4Gamer 女子部（仮）
プレイレポート
［プレイレポ］叡ゲ同のみんなに声が宿り，叡大祭＆デートシナリオも追加！「陰キャラブコメ インシツマシマシ」さらなる衝撃の展開を目撃し，味わおう
Phoenixxが2025年5月5日にリリースした「陰キャラブコメ インシツマシマシ」は，2022年にBOOTHで公開された「陰キャラブコメ」に，新作シナリオや豪華声優陣によるキャラクターボイスなどを追加した作品だ。だいだい役を室 元気さん，つがい役を岩崎諒太さん，ash役を坂田将吾さん，西村役を小林裕介さん，プレイヤーである会長役をファイルーズあいさんが担当している。
 「陰キャラブコメ」の制作者は，個人開発者のじょせふ氏 |
“恋愛風ノベルゲーム”を謳う本作だが，主人公は，陰キャをこよなく愛し陽キャを憎む大学生で，攻略対象は“陰キャ”のみという少し変わった設定となる。
さらに，「オタサーの王となり 陰キャオタクを喰いまくれ」というアグレッシブなキャッチコピーは，およそ今までの乙女ゲームには登場しなかったタイプの男性たちの姿と共に，見る者に忘れられない衝撃を与える。
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概要だけをつまむと，「オタク仕草あるあるを題材にした，キワモノ系恋愛ノベル」のように見えるかもしれない。だが実際にプレイしてみると，そういう雑なひと言で評価することは到底できない作品だと理解（わか）らせられるのだ。
「陰キャラブコメ」公式サイト
“陰キャ”だらけの恋愛風ノベルゲー……，ん？ 恋愛“風”って？？？
まずは，「陰キャラブコメ」について，軽くおさらいしてみよう。
本作の主人公（デフォルトでの名前は加賀美トオル，H.Nはオス筋肉。変更可能）は，「国際色豊かで三歩歩けば帰国子女にぶつかり，ノンデリ陽キャが幅を利かせている私大」こと，私立叡聖大学に通う学生だ。
陰キャをこよなく愛し，陰キャを喰いまくることを夢見ているいっぽう，陽キャのことは親の仇のように憎んでいる。ひと言でいえば，クセが強い。
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 本作では，陽キャ登場シーンの直前に必ず警報が発令される。安心してノリの合わないコールやBBQとのエンカウントに備えられるというわけだ |
物語は，「心地よいさざ波のような音で目覚めると，じつはそれは波の音ではなく，カードショップから盛んに聞こえるシャカパチ音だった。」……という癒しの夢から目覚めたところからスタート。吉夢に浮かれつつ出向いた新学期のキャンパスで，害悪陽キャにボコられていた陰キャを助けたことで物語が動き出す。
助けた亀……ではなく彼は，「叡聖大学ゲーム同好会」の会長であった。そして心優しき（？）主人公に，次期会長の役目を任せたいと，半ば押し付ける形で頼んでくるのだ。
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 いろいろとスゴイ委任状 |
流れで委任されてしまった「叡聖大学ゲーム同好会」略して「叡ゲ同」には，さまざまな陰キャが所属しており，主人公は彼らと共に，夢のキャンパスライフをエンジョイしていくことになる。
攻略対象は4人。
景気よく唾を飛ばしながら，ノンブレスのマシンガントークを繰り広げるだいだいくん，物静かで優しいけれど，自分のことをあまり話さないつがいさん，目つきも口も悪く，ゲーム以外にはやる気も興味もまったくなさそうなashさん，その場の空気も人の心の動きもまったく読めず，場を凍らせてしまう偽陽キャのにしむらくんという，並みの人間なら怯んでお家に帰ってしまいそうな濃いメンツだ。
だが，彼らに決して負けていないキャラの濃さ，陰キャへの執着心を持つ主人公は，彼らの会長として叡ゲ同に加わり活動し，彼らをガッツリと攻略していく……！
 とにかく自分の話したいことをいつでもどこでも話しまくるのがマイスタイルのだいだいくん。テキストがウィンドウからあふれ出るのは日常茶飯事 |
 落ち着きがあり優しく接してくれるつがいさん。だが彼には，主人公に見せていないもうひとつの顔がある……!? 知りたければぜひ彼を追っていこう |
 気だるげだが鋭い言葉のナイフを四方八方に飛ばすashさん。ゲーム開始直後は，本名も学部も不明，謎だらけの人だ |
 何気ない発言で他人の心を踏み抜いていくにしむらくん。見た目こそ爽やか陽キャ風だが，淀んだ目と違和感しかない行動が，彼が陽キャでないことを物語っている |
叡ゲ同のメンバーたちは，ただ待っているだけではなんのアプローチもしてこないので，主人公側から打って出るスタイルで彼らとお近づきになっていく。
主人公が彼らの領域に踏み込んでいくほど，今まで彼らが他人には見せなかった悩みや生きづらさを目の当たりにすることになる。
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本当は，登場人物全員に関して，ひとりにつき数時間，セリフやスチルを参照しながら語りたいところだが，本作は必要以上の情報をなるべく入れず，自分の指で画面をクリックして台詞を読み進めるのが，最も良い味わいかただ。
