プレイレポート
「パラドゲー? なにそれおいしいの?」という人にこそ始めてほしい「Crusader Kings III」のススメ。年末年始に始めるにうってつけの,極上の歴史ストラテジーの沼にハマろう
人によっては今さらなにを……という感じだろうが,念のために説明しておくと,スウェーデンに本拠を置くゲームパブリッシャのParadox Interactiveがリリースする作品の中で,同社の開発部門であるParadox Development Studioが手がけるゲームがファンの間でこう呼ばれている。
Paradox Development Studioは骨太の歴史シミュレーション(ストラテジーゲーム)を得意としており,世界中で多くのファンを獲得していて,日本国内でも根強い人気を博している。直接手に取る機会がなくても,動画サイトなどでプレイ動画投稿や実況配信が盛んに行われているため,見たことがある人も少なくないかもしれない。
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とはいえ筆者個人の経験で述べると,実はあまり接点がないゲーム人生を過ごしていた。かつて少しだけ「Hearts of Iron II」(以下,HOI2)をプレイしたことはあるのだが,当時はどうにもコツが掴めずお試し程度で終わってしまった記憶がある。また,パラドゲーは(有志によるMODはあるのだが)公式の日本語ローカライズがあったりなかったりで,気軽に手に取る機会がなかったのだ。ぶっちゃけると「面白そうだけど,取っつきにくそうだしファンじゃないとハードルが高そう」と思いながら横目で見ていた,という感じだろうか。
だがここ最近,大きく潮目が変わる事態があった。本稿の主役である「Crusader Kings III」(以下,CK3)をプレイする機会があったからだ。といっても何か特別なことがあったわけではなくて,単にSteamでフリープレイ(期間限定の無料プレイ)状態になっていることに気がついただけだ。ちょうど時間が空いていたので試しに触ってみたところ,結果的には激ハマり。気がつけば購入ボタンを押しており,いつの間にかプレイ時間も200時間を超えていた。文字通り“時間が溶けていた”のだ。
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前述のとおり,筆者はかつてHOI2を軽く触ったことがあるだけで,その内容もほぼ覚えていなかったし,“ファン”とはとても言えない立ち位置だった。実際のところ,最初はほぼ何も分からない状態で始め,さまざまな「ルール」にそれなりに手間取ったのも事実なのだが,実は取っつきやすさそのものは決して悪いとは感じなかった。
これはちゃんとチュートリアルが存在している……というのもあるだろうが,ゲームの基本的な枠組み自体は決して難解ではなく,むしろリソースなどがシンプルであることがその要因だと考えている。「現実の歴史をベースにしたストラテジー」というだけで身構える人もいるかもしれないが,実際にプレイしてみて,とにかく「難しそう」だけで触ってもみないのはもったいない,と素直に感じた。
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そこで本稿では,パラドゲーファンではない(ほぼ未経験者)という立ち位置から,CKIIIの魅力を語ってみたい。何せこの記事が掲載されているタイミングはちょうど年末年始であり,腰を落ち着けて重厚なゲームをプレイしたり,新たなジャンルを開拓したりするのにピッタリの機会だからだ。
ちなみに現実の歴史(世界史)の知識はあったほうがより楽しめるだろうが,実はなくてもゲームそのものにはあまり影響がないので(理由は後述),そういった意味でも実は間口が広い作品だとも感じている。
なお本作は2025年の10月に,正式な日本語対応&日本を含むアジア地域の追加という,かなり重要なアップデートが行われている。つまりプレイを始めた時点で,普通に日本語環境でプレイできるし,日本の地域も存在しているというワケだ。ソフトのリリース自体は決して最近ではないが,より一層今から始めるのにもピッタリだといえるだろう。少しでも興味があればぜひ,記事の最後までお付き合い願えれば幸いだ。
ヨーロッパからアジアを舞台にした戦略歴史シミュレーション。一見,スタンダードな国盗りSLGに見えるが……
まず,本作の概要を振り返っておこう。CK3は2020年に発売された,リアルタイム型の歴史シミュレーションゲームだ。プレイヤーは主にヨーロッパ〜アジアの中から好きな勢力を選び,激動の時代を生き延びていく。選べる年代は867年,1066年,1178年の3種類となっていて,まさに中世ど真ん中。各地の勢力は史実に基づいたものになっており,いわゆるファンタジー的な要素はなく,歴史上に実在した人物が数多く登場する点も,大きな特徴だ。
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上では“勢力”と述べたが,実際はプレイ単位(操作単位)は「個人」であり,開始時に「誰を」選ぶかでゲームの開始状況が変わる。つまり国王を選べば王国でのプレイになるし,それより下の公爵なら地域を統べる公爵領プレイになって,そしてさらに下位となる伯爵を選べば,領地の最小単位で始めることになる。またこの地位(称号)も確定したものではなく,各地を統合して王権を得られれば国王になれるし,逆に国王で初めても反乱などを押さえきれなければ,その座から滑り落ちることもある。
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ゲーム画面をぱっと見る限りは,世界を舞台にした「信長の野望」や「三國志」シリーズのような“国盗りゲーム”的な印象を受ける人も多いだろうが,ジャンルとしては「太閤立志伝」に近いといえそうだ。だが,ゲーム自体は数百年続いていくので,プレイヤーが操作する統治者もいつかは死亡し,“代替わり”を重ねてプレイを続けていく。短いスパンで見れば「個人プレイ」,長い目で見ると「王朝プレイ」と言えるかもしれない。
