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印刷2026/02/14 12:00

レビュー

[レビュー]自然の厳しさとぬくもりが心に刺さる。「南極計画」は,情緒ある静寂のなかにインディーな尖った表現を感じられるサバイバルゲーム

 パルコのゲームレーベル・PARCO GAMESのパブリッシング第3弾タイトル「南極計画」は,極寒の過酷な環境を孤独に旅する子どもの姿を描く,ナラティブ重視のアドベンチャーゲームだ。

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 状況を説明する言葉はほとんどない。しかしその内容はナラティブ(物語主導)で,表現や描くものはとてもエモーショナルだ。
 独特のアートワークとテーマ性もあって海外の作品のような印象を受けるが,ゲームを手掛けたのは東京を拠点とするRexLaboインディーゲームインキュベーションプログラム「iGi indie Game incubator」の第1期生である小規模スタジオだ。

 そんな本作をプレイして感じたことは,寒さが厳しいうちにプレイすることをおススメしたい作品であるということ。その理由をこれから伝えていきたいと思う。

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過酷な環境で救いとなるのは,動物たちのぬくもりと“寄り添うこと”


 「南極計画」で描かれるのは,人類が滅びかけている西暦2900年代の時代だ。
 ウイルスの蔓延や食糧危機,異常気象や戦争によって,地球はボロボロになっている。そんななか,南極から謎のシグナルが放たれた。シグナルは豊富な資源の存在を示唆するものだが,その道のりは困難が予想される。
 この過酷な任務に選ばれたのが主人公の「子ども」である。子どもはシグナルに向け,一歩ずつ歩みを進めていく……。

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 南極は「過酷」という単語でも表現しきれないほど厳しい場所だ。
 子どもは強化外骨格と特殊なスーツに身を包んでおり,この悪環境でも生きてはいけるものの,それも「エネルギー」と「耐寒シールド」が続く限り,ではある。
 何もしなくてもエネルギーは減っていくし,気温が低くなるほど耐寒シールドの減少は早まり,耐寒シールドが切れた状態で気温が下がればエネルギーの消耗は激しくなる。

 要するに,南極はずっと寒いので耐寒シールドに余裕があるような状況なんてないし,止まっていても歩いていてもエネルギーはどんどん食われていく
 そして,エネルギーが尽きればゲームオーバーになり,その日の最初からやり直しになってしまうのだ。

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 一般的なRPGでいえば,毒やらなにやらのデバフが常時かかっているような状態だが,ここに南極が追い打ちをかけてくるのが本作の恐ろしいところである。
 南極の天気はコロコロと変わる。さっきまで晴れていたかと思えば,今は吹雪が吹きすさぶなんてことも珍しくない。吹雪に晒されると気温も急低下し,もちろんエネルギーや耐寒シールドの消費も激しくなる。

 それだけならまだいい(よくはない)が,あまり長く吹雪の中にいると,風で飛ばされた何かに当たってゲームオーバーになることも。その何かを確実に回避する手段はないし,エネルギーや耐寒シールドがどれだけ残っていても問答無用でアウトだ。

吹雪は凄まじい風が吹き荒れる。建物や岩の陰に行かないと,風に飛ばされてきた何かにぶつかってゲームオーバーに。吹雪になってから遮蔽物を探してもまず間に合わない
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 放射線嵐もエネルギーの減少が早くなるため,シンプルに恐ろしいものがある。徐々に視界が狭まっていく演出も怖く,ホラーゲームのような趣すらあるのだ。

放射線嵐はエネルギーを急速に減少させる
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 そして「スタミナ」の消耗も危険である。子どもは走ったり採掘したりといった行動をとるとスタミナが減っていく。そしてスタミナは自然回復することがほぼない。
 常にエネルギーが減少していくことを考えると早く進みたい気になるが,だからといってむやみに走り回っていると,本当に必要なところでスタミナ切れということにもなりかねないのだ。

