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生高橋氏が語る「Öoo」の開発哲学とは? 欲求・問題・偶然を生かし,そして入念にテストプレイする[IDC2025]
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印刷2025/11/20 11:59

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生高橋氏が語る「Öoo」の開発哲学とは? 欲求・問題・偶然を生かし,そして入念にテストプレイする[IDC2025]

 2025年11月15日,インディーゲーム開発者向けカンファレンス「Indie Developers Conference 2025」(IDC2025)が開催された。本稿ではそのセッションのひとつ,「ElecHead」「Öoo」などを手がけたインディーゲーム開発者・生高橋氏の「『Öoo』のつくりかた」のレポートをお届けしよう。

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 氏は同作の開発プロセスをベースに,パズルアクションゲームにおけるコンセプトワーク,レベルデザイン,テストプレイの考え方などを語った。

生高橋氏
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コンセプトは「知識で道を切り開く」


 「Öoo」は開発期間2年,チームメンバー3人による小規模プロジェクトである。生高橋氏が企画,プログラム,レベルデザインを担当。はちのす氏がグラフィックス,つよみー氏がサウンドを手がけた。プレイヤーは体が爆弾のイモムシを操作し,爆風を使ったジャンプやダッシュでステージを進む。爆弾の使い方を発見し,それを生かして先に進む楽しさを感じてもらうこと,つまり「知識で道を切り開く」ことが本作のコンセプトだ。

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 これには前作「ElecHead」制作時の反省も生かされている。前作は「パズル×メトロイドヴァニア」を目指したものの,バックトラッキング(ステージを行きつ戻りつする探索)とパズルの相性が悪かったほか,自身のレベルデザインの力不足もあって断念。そこに「Öoo」で再挑戦した形だ。
 氏はメトロイドヴァニアの理解を深めるため,厳密にはメトロイドヴァニアではないが,ベースのひとつである「メトロイド」シリーズを実際にプレイした。そこにはさまざまな発見があったという。

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 例えば「スーパーメトロイド」では,最初,アイスビームの価値に気づかず,単に素早い敵を倒すための手段程度に考えていた。しかし,凍らせた敵を足場にできると気づいた瞬間,探索の幅が大きく広がった。現代のメトロイドヴァニアでは,パワーアップによって進行範囲が広がったことをプレイヤーに明示するのが一般的だが,氏はこの体験の違いに着目した。「知識で道を切り開く」という発想はここから生まれた。

 このように本作のコンセプトは,ゲームの面白かった体験の一部を抜き出し,生高橋氏なりに解釈,抽象化したものだった。

 また「Öoo」の制作においては,以下のような動かせないファクターもあった。
 まず前作「ElecHead」で評価された,短編でありながら広がりがあるデザイン,言語に依存しないUI,アクションを難しくしすぎないことなどである。できれば前作のファンには今回も楽しんでほしいためだ。さらにグラフィック担当・はちのす氏の描くキャラクターのかわいさも生かしたかったという。
 これらもまた本作のコンセプトに組み込まれている。

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爆弾から生まれたアクションの幅


 ゲームのメインアクションを決める際,氏はノートに図を描きながらアイデアを出すという。ステージとアクションをセットで考え,ステージが思いつかない場合はそのアクションに十分な広がりがないと判断する。ちなみにノートは自分の思考を動かすためのもので,後で見返しても意味がわからないことが多いという。

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 その過程で,爆弾というアイデアにたどりついた。隠された壁を発見する遊びの法則を理解して進むというシンプルな構造だ。
 だが,これだけではステージの幅が限られたという。そこで,爆風を使ったジャンプやダッシュといったアクションを組み合わせることで,ステージ案は大きく広がっていく。さらに,爆弾を飛ばせるギミックを導入することで,爆弾の個数が増えるだけでも遊びの幅が生まれることに気づいた。