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この王朝プレイ,基本は後継者を選んでいけば自然と続いていくのだが,実は操作キャラは(代替わり時以外でも)いつでもどこでも切り替えられるので,「手塩にかけた自分の国を外からぶっ壊す」なんて芸当も可能だ。“かつての自分の国”を第三者的な視点で見るのもこれはこれで楽しく,例えば強大な帝国を作り上げてもCPUに任せた途端にバラバラになって別の国になっていた,なんてこともあるだろう。
また例えこういったプレイをしていなくても,権力というのは大概移ろいやすいので,近くにあった巨大なライバル国が知らないうちに隣国に蹂躙されていたり,いつの間にか全然違う名前の国になっていたりもする。
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なお,プレイの目標(タスクやクエストなど)はとくに用意されていないので,基本的にどう進めていくかはすべてプレイヤーに委ねられている。武力による国盗りそのものは単なる手段に過ぎないし,仮に苦労して広い領地を得たとしても,“次代を担う後継者が,以前の統治者(操作キャラ)と同じ領土を持つ(引き継げる)とは限らない”のだ。これが上述のようなダイナミックな勢力変化につながっており,本作における非常に重要な要素となっている。
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とはいえ,ゲームのシステムそのものは戦略級のシミュレーションゲームとしてはスタンダードであり,国を内政で成長させ,外交で同盟国を作り,軍事力で敵国の領土を占領する……といった辺りが基本的な進め方だ。支配領域が増えるほど収入と兵力が増加していき,より大きな国家にも挑めるようになっていく。
前述のように目標は定められてはいないが,各地方を統一して現代の形に近いような王国を作る,あるいは広大な領土を持つ帝国を築く,辺りが分かりやすい指針にはなるだろう。
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前述のとおりに登場する国(地域)や人物は実在のものだが,それはあくまで開始時のみの話。世界中の各勢力がどう動くのか,子孫として誰が生まれるのか,どう支配が移り変わっていくのか……といったその後の流れは,ほぼ完全にランダムに推移していく。したがってプレイするごとに展開が変わり,同じ年代の同じ人物を選んでゲームを開始しても,同じ展開になることはまずないし,史実どおりに時代が進むこともない。「歴史の知識があまりいらない」と書いたのは,これが理由で,まさに本作には“筋書きがない”のだ。
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それゆえにゲームを始めるたびに何が起こるか分からないし,その後の展開も全然読めないのも印象的だ。ゲーム開始時にオススメされる統治者こそ用意されているものの,基本的には誰をチョイスしてもいいので(一部選べないキャラもいる),選択肢の幅はとてつもなく広い。実際はまったく知らず,縁もゆかりもない地域でプレイするのはなかなか大変だとは思うが,選べる自由あることに越したことはないだろう。
想像以上に国の運営そのものはシンプル。困ったらまずは収入を増やすことを考えよう
こういった歴史シミュレーションを見ると,まず「難しそう」と最初に感じてしまう人も少なからずいるはず。しかし本作は見た目の飾り気のなさとは裏腹に,実はリソースそのものは非常に少なくシンプルだ。ほとんどすべての行動に必要な「資金」,主に軍事行動や外交活動に使う「威信点」,宗教への信仰度を示す「敬虔点」,そして王朝自体の名高さを数値化した「栄誉点」だけ。後半の2つは,(プレイする地域にもよるが)ゲームを始めたばかりの時はほとんど気にする必要がないので,基本的には「お金」と「威信」だけを気にしてプレイを進めればいい。
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もちろんそれとは別に軍事力(兵力)の管理は必要だし,いろいろと王朝や地域の状況を表す細かい数値はあるのだが,国家運営の基本としては常に「お金の収支を黒字に。そしていつでも対外政策を行えるように,一定の威信点を確保しておく」辺りを意識しておけば,大概どうにかなる。
さらに内政に関しても,地域の治安度を表していて領地の収入量に直結する「統制度」を高く保って(あるいは低いなら高くして),あとは資金をいくら投入してどのような施設を領地に建てるか,を考えれば概ねOKとなっている。優先順位はあるにせよ,やること自体は非常に簡素化されているので,少し慣れてくれば迷うことはあまりなくなってくるはずだ。
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なぜここまでシンプルなのかと言えば,恐らく本作はほぼあらゆるリソースが“資金の増減”で表されているからだ。例えば歴史シミュレーションの場合,軍隊の維持と補給には装備や兵糧(食糧)といったステータスが用意されていることがよくある。
だが,本作の場合「(徴募兵でない)常備軍は新設時に大金が必要で,維持にも一定の資金がかかるし,戦争を行うために稼働状態にすると,一気に維持費が跳ね上がる」というルールになっている(封建制の場合。ほかの政治体制だと事情はまた少し異なる)。
