
連載
第4回「XREAL One Pro」
暑い夏の教室。いつものメンバーが集まると、先に教室にいた朱音が見慣れないサングラスを着けていた。それは最新のARグラス「XREAL One Pro」。朱音が愛用するSteam Deckでゲームをする際、どうしても下を向く姿勢になってしまうという悩みを解決するために購入したという。それって朱音の姿勢が悪いだけでは? と思うふたりだったが、朱音は得意げに最新技術の素晴らしさを語り続けるのであった。
人間界のゲームに心奪われた魔王・赤城朱音(あかしろ あかね)。目つきも口調も悪いが実はお嬢様な龍恩寺凛(りゅうおんじ りん)。ボードゲームとミニチュアが大好きな天然ギャル・新山穂香(にいやま ほのか)。――そこは私立四亀学園。放課後の空き教室には,今日も3人の姿があった。
はぁ〜今日もあっちーな……。
教室のエアコン、全然効いてなかったよね〜。
うーっす……って、どうしたそのグラサン!?
ふっふっふ……凜よ、その凡俗な目にはただのグラサンにしか見えぬか。
わー! 朱音ちゃん、かっこいー! なんか未来のアイテムみたい!
ほほう、穂香には分かるようじゃの。これがただのグラサンではないということが。そう、これこそ今話題の最新ARグラス「XREAL One Pro」じゃ!
へぇ〜。XREALって名前は聞いたことあるな。
まあ、ARグラスの分野では先頭を走っておるメーカーじゃからな。
ねえ、朱音ちゃん。ARってどういう意味なの? VRの親戚的な?
ふむ、穂香よ、良い質問じゃ。VR――すなわち「仮想現実」は、視界を完全に覆い、全く別のデジタル世界に没入させる技術じゃ。周りの景色は一切見えなくなる。
うんうん、VRゲームはいろいろやったことあるよ!
対してAR――すなわち「拡張現実」は、今ワシらが見ておるこの現実世界に、デジタルな情報を重ね合わせる技術のことじゃ。
つまりそのグラサンはAR専用デバイスってことか?
そのとおりじゃ。今ワシの目の前には巨大なスクリーンが広がっておるのじゃが、ちゃんとおぬしらの顔も、この教室も見えておる。現実をデジタルで「拡張」する……それがARというわけじゃな。
なるほどな。で、なんで朱音はそれを買おうと思ったんだ?
それには深いわけがあるのじゃ。まずはこれを見るのじゃ。
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それって、朱音ちゃんのSteam Deckだよね?
うむ。ワシの愛機、Steam Deckは素晴らしい神器なのじゃが、一つだけ看過できぬ欠点があった。それは、画面を見るために、頭を垂れ、俯く姿勢を強いられることじゃ!
つまり首が疲れるってことか。
たしかに、ずっと下を向いてると首が疲れちゃうもんね。
いや、まあそうなのじゃが……それに、魔王たるワシが常に下を向いてゲームに興じるなど威厳に関わるではないか!
んな大げさな……。
じゃが、このグラスがあればどうじゃ? どんな姿勢でも目の前にスクリーンがある。つまり、より快適な姿勢で、真っ直ぐ前を向いたまま遊ぶことができるのじゃ!
まあたしかに、仰向けに寝転がりながら遊べるのは良さそうだな。で、実際に使ってみどうなんだ?
素晴らしいのひと言に尽きるな。巨大スクリーンのおかげで没入感は高いし、どんな姿勢になってもスクリーンが常に正面に来るから快適なのじゃ。
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はたから見ると何してるんだコイツって感じだけどな。
それにこのXREAL One Proには独自開発されたチップが搭載されておってな、こやつだけの力で3DoFを実現できるのじゃ。
すりーどふ……?
簡単に言えば、スクリーンを空間に固定できるということじゃな。さっきも言ったが、通常はどの方向を見てもスクリーンは正面に来る。それに対して3DoFの場合は空間に固定されるから、よりリアルなディスプレイに近い感覚になるといった感じじゃ。
へぇ〜。でも、そんだけの機能が積んであるなら、普通のグラサンより重いんじゃないのか?
