オススメ機能
Twitter
お気に入り
記事履歴
ランキング
パッケージ
ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション公式サイトへ
  • 任天堂
  • 発売日:2025/03/20
  • 価格:パッケージ版:7678円(税込)
    ダウンロード版:7600円(税込)
  • Amazonで買う
  • Yahoo!で買う
レビューを書く
準備中
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2025/05/31 09:00

企画記事

進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 任天堂から2025年3月20日に発売されたゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション(以下「DE」)は2015年リリースのWii U用ソフト「ゼノブレイドクロス」の“完全版”となるNintendo Switch用ソフトだ。
 グラフィックスやUIを現代の基準に合わせて調整し,ロード時間短縮などのプレイアビリティを向上。さらに新規エピソード「13章」が追加されている。

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 地球を失った人類が未知の惑星ミラにたどり着き,そこでどのような戦いを繰り広げるのか――。基本的なところはこちらを読んでいただくとして,本稿では「DE」という作品がオリジナルからどう遊びやすくなったのか,それはシリーズファン以外にも味わえるものか,ストーリーがひと段落した今の感触をまとめてみたい。

関連記事

[プレイレポ]圧倒的に遊びやすくなった「ゼノブレイドクロス ディフィニテ ィブエディション」。生身での探索と人型兵器による探索,その対比を味わうだけでも遊ぶ価値がある

[プレイレポ]圧倒的に遊びやすくなった「ゼノブレイドクロス ディフィニテ ィブエディション」。生身での探索と人型兵器による探索,その対比を味わうだけでも遊ぶ価値がある

 本日発売されたNintendo Switch用ソフト「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」は,2015年にWii U向けにリリースされた「ゼノブレイドクロス」の決定版だ。新しくなったUIやシステムで,より遊びやすくなった本作のプレイフィールをお伝えする。

[2025/03/20 07:00]

 筆者は10年前にオリジナル版をプレイし,とくに探索要素が気に入っていたのだが,ストーリーについては正直その動機付け程度で,サブ的な魅力として捉えていた。
 むしろ,地球をあとにした人類のひとり――プレイヤー自身がたどった探索と開拓の道筋こそが「真のメインストーリー」なのだと。

画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 だが「DE」の13章を終えた今は,単なる完結編を超えて,シリーズ共通のテーマ「宇宙(世界)と人の意思」を包括するような,新たな物語に触れた思いが強い。
 「ゼノブレイドクロス」の“クロス”に込められた意味合いは,やはり「クロスオーバー」だったようだ。

 結論を先に述べると,「DE」にはオリジナル版のファン以外も“この惑星ミラに降り立つべき理由”が詰まっていたのだ。

画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

※以下,ストーリーの重大なネタバレは含んでいませんが,探索や展開に関する描写や一部の画像が,これからプレイされる方にとっては今後の展開を想像させる予備知識となる場合があります。ご注意のうえお読みください

「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」公式サイト



探索感と世界の見え方の変化,それらが意味するもの


 まずはオリジナル版で「真のメインストーリー」とまで感じた,移動や探索の楽しさについて詳しくお伝えしよう。
 筆者はこれこそが本作の最もコアな魅力だと考えている。本作の移動手段は,ゲーム進めるにつれて増えていき,3段階の異なる感覚を味わえる。

 惑星探索はまず,人の足で大地を踏みしめるところから始まる。広大な惑星ミラを徒歩で探索する面白さは,何よりも「道なき道を探して開拓していくこと」に尽きる。
 原生林を踏み分け,巨大な岩山をよじ登り,遠い目的地を目指す。ダッシュやジャンプを駆使して岩の裂け目を飛び越えたり,小さな岩やツタなどの植物の枝を足場に,崖や巨大な樹木を登ったりもできる(正確には「飛び越える」だが)。

画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 原生生物は倒すだけでなく,かわしながら目的地を目指してもいい。じっくりルートを探して進めば,強力な敵に追われて逃げ惑うことも減る。何より,自分の足で未知の土地を踏破していく感覚自体が,アクションゲームのような手ごたえがあって面白い。