要するに戦争に必要な諸々をすべて資金で表しており,さらに「長期間戦争を続けるほど,国の財政が悪化する」という状況をシミュレートしているのだろう。個人的には,上手いやり方だなと仕組みを理解したあとに感じた。
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以上のように本作は一見,国家運営が主体のようなゲームに見えて,実際はそこをかなりシンプルな形で実装している。なら本作は底が浅い簡単なゲームなのか……といえば,もちろんそんなことはない。次からはCK3のキモである「人々が紡ぎ出す歴史」について紹介していこう。
いつの時代も,歴史は人々が作り出していく。“人にフォーカス”した作風こそが,CK3の魅力だ
本作の魅力はいくつもあるのだが,個人的には「人とそのつながりを主軸とした歴史の積み重ね」が一番印象に残る部分だろうと考えている。なので主にそこをターゲットにして,要点を絞りつつ注目点を紹介していこう。
・何よりも重要な「他人とのつながり」。個人的な好き嫌いが時として,世界を大きく揺るがす
本作の登場キャラには大きく分けて「能力値」と「特性」がそれぞれ設定されている。前者は文字通りその人物がどれだけ優秀か(あるいは無能か)を表現する一般的なパラメータで,高いほど有利。後者はそのキャラの人となりを表していて,要は「性格」に当たるものだが,これが一筋縄ではいかない展開を生み出している。
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多くの特性はメリットとデメリットの両方を持っており,例えば「勇敢」という特性は軍事と武勇がプラスされるなど文字通り軍人に向いた特徴を持つが,戦闘時は死亡しやすさが一気に増える弱点があるなど,君主に据えるには少し怖い部分もある。
一方の「好色」は見るからに問題がありそうに見えるし,宗教的には罪悪と見られることも多く,CPUの操作時に不貞を働く確率が上がることもあるが,その反面で後継者を誕生させるための繁殖力が増加するなど,十分なメリットも有している。
本作では,これらをひとりのキャラが複数(主に3つ)持ち合わせる形で個性を表しており,「正直だが金に汚い」とか「臆病だけど執念深い」などの,一面的でない裏表がある人となりがうかがえる要素になっているのも面白い。
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また特性には,「それに沿わない行動を取るとストレスというペナルティを受け,そのストレスが一定程度溜まると厳しいデバフを食らう」というルールもあり,例えば「寛容」という性格を持つなら例え相手が敵でも,投獄や拷問に強いストレスを感じてしまう。
つまり「能力は申し分ないが,性格的に難があって実力を発揮できない」とか,逆に「能力的に見るべきところは少ないが,人に好かれる性格を持つので扱いやすい」なんてことも往々にしてあるのだ。
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ストラテジーゲームのキャラは,純粋に能力値だけで評価されることも多いが,こういった観点でも“強さ”が表されているのは面白い。また能力値そのものも固定ではなく,赤ちゃんや幼児の頃は非常に低いが成長に応じて自然と高まっていき,大人になってからはさまざまなイベントや,たまに入手できる宝物(アイテム)などで増減していくことになる。ここだけにフォーカスするとRPGのようでもあり,成長の楽しみもあるのだ。
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さてこの特性(性格)は,自分だけではなく他人との交流にも大きな影響を与える。性格によって,相手との好感度にかなり大きな補正が入るからだ。性格にはそれぞれ相性があり,ある人物には好感を持たれても,別の誰かには敵のように嫌われる……なんてのも日常茶飯事。そしてこの好感度は,ゲーム内で単に個人的な好き嫌いでは終わらない非常に大きな影響を与える。
実は本作には,“国そのもの”への好感度は基本的に存在しない(領土ではない,王朝そのものへの補正は複数ある)。あるのはそれを治める統治者や封臣への好き嫌いで,例えば外国の君主がこちらへの好感を抱いていれば政略結婚や自国への従属を実行しやすくなるし,逆に嫌われていればほとんどの外交手段が通りにくくなる。
これは自国内でも同じで,好感度が高い臣下は素直に従うが,そうでない場合は(王権を高めるなどの)体制の変化に賛成しなかったり,摂政が好き勝手に権力を振るい始めたり,場合によっては派閥を組んで謀反を起こしたりと,途端に国内が安定しなくなっていく。そして内乱が起きれば,国はどんどん荒廃(収入や兵力が減少)するだろう。
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本作では「どこと同盟が組めるか」が非常に重要で,例え弱小国でも,大国と手を結んでいれば非常に手を出されづらくなるし,逆に攻める場合は強力な味方になる。また同盟は金銭などでは結べず,大概は政略結婚(あるいは元々何らかの血縁的なつながりがある状態)でしか締結できない。上述のとおり,周囲に嫌われているほど縁談は難しくなり,選択肢は狭まる。そして国内で反乱が起きて劣勢の場合は,同盟国が最後の頼みの綱になるかもしれないのだ。
たかが好感度,されど好感度という感じで,人から好かれるかどうかが国自体を揺るがす……というのは,個人が主役である本作ならではの仕組みかもしれない。
・仁義なき中世の世界を生き延びろ。領地を巡る争いは,味方だろうが親族だろうが容赦なく発生する
「百年戦争」というのは,14〜15世紀にイギリスとフランスの間で発生していた戦争で,長年ヨーロッパで続いていた戦争を代表するような事例として扱われることも多い。本作はそれより前の時代を舞台にしているが,実際にプレイしてみれば,あらゆる場所で延々と戦争が続いていることが確認できるだろう。そう,戦争は日常風景なのだ。
