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“本物の中世”が再び戻ってくる。「キングダムカム・デリバランスII」でドラマチックかつ骨太な騎士体験を思う存分楽しもう【PR】
本作は,チェコを拠点とするWarhorse Studiosのデビュー作として2018年に発売された「キングダムカム・デリバランス」(Kingdom Come: Deliverance。PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch / Mac)の続編となる作品だ。前作では激動の中世ヨーロッパ(ボヘミア王国,現在のチェコの前身)を舞台に,平和に暮らしていた平民ヘンリーがとある惨劇に巻き込まれ,その復讐の旅に出る姿が描かれたが,本作では波乱万丈なヘンリーの“その後”がついに明かされることになる。
シリーズのテーマであり大きな特徴となっているのが,「リアルかつ,地に足が付いた中世世界の再現」だ。
世界観や物語は史実をベースに作られており,実際にあった歴史上の出来事が物語に関連し,また実在した人物が作中にも登場する。もちろんモンスターや魔法のようなファンタジー要素は一切存在しない。多少のデフォルメはあるものの,文化や建築,風俗などは現実に即した世界になっており,これまた中世ファンタジーのような超技術の建物や現代レベルの公衆衛生などは存在しないし,一般常識や法律もその時代を感じさせるものだ。
中世の世界観と言えばファンタジーものを思い浮かべるというゲーマーは少なくないだろう。そんな,ある意味で暗黙の常識になっていたファンタジー×中世なRPGとは一線を画する,一見地味だが新しい発見も多い骨太の作品に仕上がっているのがこのキングダムカム・デリバランスだ。
そんな注目のシリーズ第2作を,メディア向けに公開されたレビュー版をとおして作品の特徴と魅力をお届けしたい。今回プレイに利用したのは主にPC(Steam)版だが,PS5版も触ることができたので,その違いにも少し触れている。
「キングダムカム・デリバランスII」公式サイト
現実と創作が巧みに交錯するキングダムカム・デリバランスシリーズの魅力
記事冒頭でも少し触れたとおり,本作は1作目の直接的な続編となる作品だ。本稿ではまず“変わらない部分”に着目して,その物語とゲームの基本的な部分を簡単にまとめてみよう。
キングダムカム・デリバランスは,オープンワールドを採用したアクション性の高い,一人称視点のRPGだ。物語は1403年というまさに中世ヨーロッパな時代,舞台は日本人には少しなじみが薄いボヘミア王国,現在のチェコ共和国の中西部にあたる中央ヨーロッパが中心となる。
主人公は,スカーリッツ村に住むヘンリーという名の鍛冶屋の息子。ある日,クマン人と呼ばれる外部から流入した傭兵軍団に村を焼かれ,家族を皆殺しにされすべてを失ったヘンリーは,復讐を誓い旅に出る。その旅路でさまざまな人物との出会いと別れを繰り返し,そして自らの出生の秘密を知り,倒すべき敵へと迫っていく。
すでに触れたとおり世界観そのものは非常にリアルであるが,けっしてストーリー性が低いわけではない。筆者は1作目の初見時,かなりドラマチックな展開で進んでいくことに驚いた。つまりすべてが地味でリアル一辺倒ではない,というワケだ。
キングダムカム・デリバランスIIは前作から直接ストーリーが続いており,引き続きヘンリーを主人公とした物語が描かれる。冒頭からヘンリーの主人であり友人のハンス・カポン卿が登場するところは,前作のプレイヤーにも刺さるポイントではないだろうか。
王の座を巡り内乱が起こっているボヘミア王国の安定を図るため,名目上の王でありながら監禁されているベンツェスラウス王派のハヌシュ卿の書状を届けるため旅立ったハンス・カポン一行。ヘンリーの新たな物語は,一行のひとりとして反乱側のシギスムント王に協力するフォン・ベルゴー卿の領地に向かうところから話が始まる。
なおベンツェスラウス王やシギスムント王は実在の人物であり,当時の混乱した状況も調べようと思えば,たとえばWikipediaでもある程度簡単に知ることができる。「その歴史の裏で,このようなことが起きていたのでは……?」という想像を楽しめる,史実の出来事のただなかにあることを感じさせてくれる物語の導入だ。
