
インタビュー
[インタビュー]「シルバー・アンド・ブラッド」の音楽は吸血鬼モノの系譜を踏襲。作曲家・西木康智氏が語る,新境地へのチャレンジとは?
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そんな本作の音楽を手がけているのは,「OCTOPATH TRAVELER」「遊戯王マスターデュエル」「モンスター烈伝オレカバトル」などの楽曲を手がけてきた,作曲家の西木康智氏だ。今回,西木氏に本作に携わることになった経緯や,どのようなアプローチで音楽制作に臨んだのかを聞いた。
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「シルバー・アンド・ブラッド」公式サイト
「シルバー・アンド・ブラッド」ダウンロードページ
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吸血鬼モノらしいサウンドを意識しつつ
幅を持たせたラインナップで約70曲を制作
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,「シルバー・アンド・ブラッド」の音楽制作に携わることとなったきっかけを教えてください。
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知人であるYostarのプロデューサーさんに,「こんな企画があるんだけど,もし良かったら」と紹介されたんです。送ってもらった資料を見たら,すごくアートが美麗で目を引いたんですね。世界観もしっかりしていて,中世ヨーロッパのちょっと暗めのゴシックホラー調,名前を挙げると「Bloodborne」みたいな雰囲気があって,今まで僕がやったことのないジャンルだったこともあり,「ぜひチャレンジさせてください」と答えました。すると開発チームも「ぜひ」ということで,トントン拍子に話が決まりました。
4Gamer:
音楽制作には,どのくらい関わっているのでしょうか。
西木氏:
作曲を含め,音楽に関わること全部です。もちろん打ち合わせにも出ますし,フリーランスなので,条件や著作権の扱い,ギャラの交渉といった契約面についてもすべて自分自身でやっています(笑)。
4Gamer:
そういったこともやりつつ作曲もとなると,使う脳の部位が違いすぎて大変そうです。
西木氏:
でも,「これだけ曲を作れば,これだけのお金になる」ということがハッキリ分かったり,権利を残してもらうことで「責任を持って自分の名に恥じないものを作ろう」と思えたりするほうが,モチベーションにつながるんですよね。事務所に所属していると,そういった部分があいまいになってしまうケースもありますから。
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4Gamer:
「シルバー・アンド・ブラッド」は吸血鬼モノのゲームですよね。西木さんがかつて在籍していたKONAMIにも,吸血鬼モノの名作IP「悪魔城ドラキュラ」があります。やはりそういった作品からインスピレーションを受けたりしたのでしょうか。
西木氏:
もちろん影響は受けていますね。僕自身,KONAMIのゲーム音楽の黄金期は矩形波サウンドの時代だと思っていますし,あの時代に作られた「悪魔城ドラキュラ」の音楽は,吸血鬼モノというゲームジャンルにとって外せない大きな柱を築いたようなところがありますから。たとえば近年でも,「Vampire Survivors」が矩形波を意識したようなサウンド作りをしていますよね。
4Gamer:
曲調は,全体的にどのような感じになるのでしょうか。
西木氏:
世界観や見下ろし型のバトルシステムに,いわゆる洋ゲーっぽさを感じたので,あまりロックすぎるのは違うなと。また,開発チームからも,音楽はアンビエントな方向で考えていると言われていたので,そこに日本の吸血鬼モノが持っているロックやフュージョンなどの要素をどこまで混ぜるかがポイントになると考えました。
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4Gamer:
楽器の編成はどうでしょう。バンドとか,オーケストラとか。
西木氏:
オーケストラを主体にして,あとは洋ゲー感と言いますか,ハリウッド調のエピックなパーカッションをドーン! みたいなことをやったり,少しシンセでフワフワした音を加えたりしています。
それを主軸としてエレキギターを入れたり,メロディーラインが分かりやすくなるようにヴァイオリンソロを入れたりしています。
今回は歌モノも多くて,例えばテーマ曲はソプラノ歌手の田中彩子さんに歌っていただいたり,ブルガリアでコーラスのリモートレコーディングをしたりもしています。
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4Gamer:
わざわざブルガリアでレコーディングをするのには,何か理由があるのでしょうか。
西木氏:
普段は日本のミュージシャンに依頼することも多いんですが,ゲームの世界観に合う音楽に仕上げるためには,やはり発音や,そもそもの骨格の違いから出てくる本格感を重視したかったんです。今回,コーラスに関しては本格的なところにこだわろうと,海外でのレコーディングを行いました。
4Gamer:
リモートレコーディングは,これまでにも経験されたことはありましたか?