これは国家(君主)同士の戦いも当然あるが,それより目立つのが国が一定程度大きくなると,領内で頻発する戦いだ。これは君主に反逆を起こしているのではなく,むしろ無関係(というか基本介入できないの)で,同じ君主を持つ封臣同士が領地を巡って争っているのである。
公爵同士の土地の争い,伯爵による公爵からの独立など理由はいろいろあるが,「あれ? 気がつくと当初分け与えた領地と,全然違う範囲になってるぞ……」なんてことは日常茶飯事だ。そして場合によっては,封臣が君主すら上回る資金力や兵力を持つこともある。
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これは例え血を分けた肉親であろうと何も変わらず,酷い場合は「新しい領土を得たので甥に一地域を与えたら,体制が整う前に別の親族に大半を奪われていた」なんてこともある。強い王権を持つとこういった内戦は防げるはず……なのだが,大概どこかでいつも戦いが起こっているので,恐らくこの仁義なき戦いを長年見続けることになるだろう。
また直接的な戦いが起こらなくても,裏で陰謀が進んでいることが多々ある。要するに暗殺などの策略で,敵陣営から狙われることもあれば,こちらも領内……つまり身内から仕掛けられることもしばしば。
個人的に一番驚いたのは,まだゲームに慣れないうちにニューゲーム開始時のオススメとして表示される統治者を選んだら,ほぼ何もしない間に毒を盛られて暗殺されたこと。しかも実行したのはCPUが操作する後継者の息子で,死んだ直後に父殺しの息子でプレイを続けることになるという,展開が早すぎて思考がまったく追いつかない経験をすることになってしまった。
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もちろんこれは裏を返せば,自分がプレイするときも兵力を動かすことなく,領地や称号を得られるチャンスになりうるということ。君主のときは自分が考えるとおりに動けるので,そんなに策を弄する必要はないが,誰かの配下として活動する場合は,“上”が決めるルールに従う必要がある。そういったときは,策略という裏道を使う必然性も高くなる……というわけだ。
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さらにそういった人為的な危機を差し置いても無視できないのが,「疫病」という存在だ。中世は今と比べ医療技術はとても低く,(地域によるが)衛生状態も非常に悪かったといわれている。それを反映してか,疫病は数年〜十数年単位でほぼ確実に襲ってくるようになっている。主に「結核」「チフス」「天然痘」の3種類だが,結核が来るならまだマシなほうで,致死率が高いチフス,例え治っても永続的な後遺症を残す天然痘は非常に厄介な存在だ。
とくに子供は一度かかれば亡くなる確率が高く,やっと生まれた跡取りを病気で奪われたときはかなりガックリくるし,何より自分自身がかかって治療に失敗したときは,壮健な年齢でもあっさり死亡したりする。
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一番危険なのが戦争時に疫病が流行ることで,大勢の兵士が一挙に会するからか,自分を含む出兵した将軍や騎士がまとめて罹患し,片っ端から重臣がバタバタ倒れていくことすらある。疫病の対処法は主治医に対応を任せる以外に,一族や首都を隔離する方法もあるのだが,いろいろなデバフも大きく常に行うのが正しいとは限らない。安全を取るか,計画の優先を取るか,悩ましい選択を常に迫られるはずだ。
・王朝を揺るがす「継承問題」。先人(過去の自分)の遺産を無事に引き継げるか,それとも水泡に帰すか。本作の歴史のダイナミズムに繋がる重要すぎるイベント
前述のとおり,本作はプレイヤーの分身が亡くなると,“次世代への引継ぎ”が発生する。基本的には,後継者が君主となってその国土と支配権を継承することになるだろう。そして現実の歴史でも繰り返されたのと同じように,CK3でも大概ここで大きな問題が発生する。この継承問題がスムーズに進むかどうかが,広大な領土を確保して維持できるかに大きく影響し,失敗すれば文字通り“国がバラバラ”になることも珍しくないからだ。
まず一番大きな問題は,多くの場合(ゲーム前半〜中盤)において,親が持つ領土は公平に子供(大概は男子)に分配されるという点だ。公平というのは文字通りの意味で,例えば君主に男子の子供が3人いれば,領地は平等に3分割される。言い方を変えれば,後継者でありプレイヤーが直接操作することになる長男でも,親の1/3の領土しか引き継げないわけだ。つまり残りの領地は,弟たちの支配地になってしまう(なお多くの場合,男子がいないときを除き,女子には継承権がない)。
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初心者なら「名義が弟に変わるだけでは?」と思うかもしれないが,本作の領地は統治者が直接支配する「直轄領」と,領地を持つ封臣が支配している「領国」に分かれている。前者の直轄領は,領地の金銭収入と徴募兵は(統制度が高ければ)100%自分のものになるが,後者の領国は税金という形で一部が支払われるだけなので,直轄領の数分の一程度のリソースしか得られない。つまり下手をすれば文字通り,親の1/3程度の国力になってしまうのだ。
今まで「100」というリソースで国を回していたのが,代が変わっただけで「33+α」で運営しなければいけないのだから,当然ながらこのままだと早々に厳しい状態になる。仮に後継者という立場で名目上の君主の座が自動で回ってきても,兄弟という生まれながらのライバルを何とかする算段をつけておかないと,まさに砂上の楼閣になりかねない。
