
インタビュー
[インタビュー]「Winning Post 10 2025」では,シリーズ最大のボリュームと進化したグラフィックス・演出で競馬の歴史が描かれる
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「ウイニングポスト」シリーズは,プレイヤーがオーナーブリーダーとなり,競馬の世界に生きる競走馬や人々のドラマを体験できるシミュレーションゲームだ。
最新作となる本作では,「Winning Post 10」(以下,WP10)をベースにしつつ,グラフィックスや演出を強化。さらに新しい遊びとして,世界の歴史的名馬に挑む「世界100傑馬」「ザ・レジェンドマッチ」や,1971年開始のシナリオが登場している。
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今回4Gamerは,発売前にWP10 2025のプロデューサーである山口英久氏,開発プロデューサーの斎藤理史氏,ディレクターの中山元一氏にインタビューをする機会を得た。新要素や強化された部分についていろいろと話を聞けたので,ぜひ読み進めてほしい。
WP10 2025では海外競馬にフィーチャー。適応能力を駆使し,世界100傑馬に挑む
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。3月27日にいよいよ発売を迎えます。現在の心境はいかがでしょうか。
山口英久氏(以下,山口氏):
本作は年度版ではあるものの,新作のようなボリュームに仕上げられました。既存のプレイヤーはもちろん,ウイニングポストや競馬に興味がある方に触れていただけたらうれしいなと思い,発売までドキドキしています。
4Gamer:
本作はWP10をベースに,さまざまな要素が強化されたタイトルとなります。前作以前のプレイヤーからもいろいろな要望が届いているかと思いますが,そのなかで反映した要素はありますか。
山口氏:
プレイヤーからの要望で常にあるのはゲームをスタートできる年を遡ってほしいというものです。WP10で1973年開始シナリオを搭載したのですが,古い資料が本当に少なく,当時としても相当に苦労し,このあたりが限界だなと感じていました。
4Gamer:
今作では1971年開始シナリオが搭載されました。
山口氏:
開発としても期待に応えたいとは思っていて,データ班にがんばってもらって2年遡れました。先行していないと勝てないと言われていた時代で,日本ダービーを後方から直線一気の脚でゴボウ抜きしたヒカルイマイ,牝馬で天皇賞(秋),有馬記念を制し牝馬初の年度代表馬に選ばれたトウメイ,海外では史上初の欧州三冠を達成したミルリーフ,無敵を誇ったブリガディアジェラードといった伝説級の名馬がいる年になります。
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中山元一氏(以下,中山氏):
WP10では,サンケイスポーツさんとのコラボで,ゲーム内で当時のサンスポ紙面を見られますが,今作では1971年の記事もお借りしていて,さらにボリュームアップしています。当時の熱気や興奮が伝わると思いますので,ぜひ目をとおしてみてください。
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4Gamer:
1971年の競馬と聞かれても想像するのが難しい気がしますが,具体的に活躍した馬の名前を聞くと,いずれも名が知られる名馬ばかりですね。そのほかにはいかがでしょうか。
山口氏:
前作までは,芝質適性という各国・各競馬場の馬場への適性を示すパラメータがありました。これは世界の競馬を表現するためのものだったのですが,配合・生産時点で適性が決まってしまうことに不満の声がありまして,これを改善するために「レース傾向」への「適応能力」を今作から導入しました。
4Gamer:
レース傾向は,現実の競馬でもよく言われている要素ですよね。日本であれば前半は比較的穏やかに流れて後半の瞬発力勝負,米国は前半からやり合って消耗戦になりやすいなどとよく聞きます。
中山氏:
WP10シリーズではこれまで,馬の内面の個性を描くウマソナや,競馬ファンから見た個性を表現したアイドルウマップなど,「馬の個性」をさまざまな側面から表現してきました。今作でも新たな個性を描きたいと考えたときにたどり着いたのが,「強さにも個性があるのではないか」ということでした。日本のトップホースが海外競馬で苦戦することがあれば,その逆もあります。どんなレース,どんな競馬場でも強い,という馬はなかなかいませんよね。
4Gamer:
日本の競馬場だけに限定しても,その傾向は見られますよね。中山と東京というポピュラーな競馬場を比べても得意とする馬はまったく異なりますし。
中山氏:
ええ。今回はまず日本のレースと,米国や欧州といった世界各地のレースで何が違うのかという部分から考え始めました。もちろん,何もかもが違うのですが,とくに分かりやすく注目したのが,先ほどおっしゃられたようなスタートからゴールまでのレース全体の流れでした。
米国であればスタートからハイペースな「消耗戦」が多く,欧州であれば序盤はゆっくり目で徐々にペースが上がる「持久戦」,日本であればレース終盤に特化の「瞬発戦」と,それぞれの地域に特色があり,これをゲーム上で表現することが「馬の個性」につながるだろうということで,レース傾向とそれに対する適応能力が生まれました。
また,日本の競馬場に限定してもこの傾向はありまして,直線が長く最後の末脚が重要な東京競馬場は瞬発戦,アップダウンがあり持久力を求められる中山競馬場は持久戦になりやすくなっています。
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山口氏:
そのほかの要望としては,海外馬にも固有特性を持たせてほしいという声がありまして,今作では40以上の固有特性を海外馬に追加しています。
4Gamer:
海外馬の固有特性もそうですが,今作ではとくに海外レースや海外の名馬にフィーチャーしている気がします。新要素となる「世界100傑馬」と「ザ・レジェンドマッチ」についても聞かせてください。
斎藤理史氏(以下,斎藤氏):
先ほど話にありました適応能力が追加されたことで,本作ならではの攻略が新たに生まれるようになりました。その腕試しの一環として用意したのが,世界100傑馬とザ・レジェンドマッチになります。
世界100傑馬は,初代ビッグレッドことMan o'War(マンノウォー)や,生涯無敗&凱旋門賞連覇のRibot(リボー),伝説の31馬身差圧勝劇で米国3冠を制したSecretariat(セクレタリアト)など,競馬ファンなら名前を聞いただけでワクワクするであろう往年のスターホースたちを相手に,ランキング争いをする新要素になります。
ランキング上位に入るにはただレースにたくさん勝つだけでは駄目で,世界的に知られる大レースを連覇したり,大差で勝ったりしなければなりません。今作のポイントの1つである適応能力を生かして,世界で活躍できる愛馬を育てることが攻略のカギとなっています。
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4Gamer:
ザ・レジェンドマッチでは,そんな名だたる名馬と実際に対戦できると。
斎藤氏:
はい。世界100傑馬に入る伝説級の名馬たちと時代を超えて勝負することになります。自身の馬が出走していなくても観戦はできるので,オールタイムのスターホース同士のガチンコ勝負を楽しんでほしいですね。
本作では,ザ・レジェンドマッチに勝利し,世界100傑馬委員会の評価を得て,名誉の殿堂馬として顕彰されることが,最高の栄誉となります。上級者向けのエンドコンテンツ的な立ち位置になりますが,今作から遊び始める方でも楽しめるかと思います。100傑入りするのは簡単でも,上位に入るのは本当に大変なので,ぜひ挑んでみてください。
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4Gamer:
最近競馬を知った,始めたという人からすると,世界100傑馬はなかなかインパクトがありますよね。驚くような成績の馬ばかりで,本当にこんな馬が実在したのかって。
斎藤氏:
そんなプレイヤーたちにぜひ伝説の名馬の姿を見ていただきたいと思い,名馬たちの実際の写真や絵画をゲーム内に取り入れています。白黒写真,フィルム写真,大昔の絵画など,当時の息吹が感じられるようなものばかりとなっています。
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日本馬が本当に強くなったことが大きな盛り上がりにつながっている
4Gamer:
今作からレース中の速度を現実と同じものに変更できることがXで話題になっていました。
山口氏:
この要素については面白い経緯がありまして,2024年12月にJRAのトラッキングデータを使って,ウイニングポスト上で,2023年度の有馬記念を完全再現した動画を公開させていただきました。
実際の有馬記念で各馬が走った位置を取り込むということは,実際の有馬記念と同じ速度でウイニングポスト上を走ることになります。その動画の制作過程で現実と同じ速度で走るゲーム画面を見たところ,地面を踏みしめる力強さのようなものが感じられて,「これはこれでいいのでは?」と思ったんです。
4Gamer:
実際にXで公開されている映像を見ましたが,これまでのレース映像はかなり早回しされていたんだなと感じました。
山口氏:
もともとはレース観戦時間を短くすることと,レースのスピード感を表現するために少し速い速度にしていましたが,プレイヤーの皆さんの好みで選択してもらうのが一番良いと考え,本作で切り替えられるようにしました。わたしはもっぱらリアルスピードでプレイしています。
