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AIカネコがスタッフの1人のように感じられる――。金子一馬氏が制作秘話を語った「神魔狩りのツクヨミ」プレスイベントレポート
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「神魔狩りのツクヨミ(じんまがりのつくよみ)」は金子氏がコロプラ移籍後に手掛ける初めての作品だ。
近未来の世界にそびえるタワーマンション「THE HASHIRA」に現れた「神魔」と呼ばれる怪物を倒すため,国を守る秘密組織に所属する主人公は神魔を使役する「神魔札」を携えて戦いに挑む。
AIカネコはゲームにおける神・オオカミ(天地身一大神)としてプレイヤーの行動を分析し,これに応じた神魔札を「創成機能」で新たに作り出す。金子氏の画風を学習したAIがイラストを描き,能力も決めた「創成神魔札」がリアルタイムで作られていくのだ。
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このように遊びのためにAIを積極導入した本作は,2025年4月14日〜4月28日に「限定先行体験版」によるテストが実施されていた。今回のプレスイベントでは,このテストについての所感や制作秘話をコンセプトプランナーの金子一馬氏と,開発プロデューサーである齋藤ケビン雄輔氏が語っている。
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まずはテスト一週間目に集計したプレイヤーデータを用いた振り返りが行われた。印象に残ったフィーチャーとして,「キャラクター・敵神魔のデザイン」「創成機能」「世界観・ストーリー」が挙げられ,難度は「やや難しい」がアンケート上位になったという。
ほかにも「金子氏がデザインしたゲームをプレイできて嬉しい」「倍速機能がほしい」といった声が寄せられている。難度については「難しいけれどプレイしてしまう」というリプレイ性の高さを示す声もあり,引き続きバランス調整を行っていくとのことだ。
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イベントでは,金子氏によるキャラクターや神魔の制作秘話も明かされた。興味深い話題なので,少し紙幅を取ってお伝えしたい。
本作では金子氏がデザインした神魔と,AIカネコがデザインした神魔が入り乱れることになる。AIカネコが創成する神魔は奇抜なものになるだろうという想定から,金子氏自身は「史実に忠実なデザインを心掛けていく」方向性が決まったという。
例えばテストでも使えた主人公の一人「十六夜月のツクヨミ」は,ケルト神話をベースとした「フィン・マックール」という神魔札を持つ。金髪で色白の美青年が口元に指を持っていくというデザインだが,これはケルト神話におけるフィン・マックールの「色白なので,フィン(色白)と呼ばれた」「食べた者に知恵を与える鮭を焼いた際,親指に飛んだ油をなめたことから,親指をなめると知恵を得られるようになった」というエピソードを再現しているとのこと。
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正式サービスで実装される「新月のツクヨミ」の神魔札「加藤段蔵」は,「尺八を使い,どんなに高い塀も飛び越えた忍者である」という伝承から背中に尺八をアレンジした形のロケットパックを背負わせたところ,「スター・ウォーズ」の「マンダロリアン」的な雰囲気も出てきたので,カラーリングは「ボバ・フェット」オマージュのものとしたという。
「史実に忠実と言いつつも金子流の独自アレンジになり,オリジナリティが出てしまう」と金子氏は語る。前述のとおり,テストでは金子氏のイラストや世界観を喜ぶ声が多かったが,長年ファンを魅了し続けてきた秘密が垣間見えた話であった。
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なお正式サービス開始から「少し経ったあと」(ケビン氏)には,新たなプレイアブルキャラクターとして「満月のツクヨミ」「半月のツクヨミ」も実装される予定だ。詳細は明かされなかったものの,彼らの神魔札も「金子アレンジ」がされたものになるとのことで,こちらも楽しみだ。
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本作ではさまざまな性格のツクヨミとともに行動する「金鵄(きんし)」とのコンビネーションも見どころとなる。
ツクヨミ(月読)とは日本神話における月の神で,天照大御神や建速須佐之男命と兄弟ではあるものの,なぜかエピソードが少ない。この不思議な空白は創作に生かせるのではないか……ということで本作に取り上げられることになったという。
月といえばやはり満ち欠けなので,さまざまな性格を十六夜や新月といった月の相に当てはめていき,問題に対してそれぞれが異なるアプローチをすることで全体像が見えてくる物語になったという。
