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存在しない46番目の部屋を求めて。「Blue Prince」は,謎解きとストーリー表現を見事に融合させた唯一無二の作品だ
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印刷2025/04/23 08:00

レビュー

存在しない46番目の部屋を求めて。「Blue Prince」は,謎解きとストーリー表現を見事に融合させた唯一無二の作品だ

 インディーゲームにおけるミステリー系ジャンルでは,ときに極めてハードコアな作品が現れる。システムによるサポートが小さく抑られたミステリー系の作品は,ゲームクリアに至るまでのハードルが高いものの,そこでしか味わえない爽快感があるものだ。

※2025年4月23日 9:43 タイトルの誤りを修正しました。

 そんなニッチな界隈で最近話題になっているのが,Raw Furyが2025年4月10日にリリースした新作「Blue Prince」PC / PS5 / Xbox Series X|S)である。“ストラテジーパズルアドベンチャー”を謳う本作は,本格的なミステリーゲームでありながら,システムの根本にパズルや資源管理要素が取り入れられているという。

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 果たして,そうしたコンセプトはいかにして実現されているのだろうか。さっそく遊んでみたので,本稿では序盤をプレイして感じたことを中心に本作を紹介していく……のだが,今回は本題に入る前に重要な注意事項がある。

 それは,本作は現時点で日本語未対応であり,実装も容易ではない(あるいは非常に時間がかかる)ものと思われる点だ。ゲームクリアに必須というわけではないが,作品の醍醐味を味わうには相当量の文章を読む必要があり,正直言って英語に自信がなければ十分に魅力を享受できるとは言い難い
 それでも本作を取り上げるのは,それを乗り越えてでも遊ぶ価値がある作品だと感じられたからだ。「これがもし上手に日本語化されたなら楽しいだろうな」と感じられる部分だけでも伝わればいいと思う。

最近ではOCR(光学文字認識)で英語のゲームも遊びやすくなったが,筆記体の文章が多い本作ではOCRが通じない場面も多い
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「Blue Prince」公式サイト



部屋に組み込まれた数々の謎が“部屋パズル”の面白さを拡張する


 Blue Princeの物語は,主人公であるサイモンのもとに届いた一通の手紙から始まる。他界した大祖父ハーバード・シンクレアが,遺産の受取人に主人公を指名したのだ。

 ただし,遺産を引き継ぐためには,大祖父が所有する屋敷に隠された「存在しないはずの46番目の部屋」を探し出さなければならない。プレイヤーはホリィ山麓にそびえる巨大なシンクレア邸にやってきたサイモンとなって,提示されたルールに従って屋敷を探索することになる。

手紙には「私が死んだときに開封せよ」とある。その文面からは温かみがにじみ出ており,ハーバード氏のサイモンへの深い愛情がうかがえる
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 この屋敷は不思議な構造をしており,最大45個の四角い部屋(5×9マス)で構成されている。サイモンがやってきた時点では,エントランス以外の部屋は配置が決まっておらず,3つの選択肢から1つを選んでブループリント(設計図)に書き込むことで,扉の先につながる部屋を決められる。

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 デッドエンド(行き止まり)を作ってしまうと先に進めなくなるほか,後半になるほど鍵が掛けられている扉が増えていく。さらに,部屋を通過するごとに減っていく体力が0になると,強制的に探索が打ち切られてしまうので,それらを管理しつつ進まなければいけない。

左の選択肢はタダで選べるが,コストとして「宝石」を要求される部屋も存在する。デッドエンドを選ばずに済むようにするためにも,リソースに余裕をもって進みたいところ
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 部屋同士の接続は探索が終わるごとにリセットされ,獲得したアイテムやリソースの持ち越しも不可能となっている。そのため,つねに「扉の接続」と「リソース回収」の両方を考慮に入れつつ探索する必要があるわけだ。

部屋自体に特殊効果が設定されているものも多い。拾える鍵,金銭,宝石などは明確に表示されるので,その時点で必要なリソースと相談して部屋を選択しよう
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通常の鍵は汎用アイテムで,キーカード式の扉以外であればほぼ開けられる。たくさん持っておいて損はない
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 これだけなら,比較的シンプルなパズルゲームといった雰囲気だが,本題はここから。部屋には「鍵」「コイン」「宝石」などのリソースが配置されていて,それを使って先へと進んでいくわけだが,これがまたカッツカツなのだ。拾ったものだけでは確実に足りず,途中で探索が止まってしまうだろう。

 そうした不足を補ってくれるのが,部屋に用意された“謎解き”の報酬だ。配置された絵などから情報を導き出す推理,独自のルールを探って回答を得る論理パズル,四則演算を用いた数理パズルなど,その種類はさまざま。扉を開けるたびに新たな謎がプレイヤーを迎えてくれる。

