パッケージ
Baldur's Gate 3公式サイトへ
レビューを書く
海外での評価
96
Powered by metacritic
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
[GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2024/03/22 19:30

イベント

[GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 前日のGDC(Game Developer’s Choice)AwardsでGOTYに輝き,2023年度で最も輝かしい作品となったRPG「Baldur's Gate 3(バルダーズ・ゲート3)」(以下,BG3)。

 GDC 2024会場では,本作を開発したLarian Studiosのスヴェン・フィンケ(Swen Vincke)氏が基調講演を行い,6年に及んだ開発秘話と,「拡張パックもDLCも続編も作らない」という意志が語られた。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

BG3を開発したLarian StudiosのCEO,スヴェン・フィンケ氏
画像集 No.003のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ
 PCゲーマーなら,Larian Studiosの名は古くから認知しているかもしれない。

 ベルギー生まれの同スタジオは,今から28年前の1996年に起業し,2002年発売のRPG「Divine Divinity」で広く知られるようになった。

 もっとも,当時はパブリッシャとの軋轢があったり,開発資金の工面がなかなかうまくいかなかったりで「暗黒時代だった」と表現された。

 光が差したのはデジタル流通の登場以降だ。自社パブリッシングに乗り出した「Divinity:Original Sin」(2014年)は販売本数300万本を記録。さらに「Divinity:Original Sin II」(2017年)は800万本のヒットとなり,ファンやメディアからの高評価で開発に自信がついた。

 そうしてフィンケ氏らが目をつけたのは,名作IP「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を要するWizards of the Coastだった。
 とくに,1990年代にBioWareが開発した「Baldur’s Gate」シリーズには,同スタジオも大きく影響を受けたようで,あるとき“20年ほど未使用のIPだったこと”に着目したのだという。

 BGの版権使用料は決して安くはなかったそうだが,取得を決行。そうして生まれた新たなプロジェクトには,フィンケ氏の愛犬の名前を取って“コードネーム:グスタブ”と名付けた。

BG3のコードネーム“グスタブ”は,フィンケ氏の愛犬の名前だった
画像集 No.004のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 基調講演では「BG3の当初の企画書」も公開された。ペライチの内容は実に簡素なもので,翻訳すると以下のような文面になる。


 我々は第1章を最初に作り上げることに集中する。ゲームプレイの基準ができあがったら,第1章で学んだことを応用しながら,第2章と第3章を作り上げる。ゲームの大きさを完全に把握するのは,第1章を完成させてからとする。

 我々が第1章で目標とするのは,10〜15時間分のゲームプレイである。第2章は20〜30時間ほど,第3章はふたたび10〜15時間ほどの分量で,平均して40〜60時間ほどでプレイできることとする。第3章制で開発するのはDivinity:Original Sin IIと同じ要領で,コンテンツ量も似たものになると思われる。

 デッドラインは以下のとおり。

・2017年7月末日:デザインドキュメントの完成
・2018年3月末日:プロトタイプの開発
・2019年12月末日:第1章を完成させてアーリーアクセス版をリリース


 ちなみに,プロトタイプとなるアルファ版の完成は2018年11月18日,第1章のアーリーアクセス版は2020年10月6日,当時のゲームプレイのコンテンツ量は25時間分であったとされるので,主にスケジュール面がズレてしまっている。当初の計画はあまりにも楽観的すぎたようだ。

なんとも楽観的だった企画書
画像集 No.005のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 BG3開発におけるフィンケ氏の当初の構想は,「Divinity:Original Sin II」を下敷きとし,ルール面を「ダンジョンズ&ドラゴンズ ルールセット第5版」に作り替え,作中のシネマティックス(演出映像)を増やして豪華に見せる,という程度のものだったそうだ。

 もちろん,フィンケ氏の言は,壇上でのトークを面白おかしくするための誇張も含まれているだろう。だが「その程度」と考えていた開発方針を実行するにも,同スタジオはパフォーマンス・キャプチャを使ったアニメーションやシネマティックス作りの経験に乏しかったり,ルールセットがあまりにも複雑すぎたり,さらには「Google Stadia」への対応を早くに表明してしまったがためにパフォーマンス問題が起きたりと,さまざまな“デーモン”が出現することになった。

 BG3開発は,これらデーモンを1体ずつ倒して完成にこぎつけることが,Larian Studiosにとってのミッションになった。

Larian Studios初のフォトグラメトリを利用したリアル系テクスチャはともかく,パフォーマンス・キャプチャは開発の大きな足かせとなり,何度も撮り直したり足したりといった作業が最終段階まで続けられた
画像集 No.006のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 2019年6月のE3 2019で,制作発表と映像制作会社製のCGムービーを公開したときは好評だったものの,2020年2月のPAX Eastで,開発者パネルを開催しつつゲームプレイトレイラーを公開したときは,次なるデーモン“ファンの風評”が頭角を現した。
 これはフィンケ氏自身が墓穴を掘ってしまったような感じだが,当時は「Divinity:Original Sin IIのリスキン」(Reskin:表層だけを変えること)だと見破られ,酷評されることになったのだ。