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またこれは一応は「同じ国」として継承できた場合の話で,実はさらに恐ろしい「兄弟が完全に別の国として独立してしまう」ことすらあるのだ。本作では領土の広さや豊かさに関係なく同じランクの称号,つまり国王と国王,公爵と公爵などは“同等の地位”として扱われる。要するにある国王が,そのまま別の国王を配下にすることはできない。
ここで問題になるのが,(後継者から見て)親が「1人で複数の国王を兼任している」といった場合だ。国王の称号そのものはとくに問題なく個人で複数持てるのだが,前述のとおり,死後は領地が“平等”に分けられる。例えばドイツ国王とフランス国王という2つの称号を持ったまま亡くなると,息子が2人以上の場合は,ドイツを治める長男と,フランスを治める次男,といった形で相続が行われてしまう。文字通り国が分裂した瞬間で,これは867年スタートのカロリング朝のフランク王国で,ほぼ同じ状況がプレイできるようになっている。
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これを避けるためには,さらに領土を広げて何とか生きているうちにより上位の称号である「皇帝」の立場に就くか,地元の反感を覚悟のうえでどちらかの王国の称号を壊して無理に一つに統合してしまうか,あるいは継承権1位の後継者のみにしてしまうしかない。
後半の2つは荒療治だが,場合によっては避けられないこともあり,50歳も過ぎて棺桶の足音が聞こえてきたら,終活として取りかからざるを得ない場合もあるのだ。
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そしてもう一つ忘れてはいけないのは,例え親子でも「親と子は別人」であるということ。どういう意味かというと,例え親が上手く国を運営しており人々に敬愛されていたとしても,後継者もそうとは限らない,ということだ。別人なので好感度はリセットされ,さらに「短い治世」というかなり強いデバフが発生するので,大概の新国王は多くの人々に信用されていない。好感度の最低値である-100を見る機会も,それなりにあるぐらいだ。
ここで何が起こるかといえば,内部からの反乱だ。新参の封臣はもちろんのこと,親から続く古参や例え兄弟であっても,好感度が低ければ容赦なく弓を引いてくる。場合によっては次々と反乱祭りが起こることもあり,絶え間なく兵士を送り続けることになった結果,国内の平定に何十年もかかってそれでほぼ統治が終わってしまうことすらある。
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それでもまだ,平定できる兵力があるなら良い。前述のように遺産分配に失敗し,収入や兵力が激減した中で,多数の封臣が団結して反乱を起こしたら……結果は想像どおりだ。そして事前に準備をしようにも,中世では現君主が突発的に亡くなることもしばしば。歴史的にどんなに強大な帝国も永久には続かないものだが,ゲームとはいえ身をもってそれを体感できるのは感慨深い。
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とはいえこの継承問題は,自国にだけ発生するのではない。当然ながら他国でも“良くあること”であり,気がついたら少し離れた王国がバラバラになっていたり,弱小君主が皇帝の立場に就くこともある(皇帝が選挙で決まる神聖ローマ帝国で見ることが多い気がする)。当然ながら,こういった国家はよそから見れば絶好の狩り場であり,国境線を動かす大きなチャンスだ。
継承問題はプレイヤーにとっては大きな悩みの種だが,転じてゲームの状況がダイナミックに変わる機会になっているのも,見逃せないところだろう。
あの歴史上の人物に会いに……じゃなく,実際に歴史上の人物になってみよう
すでに何度も触れているが,本作は実際の歴史をベースにしており,そこには当然非常に有名な人物が多数含まれている。ここでは,その中でもとくに知名度が高いプレイ可能キャラを何人かピックアップしてみよう。
・チンギス・ハン(テムジン) - 登場年代 1178年
言わずと知れたモンゴル帝国の初代皇帝。恐らく本作の中でも,知名度はぶっちぎりの一位のはず。ゲーム開始時はアジアの小領主に過ぎないが,特別なイベントが用意されており,プレイキャラでなくても“覚醒”してとんでもない能力値になって,怒濤の勢いで領地を広げていく。
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西ヨーロッパでプレイしている場合,時間的には本人と対峙する前に亡くなるかもしれないが,地図を眺めるだけでもモンゴル帝国の勢いと大兵力に恐れおののくはずだ。逆に近い場所の領主で始めた場合は……,いろいろと覚悟を決めたほうがいいかもしれない。
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・サラーフッディーン(サラディン) - 登場年代 1178年
イスラムの英雄。アイユーブ朝を樹立し,十字軍によって建国されたエルサレム王国を打ち破り,100年近くその支配下にあった聖地の奪還にも成功する。軍事的手腕だけでなく,人格的にも優れていたとされ,捕虜となった敵にも非常に寛大な処置を行うなど,現代でも人気が高い。
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ゲーム的には最初から比較的広い領土を確保していて,前述のエルサレムも近く侵攻も容易な状態になっており,かなりお膳立てができている印象だ。最初のおすすめキャラにピックアップされていることもあり,イスラム圏で始めたいならまず選択肢に入れたい1人だろう。