画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 この時期の探索は,まさに「開拓」そのもの。人類の新たな拠点である「NLA(ニューロサンゼルス)」を発展させる(プレイヤーの戦力を整える)には,探索によって調査用プローブを設置し,資源を確保することが不可欠となる。
 食料など民生品は抽象化されているものの,プレイヤーが行う探索は,同時に人類の生存を賭けた惑星開拓の一部でもある。この資源ネットワークを広げていく遊びと,未開の地を踏破していく楽しさが,ゲーム序盤の大きな推進力となる。

画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 次の段階は,人型機動兵器・ドールを手に入れてからの探索だ。ドールに乗ると視点の位置が格段に高くなり,障害物に遮られず遠方まで見通せるようになる。
 なにより,今まで見上げることしかできなかった巨岩や建造物が,手ごろな足場に変わってしまう感覚は,まさに「世界が広がる」体験だ。

画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 移動のスピードが上がり,ジャンプ力も向上するため,人間のときよりも移動ルートも格段に増える。
 徒歩では越えられなかった広大な谷も,ドールのジャンプ力なら飛び越えられるかもしれない。広大な平原もあっという間に横断できるようになり,探索のテンポがぐっとアップする。

画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 そして終盤,あるクエストをクリアすると,すべてのドールは飛行できるようになる。これは探索の手ごたえが革命的に変わる瞬間だ。
 それまでは下から見上げるか,地に足を付けて見渡すしかなかった巨大な自然の造形を,高空から見下ろしたり,真横からじっくり眺めることが可能になり,プレイヤーは惑星ミラの全容をより立体的に捉えられるようになる。

 地形の起伏は移動を制限するものではなくなり,ドールのジャンプでも届かなかった浮島や,垂直に切り立った崖にある洞窟も,じきに探索の舞台となるだろう。

画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 さらに「DE」では,航空機形態に変形するドール「フレスベルグ」が追加されている。
 従来のドールの飛行はヘリコプターのような感覚で,スピードはさほど出ない。長距離の移動にはファストトラベルを使い,目的地へのファイナルアプローチをドールで行うという要領だった。しかしフレスベルグの登場により,長距離移動時に飛行を選択し,空からの絶景を眺めるという新たな楽しみが加わった。

 雨の中を飛ぶうちに,いつしか遠くの空が明るくなっていく光景などは本当に素晴らしく,「これを見られたのなら,もうゲームクリアでいいかな?」と一瞬思ったくらいだ(笑)。

画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 こうした手応えの変化を意識したフィールドデザインも秀逸である。単に広いだけでなく,縦方向へのボリューム感を強く持たせてあるのが特徴で,ドールで飛べるようになるとそのことをより実感できるだろう。

画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 例えば,徒歩での探索で見つけた「巨大な腕」のような物体が,飛行可能になると実は巨大な植物の先端でしかなかったことが判明し,その先にはまた別の地形や原生生物との出会いが……という具合に,プレイヤーは発見の連鎖に胸を躍らせることになる。
 「線」が「面」になり,やがて「立体」として像が立ち上がってくるような体験は,ほかのオープンワールドゲームではなかなか味わえない,本作ならではの醍醐味だ。

画像ギャラリー No.012のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった
画像ギャラリー No.013のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 このようにプレイ感が順を追って,かつ劇的に変わっていくことで,プレイヤーの(言葉本来の意味での)世界観も変化していく。
 まるで徒歩の時代から,馬や車の時代,そして航空機の時代と,人類の移動手段の発展を追体験するように。各段階でプレイヤーが感じる「次元の広がり」は,単なるゲーム内の移動を超えて,SF的なスケールでの「宇宙の中での人類の立ち位置」を考えさせる。

 ……と,ちょっと「話を広げすぎ」と思ったかもしれないが,オープンワールドの探索が好きな人は,本作ならではの変わった体験が味わえるし,SF好きはそんな風に「深読み」も楽しめるというわけだ。じつは物語が投げかけるテーマとからめて考えると,あながち深読みでもないのだが。

画像ギャラリー No.014のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった


システムの変更で遊び応えはどう変わった?


