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「トランスポートフィーバー3」,魚をヘリで空輸しようとして見えた,究極の輸送体験[gamescom]
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「トランスポートフィーバー3」公式サイト
Urban Gamesの歩みをたどると,10年前にクラウドファンディングで制作された「Train Fever」に行き着く。鉄道輸送だけを扱ったシンプルな作品だったが,「Transport Tycoon」の現代的リブートを目指したその姿勢は,多くのプレイヤーに歓迎された。
続く「Transport Fever」では道路交通や海運,航空を導入し,より複合的な輸送システムを構築可能にした。そして2019年に発売された「トランスポートフィーバー2」は,システムの拡張と利便性の改善によって,シミュレーション好きの支持を幅広く獲得し,結果として200万本を超えるヒットに至る。
インディースタジオが手がけたタイトルとしては異例の成功例であり,輸送シミュレーションというジャンルを再び表舞台に押し上げた。
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そうした成功を背にした最新作は,「前作の核を守りつつ進化させる」ことをテーマに掲げる。Bennett氏は,シリーズのプレイヤー層を「効率を徹底する人」「景観や建築の美しさを追求する派」「列車や飛行機といった要素を楽しみたい中間層」の3つに分類。いずれか優先するのではなく,全員が満足できるように設計しているという。
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実演デモで示されたのは,都市と産業がダイナミックに変化する仕組みだ。都市は騒音や公害,混雑といった要素に敏感に反応し,旅客や貨物輸送の充実度によって発展の度合いを変える。
これまでの作品では「輸送がうまくいけば成長する」という単線的な構造だったが,今回はより複雑な要素が絡み合い,都市ごとに個性が生まれる。さらに「足りていないもの」を都市側がプレイヤーに明示するため,課題解決型のプレイフィールが強調されていた。
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Stourbridgeという町を例に,Bennett氏は都市内バス路線を構築して旅客を運び,都市の成長を促す様子を披露した。
ほんの数台のバスであっても,市民が移動できるようになるだけで都市の姿は変わる。そのうえで貨物輸送を加えれば,成長はさらに加速。こうした小さな積み重ねが都市の姿を大きく変えていくところに,本作の醍醐味がある。
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登場する乗り物は鉄道,バス,トラム,船舶,航空機など250種類以上。1900年から2050年までの交通史をカバーし,技術革新の歩みを体感できるという。そしてシリーズ初登場となるのがヘリコプターだ。人員輸送だけでなく貨物輸送にも対応し,従来の地上輸送とは異なる発想を可能にする。
デモでは,遠隔地の魚養殖場から都市へ魚を空輸しようとする試みが披露された。「これはかなり非伝統的ですが……やってみましょう」と笑いながらヘリポートを設置したBennett氏だったが,なかなかうまくいかない。
最終的にはヘリポートの設置場所が悪いと判断し,湖の埋め立てまでも実施。魚を空輸するためだけに埋め立てまでやるとなったら,現実世界では炎上案件だが,本作では資金があればやれてしまう(埋め立ての費用は本作でもかなり高い)。
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とにかく打てるては全部打ったわけだが,ヘリポートの集荷範囲が狭すぎて,なにをやっても魚を積み込めないことが判明。Bennett氏は「開発チームにフィードバックしないと」と苦笑いを浮かべた。
この一幕は,未完成の段階ならではのハプニングではあったが,プレイヤーの創造性を歓迎するゲームデザインの象徴でもある。現実的な陸路を敷くもよし,非常識な空路を開拓するもよし。「トランスポートフィーバー3」は,その自由をプレイヤーに委ねている。
「目白(東京)にある田中角栄の邸宅から,新潟(西山町)の実家まで3回曲がるだけで着く」という都市伝説があるが,それに近いこともできてしまいそうだ。
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前作で指摘された「収益性の高い路線を放置すれば永遠に利益を生む」問題にも手が入った。都市や産業の需要は時代とともに変化し,プレイヤーは既存路線を見直し,改善や近代化を迫られる。これは単なるリアリティの追求に留まらず,タイクーンゲームとしてのダイナミズムを取り戻す試みでもあるそうだ。
序盤を助ける「コントラクト」機能は,チュートリアル的な役割を果たす一方,後半には挑戦的な課題として立ちはだかる。こうしてプレイ全体に緩急がつき,飽きのこないゲーム体験へとつながっている。
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また,実演では砂をガラスに加工し,ガラスをビール瓶へと変える産業チェーンも紹介された。単純な輸送網構築を超え,産業全体の流れを設計する要素が強まっているのだ。輸送ルートをどう設計するかはもちろん,どの産業を優先的に成長させるかという戦略眼も問われる。
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環境演出の面でも進化した。昼夜サイクルや雲量の調整といった要望の多かった機能が実装され,プレイヤーは好みに応じて時間帯を固定したり,光と影を演出に活用したりできる。都市を“見せる”遊び方をするプレイヤーにとって,これは大きな魅力になるだろう。
さらに特筆すべきはMOD対応の強化だ。PCはもちろん,コンシューマ機版でもMOD利用が可能になる。従来はPCユーザーの特権だったカスタマイズ性が,すべてのプラットフォームに開放されることは,シリーズの寿命を飛躍的に延ばしそうだ。
ユーザーコミュニティが作り上げる追加コンテンツによって,本作は単なる「製品」ではなく,「長く生きるプラットフォーム」へと変貌する可能性を秘めている。
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「トランスポートフィーバー3」は単なる続編にとどまらない。都市が生き物のように成長し,産業が呼吸し,プレイヤーの選択によって世界が変わり続ける。魚を空に舞わせるのも,鉄路を大陸に敷き詰めるのも,プレイヤー次第だ。
インディーデベロッパでありながら,PCとコンソールの両輪で挑むUrban Gamesの姿勢は,輸送シミュレーションというジャンルを再び表舞台に押し上げるかもしれない。
「トランスポートフィーバー3」公式サイト
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