
インタビュー
[インタビュー]「フラガリアメモリーズ」初のアルバム「WISHES」が8月6日発売予定。楽曲に込めた想いと制作の裏側を村上氏が語る
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このアルバムには,フラガリアの騎士たちの世界観を表現した楽曲や,全員歌唱およびブーケごとの歌唱バージョンで楽しめる「Bouquet of Wishes」など,全22曲が収録されている。
これらの楽曲がコンテンツにとってどのような意味を持つのか,また,キャストたちも驚いたこだわりの詰まった楽曲の数々がどのようにして生まれたのか――ここだけのエピソードも交え,プロデューサーの村上一馬氏に話を聞いた。
「フラガリアメモリーズ」公式サイト
「フラガリアメモリーズ1st ALBUM『WISHES』」特設ページ
「フラメモ」を彩る楽曲たち
作品における意味と,物語のなかでの役割とは?
4Gamer:
「フラメモ」では,これまでに数々の楽曲が発表されてきました。まずは,コンテンツのなかで楽曲がどのような立ち位置にあるのかを教えてください。
プロデューサー村上一馬氏(以下,村上氏):
「フラメモ」は企画の初期から,ボイスドラマとミュージックビデオ(以下,MV)を中心に展開していくことを考えていました。
ボイスドラマでは描ききれない世界観やキャラクターの内面を,楽曲を通じて伝えることで,さまざまな楽しみ方をしてもらいたいという想いがあったんです。歌詞や音楽,映像をとおして,フラガリアたちの魅力をより深く届けられればと思っています。彼らの「歌」は,主(ロード)への愛や想いを表現する手段として存在しています。
4Gamer:
これまでに公開されたボイスドラマのなかでも,彼らの歌が効果的に使われるシーンがありましたよね。
村上氏:
はい。RED BOUQUETのボイスドラマ ep.4では,プルースの「四つ葉綴りのラプソディ」が物語のキーとなっています。それだけ彼らにとって歌は大切なものであり,プロジェクトにとっても重要な位置を占めています。
4Gamer:
ありがとうございます。「フラメモ」はファンタジー作品であり,聞き手である我々は直接彼らと言葉をかわす存在ではありません。とはいえ,それぞれの歌詞のなかに登場する「君」は,主(ロード)を指すだけでなく,聞き手に向けたメッセージとして捉えても良いのでしょうか。
村上氏:
そうですね。物語のなかの「歌」は主(ロード)や仲間に向けて歌っている場面もありますが,もう少し広い解釈ができるようになっていますので,聴いた方が自由に受け取っていただけたらと思います。
4Gamer:
分かりました。楽曲の多くは「それぞれのフラガリアの世界観を表現したもの」とされていますが,全員曲を除くと,ブーケの6人または3人で歌唱する曲がありますよね。そこには何か意味が込められているのでしょうか。
村上氏:
「EVER RED」「青空のメモリー」「ALL SO BAD」に関しては,各ブーケで最初に発表する曲ということもあり,6人全員での歌唱としました。それ以外の楽曲では,フラガリアのメッセージや表現したいものをより際立たせたかったので,その雰囲気に合った3人に歌ってもらうことにしたんです。各楽曲の世界観で描きたいものを,よりしっかりと伝えたいという意図があります。
4Gamer:
なるほど。いわゆる“キャラソン”ではソロ歌唱が主流だと思いますが,あえて複数人での編成にしたのは,どのような理由からでしょうか。しかも,「フラメモ」の楽曲の多くはメインの1人+2人という構成でありながら,その2人は単なるコーラスではなく,重要なフレーズも歌っていますよね。
村上氏:
ソロにしてしまうと,歌詞が“そのキャラクターの発言”になりすぎたり,セリフっぽくなってしまったりすることもあり,それは私たちの狙いとは少し異なっていたんです。
誰かと一緒に歌うことで,言葉の持つ意味合いが広がったり,際立ったりする。そういったところを大切にしたく,初期の段階から複数キャラクターでの歌唱を前提にしていました。
それに加えて,すべてが各フラガリアの歌でありながら,同時に“ブーケの楽曲”でもある――その両面性も非常に重要だと考えていたからです。
4Gamer:
確かに,彼らが属するブーケという存在は,作中でも非常に大きな意味を持っていますよね。そして,現在までに公開されている楽曲の作詞・作曲は「SFM」となっていますが,これは村上さんの別名義という理解でよろしいでしょうか。