そして金鵄は神武天皇を導いた金の鵄から採られている。これを人やグループとして解釈する説もあることから,金鵄という人々がツクヨミのバディとなる構造ができあがったのだそうだ。
十六夜はゲームで初めて使うキャラクターなので,プレイヤーが自分を投影できる無垢な存在として設定された。開発中は「無垢」というキーワードが,ライターに「天然」として解釈され,「バナナを皮ごと食べてしまうような人なのでは」と考えられた時期もあったという。最終的にはヒーローとして凛々しい現在の十六夜像が決まったが,バナナ自体はアイテムとして残ることになったそうだ。
十六夜の金鵄はフレンドリーな「武内むつ」で,苗字の「武内」は300年生きて5代の天皇に仕え続けた「武内宿禰」を題材としている。「むつ」は6番目を意味しており,兄や姉,妹や弟も出てくるかもしれないと金子氏は語った。
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新月と「蘆屋キヨミ」のコンビについては,十六夜がプレイヤー自身を投影できる無垢であるため,新月は秩序維持を重んじるツクヨミとなり,バックボーンも「ツクヨミを輩出する名家の杓子定規なお嬢様」というものに。彼女と組むなら機転の利く人物だろうとキヨミが設定され,性格は違うが心では通じ合っているコンビになった。
なお,蘆屋とは陰陽師「蘆屋道満」の蘆屋であり,キヨミはその40代目であるという。道満は創作で同じ陰陽師「安倍晴明」のライバルかつ悪人とされることもある。ただ,町の人々を助ける在野の陰陽師だった道満は本来その逆なのではないか……ということで,本作では味方の金鵄として登場することに。そして,道満では可愛さに欠けるため,韓国語で「可愛い」を意味する「キヨ」を自称しているという設定ができたそうだ。
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「満月のツクヨミ」はときとして破壊的な手段も使うツクヨミだが,これは十六夜や新月とは正反対の性格として設定されたもの。こうした強引さは同じ男性からも憧れを抱かれるものであるため,金鵄は満月に心酔する「武内いつ」になった。
武内兄妹は同じ学校の制服を着ているが,これはツクヨミが所属する組織が設立した「白兎(はくと)学園」のものという裏設定があると金子氏は語る。月といえば兎という連想から白兎学園の名が決まり,出席日数についてもうるさくないという設定となった。学生である武内兄妹が金鵄として活動できていることにもちゃんと設定があるわけで,金子氏の作品がファンを惹きつける理由の一つは,こうした深みにもあると感じられた。
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これまでと逆にツクヨミが金鵄のお目付け役をしている変わったコンビが「半月のツクヨミ」と「諏訪迅雷」である。破壊的な満月がいるなら中道的なツクヨミも必要になるだろう……ということで半月は経験豊富かつバランス感覚に優れた性格となり,そんな人物には特殊任務を任せられるのではないかという考察から現在の半月が誕生した。
そして迅雷は「ミシャグジ」という神を宿しており,ときに神魔化する危険な存在だ。金子氏は「なぜこうした存在がいるのかは,プレイヤーが各自考察して欲しい」と語る。実装時に開示される情報から謎の背景が見えるようになっているとのことで,考察好きは楽しみにしておくとよさそうだ。
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タワーマンションの中でプレイヤーを助けてくれる「残月」にもしっかりとした設定が存在している。人に神が憑依するのがツクヨミであるが,気まぐれな神が抜けたあとに残された人間が残月として活動することになるという。神は手伝いをさせるため残月を不老不死としており,古代から沢山の残月が活動を続けているのだとか。
本作の残月はプレイヤーたちとともにタワーマンションに閉じ込められてしまったという。こうした設定を知ると彼らに会ったときの感想も変わってくるのではないだろうか。
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騒乱の首謀者と目され,ツクヨミたちが討伐する対象が「登美のりこ」だ。登美は奈良の豪族に由来する苗字なのだが,のりこは東北で「津軽物流」という会社を経営している。金子氏は「奈良の人が東北に行ったのはどういうことか,このあたりに今回の事件の発端がある」と語っているので,いろいろと考察してみるのもいいだろう。
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今回のイベントでは,正式サービスやその後の展開についても情報が明かされている。