向かった場所自体は馬で移動できる範囲であり,そこまで遠いわけではないようだが,とは言えヘンリーとカポン卿は部外者。序盤から前半にかけて嫌というほど味わうことになるが,本作のメインクエストの前半部分はこの“部外者として戦争に関わる”ことが重要な一要素として機能している。
ネタバレになるので詳細は控えるが,ダイナミックな事態の展開っぷりは一見の価値ありと言っておきたい。
ゲームシステムそのものは,クエストをベースにしたスタンダードなRPGで,チュートリアルを兼ねた導入部分をクリアすれば,自由に活動できるようになる。
物語を進めるメインクエストのほか定番のサブクエストも充実しており,広いフィールドを所狭しと徒歩や馬で動き回ることになるだろう。
自由度は高く,クエストはどの順番で受けてもいいので,なににも取り掛からず,とにかく周囲を歩き回るのもプレイヤー次第だ。
とにかく歩いてマップの表示されない部分を埋めていくのもいいし,野山で草花を集めて錬金術にいそしんでもいい。師匠相手にトレーニングをひたすら受け続けて,戦闘力を高めてもいい。スタミナは走り回っているだけでも上がっていくので,探索を兼ねてあちこち走り回れば一石二鳥だ。
各種のクエスト内容も当時のボヘミア王国に準じた作りになっている。
例えば1作目の場合,人々に忌み嫌われている処刑人の元にいる女性の処遇を決めたり(処刑人は社会に必要な職業なのに穢れた仕事をする人間という扱いを受けており,その近くにいること自体が不幸とされている),物乞いになってしまった人たちに職業を割り当てるついでに,文字通りの汚れ仕事である汚物の運搬を誰に任せるか決めたりといった,一般的なファンタジー作品ではあまり見かけないであろう展開を楽しむことができる。
続編となる本作のクエストもかなり凝った作りになっており,例えば最序盤で行方不明になった飼い犬のマットを探すクエストですら,クエストマーカーの周囲をウロウロすれば簡単に見つかる……なんてことない。
証拠から情報を集め聞き込みをおこなっても,普通に空振りや骨折り損があるし,進行のために関連している別のクエストに取りかかったら,大量の盗賊相手に死線をくぐり抜けるハメになったり……と,とにかく一筋縄ではいかないのだ。
それ以外の依頼でも,途中までは何でもない展開だと思ったら最後にとんでもないことを頼まれたり,導入自体に分岐があって機会を逃すとスタートの展開自体が変わったりと,かなり力の入った作りになっている。
もちろんクエストによっては,選択や行動によって報酬が変わったり,関わった人物の生死に関わることもある。サブクエストと言えば「単に物を届けたり,何かを倒したりするだけでしょ」と思っている人も多いと思うが,本作においてはその選択がある人の人生や運命をも変えてしまうかもしれない。油断せずにむしろ身構えて進めていきたいところだ。
実際にどのような出来事が待っており,そしてどのように自分自身の物語を描けるのか。それはぜひ本作を手に取って体験してほしい。
戦闘,会話,サバイバル……リアルな中世を表現するゲーム進行とシステム
前述のとおり本シリーズは実際の歴史をベースにしているが,それと同じぐらい各種のシステムもこだわりが込められている。さすがにすべてを挙げるときりがないので,特徴的なものをピックアップして紹介していこう。
なお先に触れておくと,本作はスキル制を採用しており,話術なら会話,錬金術ならそのまま錬金作業,戦闘なら同じ武器を使い続ける……という形で,能力が上がるようになっている。またスキルトレーナーもいるため,お金があればそれぞれ個別に短時間で上げることも可能だ。
まずRPGに欠かせない戦闘だが,これがまず非常に“歯ごたえがある”ものに仕上がっている。
一般的なRPGでは盗賊などは完全なカモや経験値稼ぎ役だったりするが,本作においては舐めてかかろうものなら,あっと言う間にこちらが墓場行きになる。数的に不利になることも多いが,前後から挟み撃ちにあえばまともに防御することすらできず,弱い内は徒党を組んでくる悪党の恐ろしさを嫌というほど味わうことになるだろう。
そう,元が平民の鍛冶屋でしかないヘンリーは,最初は普通に弱い。1作目で描かれた出来事を経験したことで成長(ゲーム的には高いパラメータになった)した姿で登場するのだが,序盤の展開により死にかけたために前作で鍛えた能力が失われてしまうのである。
