プレイレポート
[プレイレポ]世界を支配しただけでは終わらない。「歴史の終わり」は国家の“分断”と“憎悪”を管理し,安定をもたらすために奔走する意欲作だ
ウォーキングシミュレータ「NOSTALGIC TRAIN」,パズルアドベンチャー「最涯(さいはて)の列車」で知られる畳部屋氏の最新作は,自由に世界を冒険する“サンドボックス型ストラテジーRPG”を謳うタイトルだ。
自由度の高さに加え,「分断」「憎悪」「寛容」が世界を変える“世界崩壊度”といった独特なシステムを搭載している。壮大な世界観とビジュアルも注目を集め,体験版をプレイした人数は約3万人にのぼるという。
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そんな本作をひと足先にじっくり遊んでみたので,ゲームを構成するシステムと手触りを中心に紹介したい。4Gamerでは以前に序盤の流れを紹介する記事を掲載しているので,ゲームの流れをざっくりと知りたい人はご一読を。
なお,4Gamerでは「歴史の終わり」のSteamキーを3名にプレゼントする予定だ。後日,「Weekly 4Gamer」(毎週月曜掲載)内のコーナーで応募を受け付けるので,楽しみにしてほしい。
1人の若者が世界をわたり,国に仕官するまで。中世風の世界を自由に冒険するサンドボックスRPG「歴史の終わり」リプレイ
畳部屋氏が手掛ける“サンドボックス型ストラテジーRPG”こと「歴史の終わり」の体験版が,2025年10月2日に公開された。中世ファンタジー風世界で自由に生きられるという壮大なテーマを持つ本作だが,実際にはどうやって遊べばいいのだろうか。リプレイ風プレイレポートという形でゲームの流れをお伝えしよう。
まっさらだからこそ,覚えやすい
自由に世界を歩き,ルールを理解しよう
ゲームの概要をあらためて紹介しておこう。本作にはチュートリアルを含む「キャンペーンモード」と,各要素がランダムに配分される「サンドボックスモード」があるが,今回は前者の内容を中心に紹介していく。
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冒険の舞台になるのは,偉大な古代文明による“知識”が忘れ去られ,地球における中世ヨーロッパほどの文明レベルへと引き戻されてしまったファンタジー世界だ。
いっときは「神聖ルシュ帝国」が世界を統一しつつあったが,900年もの時間は支配にほころびを生み,各地で独立の機運が高まりつつある。そうして,新興勢力「エルデライン王国」,東方の遊牧民「パルク統一王国」を交えた三つ巴の状況となってしまった。
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そんな世界に生まれた主人公(プレイヤー)は,古代の知識が刻まれた「オベリスク」を見守る“長命種”の末裔だ。主人公は俗世から離れて生きていたが,オベリスクが放つ光が失われたことで大きく状況が変化する。これは,100年後に起こる世界崩壊の兆しだというのだ。
長命種の使命は,破滅へと向かう世界を救うこと――と語られてはいるが,主人公にも自由意志がある。国々を見てきたうえで「この世界を守りたい」と思えばオベリスクを調査すべきだろうが,そうでなければ何をしてもいい。国に仕官して成り上がりを狙っても,商売人として活躍しても,盗賊として暴れ回ってもいい。
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今回は30時間ほどプレイし,キャンペーンモードでは世界の終焉を二度見届けた。体験版のプレイ経験があるため,多少スムーズにことが進んだが,それでも同ジャンルの作品としてはテンポのいい部類だろう。初心者でも約6〜8時間でひととおりの要素に触れられそうだ。
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| 統率 | 所属兵士の能力,部隊移動速度に影響 |
| 戦闘 | 主人公自身の戦闘関連ステータスに影響 |
| 知性 | 領地開発,治安回復,研究速度に影響 |
| 政治 | 領地開発,治安回復,影響力上昇に影響 |
| 直感 | 経験時のボーナスポイント,説得能力に影響 |
| 魅力 | 好感度の増加,臣下の雇いやすさに影響 |
