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東野美紀氏の名曲が2台ピアノできらめいた! 「NEVER ENDING MELODIES」レポート
本公演は,KONAMIの名作ゲーム「グラディウス」「沙羅曼蛇」「幻想水滸伝」などで作曲を担当し,今なお多くのファンを持つ作曲家,東野美紀氏の生誕60周年を記念して,MUSICエンジンの主催で開催されたコンサートだ。
東野氏が担当した曲を中心に本人自らが選曲と,2台ピアノ向けの編曲を行ったプログラムが,東野氏とMUSICエンジンの川村紀子氏によって奏でられ,観客を魅了した。
本稿では,この公演の模様をお伝えしていこう。
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NEVER ENDING MELODIES
MIKI HIGASHINO 60TH BIRTHDAY CONCERT
プログラム
■オープニング
M00
グランドプロローグ
■「GRADIUS」
M01
コナミ・モーニング・ミュージック
M02
Coin(コイン音)
Beginning of the History(空中戦)
Challenger 1985(第1ステージ)
Beat Back(第2ステージ)
Blank Mask(第3ステージ)
Aircraft Carrier(ボス)
M03
Free Flyer(第4ステージ)
Mazed Music(第5ステージ)
Mechanical Globule(第6ステージ)
Final Attack(第7ステージ)
Historic Soldier(ランキング)
M04
Hope & Joy Peace & Love
■「沙羅曼蛇」「LIFE FORCE」
M05
Coin(コイン音)
Power of Anger(第1ステージ)
Fly High(第2ステージ)
Planet RATIS(第3ステージ)
Starfield(第4ステージ)
M06
Burn the Wind(第5ステージ)
Destroy Them All(第6ステージ)
Poison of Snake(ボス)
Thunderbolt(第2ステージ)
Slash Fighter(第4ステージ)
Combat(第5ステージ)
M07
Peace Again(オールパターンクリア)
Crystal Forever(ゲームオーバー)
Crystal Forever "Mamma Mi Scusi"
■「GRADIUS III 伝説から神話へ」
M08
Esperanto
M09
Coin(コイン音)
Cosmo Plant(第8ステージ)
Dead End Cell(第6ステージ)
M10
King of Kings(ランキング)
■「TwinBee」
M11
Normal Ranking(ノーマルランキング)
■「ときめきメモリアル」
M12
ときめき(オープニングデモ)
M13
みつめていたい(清川望テーマ曲)
かごの中の小鳥 古式ゆかりテーマ曲)
あなたに贈るソナタ(如月未緒テーマ曲)
M14
動物園(動物園)
ショッピング(ショッピング)
ブティック(ブティック)
ジャンク屋(ジャンク屋)
遊園地(遊園地待ち合わせ)
Welcome to Virtual World(ヴァーチャルシップ)
ヒーロー!(ヒーローショー)
悪夢の誘い(ゴーストハウス)
ゴースト達の宴(ゴーストハウス)
眺めのいい場所(大観覧車)
夏の日のイルミネーション(ナイトパレード)
M15
ファンシーショップ(ファンシーショップ)
M16
夏に、まだ少し…
■「TEN PLANTS」
M17
東京生活(令和バージョン)
■「幻想水滸伝I」「幻想水滸伝II」
M18
予感
M19
幻想の世界へ
M20
さらに栄えし美しき黄金の都
グレミオ特製シチュー
大草原の小さなキャラ
魔物たちとの対決
M21
水のほとりの砦
郷愁
Beautiful Morning
M22
さざ波に運ばれて
毎日がカーニバル
囚われた街
自由ふたたび
彼女のため息
ゴージャス・スカーレティシア
M23
なごみの時間
M24
もっと遠くへ
M25
月夜のテーマ
出陣のテーマ
激突!