 続いてシステム面の改良について。これもかゆい所に手が届き,本当に遊びやすくなっていた。オリジナル版ではパーティの管理などが煩雑で,筆者は仲間キャラとのサブクエスト(キズナクエスト)はコンプリートには至らなかったのだが,「DE」ではこれをしっかり追うことができた。
 クエストで示される目的地は,探索を進める動機にもなるため,とくにオリジナルを未プレイの人にとっては「まだ見ぬ絶景」へ導いてくれるガイド役にもなる。

画像ギャラリー No.015のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 まずなにより,パーティ編成がどこでも行えるようになったのは嬉しいポイントだ。
 オリジナル版では,キャラクターの居場所まで迎えに行く必要があり,レベル差もプレイヤーが解決する必要があった。しかし「DE」では,どこでもパーティメンバーを自由に入れ替えられるようになり,経験値はつねに配分されるため,大きなレベル差はそもそも発生しにくい。
 これにより仲間キャラクターのキズナクエストを追いやすくなっただけでなく,育成も気軽にでき,自分で操作するキャラとしての魅力も増した。

画像ギャラリー No.016のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 いつでも「時刻」を変更可能になったのも見逃せない。オリジナル版では特定の場所でしか時刻の変更ができず,ある時間帯にしか出現しない敵や,会話イベントなどに対応するのが大変だった。
 そもそもこうした敵やイベントは,ストーリークリア後も長く続けるうちに,偶然出会うような意図だったのかもしれないが……ともかく,クエストや会話イベントを追いやすく,また世界に点在する強敵(オーバード)を討伐しやすくなった。

画像ギャラリー No.017のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 そして,広大なフィールドを移動するうえで欠かせないファストトラベルも改善されている。
 ファストトラベル地点を解除する際の制約が緩和され,より快適に移動できるようになった。「DE」ではランドマークやFNスポットを発見すればするほど,探索範囲がテンポよく拡大していく。

 さらに前述のとおり,新規追加されたフレスベルグの飛行形態という,新たな長距離移動手段も増えている。
 ファストトラベルの繰り返しが作業的に感じてきたら,気分転換にフレスベルグで「ひとっ飛び」だ。空からのミラの眺めという,新たな「観光要素」まで楽しめる。飛べるまでにけっこうな時間がかかるのが難点だが,それだけに初飛行時のカタルシスはものすごいものがあった。

画像ギャラリー No.018のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 ちなみにフレスベルグは戦闘用のドールとしての性能も申し分なく,メインクエストの13章のクリアまではこれ一種(厳密にはレベル30以上用とレベル50以上用の二種)で十分に通用するほど。武装も固定であり,買ってすぐに活躍させられる。
 それでは物足りないと感じた人だけ「ほかのドールをどうぞ」というようなバランスになっているため,人型兵器やカスタマイズにあまり思い入れがない人にとっても,圧倒的に遊びやすくなっている。

敵の態勢を崩してからホールドで動きを封じ,ギアポイントを溜めてオーバークロックギアで攻める。これがフレスベルグの戦いのセオリーだ
画像ギャラリー No.019のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 なおメインクエスト12章までの内容は,オリジナル版から変わっていない。オリジナル版と同様に,メイン以外のクエスト,ノーマルクエストやキズナクエストなどをスルー気味で進めようとすると,レベルやお金などが不足し,かえって先に進められなくなりがちに。またレベル制限でクエストの受注ができないということも発生する。

 しかし「DE」は各種のクエストを追いやすくなったことで,それらを追っていけば自然とレベルが上がり,稼ぎはほぼ必要なくなってもいる。
 もし必要になったとしても,オリジナルではDLC扱いだった経験値,お金,資源を稼げるクエストを最初から受けられるため,詰まる心配はほぼない。プレイヤーはレベル上げに時間を取られることなく,ミラの探索や物語に没頭できるようになっているのだ。

