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[プレイレポ]伊達,再び主人公に。「伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル」はシリーズファンへのご褒美のような作品だ
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印刷2025/07/18 08:00

プレイレポート

[プレイレポ]伊達,再び主人公に。「伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル」はシリーズファンへのご褒美のような作品だ

 スパイク・チュンソフトが2025年7月25日の発売を予定している「伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル」PC / Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch)は,「AI:ソムニウムファイル」シリーズの最新作だ。

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 「AI:ソムニウムファイル」シリーズは,技術が発達した“現実より少しだけ未来の世界”を舞台にしたSF推理アドベンチャーゲーム。「伊達鍵は眠らない」は3作目にあたり,1作目と2作目のあいだに巻き起こった事件が描かれる。

 本作をひと足早くプレイする機会を得たのでレポートをお届けする。なお,記事の前半はプレイフィールを中心に,後半では具体的なシステムに触れている。

「伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル」公式サイト



最初から最後まで伊達たっぷり

見たいものが詰まった外伝的作品


 まずは,シリーズに共通する要素を確認しておこう。物語の中核を担うのは,“先進式人脳捜査部隊”とも呼ばれる警察の秘密組織「ABIS」(アビス)だ。なんだか難しそうな言葉を使っているが,要するに先進技術を活用した警察の特殊部隊である。

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 ABISには先進的な技術が集まっているが,その中でも特筆すべきは「PSYNC」と呼ばれるものだ。PSYNCは他者の脳内世界に侵入する技術で,これを使えば被害者や被疑者のソムニウム世界(夢の世界)を,現実に近い形で探索できる。

 非常に便利な技術だが,警察としては表立ってPSYNCを活用することはできない。人間の脳には未解明な部分も多く,運用を誤れば被験者が廃人になる危険すらはらんでいるからだ。そのため,ABISの存在は警察内でも限られた者にしか知られていない。

 主人公「伊達 鍵」(だて かなめ)は,そんなABISの捜査官である。シリーズ作品では,夢の探索を行う「Psync装置」,人工知能搭載の義眼「AI-Ball」,多機能拳銃「Evolver(エヴォルバー)」といった多彩な先進技術を使いこなして難事件に挑む姿が描かれた。

AI-Ballに搭載された人工知能の名は「アイボゥ」。搭載されたネットワーク機能や通信装置を駆使し,伊達の“相棒”として活躍してくれる
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サーモカメラで対象の興奮状態を検知したり,X線で隠れているものを探し出したりと,AI-Ballのおかげでハイテクな捜査も手軽に行える
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 ここまでの解説ではおカタい印象を受けるかもしれないが,むしろ本シリーズのノリはギャグ寄りだ。もちろんストーリーの内容はシリアスで,謎解きもガッチリと作り込まれているが,スキがあればジョークがねじ込まれている。

 コザキユースケ氏が手掛けるクールなキャラデザインと,それを見事に再現したグラフィックスから繰り出される,ちょっと懐かしい香りがするギャグの数々。そしてシナリオや設定面のハードコアっぷり。この“三重ギャップ”こそ,シリーズ最大の魅力といえる。

伊達はエロ本収集家であり,エロ本を読むと反応速度が3.6倍になる特殊能力を持っている。これはABISの技術とはまったく関係がなく,単に伊達がエロいだけである
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どんなにヤバい状況でもジョークは欠かさない。基本的にはツッコミ役のアイボゥも,ちょくちょくボケ側のノリに巻き込まれてくれる
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 本作のシナリオは1作目と2作目のスキマを埋める外伝的な位置付けであるためか,ギャグ路線の色合いが少し強まっている印象を受けた。物語のスタート地点からして「UFOにさらわれたネットアイドルを助ける」という内容で,重大な殺人事件が発端だったシリーズ作品より多少は雰囲気が落ち着いている。

 キャラクター同士の関係性についても,ある程度は同じことがいえる。大きな事件が落着した1作目のラストから大きく状況が変化しておらず,関係性は以前よりも深まっているので,安心した空気感の中で物語が進んでいく。

 なにより,2作目ではなかなか姿を見せなかった伊達が,もう一度主役として事件に挑む姿を見られるのは,ファンとして非常にうれしい。“6年後の伊達”ではなく,アイボゥと言い合う“1作目の伊達”の姿を楽しみたい人にとって,まさに本作は求めていた作品だろう。

ストーリーを理解するにあたってシリーズ作品の情報が必要になる場面では,アイボゥが画面上部に補助テキストを流してくれる。アイボゥの解釈や意見も含まれているので,プレイ済みの人も楽しく読める
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 もちろん,新キャラクターである「月夜野 日菜」も物語に馴染み,作品全体に新しい風を吹かせている。こうした外伝でありがちな「その後の時系列では,なぜ新キャラが登場しなかったのか」という疑問にも回答が用意されているので,シリーズファンはその部分にも注目してほしい。

 また,2作目における主人公の1人「龍木」が伊達の後輩として活躍する姿が見られるなど,その後の展開につながる要素がキッチリと描写されるのもうれしいところだ。
 多くのファンが「1作目と2作目のあいだに何があったのか?」と感じていただろうが,その答えは期待どおりに描かれる。なかなか情報量の多い作品なので,事前にシリーズ作品の内容を思い出しておくとより深く楽しめるだろう。

月夜野 日菜はABISの新たなエンジニアだ。これまでは裏方として活動していたが,ある理由から本作ではPsync装置のオペレーターになっている
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 なお,ストーリーの分岐要素はスッキリと整理されており,ほぼリニア(一本道)の形式だ。2作目に続くストーリーである以上,仕方がないところであるが,シリーズ作品では分岐要素をうまく使っていただけに少々寂しさを覚える。