本作の正式サービス開始日は,すでに報道されているように2025年5月7日となる。課金要素は神魔札の強化や最大HPのアップなど,ダンジョン攻略の助けとなる「ツクヨミ神授」の即時開放,「渡辺綱」「鈴鹿御前」といった特殊な神魔札,そしてツクヨミ神授をまとめて開放できるパックや,オオカミとの遭遇率UPなどの特典が付いたプレミアムパス,そしてAIが生成する創成神魔札の生成回数増加となる。
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ツクヨミ神授は普通にプレイしていても開放できるが,課金して即時開放することで攻略を楽にできる。特殊な神魔札は現時点で明かされている2名のほかにも存在しており,金子氏によると「鬼退治で有名な人々」で統一されているとのこと。そして作中には彼らが退治した鬼も登場するという。
なお,創成神魔札の生成回数は,ケビン氏によるとランクアップなどで獲得できるほか,通常のプレイでもログインボーナスとしてもらえるとのこと。
創成神魔札については,正式サービス時に100を超えるモチーフが実装されており,今後も追加される予定であるという。デザインは同じモチーフでもプレイヤーの行動次第で変わるほか,まったく同じ行動を取っても異なるものが出てくるとのことだ。
アップデートについては,正式サービス時に超高難度ダンジョンが追加されるという。これまでに戦った神魔たちが強化されて登場するのに加え,世界観を深掘りする情報も追加されるため,ローグライク好きと金子氏ファンがともに楽しめるものとなりそうだ。
その後,新たなプレイアブルキャラクターとして満月と半月が登場する。前述のようにユニークなキャラクターたちなので,彼らの物語にも注目したい。
本作においては,通常のスマートフォンゲームのような一定周期でのコンテンツ追加ではないものの,ゲームの改善,オオカミやAIカネコのアップデート,プレイヤーが生成した創成神魔札の中から人気のものを金子氏が選定・リファインしてゲームに実装する「盈月奉納ノ儀(えいげつほうのうのぎ)」は随時行われていくとのことだ。
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各種発表のあとは,メディアから寄せられた質問に両氏が答える質疑応答も行われたので,興味深い質問をピックアップしていこう。
――「AIカネコ」という存在が,ゲームのコンセプトや世界観にどのような深みを与えていると感じるか?
金子氏:
当初はAIを使おうとは考えていなかったし,AI使用が決まったあともAIカネコではなく通常のAIを実装しようとしていた。しかし「このゲームをプレイする人は金子さんのファンなので,AIもAIカネコにすればいいのではないか」という発案があり,なぜ気づかなかったのかと思った。そこでストーリーも単にAIをゲームに使うのではなく,AIでなければならない理由のあるものとした。
今はAIカネコに人格が出てきたというか,スタッフの1人のように感じられる。不思議な感じで言語化は難しいが,新しいものができた気がする。
――本作がゲーム界にもたらす新たな可能性や刺激は何だと思うか?
ケビン氏:
AIとの共創という形を見せられたと思う。今後もAIを使ったゲーム体験がいろいろ出てくると思うが,本作がそうしたものの指針になればいいと感じる。
金子氏:
「ゲームは人それぞれの体験であり,これを手助けしたい」というコロプラの方針があり,本作でもAIをゲーム体験に使っている。ほかでもAIを使って発展していけばいいし,一緒に盛り上げていければいいと思う。
――今後「神魔狩りのツクヨミ」というIPをどのように育てていきたいか?
金子氏:
本作ではタワーマンションを扱っているが,その外側にはまだまだ語っていない世界観がある。ゲームの続編を作ったり,別の場所を描いたりなどして続けたい。アニメや2.5次元コンテンツにならないかとも妄想している。興味のある人は連絡してほしい。
ケビン氏:
今回はローグライクにどこまでストーリーを盛り込めるかという挑戦でもあった。今後も日本以外の支部や別の舞台,別ジャンルのゲームもいろいろと展開できればと思う。
――本作のゲーム体験を通し,プレイヤーにどのような新しい価値観や視点を提供したいか?
金子氏:
ローグライクというゲームメカニズムが軸になるジャンルに,テンポを崩すことなく物語をうまく盛り込むことができた。ゲームプレイを重視する人も,本作をきっかけに神話に興味を持ってもらえればうれしい。
ケビン氏:
本作の新しさは,AIを組み込んだプレイ体験であり,この新しい遊びを体験してほしい。「こんな神魔札が出た」「こんな風に勝つことができた」など,AIがパーソナライズした体験を共有するコミュニティ形成まで体験してほしい。
翌5月1日には,コロプラの戦略における「神魔狩りのツクヨミ」の位置づけや意義といったところを語る発表会も行われている。こちらもあらためてレポートするので,興味のある人はチェックしてほしい。
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「神魔狩りのツクヨミ」公式サイト
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