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[TGS2022]激戦のレーシングシム界に,香港からホンモノのレーサーが殴り込み。「Rev to Vertex」は,リアルとゲームの架け橋を目指す
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印刷2022/09/18 21:39

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[TGS2022]激戦のレーシングシム界に,香港からホンモノのレーサーが殴り込み。「Rev to Vertex」は,リアルとゲームの架け橋を目指す

挙動も,グラフィックスも,デバイスも,すべてを含めてゲームでの再現度が非常に高い“クルマ”という乗り物だが,もうこれ以上進化するのは難そうに見えるそのジャンルに,また一つタイトルが新規参入した。それが「Rev to Vertex」
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 日本でもそこそこ名が知れたコンピュータのレースシムといえば,その端緒はおそらくPapyrus社の「Indianapolis 500:The Simulation」(1990年)だろう。最初の編集部の上司がこれを好きで,夜な夜なオーバルレースに付き合わされたので,筆者にとっても感慨深いタイトルだ。その後,MicroProse社の「Formura 1 Grand Prix」(1991),Papyrus社の「IndyCar Racing」(1993)……とレースシムは順当に進化したが,プレイステーションの「グランツーリスモ」(1997年)がその流れを変えた。
 その後しばらく時間を置いたのちに「Forza Motorsport」(2005),「iRacing」(2008),「Assetto Corsa」(2013)など,誰もが知るレースシムが登場し,各社挙動のリアルさやグラフィックスの美しさなどを競いながら,いまに至る。

真っ赤なスープラがお出迎え。映画「ワイルド・スピード」に登場して米国で人気に火がついたため,A80スープラ(4代目)を筆頭に中古価格が超絶に高騰しているクルマだ
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 そんな,長い時間を積み重ねて全体がハイレベルになっている激戦区に,いまから入ってくるリアル志向のレースシムが「Rev to Vertex」PC)だ。TGS2022の会場に出展していたそのタイトルは,Z-Challengeという会社の手によるものだが,巨大な看板の文字に見えるように香港のメーカーだ。そういえば香港の友達が昔,「夜みんなでハイウェイをかっ飛ばすのが一番のストレス解消かな」(弁護士なのに……)と言っていたが,香港ってもしかしてそういうカルチャーが強いのだろうか。それともみんな「湾岸ミッドナイト」の読み過ぎなんだろうか。

ちょっと中国感漂うキャッチコピーとフォントだが,そのイメージで判断してはもったいない
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 アクションゲームみたいなレースだったらちょっとイヤだなと思いながら一度走らせてもらったが,それは杞憂だった。一番パワーが弱い車種で走ってみたが,ちょっとアンダー気味の,ちゃんとレースシムらしい地味でリアルな挙動だ。すぐにお尻がとっ散らかるようなことはないが,ちょっと強めのフェイントモーションはちゃんと反応した。
 しかしクルマの挙動もさることながら,風景がやたらに精細に描き込んであるのが気になる。初周回で風景を楽しむ余裕などないはずだが,それでも否が応でも目に入ってくる。用意されていたコースがすべて公道だったせいもあり,普通のサーキットコース以上に,その描き込みの緻密さが目立つのだ。

 ちょうど,ゲームディレクターのJason Mok Tsz Wang氏(Mok氏)と,Japan Project ManagerのJason Lo Pak Ho氏(Lo氏)がいたのでちょっと話を聞いてみたが,開発期間はまだ1年くらいとのこと。たった1年で,この挙動とグラフィックスを?

ちょっと恥ずかしそうに答えてくれた,ゲームディレクターのMok氏。自分のクルマの話になったら俄然元気になっていたので,本当に好きなのだろう
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Mok氏:
 はい。とくにコースは香港政府の空間データ事務局に協力してもらって,光学レーダーで測った実測値を元に細かく調整してコースを作っています。

4Gamer:
 想像以上に本格的でした……。

Mok氏:
 でもそのレーダーの数値だけではなく,実際に計測機器やカメラを付けて何度も何度もそのコースを実際に走って,路面のギャップとか,アスファルトの継ぎ目の段差とか,道路の傾きとか,道路脇の看板とか,自然林の木の具合とか,そのあたりも全部,それこそ木を1本ずつ配置して再現しました。

4Gamer:
 実在する公道コースをテーマにしたゲームはいくつかありますけど,ギャップとか段差とか傾きまで再現されてるタイトルはあったかな……。普通は,形状や周囲の情景の再現にとどまっている気がします。
 よく「○○に基づいてリアルに再現」という宣伝文句はありますが,そうではなくて画面の中に完全に再現してる感じなんですね。

この手のレースシムを見てると,普通のプレイヤーさんは大体このカメラモードで走ってるのだが,視界悪くないですか?(リアルな景色といえばそのとおりだけど)
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Mok氏:
 そうですね。出来るだけ現地で実際に車を走らせている感覚になってほしいので,ゲーム画面上にそのコースを再現できるように可能な限りがんばってます。なにしろ,実際にこういう走り方をすることは許されないことなので,せめてゲームの中では実際にそうしている気持ちになれるよう,出来るだけリアルに作りたいですし,皆さんに喜んでほしいです。