光のない戦場
M26
感動のテーマ
回想
■アンコール
ENC1
忍者隠れ里
ENC2
グランドプロローグ
多くのファンが詰めかけ,満員となったブルーローズ。開演の直前に放送された影アナでは,東野氏がアナウンスを担当し,観客を歓迎する。「それでは元気よく始めましょう!」という声とともに東野氏と川村氏が登場し,東野氏はステージ向かって左側のベーゼンドルファー(モデル290インペリアル)に,川村氏は右側のスタインウェイのピアノに着席した。
公演の幕開けを飾ったのは「グランドプロローグ」。「グラディウス」や「幻想水滸伝」など,本日演奏されるタイトルから代表的な曲が次々に演奏され,否応なく期待感が高まる,わくわくするようなメドレーになっていた。
続いてシークレット曲として演奏されたのは,「コナミ・モーニング・ミュージック」。これは,1980年代にKONAMIが開発したアーケード基板である「バブルシステム」の起動時に流れる曲だ。
心が洗われるかのように優美な旋律が,美しいピアノの音色でホールいっぱいに響きわたっていく。
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そして始まるのは「グラディウス」だ。コイン投入時の音色が響き,出撃時の曲「Beginning of the History」など各ステージの曲がメドレーで奏でられていく。東野氏と川村氏の絶妙なコンビネーションで奏でられるピアノは流麗そのもの。ボスであるビッグコア撃破時の爆発音も含めて,すべてが美しく演奏されていた。
最後は,2002年に発売された「グラディウス アーケード サウンドトラック」に収録されたエンディング曲のピアノアレンジである「Hope&Joy Peace&Love」が華やかに演奏されて締めくくられた。
次に演奏されたのは「沙羅曼蛇」と「LIFE FORCE」の楽曲。こちらも「Power of Anger」をはじめとした各ステージの曲がピアノの音色で響きわたった。
演奏開始時には,川村氏が手を高く上げ,東野氏に向かって指を振りタイミングを合わせて2台のピアノで奏でていく。原曲で鳴っていた左右のパートを,ピアノ2台で分担して再現していたのが圧巻だった。
ラストの「Crystal Forever "Mamma Mi Scusi"」は,1992年発売の「沙羅曼蛇 〜Again〜」に収録されていた曲だ。この曲にはMUSICエンジン主宰の河合晃太氏がヴィオラで参加。川村氏が奏でるピアノと共に,優雅な音色を響かせた。
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続いてのタイトルは「グラディウスIII 伝説から神話へ」だ。
最初に演奏されたのは「Esperanto」。これは「コナミ・オールスターズ1993」というアレンジCDで「Cosmo Plant」をボーカルアレンジした曲だったのだが,2台ピアノで流れるように美しく紡がれる。
続いてコイン音,「Cosmo Plant」「Dead End Cell」,ランキング画面の「King of Kings」がメドレーで奏でられ,観客を魅了した。
川村氏が「ツインビー」の「Normal Ranking」を演奏するなか,東野氏から「続いてはお待ちかね,『ときめきメモリアル』のお時間です!」との案内が。
まずはオープニングデモの「ときめき」が元気かつ爽やかに演奏される。続いて東野氏が川村氏のほうへ移動して,ピアノ連弾のスタイルになり,東野氏が作曲を担当したキャラクター3名のメドレーが披露された。清川(望)さんは跳ねるように快活に,古式(ゆかり)さんはゆったりしたテンポで,如月(未緒)さんは聡明な印象のソナタ……と,それぞれの個性が伝わってくるような演奏だった。
ちなみに,如月さんの曲の中に「ときめき」のメロディがさりげなく顔を出すのが面白いアレンジだった。
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「動物園」の演奏中には,東野氏が突然マイクを手にして「動物園楽しかった〜!」と話し出す。「ときメモ」のデート中をイメージしたMCのようだ。「じゃあ次は遊園地に行きましょ! でもその前に,秋葉原でモノラルのミニジャックを買いたいの♪」と話し,観客の笑いを誘う。
そこからは,作中のデートスポットを巡っていく形で次々に曲が演奏されていった。デートを終えたあとは,東野氏が元のピアノに戻り,「夏に、まだ少し…」が演奏された。
この曲は,「ときめきメモリアル プライベートコレクション」に収録されていたPVで,本作のヒロイン・藤崎詩織の声を担当した金月真美さんが歌ったボーカル曲だ。原曲とはまた違った味わいで,爽やかに2台ピアノで奏でられていた。
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続いて披露されたのは,「東京生活(令和バージョン)」。こちらは,1998年に発売された「TEN PLANTS」というオムニバスアルバムで東野氏が制作した曲の新規アレンジだ。
