,城のバルコニーでただひとり,今にも魔物に襲われそうな少女の姿だった――。

 かくして君は,記憶を失った謎の少女「ルクレシア」との出会いをきっかけに,仲間たちとともに世界の陰謀に立ち向かっていく。あらすじだけ取っても,この物語に形容詞はふたつといらないだろう。巻き込まれ系の新米主人公が織り成す,王道ファンタジー(ボーイ・ミーツ・ガール風味)である。ついでに要所では本格アニメーションが流れる。

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 自身のキャラクターアバターは,顔や体形や髪形やボイスなどを多数のパターンの中からそれぞれ選択できる。名前や容姿はゲーム開始後にいつでも変更できるので(容姿の変更には専用チケット or 有料通貨ジェムが必要),遊びはじめは趣味嗜好の赴くままにパパッと決めてしまおう。

 ひとつ注意しておきたいのは,キャラクターネームだろうか。ストーリー中,ここでつけた名前は頻繁に呼ばれるので,「一緒に行きましょう,薄塩」「ありがとうございます,薄塩」などの台詞をよく目にした。物語に没入したい人は本命気味に,そういうものと見られる人は振り切った名称にするといい。

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 ゲーム内容をかいつまんで説明すると,マップ上でクエストを選び,キャラクターを操作して敵をなぎ倒し,報酬の獲得を目指すといったものだ。操作の特徴は“スマコマ”なる特許出願中の仕様を搭載していることで,画面に指で「/」「〇」などの模様を描くと,事前にセットした対応スキルが発動する。動的な操作体験を狙ったものだろう。

 バトルはWAVE制で,基本的にキャラクターの移動操作はせずともいい。ゲーム進行によってタップ移動が開放されるが,基本的に「走る」ことしかできないので,スタイリッシュな回避ではなく,堅実な位置取りがキモとなる。攻撃はすべて手動操作によるスキル使用だが,弓や杖などの遠距離攻撃はオートで発動し続ける。そのぶん,特定の敵のターゲットはしづらい。オートスキル機能も搭載されているが,遠距離職だと「柔らかいボディで敵陣にテレポート」などの事故があるので,スキルセットでの予防が求められる。

 ゲームはストーリーの進行,クエスト難度の変更,タワー型コンテンツなどで遊んでいくが,特定のマップではパーティを組んで最大4人同時マルチプレイを楽しめる。面子はコミュニティで集めたり,集会所で不特定多数のプレイヤーから募集したり,メンバー待ちをしながらほかのことをできたりと,仕様回りのストレスは少なめだ。クエストは即時クリアのほか,連続周回プレイにも対応している。そのうち「3-6 10周 @2」などの募集メッセージが並ぶようになるかもしれない。

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 本作では“手軽にハック&スラッシュ”が掲げられており,バトルでは同ジャンルの代名詞的作品「ディアブロ(Diablo)」シリーズでよく見られる,強力ド派手な必殺技の数々で大量のザコ敵を一蹴していく爽快感が得られる。チマチマと戦うスマホアクションの時代はもう終わりだ――とでも言うかのようなスタンスに,開発陣のハクスラ魂が垣間見える。

 LVUP時のスキルポイントの割り振りなど,願望があふれすぎて頭が痛くなるほどだが,キャラクターのステータスやスキルツリーは,お手ごろなゲーム内通貨を支払えば簡単に振り直せる。筆者は「強力なスケルトンの軍勢を呼びまくって後ろのほうで高みの見物を決め込むネクロマンサービルド」に根拠なき最強を感じたので,すべてのリソースを注ぎ込んだが,こういうのが過ちだったときに気軽に手のひらをひっくり返せるのは嬉しい。

戦闘の【GIFアニメーション】。クリックで自動再生。光のエフェクトが発生している場所が操作箇所。基本は片手で遊べるが,両手のほうが安心感がある
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 ゲーム開始時のスキルツリーは「死霊」を選択したが,LVUPでアンロックされた2つめのツリーには「剣」を選び,近接の剣技を扱えるようにした。スキルツリーは剣・弓・盾・斧・槍・二刀・炎・雷・氷・死霊など10種類以上が存在する。ゆくゆくは最大3種までスキルツリーに同時に設定できるようになり,それぞれのスキルを混在して扱える。