・源頼朝&源義経 - 登場年代 1178年
新規に追加された日本からもチョイス。こちらも今さら説明は不要だと思うが,鎌倉幕府を開いた源頼朝と,その弟で源平合戦で活躍したものの,その兄との確執で非業の死を遂げた義経だ。筆者も含め,戦国時代と比べて平安時代は馴染みがないゲーマーも多いだろうが,さすがにこの2人ならお馴染み度は信長や家康にも負けないだろう。
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勢力としては頼朝は伊豆の辺りを支配する小規模な伯爵,義経は部下ではなく東北で冒険者をしている。頼朝は普通にプレイが可能だが,義経は冒険者プレイが可能になるDLC「Roads to Power」がないと最初から選べないようなので要注意。
ちなみにこの原稿を書くために頼朝で少しプレイしてみたのだが,少し時代が進むと平清盛への大規模な反乱が始まって「源平合戦じゃあ!」と意気込んで参加したところ,清盛が高麗と同盟を結び大量の援軍が朝鮮半島から雪崩れ込む事態に。結果,平家と高麗の連合軍が各地で源氏を蹴散らし始めるというオモシロ日本史が始まってしまい,これにはさすがに笑ってしまった。これも筋書きのない歴史の流れの一つ,なのかもしれないが。
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・ウィリアム征服王&ジョン欠地王(失地王) - 登場年代 ウィリアム 1066年・ジョン 1178年
ウィリアムは元々(今のフランスの)ノルマンディー公であるギヨーム2世であったが,世界史にも出てくる「ノルマン・コンクエスト」(イングランドに対する軍事遠征)を成功させ,イングランド王に就くことに成功する。結果としてイングランドは大陸側のノルマン人によって統治されるようになり,その支配領域もイングランドと(元々持っていた)今のフランスの一部に渡るようになった。
その後このノルマン朝は1世紀ほど続くことになり,今のイギリス王室の源流を作り出したといわれるウィリアムは,現代でも当地での人気が非常に高い国王になっている。
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時は流れて12世紀。イングランドの支配権は(後継者の男子がいなかったので断絶した)ノルマン朝からプランタジネット朝に変わっていたが,王がイングランドとフランスの両方に領地を持つという状況は変わっていなかった。むしろ,相続や結婚によってフランスの西半分をも支配するという,帝国ともいわれるような最盛期を迎えることになっていたのだ。
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しかし兄の急死により王位を継いだジョンは国を守り切るどころか,失策を続けたことにより大陸の領土をほぼ消失。重税などでイングランド国内の支持もすでに失っており,王権の制限となるマグナ・カルタ(大憲章)を受け入れることになる。
こちらは“フランスに一方的に屈した王”として無能の名を欲しいままにしており,今のイギリスでもぶっちぎりの不人気のようだ。マグナ・カルタそのものは,「法の支配」という現在の価値観につながるものとして評価されているが,そもそもこれは押しつけられたものと考えると,余計もの悲しさが漂うだろうか。
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さてこの正反対の合わせ鏡のような二人の王だが,ゲーム的にもその特徴が現れている。ウィリアムが有能かつ戦争準備を万端にしてイングランドに攻め込むだけの状態になっており,勝てばそのままイングランド王になれる一方,ジョンは1178年では王ではなく,能力値も多少高い策略を除けば見るところがまったくない……という,その後を暗示するような状況になっている。
とはいえ筋書きがないのが,本作の魅力だ。ウィリアムでノルマン・コンクエストを成功させて満足したら,ジョンで領地を守るために1178年から奮戦してみるのも一興ではないかと思う。
初心者はまず“ここ”を意識しよう。分かりにくいCK3のルールと要素を解説
前述のようにCK3はゲームの枠組みそのものは,そこまで複雑ではない。しかし「分かりにくいルール」は随所にあり,これが初心者の理解を妨げがちだ。自身も分かりにくかったものがいくつもあったので,これからプレイする人向けに解説しておこう。
・(政治体制によっては)絶対に必要な「請求権」
パラドゲーでは常識の要素らしいのだが(初心者の筆者は当然知らなかった),とにかく最初に「請求権」というものを意識する必要がある。これは「その土地は実は自分が支配する権利がある」と主張するもので,基本的にはこれがないと戦争自体が始められないし,逆に別の事由で戦争を始めた場合は,戦争に勝っても領土が得られないことになりかねない重要なもの(例えば開戦事由「諸侯化」では,従属国になるだけ)。
入手する手段は親から引き継いだものを除けば,主に自国の聖職者に偽造を頼むことで,数か月〜数年程度で調達が完了する。それを事由にして戦争を仕掛けて勝てば,その土地が入手できるというわけだ。また信仰点が高く教皇の覚えがめでたい場合は,公爵領や王国丸ごとの請求権がもらえることがある。
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注意点としては「強い請求権」と「弱い請求権」という2種類の請求権があり,強い請求権は子供にも引き継がれるが,弱い請求権は死んでしまうと失われる。聖職者に金を払って偽造できるものは“弱い”ほうなので,寿命が尽きる前にしっかり使っておきたい。
また子供に引き継がれた強い請求権も,その時点で弱い請求権に変わってしまう(つまり2代で消えてしまう)。
・政治体制によって開戦の難度が変わったり,内政の建築物が変わる
