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[インタビュー]「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」監督・畑 博之氏,脚本・米内山陽子氏に聞く,初音ミクへの想い
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印刷2025/02/10 14:00

インタビュー

[インタビュー]「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」監督・畑 博之氏,脚本・米内山陽子氏に聞く,初音ミクへの想い

画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」監督・畑 博之氏,脚本・米内山陽子氏に聞く,初音ミクへの想い
 セガとColorful Paletteがサービスを提供しているリズム&アドベンチャー「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」iOS / Android),初のアニメ映画「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」が2025年1月17日に全国の映画館で公開された。

 映画の公開前に,監督を務めた畑 博之氏,脚本を手がけた米内山陽子氏のオンライン取材の機会を得た。両氏が作品に込めた想い,映画を観るファンへのメッセージなどをうかがっているので,ぜひ目をとおしてほしい。
 なお,前半がメディア合同インタビュー,後半が4Gamerの単独インタビューである。

 もちろん,映画の核心に触れる内容はなるべく避けているが,物語の展開に言及している箇所がいくつかある。読み進めるタイミングにはご注意いただきたい。

※インタビュー実施:2025年1月9日


監督:畑 博之氏
アニメ監督,演出家。代表作は「ゆるゆり さん☆ハイ!」(2015年),「Lapis Re:LiGHTs」(2020年)など。

脚本:米内山陽子氏
脚本家・舞台手話通訳。代表作はTVアニメ「スキップとローファー」(2022年),「パリピ孔明」(2022年),「ゆびさきと恋々」(2024年)など。

「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」公式サイト



制作当初から「閉ざされた窓のセカイの初音ミク」のキャラクターは決まっていた


──「プロセカ」の劇場版について,最初はどんなものになるのかが想像できないところがありました。お二人は「プロセカ」や「初音ミク」の魅力をどのように感じていますか。

畑 博之氏(以下,畑氏):
 「プロセカ」はキャラクターが多い中でも,それぞれのチームが共通認識を持って“いない”点が魅力の1つですね。“セカイ”をほかの人たちが持っていることを知らない状態だという。それによって生まれる,ちょっとしたやりとりのちぐはぐさがユニットの絡みなどにもたらしていて,面白いところかなと思います。
 ミクさんは,自分にとっては癒しなので,語りだすと止まらない……。

米内山陽子氏(以下,米内山氏):
 止まらない語りをしても,いい気がしますけどね!(笑)

──どういうところが癒しになっているかをお聞きしたいです。

畑氏:
 つらいときとかに,いつもミクさんの曲を聞いて元気をもらっている感じですね。

──リスナー歴は?

畑氏:
 初期からです。ライブやボーマスなどのイベントにもいろいろ参加したりしています。雪ミクライブで北海道まで行ったこともありますね。

米内山氏:
 「プロセカ」は息子がプレイしていて,間接的に知っていました。車の中で流していたのが「プロセカ」の曲だったということを,(今回の仕事を)お引き受けするタイミングで知ったという感じです。
 ゲーム原作の作品,登場するキャラクターの多い作品を手がけた経験はありますが,そこで何を大事にするかというと,やっぱり“キャラクター”なんです。まず,キャラクター1人ひとりのことを,どれだけ大事にできるか。この作品を映画化するにあたって,これがすごく大事なところだと思っていました。

 私は監督と同い年ですが,監督とはまた少し違う文化圏で育っています。初音ミクさんの存在をずっと知ってはいたけれど,曲自体は初期の1,2曲を知っている……という距離感だったので,シナリオの執筆中は監督の情熱と知識にめちゃくちゃ助けられましたね。

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──監督の知識がシナリオに反映されているんですね。

米内山氏:
 はい。ミクさんが好きな人たちに向けた脚本のアイデアを監督からたくさんいただきました。私も並行して勉強しつつ。

畑氏:
 ミクさん関係にはかなり精通しているという自負がありますが,P.A.WORKSの山本プロデューサーも「プロセカ」にすごくハマっていて,もう知識がすごいので。補い合いながら企画を進めていましたね。

──米内山さんは,お二人を客観的に見て参考にしたという感じでしょうか。

米内山氏:
 そうですね。ですが個人的な話をすると,やっぱり好きにならないと熱を持って書けません。事前にゲームをプレイしたり,ミクさんの曲もいろいろ聞いたりして,好きになった状態で執筆を始めました。