急に何かの力に目覚めたりするわけではないので,複数人に囲まれれば勝ち目は極めて薄い。新たな旅のさなかで傷を癒し,かつての技と力を取り戻すべく鍛え直す……というイメージだろうか。このようにゲームのシステムにもヘンリーの成長物語が関係しているのだ。
近接戦闘は“攻撃方向の概念があるチャンバラ”になっており,上と左右,そして突きに分かれた攻撃をリアルタイムで繰り出しながら,相手の隙を伺い,ダメージを重ねていく勝負となる。
基本的には敵が構えてない方向から狙わないと当たらないが,仮にそうしても防がれるパターンも多く,さらに攻撃にも防御にもスタミナを食うので,常に緊張感がある。また対峙する敵にもよるが,こちらに攻撃がクリーンヒットしてしまえば一撃もかなり痛い。
戦闘のシステムそのものは前作を引き継いでいるが,攻撃方向が「上・左右・左下・右下・突き」の6方向から,前述の「上・左右・突き」(武器によっては突きがない)の4方向という形にあらためられており,若干だが簡略化されている。
難度そのものに関しては,設定上弱い敵は相応のレベルに落ち着いた印象があるが,相変わらずやられるときはあっさりやられるし,盾持ちはいるだけで手こずる場面も増える感じで,引き続き油断禁物という感覚だ。
戦闘のコツとしては,アイコンに合わせてタイミングよくボタンを押すことで発動するパーフェクトブロックを狙い,まずは敵の攻撃をきっちりと防ぎつつ,相手をの隙をうかがうこと。いわゆるパリィゲーとまでは言わないが,むやみに武器を振り回してもただ疲れるだけでまず勝てないという点は覚えておきたい。
なお弓矢などを使った遠距離攻撃も当然可能だが,クロスボウなどの本体自体に照準が付いているものを除き,狙うときにクロスヘアなどは表示されないので,このあたりは前作に引き続きプレイヤーのリアルスキルが求められる。
これに関しては慣れるしかないので,各地にある狩人の訓練場などでトレーニングを重ねよう。慣れてくれば金を稼ぎつつ,ヘンリーとプレイヤーの両方のスキルが上がっていくハズだ。
力の行使以外,つまり話し合いも話術スキルだけで決まらない独自性が光っている。
説得自体は当然話術が高い方が有利だが,脅迫あり,ハッタリあり,場合によってはスキル値が参照されるなど,シチュエーションに応じてさまざまな選択肢を取れるようになっている。
数値自体は表示されるが,人によって効果的な手段が異なるので,(明らかに強い相手には脅迫は効果が薄いなど)必ずしも数値が高ければ有効というわけでないし,無理強いすれば評判も下がってしまうからだ。
シリーズとして「魅了」という概念があるのも面白い。これは見た目,つまり服装が立派で美しくあるほど,説得力が増すという選択肢で,つまり話術が今ひとつでも主人公の格好だけで上手い具合に騙される……というワケだ。
ステータスの魅力が会話に影響を与える作品は多いが,本人の素質にあまり関係なく,服装(装備)と身だしなみ(水桶で顔を洗う)でその効果を高められるところは思わずクスッと笑ってしまう。
ポーションを作る錬金術,いわゆる調合も印象的なシステムのひとつ。作業に錬金台を使う……というのは良くあるシステムだが,使う材料をレシピに沿って用意するのはもちろん,ベースの液体,投入の量と順番,加熱する時間の調整,最終的に注ぐだけなのか蒸留する必要があるのかなど,その工程は非常に複雑だ。
レシピがなく当てずっぽうで作るのはほぼ無理だし,仮にレシピが手元にあっても,手順に不手際があればクオリティが下がり,完成する量も減る。
少々面倒なのは否めないが,実際に“作っている感”の再現度は抜群で,調合そのものが本筋ではない作品ながらここまで作り込まれているのは,純粋に制作陣のこだわりだろうと思う。
ちなみに手順が複雑だけあって,完璧に完成した場合は複数個のポーションが手に入る。さらに数を底上げできるスキルやミスを取り消すスキルもあるので,慣れてきたところにそれらのスキルを取得すれば大幅に錬金術を実行する回数は減らせる。
本作は体力の自動回復がなく,自動と特定のベッドで寝る以外の任意セーブはポーションが必要なので,それらを常備しているかどうかで進行の難度は大きく変わることも覚えておこう。