村上氏:
私個人というよりも,サンリオの内製チームのような概念で捉えていただければと思います。まず皆さんに「フラメモ」のキャラクターや世界観をしっかり感じていただきたくて,特定の制作者の名前が与えるイメージが先行しないように,商品ナンバーのようなアルファベットの名前にしました。
楽曲制作まわりは私が中心となって進めてはいますが,すべての工程を1人で手がけているわけではありません。制作の流れで「こういうワードを入れるとより世界観を表現できるのでは?」とチームメンバーから提案をもらったり,いくつかのパターンで迷った際には,意見を出し合ったりもしています。
最初に歌詞と曲を起こすのは私ですが,決して1人で完結するのではなく,チームや関係者としっかりコミュニケーションを取りながら作っています。「みんなで一緒に完成させている」という感覚ですね。
4Gamer:
村上さんは,監督であり,制作者の1人でもあるわけですね。それでは,楽曲がどのような流れで作られているのか,あらためて教えていただけますか。
村上氏:
まずは,表現したいフラガリアの一面から楽曲のテーマや曲調を考えます。それが決まったら,どのキャラクター同士で歌うのがベストかを検討し,完成形がある程度見えるようなデモをワンコーラス分制作します。そこから,描き下ろしビジュアルやMVの方向性なども並行して考え,制作を進めていきます。
フルコーラスのデモが完成したらアレンジの工程にうつりますが,デモの雰囲気をいかしてブラッシュアップしてもらう場合と,自由にアレンジしてもらう場合の2パターンがありますね。
デモ,ビジュアル,MVの3本が同時に走るなかで,さらに歌詞制作も並行して進行します。そして歌詞が完成したら,レコーディングへ……という流れです。
4Gamer:
3つが同時進行なんですね! 大変そうですが,イメージの共有という点では有効かもしれません。サウンドとビジュアルの並行作業によって生まれたエピソードがあれば,ぜひ聞かせてください。
村上氏:
以前のインタビューでもお話ししましたが,ハンギョンの「拜拜[BYE-BYE]」の冒頭にあるネオンの点灯音は,楽曲制作中に「MVでここに看板が光る演出を入れたい」とインスピレーションが湧いたことで生まれたものです。
また,ウィルメッシュの「拝啓、暁染める虹よ」の序盤にある鉛筆を走らせる音も同様で,完成前にSEを入れたのですが,これもMVと楽曲制作が同時進行だったからこそ出てきたアイディアです。
4Gamer:
面白いですね。では逆に,楽曲制作で大変だったことがあれば教えてください。
村上氏:
実は,完成ギリギリまで調整をしている曲もあったりします。ここだけの話ですが,ある曲では本当にギリギリのタイミングで修正を入れたこともあります。
4Gamer:
そうだったんですか! なぜそこまでして……?
村上氏:
サウンド面でどうしても気になる箇所があって,最後の最後まで腑に落ちなかったんです。そのフラガリアの世界観を表現するにあたって,音作りでずっと悩んでいました。結果として今のかたちにして本当に良かったと思っていますし,突き詰めた甲斐があったなと感じています。ここは,プロデューサーとして音楽制作にも関わっている自分だからこそできたことだと思います。
具体的な曲名で言うと,全員曲の「Bouquet of Wishes」もかなり悩んだ一曲でしたね。ちょうど「BUBBLE」と同じ時期に制作していたのですが,「Bouquet〜」ではレッド・ブルー・ノワールの各ブーケで納得感のあるメロディーを見つけるまで,かなり時間がかかりました。キャッチーだけどポップすぎず,格好良さと柔らかさの両立……そこが本当に難しかったです。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,楽曲制作には1曲あたりどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
村上氏:
ときと場合にもよりますが,デモ制作から納品まで概ね3〜4か月くらいでしょうか。
4Gamer:
今回のアルバムには19曲,バージョン違いも含めると全22曲が収録されます。それだけの時間がかかるとなると,各工程が同時進行で,しかも複数曲が並行して動いていたということですよね……?