画像ギャラリー No.020のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 それらクエストで描かれるドラマは悲喜こもごも,さまざまなトーンがあるが,人類の拠点NLAに集うさまざまな種族のコミュニケ―ションギャップや,歩み寄りの物語が中心だ。
 地球を失い,新たな故郷を求めてミラの地に辿り着いた人類が,まったく異なる文化や価値観を持つ異星人とどのように共存していくのか。喜び,悲しみ,裏切り,さまざまな人間(異星人も含む)ドラマが展開され,プレイヤーはそれらを通じて,NLAが多種多様な種族が織りなす「社会」であることを知っていく。

画像ギャラリー No.021のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった
画像ギャラリー No.022のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 つまり異星人相手に「分かりあえたり,分かりあえなかったりする」のだが,「でもそれって地球人同士でも同じだよね」という話でもある。
 一見馴染みがなかったり,自分にとって遠く思えるお話も,じつは身近で普遍的なものかもしれない。もちろん,冗談みたいな軽いノリの話もあれば,シュールなお話もけっこうあり,真面目なばかりでもない。

パーティに加わるキャラ,ミーアやHBのキズナクエストは少し……いやかなり「特異点」かもしれない(笑)
画像ギャラリー No.023のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 なお,「DE」で追加された仲間である,リーゼル,ニール・ネール,ガ・デルグの3人のキズナクエストについてもネタバレを避けつつ触れておこう。

 まずリーゼルは新型機フレスベルグの誕生に関わるキャラクターで,キズナクエストでもそれに関するものが描かれる。ニール・ネールはクリュー星系人の考古学者であり,惑星ミラに存在する謎めいた遺物についての見解が示される。

画像ギャラリー No.024のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった
画像ギャラリー No.025のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 オリジナル版では主に敵として立ちはだかったガ・デルグは,キズナクエストを通じて彼の背景が明かされていく。また,それぞれが新たな技や有用な装備をもたらしてくれることも付け加えておく。

画像ギャラリー No.026のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 これらで描かれるドラマは12章までの流れに組み込まれるのが自然で,都合が許すのであれば13章までに触れておくのがおすすめだ。また本筋で扱うものの細かい掘り下げといった位置づけなので,興味を持ったものだけを進め,残りはスルーしても問題はない。そこは他のキャラクターのキズナクエストと同様だ。

画像ギャラリー No.027のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 とはいえ,「DE」にも惜しいと感じる点はある。それはオリジナル同様,バトルに関する導線が少ないことだ。
 ゲーム内で基本的な操作は説明されるものの,複雑な連携や効果的な戦術は,プレイヤー自身がシステムメニューのTIPSを読みつつ試行錯誤する必要がある。

 とくに強敵とのバトルでは必須となる強化状態「オーバークロックギア」の活用方法や,その効果時間を継ぎ足していく戦法(無限OCGなどとも呼ばれる),さまざまなデバイスを武器につけて性能をカスタマイズするセオリーなどは十分に説明されず,足りない情報は主にネットで集める必要がある。

実はTIPSの「アドバイス」欄には手がかりになる情報が……
画像ギャラリー No.028のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 「DE」では技の再使用までの時間を短縮する「クイックリキャスト」が追加されたことで,仲間との連携(ソウルボイス)での恩恵を受けやすくなり,それに伴ってオーバークロックギア発動や,無限OCGへの移行も簡単にはなっている。
 とくに13章を終わらせる程度であれば深い理解は必要なく(仮に理解があっても素材が不足する),適正レベルまで上げ,装備を買い揃えるだけでも大丈夫ではある。
 ……のだが,初心者が壁にぶつかったとき,レベルを上げる以外の方法に導く何かがほしかった気はする。例えば,「この属性で大ダメージを受けていますよ」「回避が足りていないですよ」などとアシストするといったような。

 ドールの強化にしても同様で,こちらは敵からのドロップ装備の厳選や,レア素材を大量に必要とするデバイスが必要になるなど「膨大な時間」というハードルまで加わる。
 より強力なビルドを追求し「前進していく」過程こそが本作のエンドコンテンツなのだが,相変わらず「お好きな方だけどうぞ」という印象が強く,一部のプレイヤーしかその真価を味わえない。