さらに本シリーズは標準でサバイバル要素も内包しており,起きて動いているだけでスタミナとは別の活力が失われるほか,お腹も減っていく。万全の体制で冒険を続けるには,適度に睡眠し,しっかりと食事を済まさなければいけない。
と言ってもこまめに数値をチェックする必要があるかというとそこまでではなく,放置しているとヘンリーが腹が減ったなど愚痴り出すので,「そろそろかな?」というのは自然と意識できるようになるはず。
人がいる集落自体はフィールドの各地に存在するが,宿屋がなかったり,(農民しかおらず)食料自体が売っていなかったり,あるいは手持ちの食料が腐ってしまったりなんてパターンもままあるので,準備が不十分なまま遠出すると,大志を抱きながら盗み食いを覚悟せざる得ない……なんてことも十分あり得る。
なおオープンワード作品では定番のファストトラベルは本作にも存在するが,きっちりと移動に時間の経過があるのはもちろん,単なるワープではなく道中に時折イベントが発生する。これは実際に街道を歩いて出会うイベントと同じようで,平和的な旅芸人や旅人に出会うだけのこともあれば,血と財貨に飢えた悪党に出くわすことも当然ある。
イベント自体はスルーできるのだが,危険があるものは確実に回避できるわけではなく,避けるのに失敗して目の前に強盗の集団が出てくることもしばしば。前述のとおりいざ戦いになれば,弱い間はあっさりとに血祭りになることもあり,決して昼間の街道移動だからと言って安心できない。
便利なファストトラベルだが,場合によっては実際に移動して危険を避けるほうが安全なんてことも珍しくない。本シリーズの物語部分で語られる,混乱による治安悪化が実際に身をもって感じられる要素,と言えるかもしれない。
IIはココが進化した! 手間がかかるところを“あえて”残しつつ遊びやすさを実現したゲーム調整
冒頭でもお伝えしたとおり,本作は1作目の特徴を色濃く残しながらも,前作の不満点の改善や時代にあわせたアップデートも各所で行なわれている。また,それらに限らず“ココは注目したい”というポイントもあるので,こちらも簡単にまとめておこう。
●自然,人物,建物,そして物体の質感など,大幅に強化されたグラフィックス
前作が発売されたのは2018年で,コンシューマ機でいうとPS4などひとつ前の世代だ。ビジュアル自体は今見ても極端に見劣りはせず,それなりのクオリティではあるのだが,最新作となる本作では当然ながらグラフィックスは時代にあわせて大幅に進化している。
美しい自然や考証のうえで再現された集落などの建築物はもちろん,人物そのものやその服装(甲冑などの武具)も,そのクオリティがどれだけアップしたかは一目瞭然だ。
以下に4K解像度で自然や集落,そして人物などのクオリティを実際に確認できる画像をいくつか用意してみたので,ぜひチェックしてほしい。
※クリックすると3840×2160ドットの高画質設定の画像(3.5MB〜5MB)が開きます |
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なお本シリーズは,あえて汚い(衛生的でない)部分もリアルに描かれるという特徴もあるのだが,もちろんここもしっかり力が入っている。
移動の主役が馬なので,街道の至る所に馬糞が落ちており,馬の牧場などに行けば,そういったブツは山盛りだ。つまり前作のファンも安心(?)の作りだが,個人的にはゲームに臭いがなくて良かった……と少し真剣に思ったりもするぐらいリアルだということは伝えたい。
●演出がより強化され,ダイナミックに動くストーリー展開はより目が離せないものに
冒頭から育った村が徹底的に破壊された第1作と同じく,ドラマチックな展開が特徴となっている点は変わらない。さらに本作ではヘンリーの振り回されっぷり(?)が強化され,とくにメインクエストは紆余曲折という言葉では言い表せないほどダイナミックな展開が楽しめる。
ネタバレを避けたいので最序盤の展開のみに触れて紹介すると,実は本作は戦争シーンから始まるのだが,最初に操作するのはヘンリーではない。わけの分からない状態で戦場に放り出され,とあるショッキングな出来事を経て,ゲーム本編となる数週間前に時が遡り,ヘンリー視点の物語が始まるのだ。このストーリー展開でガッチリと心が掴まれるプレイヤーも多いのではないだろうか。