上で触れた請求権だが,実は“絶対に必要”というワケではない。というのもヨーロッパでスタンダードな封建制では大概必要だというだけで,ほかの政治体制では不要だったりするからだ。例えば北欧やアジアで採用されていることが多い部族制では,直接的に「征服」という開戦事由があり,これだとそもそも請求権などいらない。
要するに国がどれだけ近代化されており,体裁を気にするかがこの違いにつながっているのだろう。
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では部族制の方が一方的に優れていて,封建制は手間がかかるだけなのか……といえば,そうでもない。政治体制が変われば内政で建築できるものが変わり,結果的に城や都市の収入や防御力が大幅に変わってくるからだ。端的には部族制の建築物は性能的に劣るものが多く,長い目で見ると封建制のほうが有利になっていくはずだ。
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・直轄地には持てる限度がある。あぶれた分は“配る”しかない
継承の部分で触れているが,直轄領と(封臣が支配する)間接領では領土から得られる収入が天と地ほど違う。ならば全部直轄領にすれば……と思うかもしれないが,領主が持てる直轄地の数には限度があり,それ以上は意味がないどころか,持っているだけでかなり強いペナルティが発生してしまう。この数はステータスの「管理」で上下するが,元々苦手な場合は盛るのにも限度があるだろう。
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溢れた部分は臣下に配ることで,ペナルティをなくし,さらに本人の忠誠(好感度)が得られる。王朝の発展を期待するなら,親族を優先しておきたいところだ。ただし前述のように,裏切りは肉親や親族でも平気で発生する。あまりにも強力な封臣はむしろ邪魔になるので,適度に“散らす”必要があることを覚えておこう。
・攻城兵器は最低1連隊でも用意しておくこと
戦争には軍隊同士が戦う野戦と,敵の城などを落とす包囲戦があるが,圧倒的に時間がかかるのが包囲戦だ。例え十分な兵力があっても陥落まで最低数か月,場合によっては年単位でかかるものもある。攻城兵器は端的に,この時間を短くできるユニットだ。
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これもすでに触れているが,戦争中の軍隊は維持だけで非常に大きなコストがかかる。包囲戦が早く終われば,それだけ資金が浮くと考えよう。ケチらずマンゴネルなどを用意しておきたい。
個人の歴史が積み重なり,大いなる歴史の流れが生まれる。その流れに身を委ね,予測できない歴史を満喫しよう
最後に,筆者が今までCK3をプレイした中で,一番印象に残ったキャラを紹介しよう。実は歴史上の人物でなければ,プレイキャラでもない,完全なNPCがトップに輝いている。
それは筆者が(既存の統治者でなく)オリジナルのキャラを作成し,ドイツの一地方から立身出世を目指すプレイをしていたときだ。前述のDLC「Roads to Power」を入れて完全無名の冒険者からスタートし,伯爵の領地を乗っ取る形で貴族生活をスタート。神聖ローマ帝国の臣下となり,いずれは自分の王朝で大ドイツ統一を目指したい……なんて指針でプレイしていた。
プレイ中はいろいろあったが概ね計画は順調に進んでいき,何代か後には自身は公爵ながら神聖ローマ帝国の中でもトップクラスの領地を持つようになっていた。しかも息子はひとりだったので,継承問題も気にしなくて良い……というかなり理想的なポジションに。
歯車が狂い始めたのは,比較的早くに配偶者を亡くしたことだ。本作では配偶者が統治者にバフを与えてくれるため,子孫を残して王朝を存続させていく以外にも,いるだけで大きなメリットを与えてくれる。言い方を変えれば配偶者がいなくなるだけで,ステータスにデバフを食らうようなものだ。
この時点で少し悩んだのだが,公爵はバフ目当てで後妻を迎えることにした。この時点ですでに50歳目前で棺桶が見えてくる年代であり,「先も短いし家柄とか関係なく,とにかく能力値が高ければいいや」と選んだ妻は,20代前半の外国貴族の娘であった。
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目論見は成功し結構なバフを得られたのは良いが,事態はまったく予想していない展開を迎える。後妻との間に,次々男子が生まれていってしまったのだ。前妻との子供がたった1人だったので,マスクデータか何かで繁殖力が低いのではとか考えていたのだが,実際はそんなことはなかったようだ。齢50歳を超えて息子6人と娘1人が次々誕生するという,「お前若いときに何をやってたんだ」と言いたくなるような状態になってしまった。
ここで困ったのは継承計画だ。前述のとおり,自分の領地は“平等に”分けられる。つまり前妻との長男に全部の領地が渡るはずが,このままだと1/7になってしまうわけだ。やっと中堅公爵を経て独立国も見えてきたのに,このままでは計画が完全に狂ってしまう。
自分の寿命も迫る中,しょうがないので強攻策に出ることにした。長男だけに領地を渡すのは無理としても,少しでも領土を継承する子供を減らさなくてはいけない。中でもその後に活躍できなさそうな,いってみれば無能っぽい2人を選んで亡くなる直前に廃嫡することで,継承順位から除外しその場を何とか収めることに。後継者がとある事情から,すでに一定の領地を持っていたこともあり,酷いお家騒動になることは避けられた。
時代はそこから数十年一気に進み,公爵の孫の世代に移る。この時代にはすでに王国をこえてドイツ帝国を治めるようになっており,古巣である(ドイツ抜きの)神聖ローマ帝国と激しい領土争いを繰り広げていた。
