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ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング公式サイトへ
  • DMM GAMES
  • Nacon
  • Big Bad Wolf
  • 発売日:2022/08/18
  • 価格:通常版:7920円(税込)
    デジタルデラックスエディション:8800円(税込)
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印刷2022/08/24 15:00

プレイレポート

「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」プレイレポート。吸血鬼が人と共存する世界で起こる,謎に満ちた事件を追うサスペンスADV

 DMM GAMESが2022年8月18日に発売した「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」PS5 / XboxSeries X / PS4 / Xbox One)のプレイレポートをお届けしよう。

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 「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」は,Big Bad Wolfが開発を担当し,海外ではNaconより販売されている「Vampire: The Masquerade - Swansong」のコンシューマ向け日本語版だ。「会話」をメインとしたシステムとゲーム進行になっており,立場の異なる3人のヴァンパイアの視点で“とある事件”を追うことになる。

 本作の世界設定のベースとなるのは,テーブルトークRPG「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」(Vampire: The Masquerade)シリーズである。近年はビジュアルノベルゲーム「ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟」PC / PS4 / Switch。原題「Vampire: The Masquerade - Coteries of New York」)や,バトルロイヤルゲーム「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」,開発中のアクションRPG「Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2」PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)など,PC/コンシューマゲームの展開が活発だ。果たして,“オープンシナリオ・アドベンチャー”を謳う本作は,どのようなゲームになっているのか。

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「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」公式サイト



吸血鬼たちの“掟”が破られて始まるストーリー

特殊能力を使って嘘と真実を見極める会話バトル


 ヴァンパイア:ザ・マスカレードの世界では,人間とヴァンパイア(吸血鬼)が共存しており,八重歯が尖っていることを除けば,人間と見分けがつかない容姿であることが多い。基本的にヴァンパイアも何らかの職に就き,人間と変わらぬ生活を送っている。

人を噛み,その血を啜る……という点は,伝承に残る吸血鬼そのものといった感じ。血を供給するのに必要ということもあってか,人間を隷属させたり,雇っているケースもあるようだ
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 ただ,ヴァンパイアたちも一枚岩ではなく,複数の氏族に分かれ,派閥のようなものを形成している。あるとき,氏族間で協定を結ぶ意味合いのパーティーを開くことになったのだが,そのパーティーで,あろうことか,「コード・レッド」が発令される。
 コード・レッドとは,ヴァンパイアたちの間での最上級の警戒信号であり,ヴァンパイアに何らかの危機が迫ったとき,それを察知した者が一族に向けて発するものだ。「家なんか放っぽりだして,今すぐ安全な場所に避難して!」といった感じだろうか。

物語は,コード・レッドの発令直後から始まる。この話を聞いたエメム(左写真)はヴァンパイアの中では若いほうらしく,コード・レッドにどれだけの緊急性があるのか,いまひとつピンと来ていない。一方,事の重大さを理解しているジャーニー(右写真)はだいぶ焦っている様子
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 パーティー会場とは連絡がとれず,コード・レッドを発した者も行方不明。現場で複数の殺人があったのは確かなようだが,事態の把握がまったくできていない状態にあるというわけだ。
 このパーティーを主催したのはヴァンパイアの一族であり,自分たちの存在を人間から隠す「マスカレード」という掟を施行しているヘーゼル・アイヴァーセン公子。今回の事件はその掟が破られたものであり,それが自身の主催するパーティーで行われたわけで,アイヴァーセン公子にしてみれば2つの意味で面目を潰された格好になる。
 掟を破った者には“滅び”を──この事件を引き起こした者には,ヴァンパイアにとっての“死”が処されることになった。

 前置きが長くなったが,この事件の真相を,公子の臣下とも言える3人のヴァンパイアたちの視点で追っていくのが本作の物語となる。

白髪のショートカットに,真っ赤なスーツを着たのがアイヴァーセン公子。今回の事件が誰によるものか,そして何を目的として起こされたものかには,ヴァンパイア一族における政治的な問題も絡んでいるようだ
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黒いスーツの女性がレイシャ,ヒゲの男性がガレブ。この2人にエメムを合わせた計3人が本作の主人公となる。特別親しい間柄というわけではなさそうだが,お互い見知ってはいるようだ
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 最初に操作することになるのはエメム。物語の冒頭で,コード・レッドの発令を聞いた女性のヴァンパイアだ。
 知人のジャーニー・アトキンスがパーティー会場のセッティングを担当していたようで,彼女と話をすると「パーティー会場でもし何かあれば,飛ぶのは私の首だ」と焦っている様子。2人は親しい間柄らしく,エメムは「ジャーニーに非はない」と信じているのだが,アイヴァーセン公子はそうではない。エメムは板挟みになる形で,ジャーニーに最も近いヴァンパイアとしての立場から事件を追う形になる。