西木氏:
コロナ禍で海外に行けないときにやっていましたね。また,僕自身が一部だけ関わっているようなプロジェクトで,中心人物だけ現地に行って,サブの僕らは日本からリモートで参加するという経験もしました。円高だった時期は,日本でレコーディングするよりも海外のほうがコストがかからなかったという事情もあります。とくにブルガリアやハンガリー,チェコなど東欧はお手頃価格でした。
今は円安だから,東欧でも日本より少し高いかなという感じになりつつあると聞いています。
4Gamer:
そんなところにも円安の影響があるとは。
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そうなんです。逆に今,日本のミュージシャンを使うとコストを抑えられるでしょうから,海外の作曲家にはオススメかもしれません。
4Gamer:
西木さんご自身は,「シルバー・アンド・ブラッド」にどのような期待を抱いていますか。
西木氏:
世界観の作り込みから,真剣に吸血鬼モノに取り組んでいる感じを受けるんですよね。ゲームの部分も,ストラテジーの要素が強くて純粋に面白そうだと思います。
4Gamer:
「シルバー・アンド・ブラッド」でご自身の手がけた音楽に関して,どんなところを聴いてほしいですか。
西木氏:
たとえば「OCTOPATH TRAVELER」シリーズでは,いわゆる中世冒険ファンタジーといった感じの明るめな曲が多かったので,僕の音楽のそういった面はけっこう知っていただけていると思います。
でも僕自身は暗い曲も好きだし,「シルバー・アンド・ブラッド」は全編とおして暗い曲が多いので,「僕が書いたらこんな感じになります」というものに仕上がりました。暗い曲ばかりの中でも,幅を持たせたラインナップになっているので,そこは楽しみにしていただきたいですね。
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4Gamer:
先ほど,開発チームからはアンビエントな曲調を求められたというお話でしたが,そこと西木さんの個性をどのように調和させていったのでしょう。
西木氏:
今回はとくに,開発チームの皆さんがすごく僕の音楽全般に対してリスペクトしてくださっているのが伝わってきました。最初こそ「アンビエントの方向で」という話でしたが,僕がやるからにはメロディの要素など,いわゆるJRPG的な分かりやすいところをどこまで組み込めるかを考えたんです。
そして,「こういう方向はどうでしょう」という提案をしたところ,「とてもいいですね」と受け入れてくださいました。リテイクらしいリテイクは,テーマ曲で何回かあったくらいでしたね。
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4Gamer:
ちなみに今回は何曲作ったのでしょうか。
西木氏:
70曲くらいですね。アップデートに向けた追加発注も,すでに50曲分くらいいただいています。ただ,スケジュールの兼ね合いもあるので,追加楽曲に関しては全部僕1人でやるかどうか検討中です。最初のある程度までは僕が責任を持って全部やるという話はしていて,そのあとの追加曲に関しては,たとえば別のコンポーザーを僕のほうで用意するといった可能性もあります。
4Gamer:
気の早い話ですが,サウンドトラックのリリースやコンサート開催などの予定はありますか。
西木氏:
コンサートはやりたいですね。僕自身もそういった展開を見据えて,コンサートのセットリストに入れても楽しめる曲と,映画的なアンビエントの曲をいい案配で作ったつもりです。
4Gamer:
続報に期待しています。ありがとうございました。
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