壊れた建物に入るには,入口をツルハシで開通させなければならない。スタミナ配分を誤ると建物に入れないということも
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 1人旅の中では,普段意識すらしていないものすら恐怖の対象となる。それが“高さ”と“霧”だ。
 あまりに高い所から落ちると,負傷で動けなくなり即ゲームオーバーになる。平和な街とは違って誰が助けに来てくれるわけではない。極限環境ならではの恐怖といえるだろう。

 さらに危険なのが霧である。霧の中では視界も限られてしまう。「フラッシュライト」で僅かながら周りが見えるものの,これがかえって危険を呼ぶ。「注意しながらゆっくり歩けば大丈夫だろう」なんて歩いていると,崖に気付かず落ちてゲームオーバーになる。

 だからといってその場に留まっていると,寒気でエネルギーが食われていく。もう,にっちもさっちもいかないような状態だ。何も分かっていないようなゲーム開始直後だと,何度もゲームオーバーになって面食らう人もいるかもしれない。

霧に包まれてしまった。何も見えなくなるわけではないのが厄介で,急いでいるときはどうしても進みたくなるが……
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 もちろん,こうした障害には対処法があり,身をもってひとつひとつ学んでいくのが本作の面白さの一つである。
 吹雪が来たら,周囲にある山や建物の陰に潜り込めばいい。高い所に登るのであれば,できるだけなだらかなルートを探し,霧が出たらむやみに動かず,できれば屋内に避難してエネルギーや耐寒シールドを節約する……といったように,南極での行動が分かってくる。
 常にエネルギーが減る環境だけに急ぎたくなるのだが,無理をして消耗するよりは,避難するのが遠回りに見えて近道なのである。

当初は何も分からず吹雪に翻弄されていたものが,セオリーを学び取れば建物に避難することもできる。画面右下にある並ぶ6つのマークは天気予報で,こののち晴れとなり,曇り,雪,放射線嵐,曇り……と気象が移り変わっていくことが分かる
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 そして,避難場所では天気が好転するまでやることがない。これは「クラフト」するのに絶好のチャンスだ。
 南極では前にいた人々が物資を残しており,これを組み合わせることでクラフトできる。
 エネルギーやスタミナを回復するアイテムに加え,吹雪を防ぐ壁や,高い所に登る際に足場にする箱,樹木や岩石から採集するための斧やツルハシなど,限られた素材から生存に欠かせない道具やアイテムを制作するのだ。

「クラフト」できるものは,あちこちでお手本となるアイテムや道具を「スキャン」することで増えていく
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 歩きながらでもクラフトはできるが,実はこれも危険をはらんでいる。
 例えば回復アイテムのクラフトを後回しにしていたところ,探索に夢中になって忘れてしまい,いざ吹雪が来た時に間に合わなかった,なんてことがあった。避難している時の余った時間でアイテムを作り溜めしておけば,こんな目には遭わなかったわけだ。

 しばらくすると「天気予報をチェックし,吹雪や霧が来そうなら無理な遠出は控え,今のうちに避難場所を探しておく」「避難場所では黙々とクラフトをする」というセオリーが身につくだろう。これは雪山登山もののドラマや映画で見るような行動であり,極地を探検している実感が湧いてくるのだ。

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壁を作れば,吹雪から身を守れる。しかし,寒さに対しては無防備だ
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ツルハシをクラフトし,岩を掘る。このほかに,温度を確保できるが風雪に弱い焚火,ウイルスを除去できるツールなど,さまざまな道具を作れるようになる

 こうした厳しい旅に潤いを与えてくれるのが,南極の「お友達(動物)」である。
 プレイを進めると子どもは動物たちと不思議な出会いを果たす。お友達は子どもについてきて,その能力で助けてくれるのだ。

