インタビュー
[インタビュー]「フラガリアメモリーズ」キキ&ララに仕える双子の騎士が歌う,2つの楽曲に込めた想いを三上瑛士さんと榊原優希さんに聞いた
今回,4Gamerはリトルツインスターズのキキ&ララを主(ロード)に持つ双子の騎士,クラークステラとルタールステラの世界観を表現した楽曲「永き瞳見のシリウス」(クラークステラ曲)と「儚き心像のメビウス」(ルタールステラ曲)についてインタビューする機会を得た。
プロデューサーの村上一馬氏には各楽曲の解説を,CVを担当する三上瑛士さん(クラークステラ役)と榊原優希さん(ルタールステラ役)には楽曲の印象や歌に込めた想いをうかがったので,ぜひ最後まで楽しんでほしい。
三上瑛士さん(クラークステラ役) |
榊原優希さん(ルタールステラ役) |
2人と「キキ&ララ」の思い出
オーディションで運命の再会を果たす
4Gamer:
まずは,「フラメモ」やキャラクターとの出会いについてお聞かせください。
クラークステラ役/三上瑛士さん(以下,三上さん):
オーディションで役をいただいたのは,クラークステラが初めてでした。クラくん(クラークステラ)の資料をいただいたとき,スッと自分の中に入っていくのを感じたんですよね。自分がキャラクターに寄せていくというより,しっくりとハマる感覚がありました。
どんなキャラクターでも自分から歩み寄ることは必要だと思うのですが,自然に馴染むという感覚を抱いたのは初めてでしたね。結果として,ありがたいことに役をいただくことができました。
4Gamer:
共通点を感じられたのでしょうか。
三上さん:
共通点というより,自分が一番出しやすい……勝負しやすい音を僕の中で考えていて,そこから変える必要なくハマったキャラクターだなと感じました。そういう意味での親和性を感じたんだと思います。
ルタールステラ役/榊原優希さん:
僕は最初に「フラメモ」の資料をいただいたとき,あのサンリオのキャラクターたちとこんなふうに関われる機会があるんだ! って,すごくびっくりしました(笑)。資料を見ているだけでドキドキワクワクして,当初はちょっと第三者的な目線でしたね。
実はルタくん(ルタールステラ)以外の役のオーディションも受けていたのですが,やっぱり僕もルタくんが馴染みましたし,一番自分に近いところがあるのかなと感じました。なので,起用していただけて本当にうれしかったです。
4Gamer:
ありがとうございます。オーディションでは歌唱もあり,ほかのキャストさんが「難しかった!」とおっしゃっていたという話も聞いていますが,いかがでしたか。
三上さん:
「フラガリアメモリーズ」のオリジナル楽曲とは別の課題曲を歌わせていただきました。
歌ありのオーディションの経験は少なかったので,完全にキャラクターとして歌えばいいのか,それとも自分の全力を出し切ってしまっていいのかが分からない状況でしたね。
なので歌ったことは覚えてますが,どう振る舞ったかは全然記憶にないです(笑)。
榊原さん:
僕はオーディションで複数のキャラクターを受けたんですけど,それぞれの“らしさ”をどう出すかに集中していたから,何を歌ったかすらあまり覚えていないですね……。
4Gamer:
お二人ともかなり集中されていたんですね。村上さんは,三上さんと榊原さんの歌を聴いた印象はいかがでしたか。
プロデューサー村上一馬氏(以下,村上氏):
前提として,ブーケごとに「こういう曲にしたい」というイメージがあったので,それぞれオーディションでの課題曲を変えていました。
クラークとルタールが所属するBLUE BOUQUET(ブルーブーケ)は,伸びやかに広がっていくような曲を歌える人がいいなと思っていました。そういった観点で聞いたとき,このお二人は,その感じがすごく良かったんです。
演技に関しては,「そのキャラクターに合っているかどうか」はもちろんですが,主(ロード)がキキ&ララかつ双子のフラガリアなので,2人の声が並んだときの相性も重視していました。榊原さんと三上さんはその点も良かったです。
逆に言うと,このお二人でなければ,まったく別の2人組を起用していた可能性もあったかもしれません。
4Gamer:
なるほど。共演は今回が初めてですよね?