ここまで読んだ時点でプレイをする気になった人は，今すぐブラウザを閉じてSteamを立ち上げるべきだろう。いってらっしゃい！
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おそらく人間は誰でも，人生を重ねていくなかで形成された個性をときには持て余し，ときには生きづらさを抱え，悩みながら他人と関わっていく。
そして，他人と傷つけあったり，さまざまな考えに触れたりすることで，自身の方向性が変化し，生き方もさまざまに変わっていく。
前向きな兆しを見せることもあれば，うまくいかずにとんでもない結果になってしまうこともある。本作の登場人物たちにしても，それは同じだ。しかも，彼らの抱える悩みは……「陰キャ」という言葉にピンときて本作をプレイした人間であれば，どこかにシンパシーを感じるものだろう。
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個人的に，恋愛シミュレーションを語る際に登場人物を「攻略対象」と呼ぶことに対し，ゲーム的な表現過ぎるため適切ではないかもと感じることがある。
だが本作においては，あえて堂々と「攻略対象」と呼んでいる。それがなぜかは，作中のアブレッシブな主人公を見ればわかってもらえるだろう。
「陰キャラブコメ」の主人公は，陰キャオタクたちを救い導く慈愛の女神では決してない。なんせ彼女は“オタサーの王”を目指しているのだから。でも彼女は，同時に善意も誠意も備えた人間だ。
そもそも人は，「善人」「悪人」と分けられるものでなく，誰でもさまざまな面を持ち合わせているのだと改めて気づかされる。タイトルからどうしても「陰キャ」という属性を意識した状態でプレイを始めることになるが，キャラづくりは非常に生々しいし単純でないのが本作の特徴で，信頼できる点でもある。
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ひとつのエンディングまでの時間は短いが，矢継ぎ早に繰り出されるネットミーム，オタク仕草テンプレの端々に，邂逅，すれ違い，さまざまな思惑……そんな泥臭いものがぎっしりと詰まっている。その混沌のなか，我々プレイヤーが最後にたどり着く，思ってもみなかった景色とは……。
さらに一筋縄ではいかないのは，これが「恋愛“風”ノベルゲーム」だということだ。グッドエンドだけを見てやめる自由はプレイヤーにあるが，あなたがすべてのエンディングを見たときに，この“風”の意味が理解できるだろうし，ジワジワと効いてくるはず。
ぜひプレイの際にはすべてのエンディングを見て，自分の感想を持ってほしいというのが，筆者の切なる願いだ。私たちプレイヤーが，この作品に導かれた“意味”を，全力で“理解”らせられるので……。
「インシツマシマシ」では，叡ゲ同のみんなとの叡大祭，そして濃ゆ〜いデートが満喫できるんだぜ！
今回リリースされた「インシツマシマシ」にはシナリオが追加されている。内容はお付き合いを始めたあとの話で，なんとなんとデートができちゃうのだ。やったね！
生々しい人生のなかには，ときに学祭やデートのシーンが挿入されることもある……。もう冒頭から，叡ゲ同メンバーによる執事喫茶という，エネルギーに満ちたシーンだし。デートだけでなく執事喫茶まで供給されるだなんてそんな幸せがあっていいんですか，ありがたい，ありがたい……。
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 ※「陰頭葉」は，医学用語ではありません |
執事服だけでもありがたいのに，デートのときには今まで見たことなかった服装で来てくれるので，さらにありがたさが加速する。
それぞれのルートにドキドキの展開が待っているので，本編をすでにプレイしている人にとっても新鮮な体験となるはずだ。しかもフルボイスだ。嬉しいオーバーキル体験である。
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 立ち絵も最高だが，デートシーンのスチルも最高なので絶対に見て…… |
 デートシーン以外にも，彼らの今まで知らなかった一面が見られるぞ |
ただ，本作は安心と信頼の「陰キャラブコメ」である。一体いつから，キャッキャウフフの楽しいデートのみが楽しめるシナリオだと錯覚していた？
「インシツマシマシ」のシナリオでは，付き合う前とは別の面を見せてくれるみんなだが，もちろん楽しいことばかりではない。彼らを陰キャたらしめている個性が引き起こすトラブル，今まで明かされなかった要素なども語られ，やっぱり一筋縄ではいかない作品だと唸らされた。
期待以上の世界が迎えてくれる「陰キャラブコメ インシツマシマシ」は，Nintendo Switch版の発売も予定されている。今後もさらに「陰ラブ」の底知れぬ魅力が世に衝撃を与え続けるに違いない。
「陰キャラブコメ」公式サイト
(C)じょせふ Published by Phoenixx Inc.
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