こやつの重量は約90g。たしかに普通のサングラスと比べれば重さはあるが、ワシは長時間かけていてもそこまで疲れは感じないのじゃ。
90gって思ったよりも軽いんだな。
おそらくバッテリーを内蔵しておらんのが大きく影響してるのじゃろう。ゆえに、使用するときはType-Cケーブルをデバイスにつないで、そこから給電することになる。
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穂香もかけてみたーい!
構わぬが、壊すでないぞ?
……わー、すごーい! 目の前にでっかい画面が浮かんでるよ! しかも、どこを向いてもくっついてくる!
へぇ、どれどれ。おお、思ったよりも見やすいんだな。
そうじゃろう。なんせ、ソニー製のマイクロOLEDを搭載しておるからの。発色もいい感じなのじゃ。
空間にスクリーンが浮いてる感じがすごくかっこいいんだけど、この教室みたいに明るい場所だと少し見づらいかもね。
安心せよ。実はそやつには調光機能があってな、ボタン一つでレンズの色が暗くなり、外部の光を遮断できるのじゃ。
あ、ほんとだ! これならゲームに集中できるね!
たしか飛行機の窓とかもこういう感じだよな。そういえば音はどうなってるんだ?
ツルの部分にBoseが監修した音響システムが内蔵されておる。耳を塞がずとも立体的な音が聞こえる優れものじゃが、音漏れしやすい構造じゃから音量のあげすぎには注意が必要じゃな。
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ところでさ、このレンズの間にあるカメラはなんなの?
ふっふっふ、それに気づいたか。これぞ、このグラスを完全体へと進化させる神器「XREAL Eye」じゃ。これを装着することで、6DoFを実現することができるのじゃ!
数字が増えた!
さっき3DoFは空間にスクリーンを固定する機能と言ったじゃろ? 実のところ、あれは完璧に固定されているわけではないのじゃ。
ん? でも、どこを向いても固定した位置から動かないけど?
なら凛、そのままスクリーンに近づいてみるのじゃ。
あれ? 近づくとスクリーンが離れていくぞ。
なら、次はここをこうして……よし、6DoFをオンにしたから、これでもう一度試してみるのじゃ。
おぉ、ちゃんと近づけるようになった。
じゃろう。こんなちっこいカメラを追加するだけで6DoFが使えるようになるのじゃから、人間の技術の進歩には感心するばかりじゃ。
これってカメラとしても使えるの?
うむ。写真も動画も撮れるぞ。
ほかにも、なんかマニアックな機能とかあんのか?
よくぞ聞いてくれた。このXREAL One ProにはPCに繋いだときに使える「ワイドスクリーンモード」というものがある。これを使えば、対応するゲームを21:9や32:9といった横長の比率で遊べるわけじゃ。
すごーい! ゲームの見える範囲が広がるんだね!
じゃが、ここにも癖がある。グラスの視野角には限界があるゆえに、ワイド表示にすると画面の全てが視界に収まらなくなるのじゃ。
視野角の限界?
つまり、画面の右端や左端を見るためには、実際にそちらに頭を振る必要があるということじゃ。現実のモニターならば視界の端で捉えられる情報が、このグラスではできぬということじゃな。
なるほどね。ところでさ、朱音の言うとおり、たしかに疲れは感じないんだけど……なんか眉間のところが熱くなってきたぞ?
うむ、おそらくその部分にプロセッサーが収まっておるのじゃろう。ゆえに、高負荷な処理を続けると熱を帯びてくる。鼻のパッドを調整すれば緩和されるのじゃが、完全に解消することはできぬ。
まあ我慢できない熱さってわけじゃないけど……ところで、これってType-Cのケーブルしかないけど、PCにつなげるときはどうするんだ?
PCなら映像出力対応のUSB-Cポートがあればよい。なければ、HDMIをUSB-Cに変換するアダプターを使えば可能じゃ。ちなみにSteam Deckのポートは映像出力に対応しておるから、そのままつなげるだけで使えるわけじゃな。
ところで朱音ちゃん、これっていくらなの?
XREAL One Pro本体が8万4980円で、XREAL Eyeが1万3980円。つまり今のワシと同じ完全体を揃えるには、合計で約10万円ほどかかる計算じゃな。
じゅ、じゅうまんえん!
つまり、アタシのこづかい一日分ってことか。
なっ……! い、一日分じゃと……!? 次からは凜におねだりするか……。
XREAL 公式サイト
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