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 エメムのパートは,スキルを使った会話や,残り香からその人物を追う特殊能力の使い方,人間から「吸血」するといったゲームの基本的な進め方や,ヴァンパイアとしての立ち回りの基礎を学ぶチュートリアルのようなスタートとなっている。
 重要な会話では,スキルを使った“戦い”になる。スキルの使用には「意志」を消費し,その消費量は自身で調節できる。多く消費することで成功率を高められるが,「意志」ゲージが尽きるとスキルが使えなくなるため,その後の会話で不利になるといった状況が発生する。

最初は成功率30%だったが,意志を1つ多く消費することで成功率が100%に。しかし,相手もまたスキルを使ってくる可能性があり,写真の例のように相手のスキルによって引き分けに持ち込まれてしまうことも。引き分けの場合はダイスを振る演出が入るのだが,そこでも負けたため,この会話は結局敗北に
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「訓え(おしえ)」は超能力の一種で,使用すると「飢え」が蓄積されてしまう。「飢え」のゲージが増えてくると,人間から吸血する必要が出てくる
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残り香を追跡する「先覚」を使うと,目的の人物がどういうルートで移動したか,光の粒で示される
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「先覚」は,密室で交わされる会話の内容を聞き取ることにも使える
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吸血を狙う場合は,誰にも見られないための小部屋(セーフルーム)を事前に発見しておく必要がある。その後,ターゲットに近づいて誘い出し,セーフルームで行為に及ぶのだ
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吸血量は調節できる。MAXまで吸ってしまうと,飢えは多く回復するが,吸血された人間が死んでしまう。こうなると「疑惑」が上昇し,のちのち不利な状況に陥りやすくなる。吸血の際はギリギリで止めておこう
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 スキルによる会話は本作の肝となる要素だが,さらに「対決」という会話もある。通常の会話バトルとは異なり,この結果はその後のストーリー展開に関係してくるのだ。
 選択肢で話が分岐するというゲームは珍しいものではないが,本作の場合,選択したうえで,その選択が成功するかどうかの会話で勝利しなくてはいけない。つまり,勝負に負けてしまうと,選択した結果へ導くことができなくなるというわけだ。

エメムパートの序盤のクライマックス。ジャーニーをアイヴァーセン公子の元へ連れて行くか,それとも逃がすか……!?
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会話バトルの内容はさまざまで,ただの選択肢の連続もあれば「意志」を使った会話バトルが混ざってくることもある
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 こうした基本操作を学びつつ,エメムのパートをクリアすると,2人目の主人公,,レイシャのパートに入る。レイシャは姿を消す特殊能力が使えるヴァンパイアで,他者に見つかるとマズい場所へもガンガン侵入していけるのが特徴だ。
 また,予知能力も持っており,その能力ゆえに公子に目をかけられている。……のだが,その能力は不安定で,予知の内容も意味不明すぎて本人ですらよく分かっていない。もちろん,プレイヤーにもよく分からない。

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姿を消していれば,他者には見つからない。侵入したり,独り言を立ち聞きしたり,調べ物をしたり……と,調査にはうってつけの能力だ。ただし,姿を消している間は相互干渉ができないため,ものを拾う(アイテムを入手する)といったことはできない
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レイシャの予知映像は,めまいのような感覚とともに突然訪れる。謎の空間の奥に小部屋のようなものがあり,カメラがその部屋の中に寄っていくと……そこにいたのは変なポーズで固まったレイシャ。よ,よく分からん……
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部屋内にある書物などを調べることで情報が集まっていくのは三者共通だ。このあたりはオーソドックスなアドベンチャーといった感じ
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 レイシャのパートが終わると,3人目のガレブのパートに。ほかの2人とは異なり,落ち着きのあるダンディな男性ヴァンパイアとなる。ときにFBI捜査官に成りすまし,事件現場に堂々と立ち入るなど大胆な動きを見せるが,かつて自分が噛んだことでヴァンパイア一族となったベレル・アンダーウッドという男との仲が良くないようで,今回の事件に彼が関わっていないことを祈りながらの捜査となる。