三上さん&榊原さん:
はい,そうです。
4Gamer:
村上さんのおっしゃるとおり,お二人が並んでいて醸し出す雰囲気がすごく柔らかくて癒やされてしまいます。ちなみに,主(ロード)であるキキ&ララに関する思い出はありますか。
三上さん:
全然オチのない小さなエピソードはあるんですけど……。
榊原さん:
聞きたい!
三上さん:
幼稚園か小学校低学年のころ,本とか道具を入れる手提げ袋を使っていたんですけど,無地で何のイラストもなかったんですよ。でもほかのみんなは可愛いのを使っていて……。
そこで母に頼んで新しいのを買ってきてもらったのが,キキくんとララちゃんのものだったんです。もともと星が好きだったのもあって,そこから“推し”になりました。
でも大人になるにつれて,だんだんサンリオキャラクターと触れる機会は減ってしまっていたんです。そんななかでいただいた今回の役だったので,熱が再燃して(笑)。最近グッズをいっぱい集めてますね。
4Gamer:
すてきなエピソードですね,榊原さんはいかがですか。
榊原さん:
昔の記憶なんですけど……僕の実家は,居間からトイレに行くまでの道のりがちょっと遠かったんです。薄暗いスポットがあったので,ちびっこの目にはめちゃくちゃ怖くて,通過するのがとにかく嫌でした。
でも端のほうに,キキ&ララの何かが置かれていて……。イラストは心に残っているものの,何のアイテムだったかは忘れてしまったんですが,とにかくその2人を見つめて「ここから視線を外したら何かに食われる!」と思いながら歩いてました。
暗闇のなかで輝く星のように導いてくれたというか……綺麗に言うとそんな感じですが,しょうもない話です(笑)。
でも本当に“怖いことから守ってくれた2人”っていうイメージだったので,今回の役をいただけて,今度は僕が2人を守る騎士になれたことが,何だかすごくうれしかったですね。
4Gamer:
お二人とも,ある意味で運命の再会だったわけですね。
楽曲についてプロデューサー解説
&キャスト深堀りインタビュー!
◆「永き瞳見のシリウス」について
4Gamer:
では,楽曲についてお聞きしていきたいと思います。まずは2024年10月に公開された,クラークステラの世界観を表現した「永き瞳見のシリウス」です。
村上氏:
もともとクラークとルタールの曲は,対だったり連動させたりしたかったので,ざっくりしたコンセプトは2曲一緒に作っていきました。
この曲に関しては8分の6拍子でして,「ズンチャッチャッ」というリズムの子守唄のようなバラードをやることは早々に決めていました。
ただ,ゆったりしているだけではなく,騎士としての“芯”はサビのバンドサウンドで表現できるといいなと。また,クラークは機械いじりが得意なので,キラキラしたファンシーな音のなかにも,ゼンマイなど機械仕掛けの音を感じさせる世界観にしました。
4Gamer:
なるほど。歌詞のほうはいかがでしょうか。
村上氏:
クラークの騎士道は「永遠」なので,その永遠を願う歌にしたいなと思いました。星や天体といったキャラクター性もあり,キャッチフレーズが「二人で夢見る一等星」なので,それらを踏まえクラークを表現しようと制作を進めていった感じです。
タイトルの「瞳見」や歌詞にある「星迷う」などは造語ですが,このあと紹介するルタールの曲にも造語を使っています。現実にはないが使っている人の間でだけは通じるような言葉を用いることで,2人の世界のスケールの大きさを表現したかったんです。