 このハードルの高さが熱心なファンを生む要因ともなっていることは確かだし,そもそもシングルプレイ用RPGの枠を越えて,MMORPGのような長期的な遊び方やプレイヤー同士の情報交換を意識しているのだと思われるが,それにしても……と感じてしまう部分があるのも確かだ。

画像ギャラリー No.029のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった


「DE」が完結を超えて示したもの


 そして13章の詳細についてはネタバレに配慮して伏せるが,そのボリュームは事前の想像をはるかに超えたもので,ストーリーに関しては「ゼノブレイドクロス」全体のおよそ3分の1以上を占める規模だった。

画像ギャラリー No.030のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 内容も完結編であるだけでなく,モノリスソフトを率いる高橋哲哉氏のこれまでの作品を総括するものとも受け取れた。
 氏の作品で繰り返される「母星からの脱出」というモチーフは,本作でも冒頭部分で描かれるが,高橋氏がモノリスソフトを設立した経緯やその後のキャリアが,少なくとも無意識レベルでは影響しているのだろう。

画像ギャラリー No.031のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 また本作は過去作へのオマージュが数多く見られる。
 代表的なところでは,パーティメンバーのリンの髪飾りは初代「ゼノブレイド」のモナドを,ロボットものへの回帰は「ゼノギアス」を,とある場面は「ゼノサーガ」の虚無の浜辺を思い起こさせる。例によって具体的な記述は避けるが,新規追加の13章にもセルフオマージュ的な場面やセリフがあり,シリーズの緩やかなつながりが仄めかされていた。
 マルチバースもので描かれる並行宇宙同士が,どこかしら似たところがあるように。

画像ギャラリー No.032のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 モノリスソフトの作品には並行宇宙の概念がしばしば登場するが,作者から見た各作品は,それぞれが一つの並行宇宙とも言える。さらには,プレイヤーそれぞれが受け取った「作品の解釈」もまた,微妙に異なる無数の小宇宙と言えるだろう。
 それらの似たようで異なる並行宇宙の関係を「集合的無意識を通じてつながっている」と解釈するなら,実にロマンティックな話ではないだろうか。ゲーム体験が単なるエンターテインメントではなく,プレイヤー自身の内面や宇宙観と深く結びつくような探求……平たく言えばじつにSFらしい楽しさがあるわけだ。

 と,ここまでくると「どういうことだ?」と思った人もいるかもしれないが,SF好きや,高橋哲哉氏のファンならそんな風にも考えつつ13章を楽しめるということで,軽く受け流してほしい。そして13章は,いかにも「ゼノブレイド」シリーズらしい熱い物語でもある!

画像ギャラリー No.033のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 SFものとして見ればおなじみのテーマも,現代を生きる者の視点で改めて見るとまた別の味わいが生まれてくる。「ゼノブレイドクロスDE」で描かれた現実の科学とフィクションの境界を越えるその構造は,プレイヤーに自らの存在や世界観を問い直すきっかけとなりうるものだ。しかもこの物語の構造には,プレイヤーのいかなる解釈や考察をも引き受けるような「器の大きさ」がある。

画像ギャラリー No.034のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

 オリジナルがリリースされたのは2015年だが,当時よりさらに情報過多となり,価値観の対立による分断が進んだ時代においても,本作から受け取れるものはなお大きい。
 広大な惑星・ミラを舞台にした,異なる種族や価値観の共存を目指す「探索」の物語は,自分とは何か,世界とは何かを考える心の「探索」ともなりうるものであった。

――あなたは惑星ミラでの旅を通じて,何を見つけるのだろうか。

画像ギャラリー No.035のサムネイル画像 / 進化を遂げた「ゼノブレイドクロス ディフィニティブ エディション」で感じたこと――「DE」は人類史を追体験するSF叙事詩だった

「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」公式サイト

  • 関連タイトル:

    ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション

  • 関連タイトル:

    XenobladeX

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:05月31日〜06月01日