──「閉ざされた窓のセカイの初音ミク」の登場,「プロセカ」すべてのユニットがつながるストーリー。劇場版らしい壮大なシナリオが完成するまでの過程やアイデア,シナリオ全体のコンセプトをうかがいたいです。

米内山氏:
 どこからどうお伝えしたらいいものか……。今回の「劇場版に出てくるミクさん」のアイデアは,企画の立ち上げの段階からありました。少なくとも,私が参加した段階ではもうすでにあり,そこからお話を広げて作っていったという感じですね。
 5つのユニットそれぞれが,お互いの“セカイ”があることを認識していないという状態で,劇場版のミクにどう関わっていくのかという。ですが,ユニット同士の関わりがないわけではないので,「何を言うのか,何を言わないのか」みたいな情報のさじ加減は繊細に調整しました。
 ですよね,畑さん?

畑氏:
 でしたね。補足的に言うと,「新しいミクさんを出す」と決まってはいたけれど,それが「どういうキャラクターか」というところまでは決まっていなかったかと。

米内山氏:
 はい。プロットとキャラクターの性格設定は,並行してやっていました。劇場版に出てくるミクさんのキャラクターはお話の根幹に関わってくるので,性格が変わるとお話自体が変わっていくんですね。なので,キャラクターとお話を並行して作っていったという感じです。

──閉ざされた窓のセカイの初音ミクという存在に,各ユニットがそれぞれにアプローチして悩みと向き合っていく。これは,「プロセカ」内のシナリオを参考にして考えたところでしょうか。

米内山氏:
 まずは「ミクさんありき」でした。このミクさんがいて,そして各ユニットがどういう反応をしていくか。そこにユニットらしさを出していこう,という感じだったと思います。

畑氏:
 文字ベースでキャラ付けをしたうえで,iXimaさんにデザイン案をいくつか出してもらったという流れになります。

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──作品を作り上げた今,初音ミクという存在をどう捉えていますか。以前と変わった点はありますか。

畑氏:
 「変わった」というより,「(想いが)強くなった」ところはありますね。

米内山氏:
 そうですね。監督はもうずっとミクさんが好きだから。私の場合,以前よりミクさんとの距離が近くなったような感覚です。出先でミクさんを見かける率が高くなり,私がミクさんを捉えられるようになったのだと思います。
 「ミクさんだ! 写真を撮って畑さんに送ろうかな」と思ったり,街でボーカロイドの曲がかかっているときに気づけるようになったり。ずっと存在は知っていましたが,こんなにもミクさんは世界にあふれていたんだなと。
 ものすごくたくさんの「ミクさんに関わっている人たち」の存在に,ミクさんを通じて触れることにもぐっと来るものがあるというか。今はそういう風に思っています。

──お二人にとって“初音ミク”は,すごく近くにあるものなんですね。人によってバーチャル・シンガーの捉え方も異なると思いますが,そのあたりはいかがでしょう。

畑氏:
 先ほどと重複しますが,“癒し”ですかね。生きる糧です。

米内山氏:
 私にとっては,“新しい世界の扉を開く鍵のような存在”です。初音ミクが近くなったことによって,ミクに関わっている人たちの世界に少し足を踏み入れたような感覚があります。

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──多くの人が存在を知っている「初音ミク」や「プロセカ」をアニメ化する難しさを教えてください。

畑氏:
 (バーチャル・シンガーたちの)セリフには工夫が必要でした。ボーカロイドの声なので,あまりに長いセリフは避けようという。

米内山氏:
 ありましたね。

畑氏:
 海外では字幕が出ますが,日本の上映にはないので,聞き取りにくいところがあると良くない。それに,劇場版ミクのキャラ付けとしても,感情豊かな性格だとボカロ声としては出しにくいだろうなと思ったこともあって,ちょっとおとなしめな子になっています。
 特徴的なボーカロイドの声をスムーズに届けることは,難しさの要因の1つではありました。

米内山氏:
 “初音ミク”というキャラクターは確立していますが,「プロセカ」の中ではいろいろな“セカイ”のミクがいて,人によっていろいろなミクを持っています。なので,あまりキャラクターを固めすぎない,ということが大事なのかもと思っていました。
 「閉ざされた窓のセカイの初音ミクはこういうキャラクターだから,このミクの動機に従って動く」ことのほうを大事にして,脚本を書いています。

畑氏:
 米内山さん! 「プロセカ」に限らず,ミクさんは多種多様ですよ〜。

米内山氏:
 確かにそのとおり。失礼しました! 

