バリアフリーとeスポーツが融合。「ストリートファイター6」の大会イベント「ハチエフ HACHIMANTAI 8 FIGHTS '24」フォトレポート

　2024年9月14日と15日の2日間にわたって，岩手県八幡平市の安比リゾートセンター・プラザホールで，対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」（以下，スト6）を用いた大会イベント「ハチエフ HACHIMANTAI 8 FIGHTS '24」（以下，ハチエフ）が開催された。

会場周辺のAPPIリゾートはスキーのメッカとしても知られている

　ハチエフは，ePARAが主催する「闘い方は、無限大。」をテーマに掲げた“バリアフリーeスポーツイベント”だ。2023年に第1回が開催され，第2回となる今年は，スト6の個人戦と2on2の大会イベントを実施。また，あわせて多様なゲームアクセシビリティ機能を体験できるエリアが用意されていた。

　イベントをプロデュースするのは，難病を抱える格闘ゲーマーとして知られるJeni選手こと畠山駿也氏。同氏は持病の影響で手を使った操作ができないため，顎で操作するコントローラを仲間とともに制作し，格闘ゲームの最前線で戦い続けている。

　会場には，畠山氏以外にも，複数名の身体に障害を抱えたプレイヤーが参加していたが，各種アクセシビリティに対応したPCが置かれるなど，だれでもが不自由なく参加できるようさまざまな配慮がなされており，eスポーツとバリアフリーの組み合わせの可能性を大いに感じさせるイベントとなっていた。本稿では，ハチエフの模様をフォトレポートでお届けしていく。

「ハチエフ」公式サイト

初日は2on2トーナメントのほか，おじ格ゲーマーによるトークイベントなどを実施

ホテルからイベント会場は通路でつながっており，そのままアクセスできる。アメリカのEVOもホテルから直通でいけるため，ハチエフのことを「岩手のEVO」と呼ぶゲーマーもいるそうだ

ePARAが強くプッシュしていた，モジュール式のコントローラ「プロテウスコントローラー」。方向キーやボタンなどを好きな位置，好きな角度に変更できるバリアフリーなコントロールデバイスだ

ePARA所属のNAOYA選手。全盲のプレイヤーだが，スト6のサウンドアクセシビリティを用いて対戦を楽しんでいる。なお，ePARAはスト6のサウンドアクセシビリティの改善に全面協力しているそうだ

ePARA所属のDAIJIROU選手。Jeni選手と同じく身体に障害を抱えるプレイヤーで「Access コントローラー」を足で操作し，対戦に臨んでいる。今回はゲストの布団ちゃんさんと2on2でチームを組み出場していた

横並びで対戦するのが難しい場合，オンラインにつないで対戦する形式に変更されていた。このような配慮も本イベントならでは

Jeni選手がのEVO 2024に出場したときに撮影された写真を飾るコーナーも

大会前には，ゲストの布団ちゃんさん＆豪傑フロンタルさんと，石井プロさん＆ハンサム折笠さんによる2on2エキシビションマッチも実施された

開会式の模様。最後のゲストとなる梅田サイファーのKBD a.k.a.古武道さんも登壇した

KBDさんはEVO Japan 2024でメインテーマを担当したことがきっかけでスト6を始めたという。今回は，Jeni選手とチームを組んで大会に臨んでいた

2on2の決勝トーナメント前には，おじ格ゲーマーによるトークイベントも実施された。メンバーで当地のメンマをつまみにビールを飲みつつ，題について語らうゆるいコーナーであった

トークイベント後には，KBDさんによるショートライブがスタート。EVO Japan 2024のメインテーマである「CONTINUE」などが披露された

100人近い選手が参加した2on2トーナメントを制したのは，チーム「優勝」のないお選手とVERYkomatsu選手の2人

2日目はJeni選手によるEVO 2024のレポートやシングルトーナメントが開催

2日目は「写真と映像で振り返る，EVO 2024 Jeniレポート」コーナーからスタート。ドキュメンタリー映像の上映や，写真を見つつのトークショーが展開された

2日目に実施されたシングルトーナメントを制したのは，前日の2on2でも優勝したVERYkomatsu選手

2日間にわたって盛り上がりを見せたハチエフは，Jeni選手の挨拶をもって幕を閉じた

ハチエフプロデューサー・Jeni選手コメント

――ハチエフ開催のきっかけについて

Jeni選手：
　以前から今回と同じ会場で半年に一度「G019サミット」というLANパーティーが開催されていまして，第1回のときにぼくはブース担当で参加していたんですが，そのときに車椅子の男の子が「フォートナイト」のイベントに参加して楽しそうに遊んでいたんです。それを見て，「やっぱりオフラインイベントはいいな。岩手で格闘ゲームのオフラインイベントを開催したいな」と思ったことがきっかけになります。

　それで開催したのが2023年の「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」なんですが，こちらは対戦会や交流会という名目で開催しました。まずは岩手県のみんなに格闘ゲームのオフラインイベントの楽しさを対戦会や交流会で知ってもらうという目的ですね。

　そこである程度ノウハウを積み，第2回となる今回はさらにステップアップして，腕試しの場――大会イベントとして開催することにしたんです。第1回もそうでしたが，今回も対戦会などを運営したことがあるプレイヤーにボランティアで参加いただけまして，非常にスムーズに運営を行うことができました。東北の格闘ゲームコミュニティの力強さを感じられましたし，無事にイベントも終了できて，とてもうれしい気持ちです。

――今後のハチエフの展開について

Jeni選手：
　八幡平市の担当の方やスポンサー様と話をしながら，2025年も開催できるように準備を進めています。年に1回，ハチエフを開催するのは基本として，それ以外にもある程度の頻度で対戦会などを実施して，プレイヤーが交流できる場を提供できればと考えています。

　対戦会で，仲間やハチエフに向けてのチームメンバーを探すのもいいですし，格闘ゲームコミュニティそのものの活性化にもつながるとうれしいです。参加費については，今後も可能な限り無料でと考えています。機材も今はスポンサー様にお借りしている状況ですが，ゆくゆくは岩手の格闘ゲームコミュニティで所有したいですね。

　イベント人員に関してもコミュニティ内で完結したいですね。スト6から格闘ゲームをやり始めたという若手も多く，そういったプレイヤーと一緒にイベントをつくり，みんなでゲームをできる遊びの場を提供していけたらと考えています。

「ストリートファイター6」公式サイト