ペンギン(上写真)や狼(下写真)などの動物たちと「お友達」になれる
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 本作を象徴するのがペンギンだろう。ペンギンは後ろから近づくと抱っこできる。
 抱っこができて何になるのか……というと,ペンギンと子どもは体温を分け合い,温かくなれるのだ。
 極寒の環境において,温度が上がることは非常に重要である。気温が下がるほどエネルギーが早く消費されるのは前述したとおりだが,ペンギンを抱っこしていると減少速度を抑えることができるのだ。

ペンギンを抱っこすると,走れなくなるが体温は保持できる。南極では何よりも必要なのはぬくもりだ
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 たとえ周囲で吹雪が吹き荒れ,身を寄せている建物に天井がなかったとしても,ペンギンを抱っこしていれば安心でき,まるで天国のように感じられる。エモーショナルな側面とゲームシステムを上手く組み合わせた,本作ならではの表現といえるだろう。

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たとえ霧に包まれても,ペンギンと一緒なら怖くない。ぬくもりとは,体温的な意味だけではないな……とも感じる瞬間
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狼は子どもを乗せて走ってくれて,移動が楽になる

 そして,本作の物語は“言葉なく語られる”のもポイントだろう。南極のあちこちには端末があり,それをインタラクトすると過去の出来事を追いかけられる。

過去に起こった事件を垣間見られる。銃を持った人間と哀願する人間(上写真),倒れた人間(下写真)など,ホログラフィは過去の惨劇を暗示する。なぜか南極なのに森林があるが,こちらも物語の謎に絡んでくるようだ
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 かつて南極にも人が住んでいたが,どうやら大きな事件があったようだ。銃を構えた男たちや,怯えて逃げる人々の姿がホログラフィとして映し出されるのだが,セリフがないため細かな事情は分からない。
 壊れた建物や乗り捨てられた車を目撃することもあり,何があったのかが気にかかる。動物たちもさまざまな事情を抱えているが,回想シーンで断片的に表現されるのみで,こちらも言葉はない。それだけに,想像力が刺激されるのだ。

打ち捨てられた建物も見える。果たして過去には何があったのか?
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人間だけではなく,お友達(動物たち)の事情も語られる
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 厳しい南極をただ1人で旅するなか,エモーショナルな出会いがあるのが「南極計画」の大きな魅力だ。
 生きるうえで耐え忍ぶということ,隣に誰かがいてくれることの大切さなどが,極寒の南極という容赦のない環境を通して表現されている。一見,バトルや破壊といった派手な要素はなく物静かな雰囲気だが,実にインディーゲームらしい尖ったモノを感じさせてくれる作品といえるだろう。

子どもが故郷で撮ったと思しき写真。家族は皆マスクをしており,状況の厳しさがうかがえる。子どもが南極と変わらない姿をしているのは,出発直前に撮影したからだろうか?
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 そして,自然と寒さの恐ろしさがゲームシステム的に翻訳されているのも興味深いところ。急激に下がるエネルギーや常に変わり続ける天候,霧で遮られる視界とさまざまな自然の驚異がゲームの体験として落とし込まれている。
 そして,それに立ち向かうのではなくやり過ごすというリアルな対処法は,プレイしているこちらまで寒く,心細く,恐怖がじりじりと染み渡っていく。それがあるからこそ,お友達となる動物たちとのと出会いの温かさもひとしおなのだ。

 つまり本作は,自然の厳しさとともぬくもりも感じられ,その美しさにも気がつける作品である。

 だからこそ,寒さから感じる心細さと,暖かいことのありがたさを体感できる今の季節だからこそ,感情移入がより深くなるゲームといえるだろう。もちろん,オールシーズン楽しんでいただければとも思うが,冬が来ると何となく立ち上げたくなる,そんなゲームにもなるのではないのだろうか。

リリース直後の時点ではゲーム進行に関わる不具合も出ており,筆者もそこから先に進めなくなってしまった。本作のエモーショナルな側面に惹かれただけにこの先が気になる。なおRexLaboはすでに不具合の対処や操作性の向上を進めているので,プレイする人は公式X(@RexLabo)などで対応状況を追いかけておこう
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