4Gamer:
レースシーンも強化されているとのことですが,どういった部分に手を入れましたか。
中山氏:
WP10シリーズのレースシーンは,「リアルとドラマチックの融合」をテーマにしていて,今回もその観点でさまざまな変化を加えました。
リアル面では,馬ごとの筋肉量の変化を採用し,短距離馬はムキムキに,長距離馬はほっそりしたシルエットに,といった一般的な見た目の違いを取り入れています。この要素は,雄大な馬体を誇るドンフランキーだったり,逆に小柄なメロディーレーンだったりといった,特徴が一目で分かる史実馬の個性を出すことにも一役買っています。
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4Gamer:
ドンフランキーやメロディーレーンはパドックで見ると一目で分かりますもんね。競走馬ってこんなに馬格が違うんだって驚くほどです。
中山氏:
そうなんですよね。そして見た目も違えば,当然走るときのフォームも違います。今作では,大跳びやピッチ,重心の低さなど,馬ごとに特徴が出るフォームを見た目にも分かりやすく改善しています。さらにレースでは,カーブを曲がるときの自然な傾き,歩幅の狭まりなど,細かい部分にも手を入れています。
ほかに注目してほしい演出としては,有馬記念の再現動画でお披露目となった冬の西日表現です。競馬場ごとに太陽の位置もシミュレートしていて,例えば中京競馬場のチャンピオンズカップでは,最後の直線に西日が射し込む,印象的な変化を生み出せています。
4Gamer:
ドラマチック面ではどんな変化を加えましたか。
中山氏:
騎手の表情アニメーションに注目していただきたいですね。ゴール後の感情表現により,レースの感動と興奮はこれまで以上のものになっています。
ほかには新しいカメラワークとして,馬群追走,大外一気などの新しい「特殊作戦」を選んだときだけ発生する専用カメラなど,新要素がより伝わりやすくなるようなドラマチックカメラを追加しています。
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山口氏:
カメラでは,JRAとのコラボで逃げるタイトルホルダーからの後方視点映像も作成しましたが,これがなかなか面白い視点だったので,今作ではジョッキーカメラ時に振り返られるようにしています。とくにダートレースはキックバックの激しさがよく表現されていて,楽しい視点になっているかと思います。ジョッキーカメラ時には,周りの騎手がしゃべっている声も聞こえてくるので,ぜひ臨場感を体感していただきたいですね。
4Gamer:
演出面の強化ですと「対決演出」が追加されました。これはどういった要素なのでしょうか。
中山氏:
対決演出は,レースの勝負所で背景が暗くなり,プレイヤー所有馬とそのレースで上位を争うライバル馬の2頭だけにスポットが当たる演出です。これは「究極の瞬発戦」や「究極の持久戦」といったレース傾向の強度が高いほど発生しやすくなっています。
画面が暗転すると,思わず身構えてしまうようなゲームならではの演出に仕上がっていますので,ぜひ楽しみにしていてください。
4Gamer:
ここまでの話で強化された部分,変化した部分についてかなり語っていただきましたが,公式サイトを見るとほかにもいろいろな要素がピックアップされています。注目してほしいポイントがあれば聞かせてください。
斎藤氏:
今作では海外競馬にフォーカスを当てていることもあり,従来あった日本競馬を取り巻く環境を綴った読み物の「競馬史」から派生して,海外版となる「海外競馬史」を用意しました。
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4Gamer:
日本競馬を知る機会は多いですが,海外競馬となるとなかなか資料もなく,こういった要素は競馬ファンとしてはうれしい限りだと思います。
斎藤氏:
世界100傑馬もそうですが,血統表の中でしか知らない海外の伝説の名馬たちのことをより深く知ることができるかと思います。かなりのボリュームなので,ぜひ楽しんでいただきたいですね。
ほかに海外競馬の要素ですと,米国の「ラスムッセン・ファクター」や欧州の「ドサージュ理論」といった,新しい配合理論を追加しています。それぞれの地域で重要な適応能力が上がるので,ぜひ攻略に役立ててください。あとは世界で活躍が目立つ牝系も10以上追加しています。
中山氏:
「世界100傑馬ランキング」「ザ・レジェンドマッチ」には,新規でBGMを用意しています。世界競馬史の頂点を巡る戦いにふさわしい,壮大でかっこいいものになっているので,ぜひじっくり聞いてみてください。
そのほかでは,新秘書としてこれまでウイニングポストにいなかったタイプのキャラクターとなるリオン・ローザを追加しました。衣装にもこだわっているので,四季の衣装はもちろん,特別な機会にしか登場しない衣装もぜひ見つけてみてください。