続編かつ主人公も続投という作りである関係上,前作を知らないとプレイのハードルが高そうに感じる人もいるだろう。だが1作目の物語は道中での会話や夢,あるいは死にかけているときに見る走馬燈(!?)によって描写されるなど,単に文章やナレーションで説明するのではない形で,前作の大まかな流れに触れられるようになっている。
たとえば主従関係にあるはずのカポン卿とヘンリーがえらくフランクな付き合いをしているところなどは,前作をプレイしていたほうがとくに違和感を感じずゲームを進められるだろう。
しかし本作は上記のとおり,自然な会話やチュートリアルも兼ねた序盤のクエストなどでその理由も分かってくる。
このようにもともと単体でも物語を楽しめる導入になっており,ヘンリーのこれまでを知りたければ会話や回想シーンをとおして触れられるので,前作を知らないことはハードルにはならないはず。安心して本作の物語に飛び込んでほしい。
●チュートリアルの強化により,基礎を学びながら流れるようにゲームを楽しめる
本シリーズは戦闘の難度が少し高めで,かつクラフト要素などが独特のミニゲームになっていることもあり,若干取っつきの悪さがあることは否めない。だがその反面,ヘルプやチュートリアルは非常に充実しており,操作やルールがそのものが分からないままになってしまうことはあまりない。とくに本作では前作に比べ,導入部のチュートリアルが一層強化されている。
例えば1作目では,ゲームスタート直後に導入を兼ねたチュートリアルが開始され,故郷の村で借金を取り立てたり,買い物をしたり,喧嘩をしたりするいったシークエンスがあった。
これは実際に村で生活している感覚を得られ,その後に起こる大事件の“嵐の前の静けさ”としての演出としても良いものであったが,その一方で若干の冗長さあったのは否めない。次に何をしていいかが分かりにくくなり,さらに序盤に必須なことがすべて学べるわけでもない(とくに錬金術など)という点で,筆者は多少詰めの甘さも感じていた。
一方で本作のチュートリアルは,最初に剣術や犬の操作を学ぶ……といういかにも練習感が漂うものからスタートするものの,その後はすぐに事態が急展開し,流れるように最初のメインクエストを兼ねた形で進行していく。
筆者自身も初見時は「え? ええっ?」という感じで,ろくに理解が進まないまま言われるとおりにヘンリーを操作していったが,実は一息つくまではすべてがチュートリアルになっており,彼の災難(?)をとおしてステルスでの動き方や素材の集め方,そして実際の会話や戦闘,錬金術の基礎まできちんと学べるようになっていたのだ。
その分だけ自由にプレイできるまでの時間は長めだが,展開自体は早いので退屈に感じることはまずないはず。全体的にとにかく無駄が少なく,かつ内容も充実しているという点で,ストーリーの導入としてはもちろん非常に良質なチュートリアルに仕上がっていると感じた。
●UIなどの情報は分かりやすく,没入感を追求した“ガイドしすぎない”ゲーム進行はそのままに
前作に引き続き,今作もメイン画面のUIは非常にシンプルだ。メニュー画面などはアイテムの管理があるのでどうしてもゴチャゴチャしているが,一番見続けることになる一人称視点の画面は上部に方角と施設アイコン,下部に体力などのステータス表示がされる以外は何もなく,たまにヘルプが出てくる程度。ミニマップなどもなく,なるべく没入感を高めるように工夫していると思われる。
一方で細かいところで色々と改善されており,例えば下部のゲージに現在の武器のアイコンが表示され,何を装備しているのか一目瞭然になった。またマップなどもベースの色合いやタッチが修正され,アイコンが確認しやすくなり全体的に見やすさが向上したほか,相手に説得を試みるときも選択肢とヘンリーのステータスが一括で表示されるようになったので,状況を瞬時に判断しやすくなっている。一見地味だが,確実にそして丁寧に考えられて進化した部分と言える。
その一方でクエストや探索の“手探り感”は引き続き維持されている。クエストベースのRPGの場合,マーカーを追っていくだけでクリアできる仕組みなっている作品も多いが,本シリーズではあえてプレイヤーに教えるのは手がかりだけに調整されているようだ。