ほとんどの謎解き要素は,クリアすることで探索に用いるリソースを得られる
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それぞれの部屋にどんな意味があるのかは,調べてみないことには分からない。そこに謎解きが存在するか否かも含め,プレイヤーの観察力に委ねられている
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 この仕組みの良い点は,すべての謎解きを完璧にこなす必要がないということだ。謎解き自体は部屋同士を接続するパズル要素には(基本的に)関係しておらず,あくまで先に進むためのリソースを得るためのギミックなので,解けないパズルがあっても問題なく攻略を進められる。

 複数の部屋が連携して1つの謎になっていたり,特定のアイテムを所持していることが謎解きの条件となっていたり,状況によって部屋自体の価値が変動するのも面白いところ。部屋同士の距離も大事になるので,ある程度謎を理解してくると「連携する部屋を配置済みだからこの部屋を選ぼう」「関連する部屋は戻りやすい位置に置こう」と,謎解きの存在自体を前提にした配置パズルも楽しめるようになるのだ。

 本作には「ランダムに内容が変化する謎解き」と「回答が常に同じ謎解き」の両方が存在するが,これはゲームプレイのテンポを良くするための配慮だろう。いずれにせよ“解けること”で遊びの幅が広がる本作の仕様は,ほかのミステリー系ゲームにはない魅力を備えているように思う。

コインを消費してアイテムを購入するショップ部屋も存在する。状況次第では余りがちなリソースなので,出現させておくと意外と便利
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 ちょっとだけ気になったのは,それにしても運要素が強く感じられてしまうことが多いということ。特定のアイテムがなければ進行不可能な場面があるゲームで,それを入手(あるいは起動)するための部屋が出現しないとなると,やや理不尽な印象を受けてしまう。

 一応,アイテムを保管して次の周回に渡したり,部屋の選択肢をリロールしたり,そもそもの出現率に把握すべき法則があったりもするが,それらを把握・運用できるか否かも運と状況次第だ。どうしてもクリアができそうにない周回では,部屋同士のつながりの調査や,データの収集を主に行うのがいいだろう。

1日を終えると,作り上げた屋敷の現在の姿が表示される。色の割合なども反映され,何気にパターンが多い
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膨大な情報から浮かび上がってくる不思議な世界と,そこに生きる人々の魅力


 続いてストーリー要素について触れていこう。可能な限りネタバレは伏せるが,ゲーム本編に含まれる文書のスクリーンショットなどが含まれるので,自分で攻略したい人は注意してほしい。

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 各部屋にはパズルだけでなく,ストーリーを感じさせる手紙や写真,絵画,新聞記事,書籍などが多数存在する。それらの情報をつなぎ合わせることで,サイモンが屋敷にやってくるに至った背景や,屋敷に住む人々,この世界の歴史や情勢などが明らかになっていく。

 物語に直接絡むものだけでなく,彼らの考え方や日常のありかたを感じられる要素もあり,遊び続けていると少しずつ親近感が湧いてくる。この世界の人々や,その奥底にある謎を理解したいという気持ちが,ゲームプレイの原動力にもなるのだ。

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 なかなか難しいのは,それらが「パズルを読み解くヒントになる文書」と混ざった形で出現するということ。大量の文書を読む必要がない部分を集中して遊ぶ,というのも不可能ではないが,それではどこかで重要な要素を見落としてしまうだろう。

 また,読み解くにあたって特定のアイテムを要求されることもあり,特定のパズルを解くことで初めて読める文書も存在する。各要素が相互にガッチリと噛み合った形で登場するので,いずれかを選択的に享受するのは難しい。

 もし自力で英語を読めたとしても,情報を自力で全部覚えておくのは非常に困難だ。プレイ時には,スクリーンショットをすぐに撮れる環境と,文書・謎・人物関係などを整理できるメモの準備が欠かせない。利用できる人は,情報整理のためにAIアシスタントの活用も検討しよう。

こちらは庭師による記録。ここから9ページにわたって,かなりびっしりと文章が書き込まれている
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 それだけあって,この世界には独特な重厚感がある。部屋の構造が組み替えられる屋敷の存在や,シンクレア氏を中心とする人々の姿を把握できた(と,感じられた)瞬間には,ここでしか味わえない感動があった。読み解くまでの苦労を考えると,最終的な評価は人によってブレる部分もあるとは思うが,じっくり読み込むだけの価値はあると思う。

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 なんにせよ,Blue Princeは日本語話者にとってハードルの高い作品と言わざるを得ない。そうでなくとも,ゲームプレイのシークエンス自体はかなり地味で,自分から何かを発見しようとしなければ単なるリソース管理パズルゲームになってしまう。
 そういった具合なので,手放しで「誰もが遊ぶべきだ」と言えるゲームではないが,同時にハマる人にとっては一生残る作品になりうる1本でもあると思う。

 あまりに独特な作品なので,正直これがどれくらい国内のゲームファンに受け入れられるかは分からない。興味を持ったという人は,シンクレア氏がサイモンに贈った言葉にならい,自ら挑戦するか否かを決めてほしい。

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「Don't go where the path leads. Abandon the path and go where you want it to lead.」
(道の導きに従ってはならない。その道を捨て,あなたが導きたい場所へ行きなさい。)



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