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4Gamer:
ウイニングポストはゲームの域を超えて,すでに競馬の資料的な価値すらあるように思えるのですが,そういった側面や狙いもあったりするのでしょうか。
山口氏:
「本作を遊べば競馬のことで分からないことはない」となるようなゲームにしたいという思いはあります。スタッフの熱量もすごくて,海外競馬史は初めて見たときに物量の多さに,ここまでやれるのかと驚いたほどです。その熱や思いを忘れずにこれからも開発を続けていきます。
4Gamer:
現実の競馬の話になりますが,ここ数年ドウデュースやイクイノックス,フォーエバーヤングなどの登場もあって,競馬ブームが再燃している印象があります。長年ウイニングポストを制作している現場の立ち位置から見て,どのように感じていますか。
斎藤氏:
実際に盛り上がりを強く感じています。Cygamesさんの「ウマ娘」から若い層が参入していることもありますが,「日本馬が本当に強くなったこと」も大きな要因だと感じています。
イクイノックスの世界ランキング1位のレーティング獲得,そして難攻不落と言われる米国ダート界におけるフォーエバーヤングの活躍。かつてタイキブリザードやアグネスワールド,スキーキャプテンなどの強豪が大敗したシーンを見ていますので,本当に信じられない思いです。やはりスポーツにおいて,海外での活躍は,とてつもなく大きな盛り上がりにつながりますよね。
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4Gamer:
日本の競馬史を語るうえで,凱旋門賞やブリーダーズカップなど世界最上位の海外レースへの憧れは外せない話題だと思います。
斎藤氏:
ウイニングポストではずっと,海外への夢,憧れを描いてきましたが,ついにそれが実現するのではないかとワクワクしています。その瞬間を細部までしっかりと記録していき,ゲームに落とし込むことで,よりリアルに,よりロマンあふれるゲームにこれからも進化させていきます。
4Gamer:
少し余談になるのですが,先日Xで公開されたロマンチックウォリアーのゲーム画像で,ダートが×※で話題になっていました。能力は2024年までのものが反映されているのでしょうか。
※ロマンチックウォリアーは2025年のサウジカップ(ダート1800m)に出走し,フォーエバーヤングと激戦を繰り広げた
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斎藤氏:
そうなります。我々のデータ班に見通す力があれば……。
一同:
(笑)。
山口氏:
まさかあそこまで好勝負するとは!? と思ってしまいましたよね。次回作では間違いなくダート適性は高いものになっています。
4Gamer:
すべての馬に言えることですが,能力を決めるのは難しそうですね。とくに出走していないレースやコンディションまで想定するのは不可能に近いのではないでしょうか。
山口氏:
能力という話になると,例えば我々開発3人が1頭の馬を評価するとして,間違いなく全員違う評価をすると思うんですよ。どうしても主観が入ってしまうので。
そうなってしまうと収拾がつかなくなるので,実際の成績をベースにしつつ,ある程度割り切って決めていくようにしています。おそらくダートもいけるだろうという考えも分かるんですが,それでもダートを1回も走っていないと×にせざるを得ないという話ですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。最後に発売を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
山口氏:
新しくさまざまな要素を盛り込むことで,前作からプレイ感にかなり変化を感じられるものになっています。新パラメータの追加で,育成の幅が生まれ,これまでとはまた一味違った育成を楽しんでいただけます。
時代を超えた伝説級の名馬に挑む,世界100傑馬やザ・レジェンドマッチなどボリュームも過去最高のものに仕上がっています。ぜひ本作をとおして,競馬の楽しさ,サラブレッドのかっこよさ,美しさを存分に味わっていただきたいと思っています。
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―――2025年3月12日収録
「Winning Post 10 2025」公式サイト
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- 編集部:T田

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