領土の獲得,あるいは反乱を起こした封臣の追放はかなりスムーズに進んでいたので,支配しきれない土地はどんどん臣下に与えるようになっていた。とはいえ,ろくに知らない廷臣に与えるよりかは親類のほうがいいだろうと,片っ端から称号(領地)を与えていくと,近い親類が枯渇する状態に。しょうがないので家系図を辿ってめぼしい人材がいないかチェックしていると,まったく覚えがないのに何やら一族に比較的優秀な伯爵がいること発見する。
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ここまで書けばピンとくる人も多いだろうが,彼こそが祖父の時代に廃嫡した息子だったのだ。継承順位から外れた彼は領地も得られず,恐らく成人まで首都で飼い殺しのようになっていたのだと思うが,どういう経緯かイベリア半島に渡り,自力で伯爵の地位を得ていたようだ(この時の立場は封臣の封臣。つまり間接的な臣下)。関係としては自身の叔父で,先代をプレイしていたときは兄弟だったのだが,忙しい君主の身では廃嫡された兄弟など気にかける余裕もなく,完全に記憶から失われていた。
ちなみに同時に廃嫡したもう1人の男子は,その数年後に病没していたようで,似たような境遇ながらパンデミックも生き延びていたことになる。
かたや皇帝,かたや遠いイベリア半島の伯爵と親類ながら立場そのものは大きく違うが,そもそも土地無しから実力でのし上がってきたわけで,これは無視できないと判断。数十年越しに継承を復元して名誉の回復を図り,ドイツ国内の領地を与えることに。亡くなる前には,かつて自分を廃嫡した父親と同じランクの称号となる,公爵の立場になっていた。
彼が若い頃に何をしていたかは分からないし(「記憶」という個人の過去のログを見る機能があるのだが,それを見ても良く分からなかった),晩年の称号は筆者があえて目をかけて与えたものだ。しかし,数多くの兄弟の中で明らかに不遇な状況に置かれながら,異国で身を立てた人生にどんなドラマがあったのか,実に興味深い。しかもそれが自分の(継承問題の)尻ぬぐいから起こったことともなれば……なおさら感慨深く感じる。彼の人生だけで,一本の小説が書けそうだと思ったものだ。
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彼のように強烈に印象に残る人物にはなかなか出会う機会はないのだが,本作はプレイしていると大なり小なりさまざまな事件やトラブル,あるいは何らかのイベントが発生し,飽きがなかなか来ない。戦争に明け暮れれば兵士の操作でずっと忙しくなるし,平時でも次の一手のために請求権をねつ造したり,騎士を雇ったり廷臣を充実させて軍事力や内務を充実させたりと,意外とやることは一杯ある。
しかし繰り返すが本作の見どころは,先が基本的に予測できない点だ。自分と同じようにゲーム内にはさまざまな野望や欲望,あるいは信念や一種の悪意を持ったキャラが自由に活動しており,結果的にその積み重ねが歴史の流れという大きなうねりを作っていく。場所に関係なくいくつもの国が誕生し,また崩壊して分裂していくのも,それが見える形で現れているだけ,とも言えるはずだ。
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(状況によるが)君主という立場上,周囲に干渉できる機会はそれなりにある。だがそれはあくまで一部分だけで,世界中のほとんどの事象は自分のあずかり知らぬところで起きていて,結果的に回り回って自分やその王朝に大小の影響を与える。領内での封臣の内ゲバを見るだけでも,自分を棚に上げて「お前らもうちょっと自重しろ」と言いたくなるのは,筆者だけではあるまい。
とはいえこのカオスさこそ本作の魅力の一端で,大幅にデフォルメされてはいるのだが,過去から現在に至るまで人類の文明で延々と戦争が繰り返されてきた一因が,ゲーム内とはいえ肌感覚で少し実感できるのは面白いなと思ってしまう。
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さて本作をプレイすることで,筆者には結構大きな変化が起きた。ほかのパラドゲーに興味がわいてきたのだ。19世紀を舞台にしてより現代に近い時代を体験できる「Victoria 3」はとりあえず触ってみたいなと思っているし,2025年11月に発売されたばかりで,CK3の少し後の時代を描く「Europa Universalis V」も気になるところだ。
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これらは本作のようにRPG風味があるキャラ単位のプレイではなく,ガッチリとした本格的なストラテジーゲームで,かなり手強そうな印象を持っている。だが筆者もCK3ですでに数百時間,世界地図とにらめっこしていたのだから,やってやれないことはないだろう……と,少し楽観的に考えられるようになった。少し前なら「触れば面白いのかもしれないけど,ちょっと手が出ないかな」と思っていたことだろう。
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まあそういった“後のこと”はともかくとして,CK3はシミュレーションゲームが全然ダメ,という人を除けばぜひ多くの人に触ってもらいたいと思う。一定のハードルがあること自体は否定しないが,恐らく見た目より“低い”と思うのだ。最初は必ずチュートリアルから始めることを強く推奨しながら,本稿を締めくくりたい。
さて,次はどこの国で始めようかな……。
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- ライター:津雲回転
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