 筆者が目指したのは,死霊を操り,剣技で切り裂き,弓術で寄せつけない,なんだかよく分からないけどすごいネクロマンサービルドだ。今はまだ,たくさんの敵に囲まれると走り回っても逃げきれないことを悟ったため,逃走のためだけに近接突撃系スキルを確保した,「剣閃の如き速さで逃げ回りながら死を振りまくネクロマンサー」止まりだが。

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 バトル中に使用可能なスキルは2つ3つどころではなく,計3種のスキルツリーをミックスしたうえで,8操作分をセットできる。スキルアイコンの切り替え機能を使えば,8操作×3段階の切り替え=計24個までだ。筆者は自動で戦ってくれるスケルトンに操作負担をすべて肩代わりしてもらい,爽快感だけをかすめ取っているので,ほぼ「タメ」しか使っていないが。

 スキルの種類は,ストーリー上で“イデア”と出会うと追加される。イデアとはその道の頂点に立つ者のことで,剣のイデアの騎士炎のイデアの魔女などがいる。なお,イデア由来の追加スキルツリーの選び直しだけは特殊なアイテムが求められるため,下記のイデアリストで進捗を予測して,最初のうちにあれこれ想像しておくといい。そのほうが楽しい。

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 ガチャなし宣言のとおり,武器,防具,アクセサリーはクエストで入手する。簡単にドロップするとは言えないが,最初のクエストでも☆4(エピック)☆5(レジェンド)がポロっと出てくる。このときの嬉しさは,コンシューマっぽいと思った,スマホゲームっぽくないと思ったというより,プレイが実を結んだときのゲーム的な喜びが先立った。

 入手できる武具の性能も固有値ではなく,“ひとつひとつ数値や付与が異なっている”。キャラクターのステータスと武具のパラメータなど,初見では頭が痛くなるような,思わずよだれを垂らしてしまいそうな,各種属性や耐性などの無数の項目がズラ―ッと並んでいる。「そのあたりも満足できる装備が手に入るまで潜れ」と言わんばかりだが,1日2日ほど遊んでいれば全身☆4装備くらいは目指せるので,当面はよしとしよう。

 一応,武具は作成,分解,強化などを行える「鍛冶屋」も存在するが,テスト段階では調整中であったこともあり,詳しく触れることはできなかった。

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 本作には「オークション」が存在する。今回はローンチ前とあり,リアルな体験はできなかったが,ここでは専用通貨「エメット」を用いてプレイヤー間でアイテム取引ができる。単純な購買ではなく,入札制というのが心をくすぐる。武具の細かな差異が相場にどのような影響を与えるのか,すでに興味深い。なお,武具には装備必要ステータスが存在するので,資本主義な初心者でも最初から最強とはいかない。

 今から思いつく搦め手は,「100リツイートしてくれたら最強装備を放出します!」などのSNS盤外戦だろうか(特定の人に販売する機能はないものの)。あるいは後世の成熟した環境では,昨今はあまりお目にかかれない,いにしえの儀式とさえなってきた,「引退するので装備配布します!」などの式典も執り行われるようになるのかもしれない。

 なんにせよ,プレイヤー同士で物質的な価値を共有し合える,楽しげなシステムと言える。初の☆5武器が死霊ビルドでは使い道がない弓だったときの悲しさはなかなかのものだったが,オークションでこれを放出して大儲けし,誰かから同じように排出される杖を待つか……などと考えていると,この世界の経済はうまく回っていく予感がした。

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 アプリ内課金は「アイテムパックの購入」「時短用のブースト」「トレジャーダンジョンのプレイ権」「スタミナ回復」が主となる。アイテム類は方針として“最強装備はゲームプレイでのみ獲得可能”にするとのことなので,あると便利なピンポイント販売といったところだろう。時短に関しては,一定期間の定額サービスで提供されるようだ。