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 このあたりから実際にプロトタイプを作り,アクションをさらに広げていく。この段階では,ノートに描いたアイデアを最低限の要素で試作してみる。作ってみて「シンプルなのに広がりがある」という条件に沿わない場合は企画を没にする。
 試作の過程で「アクション性が高くなりそう」「キャラの位置のズレで挙動が変わりそう」と気がついたが,コンセプトに合わないので仕様のほうを調整している。また,最初は爆弾も時限式にしていたが,難度を上げるだけと判断して変更した。通常ジャンプと爆風ジャンプの必要性も再検討するなど,コンセプトによる「制限」が数多くの気づきを生んだ。
 結果,プレイに使うボタンを少なくしつつ,アクションの幅を広げることができたわけである。

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欲求・問題・偶然が遊びを広げる


 生高橋氏はゲームの「遊び」を広げる際,ギミックからは考えず,「欲求」「問題」「偶然」をキーワードに考えている。
 
 「欲求」とは氏の「ああしたい,こうしたい」という感情。例えば「反転ダッシュ」は必ず実現したいアクションであり,最低限の条件(触れると死ぬトゲ,爆風で押されても高さがズレないなど)を仕様で決めることで実現した。
 また試作品を遊んでいるうちに,新たな欲求が生まれることもある。そうして生まれたのが「高速反転ダッシュ」だ。このような試作とテストプレイによる「欲求のループ」から,本作の仕様やギミックは生まれていったのである。

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 また作っていくうちに何かしら「問題」は出てくるもの。今回氏を悩ませた問題のひとつは,使える爆弾の個数をどう表示するかだった。数字で表示することには抵抗があったので,連結してついてくるようにしたところ「いもむし」のようで可愛いと感じたという。こうして主人公がいもむしに決まり,それが世界設定やストーリーの基盤にもなった。「Öoo」というタイトルも,いもむしの形を模している。

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 また「バックトラッキングが面白くない」という問題からワープギミックやマップ機能が追加されている。ここでも欲求のループは働いている。

 最後の「偶然」は意図しない挙動やバグなど,面白かったものを仕様に取り入れたものだ。例えば爆弾を上に飛ばすステージを作っていたとき,たまたま爆弾が主人公の頭の上に乗ってしまった。考えてもみなかった挙動だが,それを面白いと感じ,仕様として取り入れたという。

 これをきっかけに「乗せたまま移動させたい」「縦に2個乗せたい」など新たな欲求も発生した。この他「ワープ後も動きに慣性が残る」「空中ダッシュ」なども意図しない挙動から生まれたという。

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 レビューなどで,思いもつかないアイデアを褒められることが多いそうだが,それらについて生高橋氏は「偶然見つけた」だけと語る。
 ただ,その偶然の発生率は上げられると考えているそうだ。最初に「シンプルなのに広がりがある」という方針を決めることで,それが欲求や偶然を生む母体となっている。

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 また観察力や残し方も重要なポイントだ。意図しない挙動を粛々と直してしまうと,こういった仕上がりにはならない。
 生高橋氏は企画とプログラムとレベルデザインを兼任しているので,気づきや偶然をすぐ仕様として取り入れられたという。分業体制では,この独特の作り方は難しいのではないか,と分析していた。


関門とその鍵を配置するレベルデザイン


 続いてはレベル(ステージ)デザインの話題だ。生高橋氏は今回のセッションでの用語について「ステージ」は1〜2画面単位の塊,「エリア」とは複数のステージで構成されるものと定義した。

 本作は全8エリアで構成されている。レベルデザインにおいてもコンセプトに立ち返り,「知識で道を切り開く」ことは,「進めなくなった場所を,別のステージで得た知識を生かして突破する体験」であると言語化する。

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 そして進めなくなるステージを「ロックステージ」,知識を得るステージを「キーステージ」と名づけてエリアに配置。まずロックステージを設計し,「隠し壁」「画面外への爆弾設置」「ブロック復活を見越した爆弾設置」などを組み合わせ,突破方法を考える。
 
 次に必要な知識をキーステージとしてエリアに配置する。
 パターン1では,まず爆弾でブロックが復活することを教えている。パターン2は一気に進むのではなく,一度上に登るというパターンの変化だ。こうしてパターン4のロックステージに近い構造まで,段階的に誘導していく。

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 この手順で他のエリアも構築していった。ステージの配置に関しては深く考えていないそうだが,同じ種類のキーステージが連続しないよう,うまく順番を変えることを意識したという。