榊原さん&三上さん:
(真剣に聞き入る2人)おお……。
4Gamer:
なるほど……。言葉一つひとつに意味が込められていると思いますが,まずタイトルで印象に残る「瞳見」を,「瞳」ではなく「瞳見」とした理由は何でしょうか。
村上氏:
「永き瞳見」で,永遠に瞳に映していたいという意味ですね。その目に映るものの中にはルタールが最初に思い浮かぶと思うんですが,それ以外にも主(ロード)のキキとララを含めているのか……などは聴いた方に解釈していただければと。
歌詞にも「偶数の幸せ」とありますが,これも「2人」なのか「4人」なのか,はたまた……という解釈の余地がある楽曲になっていると思います。
4Gamer:
興味深い解説をありがとうございます。では三上さん,楽曲を受け取った際の感想はいかがでしたか。
三上さん:
何だかすごく僕の心に刺さってしまって,単純に曲として聴き入ってしまいました。これから僕が練習しなきゃいけない曲,歌う曲ということを取っ払って,もう本当に大好きな曲になってしまったんです。「フラメモ」はまだまだいろいろな曲が出てくると思いますが,今のところ一番好きな曲です。
メロディも好みを超えてド好みです(笑)。歌詞ももう……ちょうどこの楽曲の資料をいただく前,ブルーブーケのボイスドラマのep.2が配信されたあとだったんです。クラークとルタールがフィーチャーされていて,それを聞いたあとに歌詞を読んで曲を聴いたら,もう感情が溢れてしまいました。
4Gamer:
より想いが深まったわけですね。
三上さん:
はい,気合もひとしおでした。曲を作ってくださった方にも,「フラメモ」を応援してくれる皆さんにも,そしてクラークとルタール,キキ様とララ様たちの空間を生半可なもので表現したくないなと思いました。
もちろん,この曲に限らずそういう想いはありますが,それでもやっぱり,とくに思い入れは強く収録に臨みましたね。
4Gamer:
では,実際に収録してみていかがでしたか。
三上さん:
気の持ちようの話ですが,いつもキャラクターとして歌うにあたり,僕個人が抱いた曲の印象はあまり入れないようにしているんですね。いただいた楽曲に対する自分の感想はとりあえず排除して,プレーンな状態でレコーディングし,ディレクションをいただいて方向性を定めていくんです。
でも,この曲に関してはちょっと気持ちが抑えきれなくて。普段だったらしないような,クラくんの歌い方に僕の熱が乗ったような歌い方をして,そのうえでディレクションをいただいて方向性を修正していくという作り方をしました。
4Gamer:
そうしたやり方は,普段のレコーディングと難しさが異なりましたか。
三上さん:
そうですね。やっぱり,僕が感じたものをそのまま歌に乗せるとクラくんからどんどん遠のいてしまうんです。
だから,僕が想定する「クラくんならここからここまで出すだろう」という幅を維持したなかで,どれだけ自分の感情を乗せられるかの塩梅というか,力加減に苦戦しました。でも,収録自体はすごく楽しませていただきました。
4Gamer:
村上さんは三上さんの歌を聴いてみていかがでしたか。
村上氏:
まず,すごく丁寧に練習してきてくださったのが伝わりました。ハモリもお願いしたんですが,そちらのパートもすごく丁寧で。自分なりに「こう歌おう」という意思やビジョンを,しっかり持って臨んでくださっているのが分かりました。
なので,制作サイドは「すごくいい歌が録れた……!」とご満悦でした(笑)。
三上さん:
ありがたいです……!
