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脚本に込めた“間”をゲームの中へ。「Ghost of Yōtei」で刷新された会話制作パイプライン[GDC 2026]
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印刷2026/03/14 19:50

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脚本に込めた“間”をゲームの中へ。「Ghost of Yōtei」で刷新された会話制作パイプライン[GDC 2026]

 GDC Festival of Gaming 2026(GDC 2026)の4日目(2026年3月12日),「Ghost of Yōtei」の脚本制作に関するセッション「Flipping the Script: Overhauling Sucker Punch's Writing Pipeline for “Ghost of Yōtei”」が行われた。

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 脚本制作といっても,シナリオ自体の話ではない。Sucker Punch Productionsが前作「Ghost of Tsushima」開発時に抱えていた脚本制作フローの課題を,「Ghost of Yōtei」ではどのように改善したのか。そのための共有ツールを制作したプログラマーのRoland Munsil氏が解説した。

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 脚本制作フローの改善のテーマは,ひと言でいえば「脚本家を,もっとゲーム制作の中へ入れる」ことだ。セッションではまず,前作「Ghost of Tsushima」の開発時に抱えていた脚本制作フローの問題点が語られた。

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 当時の制作環境では,脚本家,プロデューサー,デザイナーがそれぞれ異なるツールを使って作業を進めており,会話スクリプトの管理が分断されていたという。

 具体的には,脚本家はGoogle Docsで脚本を執筆し,プロデューサーがそれをラインデータベースへ入力する。そしてゲーム内で実際に会話を再生する設定は,デザイナーがセリフIDを使って手作業で接続していた。
 こうして作成されたテキストや音声データは,最終的にPerforceへアップロードされ,ゲームビルドに使用される形になっていた。

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 このように工程ごとにツールが分かれていたため,脚本,データベース,ゲーム実装のあいだで内容の同期を取る必要があり,作業量が増えるだけでなく,スクリプトの食い違いが起きやすい状況になっていた。

 こうした状況が脚本家にとってもデザイナーにとっても大きな負担となり,また脚本家自身が書いたセリフが,ゲーム内でどのように使われるのかを確認しづらいという問題もあったという。

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 そこで「Ghost of Yōtei」では,脚本家がゲーム実装に近い形で直接スクリプトを書ける専用ツールを新規に構築。会話データ,メタデータ,実装をできるだけ一体化し,「スクリプトはこれを見ればいい」という単一の“正本”を用意した。

 結果として,デザイナーが大量のセリフIDを手で接続する必要が大きく減り,脚本家も自分で書いた会話がゲーム内でどう動くかを確認しながら作業できるようになったそうだ。

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 このツールの興味深い点は,単なる効率化の話で終わらないことだ。新ツールによって脚本家は,文章を書く人に留まらず,会話のテンポや間,ちょっとした演出のニュアンスにまで踏み込めるようになった。

 たとえばセリフの前後の間隔や,会話に関わる表情変化と分岐の位置の調整といった指示や作業を,デザイナーに直接伝えなくてもツール上で行えるようになったという。

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 ゲームの会話は,単に意味が通じればいいわけではない。同じセリフでも,どんな言い回しで,どんな順番で,どれくらい間を置いて発せられるかで印象は大きく変わる。

 つまりこれは,「脚本家の作業を楽にしました」という話であると同時に,脚本家の気持ちや意図を,より直接ゲームに反映できるようにした話でもある。脚本家がただ台本を書いて渡すだけではなく,ゲームの中でそれがどう発せられるか,どう流れるかにまで関われる。

 書き手である脚本家自身の感覚がゲームへ持ち込みやすくなり,デザイナーとの感覚の共有がしやすくなったことは,ドラマ性の高い「ゴーストオブ」シリーズのような作品にはとても大きく,重要な変化だったことだろう。

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 さらにこのツールの好影響は,脚本家とデザイナーだけでなく,プロデューサーやレビュー担当,ローカライズ周辺にも波及していった。同じスクリプトを,全員が同じ場所で見る。すると脚本家のコメントも,分岐構造も,実装上の事情も共有しやすくなる。
 単なるデータ一元化ではなく,チーム全体で文脈を共有するための場にもなったのだ。

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 もちろん,いい話ばかりではないと氏は話す。
 実装とスクリプトを一体化したことで,エンジン都合で複雑になった分岐構造が,そのまま脚本の読みにくさにつながるケースや,複数人が同じファイルを触ることによるマージコンフリクトの増加といった課題もあった。

 また「ゴーストオブ」シリーズのように,メインシナリオとサブシナリオがそれぞれ独立していて,さらに会話選択はあれど基本は一本道で物語が進むゲームには有効だが,分岐が多いゲームやそれによってルートが分かれるゲームには不向きだと話す。

 そういった新しい課題もいくつかあったが,それでもこの刷新が確かに現場を前進させたという手応えがあったことは,氏の語りからとても伝わってきた。

 「脚本家もゲーム制作により深く参加できた」という点は物語が重要なゲームにとって大きい。会話文を書く人が,文章だけを納品する存在ではなく,ゲームの体験づくりそのものに関与している。それは,会話の質を上げるうえでも自然なことだ。

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 「Ghost of Yōtei」の事例は,会話制作のパイプライン改善が,単なる工数削減や管理効率の話ではなく,表現の質を上げるための環境づくりでもあることを示した。

 自分たちの言葉づかい,言い回し,そして“間”のような繊細な部分まで,作り手の意図をもっと通しやすくする。そんな制作フローが,今後ほかのスタジオでも広がっていくのかもしれない。

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