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パズルのつくり方,解法の気づかせ方


 パズル設計のキーワードは「予想」「裏切り」「ひらめき」の3つだ。プレイヤーは解法をある程度予想できれば挑戦意欲が湧くが,予想が当たり続けると「やらされ感」が生じる。そのため時折裏切りを入れ,驚きと納得のバランスを取ることで,モチベーションをコントロールする。
 このあたりは生高橋氏が実際にパズルゲームを遊んでいて,気がついた感覚なのだという。

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 また氏は,難しいパズルとは「選択肢が膨大にある状態だから難しい」と捉えている。逆に選択肢を絞ってしまえば「こんなこと思いつく?」と感じるような,突飛な発想にたどり着かせることも可能だとか。

 その手法のひとつが「閉じ込める」こと。移動を制限して強制的にフォーカスさせるわけだ。また「こうかもしれない」と感じるミスリードを減らすのも大事だという。怪しく思える場所を普通にしたり,アクションでゴリ押しできる構造に見せないよう気をつけるという。

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 例えば上の写真では,一度チェックポイントに触れてしまうとわずかな範囲しか動けなくなる。このように「閉じ込める」ことで,この場でなにか工夫をするよう誘導している。ちなみにここでは,爆弾を半分ずらして置くテクニックを学んでもらう意図がこめられている。
 
 また「気づかせる工夫」でかなり効果的なのは,似た地形を使うことだ。プレイヤーはテクニックを地形とセットで覚えている事が多い。そのため地形が同じであれば,使うテクニックも同じだと直感的に理解してもらえる。例として挙げていた地形では,「実際にはトゲも必要ないが,覚えてもらうために共通で入れている」そうだ。

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ゲームはテストプレイで面白くなる


 生高橋氏は「このゲームはテストプレイによって圧倒的に面白くなった」と語る。また制作者は「初見のプレイヤーの気持ちはまったく理解できないもの」だと考えるそうだ。
 氏がほかのゲームのレビューを読んでいると,テストプレイで避けられた問題が残っていると感じることが多いらしい。
 
 本作の場合,最初のテストプレイの時点では誰ひとりクリアできなかったらしい。またプレイヤーの表情も「しんどそうだった」。リリース時には隠しステージにした高難度ステージも,メインルートに組み込まれていたためだ。
 さらにラストステージは,新規の地形だけで構成していた。今振り返って見れば「かなりいじわるな作り」だったという。

 そんな経緯から「気づかせる工夫」が生まれ,ゲームはどんどん改良されていった。「もしテストプレイを軽視していたら,今僕は壇上に立っていなかったかもしれない」と氏は振り返る。

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 なおテストプレイはターゲット層に近い人に依頼することが重要で,知人や関係者だけでなく,前作を気に入ってくれたユーザーにも依頼しているという。その逆に,ターゲット以外の意見を入れてしまうと,本当に楽しませたい人たちにとって良くない可能性が高い。

 テストプレイのチェック方法としては,ゲームプレイの録画,リアルでの観察,Discordを使って観察の3つの方法を活用した。

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 誤算だったのは,普通の人はプレイを観察されていると緊張するということだったそう。本当の意味での「素の反応」が少なかったため,氏は「ゲームが面白くないのか?」と受け取ってしまったらしい。そこで焦った氏はリリース時に,攻略動画を作ってアップするという謎の行動をとってしまった。

 結局おすすめなのは録画を見ることだそうで,お互いに時間を拘束されないし,録画ならいつでも見返すこともできるためだ。
 セッションの最後,氏は「ゲームは遊ばれて初めて完成する」こと強調していた。

 その後の質疑応答で,参考にする作品について問われた氏は「古いゲームやインディーゲームを参考することが多い」と回答。それらは小規模開発者にとって役立つ知見が,わかりやすい形で含まれていることが多いという。
 ただ最近は,映画などゲーム以外のコンテンツも参考にするようになったらしい。「別のゲームを参考にして作ると,それは似たゲームになってしまう」からだ。
 海外でもヒットする「Öoo」の貴重な知見が語られたセッションだったが,氏の次回作がどんな独創性を放つのか,今から楽しみだ。

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