4Gamer:
三上さんご自身がお気に入りのフレーズはありますか。
三上さん:
いやもう,挙げだしたらきりがないですよ! まず歌い出しからだと,「彗星の溜め息」でもう,うわぁ……って(笑)。
さっきもお話に出てましたが,「一条溢れた星笑み」の「星笑み」っていう普段聞き慣れない造語が出てきて,クラくんとルタくん,キキ様とララ様の世界観がここでもう出来上がっているなと。
2行目の「好きな絵の具で塗り足してよ 君が描いた銀河にふたり」なんて,もうもう,誰のこと言ってるのか分からない人いないでしょ! って思いましたし。……あっ,このぶんだと僕,話が止まらなくなりそうです!(笑)
4Gamer:
では,先ほど三上さんが「僕個人の気持ちを乗せて歌った」とおっしゃっていましたが,とくに乗せた部分があれば教えていただけますか。
三上さん:
そうですね……一番乗せたのはやっぱり,最後の「このまま」というフレーズです。
クラくんはきっと,ルタくんやキキ様とララ様には言葉を尽くしても足りないくらい,いろいろな感情を抱いているだろうし,感謝して大切に思っているはずですが,そういうたくさんの想いが「このまま」という言葉に尽きるんじゃないかなと。
このまま幸せが続いていくように,永遠を願うみたいな。そんな印象を僕は受けたので……このワンフレーズに全部気持ちを乗せて歌ったのを覚えています。
◆「儚き心像のメビウス」について
4Gamer:
まだまだお話を聞きたいところですが,次にルタールステラの世界観を表現した「儚き心像のメビウス」について,お聞きしていきたいと思います。
村上氏:
クラークの曲が星空や夜空をイメージする感じだとしたら,ルタールの曲は暗い宇宙を想起させる曲にしたいと思いました。
また,クラークの騎士道が「永遠」であるのに対して,ルタールは「不変」なんですが,永遠と不変って近しいようで性質が違うというところを表現したかったんです。
宇宙の無秩序感やカオス感,「メビウス」の裏と表がよく分からない感じなど,言葉選びや曲調に生かしていきました。
4Gamer:
なるほど,面白いですね。サウンド面ではいかがでしょうか。
村上氏:
クラークが3(6/8)拍子でルタールが4拍子なので,12拍で1つのメロディになるように設定して,Bメロを重ねると一緒の歌になるという仕掛けを入れています。
一見同じように見えて,でも違う思想を持っている。だけど共通している部分もある……みたいなことを,サウンドで表現できるといいなと。
4Gamer:
おお……これも興味深いお話です。では,歌詞についても教えてください。
村上氏:
サビの「永遠を星願う」など,こちらも歌詞には造語がちょくちょく入っています。
また,クラークの曲もですが,MVではBメロで言葉の後ろと頭を星座みたいにつなげていくとお互いの名前になる,というのも天体モチーフだからこそできる演出かなと思っています。
4Gamer:
あれはエモいですね! 気付いた人は感動されたと思います。
村上氏:
そのほか,ルタールの曲は「君が誰よりも大切だよ」みたいなストレートな表現だけではなく,無秩序で少し歪な表現をしたいなと思いました。
例えば2A「朝夕 折節 満ち欠け 相愛 されど有限というのか」は,多くのことが繰り返されていくなか,なぜ有限のものを与えたのかという,不変は願っていてもなかなか得らないもどかしさや無常観を歌っています。
4Gamer:
ありがとうございます。では,この楽曲を受け取った榊原さんはどんな感想を持たれましたか。
榊原さん:
この曲をレコーディングする前に,ちょうど「永き瞳見のシリウス」が出たんですよ。なので,まずはここから語らなければなりません(笑)。
「シリウス」を聴いた瞬間,「三上さんの有効活用だ!」と思いました。三上さんの歌声が持つ誘眠作用というか,1/fゆらぎのような癒やしの波形が,めちゃくちゃ生かされてるなと感じたんです。そのなかに激しさもあるみたいな……。
何だろう。クラくん的にはすごく想いが溢れてる感じだと思うんですけど,外から見たら全部含めてめちゃくちゃ純粋だし,いい子だなっていう感覚があったんですよ。
それに対して,ルタくんにはどんな曲がくるんだろうと思って仮歌を聴いてみたら,「えっ! 何だこれは!」と(笑)。
4Gamer:
かなり予想外だったわけですね。
榊原さん:
はい。まず,想像よりもずっと激しい曲だと思いました。「シリウス」は激しい想いが込められているにしても,どこか綺麗な感じがするんですよね。でも「メビウス」は,その綺麗なものを丸ごと飲み込んで,周りを包み込んで綺麗なまま閉じ込めておきたい,そんなイメージがありました。