 さらにはPAX Eastが終わるや否や,新型コロナウイルス感染症の流行で開発進行に支障が出たり,フィンケ氏を含む脚本チームが第2章以降のストーリーをまったく描けなくなって停滞したりと,新たなデーモンたちが次々と襲いかかってくる。

 そんなパンデミック期間中,ゲーマーコミュニティの澱んだ雰囲気がよくないと感じたフィンケ氏は,明るく振る舞う姿を見せようと決断。それぞれの部署の開発者たちが,当時の進行状況を紹介していくストリーミングセッション「Panel from Hell」を実施した。

BG3ファンにとってフィンケ氏と言えば,フルアーマーを装着した動きにくそうな姿だろう。自分の身を挺して,暗い時代に笑いを届け続けた
画像集 No.013のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 配信では,フィンケ氏がなんとも動きにくそうなフルアーマーを装着し,司会進行に努めた。その姿が印象に残ったファンも多いだろう。こうして開発現場の透明性を高めることが,2020年10月に販売を開始したアーリーアクセス版の高評価につながったと述べられた。

 しかし,パフォーマンス・キャプチャのパイプライン作りはうまくいかず,キャラクターのモデリングやアニメーションにもバグが多く,アクセス者数は徐々に減少する。そこに危機感を覚えたそうだ。

 しかも結果として,BG3の作中のセリフ文字数は映画「ロード・オブ・ザ・リングス」三部作の3倍に。カットシーンの総時間はTVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズの2倍となる174時間に及ぶなど,同スタジオは気付けば“超大作”を作り上げてしまっていた。

当初のシネマティックス作成のパイプライン(画像左)と,最終段階で編み出したパイプラインの差。工程が増えているが,失敗は大きく減ることとなった
画像集 No.007のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ 画像集 No.008のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

アーリーアクセスのローンチ時には,なんだか分からないカットシーンのバグが多くて戸惑っていたらしい
画像集 No.009のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

コロナ期間中であった2021年。Larian Studiosも「暗黒時代」を迎えていたという
画像集 No.010のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 2023年にもなると数々のデーモンを打ち倒し,開発の終盤ラッシュもスムーズに進んでいった。けれど,発売日を決定する際に“ラスボス”がいた。フィンケ氏がラスボスと称し,会場の笑いを取った最後のデーモンは,Bethesda Softworksの超大作「Starfield」だった。

 2023年前半の段階では,話題性という点では「Starfield」のほうが大きかった。同作の発売も6月予定とアナウンスされていたことから,フィンケ氏は大事を取ってBG3の発売を9月に想定した。

 だが「Starfield」の開発は遅延。9月にプッシュバックされたために,今度はなんとか1か月ほど早い8月3日のリリースにズラした。その選択が正しかったのは,GDC Awardsに至るまでの数々のゲーム賞を受賞していった事実だけで明らかだろう。

画像集 No.011のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

他社のライバル作品をラスボス扱いするのもなんだが,数々のGOTY受賞で「ディアブロ IV」や「Starfield」に打ち勝ったのは,やはりコミュニティへの透明性と完成度の高さにあったのかもしれない
画像集 No.012のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

 フィンケ氏は壇上で「我々は,皆さんが期待しているような拡張パックやDLCは作りません。『Baldur’s Gate 4』を開発することもありません。その版権はWizard of the Coastにあり,我々は次の道へと進んでいくのです」と話し,パッチでバグを修正したり,オプティマイズしたりする以外に,BG3の新規コンテンツを作ることはないと強調した。

 また「奇妙なことに,GDCでは同業者たちから続編開発の是非で質問攻めにあっていますが,我々はもう新プロジェクトに取りかかろうとしています」と語ったが,新作についてこれ以上の言及はなかった。

 ちなみに,BG3のコードネームになったフィンケ氏の愛犬“グスタブ”君は,ゲームの完成とともに他界したという。
 そのうえでフィンケ氏は「悲しい選択でしたが,来週には新しい家族を迎えることになります」と,次のコードネームとなりそうな仔犬の画像をお披露目し,今回のトークセッションを締めくくった。

フィンケ氏が近日中にも迎えるという新しい家族
画像集 No.014のサムネイル画像 / [GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

「Baldur's Gate 3」公式サイト

4Gamer「GDC 2024」掲載記事一覧

  • 関連タイトル:

    Baldur's Gate 3

  • 関連タイトル:

    バルダーズ・ゲート3

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:12月24日〜12月25日