例えばアイコンは表示されるが一定範囲を示していて能動的にヒントを探す必要があったり,ヒントを聞くに人によって行く場所が完全に変わったり,きっちりと人の話やジャーナルをチェックしておかないと,そもそも何を探すのか分からなくなってしまったり……と,何も考えずマーカーを追えばいいだけの仕組みになっていない。
これは単純に手間だという考え方もできるのだが,恐らく計算されて採用されているものだ。利便性を考えクエストマーカー自体はなくさないが,そこに移動するだけの作業にはしたくない……そんな制作陣の思いがあるのだろう。当然好みは分かれると思うが,この“意図された面倒さ”はそのほかのシステムも含めて本シリーズの味であり,プレイヤー自身がヘンリーとなってこの世界を冒険するという没入感を生む部分であると感じている。
コンシューマ版の仕上がりは? 自分の好みのプラットフォームを選び,中世ボヘミアの世界に飛び込もう
最後にコンシューマ版について,記事の冒頭で触れたPS5版をとおして軽く紹介しよう。
PC版もPS5版もプレイした範囲では,当然だがストーリーの展開やゲーム性などには違いはなく,PC版がキーボード+マウスでも操作できるという入力デバイスの対応に,若干の違いがある程度のようだ。
グラフィックスの設定は「パフォーマンス」と「フィデリティ」の2種類で,触ったかぎりではそれぞれ前者が60FPS,後者が30FPSをターゲットにしたものになっているようだ。「低」から「実験的」のプリセットが5段階+個別設定が用意されているPC版に比べ,シンプルで分かりやすくなっている。
以下にPS5のパフォーマンスとフィデリティモード,そしてPC版の例として「高」設定で同じ場面を撮影した画面を掲載するので,参考にしてほしい。とくに遠方(画面奥)に注目してみると,いろいろと違いがあるのが分かるかと思う。
PS5版のパフォーマンス設定 |
PS5版のフィデリティ設定 |
PC版のプリセット高 |
以上本作のレポートをお届けしてきたが,実際にプレイしてみて筆者は「1作目から順当に進化した続編」という印象を持った。
これは主人公が続投し,その物語が続いているという点のみならず,戦闘や探索,あるいはクラフトなどのシステムが近い(あるいは同じ)形で継承されているからだ。
またプレイヤーが楽しすぎないよう,さまざまな作業にそれ相応の操作を要求される場面や,不意のアクシデントなどつねに緊張感のある展開が待っているのも同じコンセプトであると言える。前作をプレイしていれば,かなりスムーズにゲームを進められるはずだ。
その一方で,ゲームの間口自体を広げる工夫はさらに充実しており,それはパワーアップしたチュートリアルだったり,改善されたUIだったり,マイナス効果がほぼなくなって取得時に悩んだり後悔したりすることがなくなったパークだったりするのだろう。
ヘルプは充実しているし,プレイを進めるごとに増えていく辞典は,実際の中世を知ることができる要素として単純に面白い。またグラフィックスの大幅な強化は,没入感をさらに高めることにも成功している。
繰り返し触れているように,本作は決してヌルいゲームではない。前作をプレイしている筆者でも,ランダムイベントの盗賊にあっさり殺されてムカついたし,正直なところ弓は相変わらず当てにくい。腹が減ったから見知らぬ農家で盗み食いしたこと(食料を買い込むのが面倒だったのだ……)や,セーブ用のアイテム(救生酒のシュナップス)をケチるため,少し遠出したのにわざわざ自分のベッドに戻ったのも一度や二度ではない。
そんな,いわゆる勇者ではないヘンリーという中世を生きる人間そのものになることで得られる“RPG体験”は本作ならではで,それこそがシリーズの大きな魅力だと言える。一手間かかる作業や一種の面倒さも,中世ヨーロッパの世界をリアルに感じる大事な要素なのだ。
前述のとおりプレイそのものには前作の予習はいらないので,本作から始めても問題はない。ファンタジーではない,ほかに見られないほど地に足が付いた中世を追体験したいなら,ぜひ本作を手に取ってほしい。
「キングダムカム・デリバランスII」公式サイト
- 関連タイトル:
キングダムカム・デリバランスII
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