 その代わり,本作には特定の条件で突入できる「アナザーエンド」が複数用意されている。相変わらずキャラクターごとの会話パターンが非常に多いので,最初からすべてのエンディングを見るのは容易ではない。じっくりと本作の世界を味わいたければ,エンディングを探しながらゲームを進めてみよう。

伊達は何かと熱海に行きたがる。本筋とは関係ない脱線話や,しつこく何度も無意味な情報を追いかけられる状態になったら,アナザーエンドに突入する合図だ
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“脱出”要素は現実世界に任せて

ソムニウム世界は物語の表現に特化


 本作では基本システムをシリーズ作品から引き継いでいるが,新たな要素も用意されている。気になるポイントを調べるポイント&クリック型ADV,ソムニウム世界における探索パートに,拉致されたネットアイドル「イリス」による“脱出ゲーム”が加わるのだ。

イリスは重度のオカルトマニア。演出も相まって「宇宙人のUFOに捕まってしまった」と信じ込んでいる。なぜバニー姿なのかは謎
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イリスを拉致した脱出ゲームの主催者「明美」。レプティリアンを名乗り,世界滅亡系の都市伝説をゲームのテーマにしているようだ
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 脱出ゲームの内容は,実際に多くの人が楽しんでいるものを極限まで豪華にしたようなかんじだ。閉鎖空間にパズルとヒントが詰め込まれており,それらを調査し,読み解くことで先に進める。特定の状況を除けば,時間制限はなく探索できるので,じっくりと謎解きを楽しもう。

 インタラクトできる要素はハッキリと示されていて,マップを開けば位置が明示される。さらにお助け機能「サーチ」を使えば,次に触れるべき要素が黄色く表示されるので,どこに触れるべきか分からないままヤキモキさせられる状況には陥りづらい。

サーチ機能の使用回数は制限があり,設定した難度によって増減する。無制限に使えると攻略が非常に容易になるので,行き詰まってしまったら難度を変更するのがオススメだ
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 サーチだけでなく,キャラクターが提示してくれるヒントもある。これは「誤った選択をした際,脱出ゲームの様子を通信によって把握している伊達と日菜がアドバイスを送る」という形で提供されるため,サーチよりも“ヒントに頼った感”は薄い。

 なお,ヒントの内容は難度設定によって変化し,最低難度の状態で一定回数の失敗をすると,伊達や日菜が正解を言い当ててしまう。自力で解きたい場合は難度を高めに設定しておこう。

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 脱出ゲームで展開される謎解き要素の特徴は,なによりも論理的に物事が進むということ。超常的な力で物体が変化したり,提示されたルールが理由なしに無視されたりはしない。基本的には現実の世界と同じ感覚を適用できる。

 難しさもちょうどよく,最後まで遊んだ感想としては「メモが必要になる場面が少しだけある」といったところ。必要な場面では情報をしっかり参照できるように作られており,そのあたりでストレスを感じることはない。

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 脱出ゲームだけでなく,ソムニウム世界における探索パートも相変わらず存在するが,従来とは少々雰囲気が異なっている。

 6分間以内にクリアしなければいけないこと,被験者の世界におけるルール「鍵則」(きそく)を探し出すことなど,システム面は従来とまったく同じなのだが,脱出ゲーム的な側面はかなり抑えられているようだ。

 どちらかといえば,選択肢から得られる時間操作アイテム「Timie(タイミー)」を使ったリソース管理の要素が強く押し出されており,試行錯誤の方向性が数学パズル寄りになった印象がある。

時間制限はあるものの,ソムニウム世界ではアクションを起こさなければ時間が経過しない。何らかのオブジェクトに干渉し,選択を行った際も時間が大きく削られるので,どこに,どの順番で触れるかを考えることが重要になる
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Timieはオブジェクトに干渉した結果として獲得できるアイテム。選択時の経過時間を減らしたり,固定したりできるが,最大3個までしか所持できない
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 個人的には,これはなかなか良い変化だったと思う。ソムニウム世界の謎解きは“脱出ゲーム的”ではあったが,あくまで夢の中ということで,飛躍した解釈が求められる部分が多かった。それ自体が面白みではあるが,いわゆる脱出ゲームとしては評価の分かれる体験だったことは間違いない。

 そのあたりの体験は前述の脱出ゲームに任せて,ソムニウム世界は被験者の心中を探る要素に特化したというわけだ。もちろんソムニウム世界ならではのトンチキな展開は本作でも健在なので,それらを探るのが好きだった人はいろいろな選択をして反応を楽しめる。

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 システム面ではシリーズのお約束から外れた部分もあるが,登場キャラクターの独特すぎるノリ,超展開が次々にやってくるストーリーなどは1作目からの路線をしっかりと引き継いでいる。むしろ物語が進むと顔を出しにくくなるギャグ要素が常時全開なので,シリーズファンにとってはこれ以上なく嬉しい作品かもしれない。

お馴染みの「ファイル」も充実している。“補記”には相変わらず,大量のネタが仕込まれているので要チェックだ
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 一方,こうした楽しみはシリーズの流れを把握しているからこそ,味わえる感覚ともいえる。最新作から遊ぶ人に向けて情報の提示は丁寧に行われており,基本的には問題なく理解できるようになっているが,まったく同じ喜びになるかと聞かれたら断言できない。

 ただ,1作目と2作目を両方遊んでいる必要があるかというとそうでもない。両作品のあいだに起きた出来事を描く本作を遊べば,2作目への導入はスムーズになるはずだ。

 1作目は価格改定が行われたばかりで,かなりの頻度でセールも行われている(Steamの最低価格は440円!)。まずはシリーズの起点をプレイして,伊達の物語をもっと深く知りたくなった人は続編も遊んでみてほしい。

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