 曜日制のトレジャーダンジョンは日1回は無料だが,“曜日や回数を気にせず遊ぶ”のが有料となる。これに関してはやれば分かるが,バランスを崩しているわけでもなく,単純に「こりゃ開放したくなる」と思ってしまう程度に魅力的だ。スタミナの価値もかなり高く,回復薬はあるものの,溜まるまでのもどかしさが半端ではない。いずれも「100ジェム(=100円)」の支払いで済むことから,大型筐体ゲームの追加プレイにお金を投じる感覚,といった体験が思い起こされる(トレダンのプレイ権は利用回数に応じて値段が上昇)。

 これらにより,プレイヤーはクエストやトレジャーダンジョンをプレイし,そこで今よりも強力な武具を手に入れることに欲求が向く。「ガチャじゃないけど,お金を使って遊んで手に入れる試行錯誤はガチャみたいなものでは?」などと小賢しい論法を思い浮かべたが,これを当てはめるとなると世の中の大半をガチャ呼ばわりするはめになるので,スマートにまとめて,「ガチャなしをただの搦め手とせず,ゲームサイクルにおいてアプリ内課金は必要ないが,したいとちゃんと思わせてくれる作りだった」としておこう。

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 遊んでいて印象的だったのは,ゲームを進めているときのワクワク感だ。序盤は1クエストごとに「強そうな武器がきた」「スキルポイントはどれに振ろう」が次々と舞い込んできて,やめどきが見当たらない。しかもプレイを続けていると度々,ハクスラにありがちな自尊心が芽生えてくる。“今の俺はもしかして最強なのかもしれない”などと。

 最初はスケルトン無双で慢心していたが,「地味な通常攻撃のオプションが“1発から3発同時発射”になる効果付きの武器を手に入れた瞬間,通常攻撃こそ最強」になった。その後も「スケルトンが爆発する」「スケルトンとの間にトラップが発生」など,数値の上げ下げどころではない,どうなるのかも予測できない無数の追加効果に出会った。こうなるとなにが最強なのかは分からないが,そのときの自分の選択こそが最強だと思える。

 昨今はハクスラにもいろいろある。ゲームをより面白くするために溶かし込まれる要素として,ハクスラの概念は最適解のひとつと言えるからだ。しかし,付加価値のためだけに取って付けられたラベルではない“原液のハクスラ”には,そのリスクと引き換えに,薄味に割られた大衆狙いのゲームには決して発現しない強烈な中毒性が生まれる。

 ハクスラの魅力なんて,ひとつでいい。そのたったひとつさえ研ぎ澄ませていれば,プレイヤーは幾度となくバトルと報酬の無限回廊に身を投じる。本作で追求されたのは,クラシックスタイルのハクスラ経験者であれば誰でもひとつは思い浮かべられるもの。「俺が追求したこの組み合わせこそ最強で最高」という,己の正義を賭け金にした快感だ。

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 さて,ゲームの外見にそぐわない感想をお送りしてしまったが,興味を持った人たちよ。なあに安心してほしい。遊ぶことに怯える心配など,まったくの不要である。本作のように,核の部分に混じりっ気を許していない,純血を注ぎ込まれて形作られたハクスラというものは,やっている間は苦労すら幸福に変えてくるのだから。

 しかし注意せよ。キャラクターも武具も,みんな違ってみんな違いすぎるハクスラタイトルには共通して“あと1クエがやめられない症状”を誘発する,致命的な病原体が潜伏している。これは良識を持った大人であっても,いとも容易く感染してしまう病であり,ひとたび罹れば人生において拭えないシミとなって残り続ける。そうして正気を失った患者たちは誰もが朝焼けで染まった布団に包まりながらこう叫ぶのだ――「あと1クエだけだから」

 本作もそういった病状を発症させてしまう,新たな感染源であった。良性か悪性かはその人次第というほかないが,少なくとも,じっくり煮詰めて濃縮したドロドロのジャンキー成分に,澄み切ったゲームを是とするカジュアル層の心が直接触れないよう,親しみのある甘口なシューでイイ感じに誤魔化しながら手招きしているところは,人を知らず知らずのうちにゴリゴリのハクスラ沼に落とさんとする開発チームの卑劣な策謀というほかない。美しいキービジュアルの皮を引っぺがしたのならきっと,その裏で醜悪な悪魔が笑んでいるに違いない。ラストイデアにはへつらいなしに,それくらいの意気込みを感じる。

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