村上氏:
そうですね。作り始めはその1曲に集中して書き上げることが多いですが,1曲だけに集中できる期間は,最初の1〜2週間くらいだと思います。
4Gamer:
ですよね。そこにボイスドラマなどの制作も加わるわけですから,相当な忙しさだったと思います。では,せっかくなのでMVについても詳しくお聞かせください。MVはどのような流れで制作されているのでしょうか。
村上氏:
先ほどもお伝えしたとおり,楽曲を作り始める段階でテーマを決めるのですが,その時点で「MVはこういう質感や色合いが合いそうだな」というイメージもある程度浮かんでいます。
それをデザイナーや映像ディレクターとすり合わせたら,あとはほとんどデザインチームにお任せしていますね。楽曲を生み出す段階から綿密にコミュニケーションをとり合っている内製チームだからこそ,限りなく同じ目線で制作ができていると思っています。
4Gamer:
興味深いです。先ほども話題に出ましたが,MVではさまざまなイラストレーターさんによる描き下ろしビジュアルが見られるのも魅力ですよね。
村上氏:
そうなんです。例えば「RARE.」のMVでは,リミチャのキャラクターイラストを担当したくろうめさんに描き下ろしをお願いしました。楽曲にはハルリットとサナーが参加していたので,2人の魅力をより引き立てるにはどのような表現が良いか,話し合いを重ねて決めていきました。
どの楽曲でも,ビジュアル面でどういった描き方ができるかという検討は必ず行っており,それらが集約されたものがMVの3〜4分に詰め込まれているわけです。いずれの場合も,イラストやMVは外部の方にご協力いただき,何度も話し合いながら一緒に作り上げていっています。
4Gamer:
外部に完全にお任せするのではなく,楽曲やビジュアルにもこだわっているということですね。
村上氏:
はい。外部のクリエイターさんの個性とサンリオらしさがうまく融合することで,最終的に作品がよりクオリティの高いものになっていると感じています。ここは,プロジェクトの特徴として自分自身としても誇れるポイントです。
楽曲が完成したときももちろんうれしいのですが,完成したMVを初めて観たときも,同じくらい感動は大きいです。だからこそ,MVは本当にたくさんの方に観ていただきたいという想いがあります。
4Gamer:
確かに,歴史ある会社のなかで,キャラクターコンテンツでここまでやるのはすごいことですよね。MVの話が続きますが,YouTubeでは多くのファンが感想や考察をコメントしています。反響で意外だったことや,印象的だったことはありますか?
村上氏:
YouTubeのコメントだけでなく,いつも多くのうれしい反響や感想をいただいていて,本当に感謝しています。考察については,鋭いものも多くて驚く一方で,「この仕掛けにも気づいてもらえているかな……?」とソワソワすることもあったりしますね(笑)。
4Gamer:
インタビューなどでもたびたび紹介させていただいていますが,「フラメモ」は楽曲に込められたこだわりが本当にすごいですよね。ファンにとっても,フラガリアの想いや世界観は考察のしがいがあると思います。ステキな作品ばかりですし,いつかMVを収録したBlu-rayを出されては?
村上氏:
それもいいかもしれませんね!
4Gamer:
欲しい方は多そうですし,ユーザーの皆さんの要望があれば実現するかも……? ぜひSNSなどでご意見をお寄せいただければと思います!
フラガリアの世界観を表現した珠玉の22曲
初のアルバムはどのような作品に?