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ガレブに噛まれたことでヴァンパイアとなったベレル。なかなかお年を召されているようだが,ガレブさんはいったいどういう経緯でこの人に噛みついたんだろう……
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 こうして3人のパートが一巡すると,その章(ゲーム中では,章の区切りは「レベル」と表現される)のクリアとなり,次の章へと進む。各パートのクリア時には「概要」と呼ばれるリザルト画面のようなものが表示され,プレイヤーの行動によって経験値が入る。この経験値をスキルに割り振っていくというわけだ。毎章,こんな感じで3人のパートを順に進めていくことになる。

調べられるものは調べ尽くしたぞ! という自信を持ってクリアしてみると,まだ見落としがあったことに気付かされたりして,なかなか一筋縄ではいかない
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経験値を割り振ってスキルツリーを成長させていく。これにより,同じキャラクターでもプレイヤーによって微妙に変化が生じていくことだろう
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2章以降は,どのパートを先にプレイするか選択することも可能
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 TRPGシリーズがベースで,さらに“続きモノ”というところで,「本作から始めても楽しめるのか?」が気になる人は少なくないだろう。
 正直なところ,本作の世界設定や登場人物たちの関係性などにはかなり説明不足なところがあり,ゲーム開始直後から,見たことのない海外ドラマを途中から観させられているかのような置いてけぼり感があったことは否めない。とくに本作は会話シーンが長時間を占めるため,序盤はとくに「分からない話を延々と見せられている」という感覚が強かった。

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 メニュー画面から文書ファイルを読んでいくことである程度は補完できるのだが,固有名詞が非常に多く,完全な理解は困難を極めるだろう。大元のTRPGシリーズのプレイヤーや前作(ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟)をプレイした人であればまた印象は異なるのだろうが,シリーズ未経験者だと,メニュー画面から読める解説を熟読しないと理解できないという取っ付きにくさがあった。「今やるべきこと」をいつでも確認できるのだが,その内容が漠然としすぎており,どこへ向かって何をすればいいのか分かりにくい。このあたりも昨今のゲームに比べるとやや不親切に感じる。
 気になる翻訳の精度だが,脱字や男性/女性の言い回しの間違いといった細かいミスが見受けられた。プレイしたのは発売前のものであり,今後のアップデートで修正されるとは思うが,会話がメインなゲームなだけに気になる点だ。

単語や人物はメニュー画面の「写本」に詳しく記載されているが,すべて把握するとなるとかなりの量だ
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いわゆるオネエキャラではなさそうな男性が女性的な言葉を使っていたり,女性が男っぽい話し方をしていたり。最初は「そういうキャラ付けかな?」とも思ったが,英語音声を聞くかぎりそんな感じではない……ということもよくあった
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 このように,入りにくさを感じる部分や気になる点があるゲームではあるが,世界観を理解し,登場人物たちの関係性が把握できるようになると,だいぶ印象が変わる。
 ネタバレを避けるため詳しくは伝えられないが,ヴァンパイアたちの社会で発生した事件の謎に迫っていく過程がなんとも言えない牽引力のある展開で,見たことのない海外ドラマのようだった物語が,いつしかどんどん進めたくなるようなものへと変わるのである。
 物語が進むと会話以外の要素も増えていくので,ゲームとしてもプレイ感覚が変わっていくところも好印象だ。

エメムのパートでは,「ブリンク」という能力を使って離れた足場へワープする場面も出てくる。アクション性はないが,上下左右を観察し「どこへ飛べるのか」を見極めるのが重要になる
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レイシャのパートでは「服装をコピーする」という能力が登場し,これにより通常では入れない場所へも行けるようになる。左側頭部から後頭部にかけて刈り上げるというメチャクチャ目立つ髪型をしているレイシャが,服装を変えただけで「通ってヨシ!」みたいな対応をされるところはちょっと面白い
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床にある円形のギミックを回転させて線をつなぐといったような,パズルのような謎解きもある
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 また,アクション性はない分「操作が難しくて行き詰まる」という心配はない。会話バトルの結果が振るわなかったり,各パートでの調査が不完全だったりしても物語が進んでいくことが多いため,世界観にどっぷりと浸りつつ,謎解きを楽しみながら物語を進められるのも大きな特徴だ。
 最初は思ったように話を進められないと感じるかもしれないが,ミスなく進めることを頑張るよりも,その結果でどう物語が展開するかを見届けることが面白い。このあたりが,本作が「オープンシナリオ・アドベンチャー」と称される所以だろう。

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 基本的に「会話」と「移動」に終始するため派手さはないが,「ヴァンパイア世界の政治劇」という珍しいタイプのストーリーと,テーブルトークRPGのような成否判定による会話バトルは新鮮なものがある。スロースターターではあるが,奇妙な魅力を持ったゲームなので,本稿を読んで興味を持った人は,ぜひ触れてみてほしい。

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