4Gamer:
 確かに,榛名や赤城が完璧に再現されてたら,地元住民としてはちょっと興奮します。でもこれ,走るだけのレースシムというわけではないんですよね。

Mok氏:
 ちょっとRPGっぽい要素も含んでいます。ストーリーモードみたいなものもありますし,NPCが出てきてバトルをして,勝ったらポイントが入ったりします。そのポイントを溜めて,クルマのカスタマイズをしたり新しい車体を購入したり。

4Gamer:
 なるほど,ガチガチのシム一辺倒というわけではないんですね。

Lo氏:
 はい,やはり一般の方にも楽しんでいただきたいので。いま言ったRPGぽい要素だったり,ブレーキアシストみたいにイージーに走れるモードだったり,そういう要素も搭載する予定です。

4Gamer:
 ローンチ時にはどれくらいの車種が入ってるんでしょうか。

Mok氏:
 まだハッキリとは言えなくてすみません。いままさに,いろんな自動車メーカーやエアロパーツメーカーとお話をさせてもらっているところです。

4Gamer:
 ちなみにこのTGSのデモ機の車種は?

Mok氏:
 TGS用のテストプレイには,3種類のクルマがあります。GT300スタイルのセリカ,GT500スタイルのスープラ,そしてR34のGT-R V-Spec,です。もちろんライセンス契約はまだなので,あくまでも「そういうものを目指したコンセプトカー」ということでご理解いただけると嬉しいです(笑)。

今回TGS用にセットされていたコースとクルマ。筆者は若いころかなり香港に通っていたので,なんとなく「あぁあのへんか」と分かるが,早期の日本コース導入にも期待したい
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4Gamer:
 分かりました(笑)。最終的にはどれくらいの車種を登場させたいと思ってますか?

Mok氏:
 そこもまだなんとも言えません。でも,普通に街を走っているノーマルカーから,GT300とかGT500とか,そういうのもキチンと登場させたいですね。

4Gamer:
 ネオクラシックはどうでしょう。

Mok氏:
 あぁもちろんいいですね! ハチロクとか!

4Gamer:
 やはりそこでハチロクが出るんですね(笑)。

Mok氏:
 開発チームのメンバーは全員クルママニアなので,ネオクラシックなんかも含めてぜひ入れたいって話してるんです。

4Gamer:
 みなさんは何に乗ってるんですか?

Mok氏:
 私は……サーキット専用のクルマを1台持ってまして,あとはER34のGT Turboと,街乗り用にインプレッサです。

Lo氏:
 僕もインプレッサSTIです。

4Gamer:
 Mokさんが想像以上に本格的でした……。ところで香港はインプレッサが人気なんですか?

※それもそのはず。インタビュー後に調べてみたら,Mok氏は兄弟でマカオグランプリ GTカップに参戦して優勝した,ホンモノ(?)のレーシングドライバーだった。

Lo氏:
 香港は峠が割と多いので,四駆のランエボかインプレッサが結構人気ですね。

カメラチェンジしたこの風景が大好き。実際に走っているところを撮影しているので精細な描き込みが分かりづらいかもしれないが,妙なリアルさをご理解いただけるだろうか
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4Gamer:
 僕は群馬に住んでますが,峠でもインプはそこまで多く見かけない気がしてるので意外でした。

Lo氏:
 群馬ですか! 群馬は……峠の走り屋の聖地ですから,ほらみんな横にズザーーって(笑)。スタイルが違うんですきっと(笑)。

4Gamer:
 なるほどそういう理由(笑)。
 そういえば群馬の峠で思い出したんですが,Steamなのでローンチはたぶん全世界同時だと思います。その時点で入ってるコースはどのあたりですか?

Mok氏:
 最初のコースは香港のみですが,もちろん追加していきます。

4Gamer:
 追加するコースの一番最初は?

Mok氏:
 もちろん日本です! 日本のサーキットか峠にしたいですね。

4Gamer:
 ぜひお願いします!
 そうやってコースや車種を増やしていって,本作が目指すものはどこになるんでしょうか。

Mok氏:
 そこは明白で,eスポーツのレーシングシムで使われるプラットフォームの一つを目指したいです。峠向けとかサーキット向けとか,そういう強い色付けをするのではなく,“レーシングシム”という意味で全方位に対応できるものにしていきたいです。
 リアルなレーシング活動はやはりハードルが高いですし,シミュレーションをリアルに作り込むことによって,リアルのレースとeスポーツと,両方を盛り上げる架け橋になる作品になればいいと思っています。

4Gamer:
 でも言うまでもなく,いまおっしゃったような方向性であっても,世界には素晴らしいクルマのシミュレーションシムが数多くあるわけです。そのタイトル達とはどういう部分で差別化を計ろうと思ってますか?

Mok氏:
 確かに世界には,素晴らしいシミュレーション作品がたくさんありますが,みんな「実車の感覚」を追求しているわけです。徹底してシミュレーションしているというか。
 でも私達のR2V(Rev to Vertex)は,昔の……例えば「首都高バトル」とか「リッジレーサー」とか「バトルギア」とか,ああいった楽しいレースゲームの要素も含むシミュレーションとして完成させたいと思っているので,ぜひ期待してください。

4Gamer:
 ありがとうございました。 

ゲームディレクターのJason Mok Tsz Wang氏(右)と,Japan Project ManagerのJason Lo Pak Ho氏(左)。お忙しいのに立ち話の時間をありがとうございました
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