──キャラを固めすぎないようにして,うまくバランスを取りながら作り上げていったということですか。

米内山氏:
 畑さんにご指摘をいただいたように,ミクさんを好きな方は「いろいろなミクさんがいる」ということが,そもそも前提としてお分かりになっている感じがします。「劇場版のキャラクターイメージが定着してしまう」といった怖さは,あまり感じませんでしたね。

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──ユニット全員に用意されたライブシーン,歌とシナリオの連動という要素が大きな見どころです。アイデアが生まれた経緯や,ライブシーンにおいて力を入れたポイントなどを教えてください。

米内山氏:
 先にシナリオができあがりますから,歌が挿入されるシーンをイメージしてお話を書きました。(映像と歌が合わさって)できあがったものには,私も感動しています。

畑氏:
 割と早い段階で,「最後はメドレー」ということが決まっていたので,それに向けてどうお話を構築していくか,という制作の流れがありました。
 ライブの見どころは,やはりユニットごとの違いですね。それぞれの特色を出したものができあがったと思いますので,楽しく観ていただけると嬉しいです。

米内山氏:
 ライブシーンはめちゃくちゃいいので,「ご期待ください」と声を大にして言いたいです!

──映画に込められた小ネタ,こだわりポイントのヒントをいただけますか。

畑氏:
 大きいところだと街中の看板などに,ボカロPさんのロゴとかを入れています。事前に許可が取れた人たちだけになっているので,数は限られていますが。そういうものも含めて,小ネタはいろいろありますね。

米内山氏:
 序盤の「プロセカ」キャラクターたちが日常を過ごしているシーンには,彼ららしさとか,ゲームでちょっと出てきた意外な個性みたいなところとかを入れているので,楽しく見ていただけたらいいなと思っています。

畑氏:
 エリア会話から,ちょっとネタを拾って映像にした部分もあります。

──観るたびに新しい発見がありそうです。

米内山氏:
 ぜひ細部までご覧いただきたいですね!

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映画公開を間近に控えた心境を聞く


4Gamer:
 それでは,映画の公開を間近に控えた現在の心境を教えてください。

畑氏:
 やはり受け入れられるかどうか。一番心配というか,ドキドキします。

米内山氏:
 そうですね。楽しんでもらえるといいなという気持ちですが……。「楽しんでいただきたい,いただけるはずだ。……いただけるかな?」みたいな(笑)。

4Gamer:
 自信のある作品になったとしても,心は揺れてしまうと。

畑氏:
 それは,いつもそうです。

米内山氏:
 チャレンジしている部分がたくさんあるからこそ,自信があっても怖い気持ちになりますね。どの作品でも。

4Gamer:
 作中では,「前向きな気持ちになれない」「明日や未来に希望が持てない」といったネガティブな気持ちに囚われてしまった人たちが描写されます。「初音ミク」や「プロセカ」に対して想いを抱いている人に届けたい映画だと思いますが,そういう気持ちを抱えている人へのメッセージは意識されたところでしょうか。

畑氏:
 そのとおりです。エンディング後のラストカットの人物についても,それは「あなた自身だと思ってもいいし,思わなくてもいい」の意味も込めてあります。

米内山氏:
 下を向いてしまっている人,あきらめかけてしまっている人に対して,ユニットそれぞれのアプローチがあると思っています。「元気出せよ!」ってガンガン言うタイプのユニットもいるし,そっとそばにいてくれるタイプのユニットもいるし,「無理に前を向かなくてもいいよ」と言ってくれるようなユニットもいます。
 今の気持ちを慰めてもらえるようなユニットを見つけてほしいですし,キャラクターと同世代の子たちにたくさん見てほしいなと思います。もちろん,大人の方にもたくさん観ていただけたら嬉しいです。

4Gamer:
 最後になりますが,これから映画を観るファンにメッセージをお願いします。

畑氏:
 この映画は,人によってさまざまな楽しみ方ができると思います。米内山さんも仰っていましたが,もし落ち込んでいるなら,映画を観て元気になってもらえたらといいなと。

米内山氏:
 閉ざされた窓のセカイの初音ミクを一緒に応援してもらいたいですね。誰かを応援することで,自分が元気になることもあると思うので,一緒に手に汗握って,ドキドキして。“映画館で映画を観る”ことは1つの“体験”ですから,私たちと一緒に素敵な体験をしてもらえたら嬉しいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」公式サイト


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