どちらかというと「メビウス」のほうがぐちゃっとしているというか……もしかしたらルタくんは,クラくんがルタくんに対して抱いている感情だけでは満たされないんじゃないかという気さえするんです
4Gamer:
ルタールが内側に秘めているのは,かなり重いものだと感じられますね。
榊原さん:
そうですね。究極を言ってしまえば,すべてから切り離された2人だけの世界が,自分の魔力によって実現可能だとしたら,ルタくんはそれをやってしまえるんじゃないかなと。クラくんの意思すら誘導して,その世界に閉じ込めてしまうくらいの“ぐちゃっ”とした感情があると思うんです。
「メビウス」は激しい曲なので,これまでのルタくんらしさを残しつつ,今まで見えなかった激情が要所要所に表れていると思います。でも,ルタくんは魔力に対して体が弱く,どこか命を削るような危うさが漂っていますよね。身の丈を超えてしまった願いのようなものが,この曲に込められればいいなと思いながら歌いました。
……まとまらなかったですが,果たして合っているでしょうか……。
4Gamer:
素晴らしい解釈ですね……! 榊原さんは実際にレコーディングしてみていかがでしたか。
榊原さん:
「フラガリアメモリーズ」では何度かレコーディングをしていることもあって,「このキーならいけるでしょ!」という感じもありましたね(笑)。低いところはかなり低いし,高いところもかなり高いので,1曲の中で音程変化の幅が相当あるんじゃないかなと思います。
それから,ルタくんがまだ隠している感情や,あらわになった感情など,さまざまな面が散りばめられていたので,歌っていてとても楽しかったです。
4Gamer:
普段あまり見られないような姿ですよね。ご自身でお気に入りのフレーズはありますか。
榊原さん:
あー,これまた難しいですね(笑)。でも,やっぱり造語はすごく好きです。「星願う」とか……あと,「0(ゼロ)となり環(わ)となればいい」や「心で環状を描く」など,感情を揺さぶられるような歌詞が多いですよね。
(手を伸ばしながら)こんなポーズを取りながら歌っていたくらいです。
4Gamer:
三上さんはルタールの曲をお聞きになってみていかがでしたか。
三上さん:
いつもおっとりして優しくて儚い,そんな印象を持つルタくんから,こんな曲が出てくるのか……と思いました。
榊原さん:
やばい,弟に(見せていない一面が)バレてしまう!(笑)
三上さん:
先ほど優希さんがおっしゃっていたように,ルタくんの根底にあるもの,心の底でルタくんがクラくんに向けて抱いている,感情の片鱗が出た曲だなと思っています。双子というところで,いろいろな面で相対する部分があるんだなと。
この曲って,(「フラメモ」のなかでは)一番激しい曲ですよね?
村上氏:
そうですね,過去一激しいかもしれません。
三上さん:
ルタからこういう一番激しい曲が出てくるのも,心が揺さぶられるものがあります。僕が「シリウス」を歌ったあとだからこそ感じるものもありました。
ルタのこういった一面は,本編でも描写されていないと思いますが,曲をとおして初めて感じた部分でも,すごく納得感はありました。すごく腑に落ちたので,そこもすごいなと。何だか陳腐な感想ですが……。
4Gamer:
いえいえ! でもこれも,榊原さんの表現力あっての賜物ではないでしょうか。
三上さん:
そうですよね。あと,優希さんが(島﨑)信長さんや千葉(翔也)さんのオクターブ上で歌っている箇所があって,そこがもう「メビウス」の混沌とした感じや,ルタの激情をすごくよく表現されているなと思いました。
榊原さん:
ルタくんとクラくんは「こうやって一緒にいられたらいいね」って笑うけど,クラくんのその言葉はきっと,「いろいろな変化もあるし成長もするかもしれないけど,何だかんだあってもこうやって空を見上げられたら良いね」みたいな意味だと思うんです。
だけどルタくんは少し違って,「別にいいんだよ,変わらなくても」みたいな。今この瞬間,「一緒にいられたらいいね」と言ってくれるクラくんを,ここに閉じ込めてしまいたいっていう気持ちもあるみたいな。
三上さん:
クラには「変わってほしくない」と思っていそうな気もしますよね。
榊原さん:
そうそう。
村上氏:
楽曲の補足として,この2曲には共通している歌詞が含まれています。