原曲でも歌を担当した高橋由美子氏と,弦楽カルテット,マリンバ,フルート,鍵盤ハーモニカで奏でられた。各楽器と高橋氏の力強い歌声が紡ぎだすハーモニーは,どこかノスタルジーを感じられて心地良いものだった。
ちなみに高橋氏は黒い和風の衣装で登場しており,この衣装は「東京にずっと住んでいる何か」をイメージしてコーディネートしたという。
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休憩を挟み,次は「幻想水滸伝I」と「幻想水滸伝II」の演奏が始まった。最初にシークレット曲として演奏されたのは「予感」。「I」発売当時のTVCMで使用されていた曲だ。ヤドランカ・ストヤコヴィッチ氏が歌っていた原曲のイメージのまま,切なくも美しい旋律がピアノでしっとり奏でられた。
続いてオープニング曲「幻想の世界へ」が壮大に奏でられ,観客を「幻想水滸伝」ワールドへ引き込んでいく。「さらに栄えし美しき黄金の都」では,観客からの手拍子が入って楽しい雰囲気に。「魔物たちとの対決」には,プログラムに記載されていなかった戦闘終了後の曲がさりげなく入っていたのにはニヤリとさせられた。
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「水のほとりの砦」の演奏中には,東野氏が眼鏡をかけて「ようこそ,獅子の旗トラベルツアーへ!」と,ツアーガイドのようにMCを始めた。 本拠地からキャロ,レイクウェスト,グリンヒル,ラダト,スカーレティシア城内……というコースでツアーを行うとのこと。それぞれの街の曲が次々に奏でられ,まるで音楽で各地を巡っていくような旅感覚を味わえた。
「月夜のテーマ」では,東野氏が鍵盤ハーモニカの演奏を披露。川村氏のピアノに合わせて東野氏は立ち上がってゆっくり歩きながら,情感あふれた音色をしっとり切なく響かせる。決戦前夜の満月が目に浮かぶような,心に響く演奏だった。
緊迫感のある「出陣のテーマ」を経て,戦争シーンの曲「光のない戦場」では2台のピアノとは思えないほど音の厚みのある激しい演奏が展開され,思わず手に汗を握るほどの迫力だった。
「感動のテーマ」の演奏に続いて,ラストに披露されたのは「回想」だ。誰もが固唾を飲んで見守る中,東野氏が奏でるピアノが一音一音,切なく美しい旋律をホール全体に響かせていく。客席からは,すすり泣きも聞こえた。やがて最後の一音が溶けていったのち,一際大きな拍手が観客から贈られた。
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熱い拍手に応えて突入したアンコールでは,ボーカルの高橋氏が再び登場し,「忍者隠れ里」が披露された。こちらは,「幻想水滸外伝Vol.2」のエンディングテーマ「見果てぬ夢」である。ピアノの旋律に合わせて,情熱的で伸びやかな歌声をホールに響かせた。
最後の東野氏の挨拶では,公演に関わったいろいろな方への感謝を述べたあと,「皆さんのそばに,いつもゲーム音楽が寄り添っていきますように」とメッセージが贈られた。
そして再び「グランドプロローグ」が演奏される。今度は観客からの手拍子も入って,より一体感を強くしていく。ラストの「Avertuneiro Antes Lance Mao〜戦いは終わった〜」が響き終わった瞬間,盛大な拍手が会場を包む。
東野氏と川村氏がステージをあとにしてからも,しばらく拍手が鳴りやまず,惜しみない賞賛が贈られる。拍手に応えて東野氏が再び壇上へ登場し,「本当にありがとうございました!」と深く一礼してコンサートは幕を閉じた。
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東野氏が生み出してきた名曲の数々が,ご本人も参加して演奏された貴重なコンサートだった。
2台ピアノで奏でられるきらめくような音の粒は非常に心地良く,筆者も思わず聴き惚れてノートにメモを取る手が止まってしまうことが何度もあるほどだった。
優しい曲から迫力のある曲まで,ピアノ2台でさまざまな表現が繰り広げられることに感嘆し,長年にわたって多くのファンに愛されている東野氏の音楽の魅力をあらためて実感できた。
また,東野氏からデートやツアーガイドを模したMCが挟まれ,お茶目な人柄が垣間見えるのも印象的だった。
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昨年から音楽活動を再開した東野氏。今後の活躍が楽しみであり,もし機会があればこういったコンサートの機会があればうれしいところ。
なお,12月18日には,東野氏がゲストコンポーザーで参加したNintendo Switch用シューティングゲーム「バウンティシスターズ」が発売予定なので,ぜひチェックしてみてほしい。
- 関連タイトル:
バウンティシスターズ - この記事のURL:
