4Gamer:
では,記念すべき「フラメモ」初のアルバム「WISHES」について教えてください。
村上氏:
今回のアルバムには,これまでに発表した,各フラガリアの世界観を表現した18曲と,「Bouquet of Wishes」のブーケ別バージョンを含めた全22曲が収録されています。タイトルの「WISHES」には,フラガリア18人それぞれの騎士道や願いを束ねた――という意味合いがあります。
アルバムのジャケットは,シエロモートのキャラクターイラストを担当した望月けいさんにお願いしました。ハルリット,シエロモート,バドバルマの描き下ろしイラストとなっており,普段の彼らとは異なる,絵画的な雰囲気もある静謐なビジュアルで,いつもとはまた違った魅力を感じていただけると思います。
また,アルバムの形態は「特装限定盤」と「通常盤」の2種類があり,「特装限定盤」には,収録楽曲の制作秘話を綴ったライナーノーツが付属します。楽曲ごとに,制作時に考えていたことや,描きたかったことをまとめていて,全40ページの予定です。
4Gamer:
一足先に拝見させていただきましたが,ものすごいボリュームですね。キャストの皆さんからも「これは形に残すべき」と言われていた,プロデューサーによる解説がついに! という印象で,「フラメモ」の楽曲が好きな方には必読の内容だと感じました。
村上氏:
そうですね。どんな意図で曲が作られたのか,なぜこの歌詞になったのかなど,1曲ずつ丁寧に触れているので,これを読むことで曲やキャラクターへの理解がより深まると思います。ぜひ,楽曲とあわせて楽しんでいただけたらうれしいです。
なお,ライナーノーツはデジタル配信の予定がないため,「特装限定盤」をご購入いただいた方だけの特典となります。
4Gamer:
そのほかに楽しみな要素はありますか?
村上氏:
両形態とも,先述の描き下ろしイラストを使用したデジパック仕様ですが,それぞれに違いがあります。ベースとなるイラストは同じですが,「特装限定盤」は線画風になったイラストがあしらわれた三方背BOXに収納ができ,印象の違いを楽しんでいただけるかと思います。アナログな“モノ”を手に取る楽しさを,ぜひ感じていただけたらうれしいです。
4Gamer:
最近ではサブスクやデジタル配信が主流だからこそ,手元に残るモノならではの喜びがありますね。
村上氏:
そうですよね。また,アニメイトで「特装限定盤」を予約購入(※2025年7月28日まで)していただくと,スペシャルトークイベントの応募用シリアルが付属します。イベントでは「参加記念カード」のプレゼントがあったり,大画面でのMV鑑賞,楽曲に関するキャストトークをお届けする予定です。そのほかにも,店舗別の購入特典がいろいろありますので,ぜひアルバム特設ページ をチェックしていただけたらと思います。
4Gamer:
これは期待が高まりますね! 今回のアルバムもそうですが,今後の展開がますます楽しみになってきました。では,現時点でお話しいただける範囲で,今後について教えていただけますか。
村上氏:
まもなくボイスドラマは第一部完結となりますが,ストーリーも楽曲の公開もまだまだ続いていきますので,これからも楽しみにしていただけたらうれしいです。今後の楽曲については,よりストーリーに沿った展開が中心となり,誰と誰が一緒に歌うのかという点も含めて,物語とのリンクを楽しんでいただけるような内容になっていくと思います。ぜひご期待ください。
4Gamer:
それは楽しみです! では最後に,読者の皆さんへメッセージをお願いします。
村上氏:
「フラメモ」では,プロジェクトスタートからこれまで,フラガリア全18名の世界観を表現した楽曲を順次公開し,そして全員参加の楽曲も加えた今回のアルバムが完成しました。
これまで応援してくださった方はもちろん,これから作品を知る方にとっても,フラガリアの世界観やキャラクターの魅力をビジュアルでも音でも味わっていただける内容になっていると思います。アナログならではの手触りを楽しみながら,作品に込めた想いを感じ取っていただけたらうれしいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2025年5月8日収録
「フラガリアメモリーズ」公式サイト
「フラガリアメモリーズ1st ALBUM『WISHES』」特設ページ
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フラガリアメモリーズ(メディアミックスプロジェクト)
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