「シリウス」には「伝えるよ 見つめるよ 心で触れたいよ」というフレーズ,「メビウス」には「そっと伝えるよ 見つめるよ 心で触れていたいよ 連なる星よ」という非常に似たフレーズが入っているんです。
一方で,「シリウス」の「終わりなど来ないでよ こうしていたいよ」と永遠を歌っているのに対し,「メビウス」では「たとえ終わりが来ようとも 永遠[とわ]に 永遠[えいえん]に アイシテル」と歌っていて,より“上”の気持ちになっている部分もあるんですよね。
そういったところを比較してもらえると面白いと思います。
4Gamer:
メロディも似た感じで歌われているんですよね。ほかにサウンド面での仕掛けなどはありますか。
村上氏:
「メビウス」は落ちサビがピアノ伴奏なんですが,連弾になっているんです。1人が高い音を弾き,1人が低い音を弾くという,ピアノを横並びで演奏しているようなアレンジにしているので,そこであらためて2人の世界を感じられればいいなとこだわりました。
あともう1つ,「メビウス」は冒頭のイントロのリバースした音を曲の最後にくっつけてメビウス状にしているんです。そうしたところでも,歪んだ気持ちみたいなものを表現できたらと。
4Gamer:
まさにメビウスですね! それにしても毎回,「フラメモ」は楽曲の作り込みとこだわりに驚かされます。あらためてルタールの曲を聴いて,衝撃を受ける人がたくさんいそうですね。
榊原さん:
まだまだ語れますよ。でも,僕が勝手に「こういうことなんだ!」と感じたことを,こういう場や配信などでお話すると,これが公式解釈になってしまうんじゃないかっていう恐怖もあるんですよね。
4Gamer:
とはいえ,それだけ本作のコンテンツでいろいろな解釈ができるということですよね。個人的には,演者さんご自身の「自分はこう思った」というお話を聞くのはとても楽しいです。きっとファンの皆さんもそうではないかと。
榊原さん:
話す側も楽しいです(笑)。永遠に語っちゃうか……!
4Gamer:
今日,楽曲の解説やお二人のお話を聞いていて,ただ「双子いいね,尊いね」で終わらないところがルタールとクラークの魅力だなとあらためて感じました。
2人がこれから歌ってみたいのは……?
4Gamer:
せっかくの機会なので,今後こんな歌を歌ってみたいという希望などがあれば聞いてみたいです。
三上さん:
スタッフさんにはお伝えしたことがあるんですが,僕は新しい曲が出るたびに「こういう方向性でくるんだ!」って毎回驚くし,毎回うらやましくなってるんですよ(笑)。だから極論を言えば,もう今ある全曲歌いたいくらいです!
4Gamer:
いずれ2人での曲が出る可能性はあるとは思いますが,どんな感じが良いですか。
榊原さん:
シナリオによりますが,例えばルタくんのいろいろも,すべてクラくんが分かったうえで,2人が向かい合って笑い合えるような曲が歌えたらいいなと。2人が心から笑えて,通じ合える歌だといいなと思います。本当の意味での永遠とか。
4Gamer:
ありがとうございます。それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
三上さん:
双子で歌いたいとか,ほかのキャラクターの曲も歌いたいとか,僕は調子に乗ってどんどんわがままを言い続けています(笑)。それだけ「フラメモ」に関われたことがうれしいですし,これからもずっとクラくん,ルタくんといっぱい歩んでいきたいです。
そうした活動ができるのも,応援してくださっている皆さんのおかげです。僕もキャストとして,皆さんと一緒に作品のいちファンとして楽しんでいけたらと思いますので,これからもどうぞよろしくお願いします!
榊原さん:
あらためて今日,いろいろお話ししてみて,話し始めると止まらなくなるくらい解釈のしがいもあるし,グッとくるポイントがたくさんありますよね。
すてきな楽曲だし,すてきな作品だと思うので,このすてきな世界がずっと続けばいいな……と永遠を願う僕です(笑)。これからもいろいろな世界や彼らの姿が見られると思いますので,ぜひ応援してください。僕たちも皆さんのエネルギーとなれるよう頑張ります!
4Gamer:
本日はありがとうございました!
ーー2024年12月10日収録
「フラガリアメモリーズ」公式サイト
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フラガリアメモリーズ(メディアミックスプロジェクト)
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