ゲームを開始すると,マップに何も情報が書き込まれていない状態で世界に放り出される。生き延びるためには,どうにかして食料を手に入れなければならない。ギルドで依頼を受けてお金を稼ぎ,酒場で人々と交流し,世界の仕組みを理解していく,これが最初の段階だ。
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ギルドで請けられる仕事の多くは「あそこに手紙を運べ」「この商品を買ってこい」といった,何かしら移動を要するものが多い。対応する場所や人,モノのありかは教えてくれないので,酒場で聞き込みをしつつ,情報を探っていく必要がある。
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ギルドで仕事をこなしたり,盗賊を倒したりしていると「名声」が高まり,一定以上に達すると既存勢力(国家や貴族)に士官できる。自分から申し出ずとも,十分な名声があれば向こうから声をかけてくるだろう。勢力に所属して身分を得れば,毎月の俸給を得られるようになるので,まずはこれを目指したい。
ただし,勢力に属する以上は根無し草というわけにはいかず,上司から発される主命(命令)に応えなければならない。主命に応じたり,戦で活躍したりすると「勲功」が手に入り,一定値ごとに昇進できる仕組みだ。昇進すると俸給が増えるほか,そのうち領土が与えられ,そこから税収を得られるようになる。
勲功と名声が十分に高まったら,勢力内に自分の派閥を作り上げたり,部下を引き連れて反乱を起こしたりもできる。勢力の王になれば,自分で研究すべき技術を決定したり,各都市の建設する建物を決めたりと,自由度が一気に増していく。
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このように要素を並べていくと複雑に思えるかもしれないが,実際にはじっくり時間をかけてこの過程を踏むことになるので,最初から全部覚える必要はまったくない。
自分の足で情報を集めていくことになるので,マップは自然と頭に入ってくるし,同時にボトルネックとなる要素(食料や所持重量など)も理解できる。まっさらな状況に放り出されることが,そのままシステムや世界観を理解するチュートリアルとして機能しているわけだ。
本作は「世界観を歪めず,雰囲気を楽しみながらプレイヤーになじませる仕組みづくり」が非常にうまい。単に易しいだけでなく,初期地点周辺に絶妙な強さの盗賊が闊歩していたり,儲かる商品のある都市がいい具合の距離感に置かれていたりと,デザインによって“気付かせる”と“工夫させる”を意識して導線が作られているようだ。
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また,ゲーム的な分かりやすさを優先して,省略されている要素もそれなりに多い。たとえば,盗賊は堂々と街道を歩いていて,都市に所属する軍団とも素知らぬ顔ですれ違う。その真横で主人公が襲われていても知らんぷりである。
ただ,これが街道付近の森に潜んで突然現れるとなると,いよいよ対策が難しくなる。プレイヤーとしては「盗賊と出くわしたくない場面では画面をよく見て動こう」と覚えるだけでいいので,この仕組みは理にかなっている。複雑なシミュレートをするだけでなく,それを扱いやすいように調整されているのだ。
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戦闘についても“アクションとRTSの組み合わせ”と聞くと難しそうだが,かなり要素が簡略化されているので,そこまで複雑な操作は要求されない。国家全体の技術が進んで格差があったり,兵士の練度が絶望的に違ったりすれば話は別だが,基本的には「数が多いほうが勝つ」くらいのシンプルに考えて構わない。
動きはかなりゆったり気味で,爽快感のある戦闘という雰囲気ではない。とはいえ,しっかりと駆け引きの要素はあるので,国家レベルのシミュレーションにおける戦闘としては十分なクオリティだ。
ただ,戦闘の深みに期待していると肩透かしを食うかもしれない。
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どちらかといえば,気になったのはデータの部分だ。一部の数値が決定される(変動する)仕様などでは,詳しく調べたくなったときにそれを知る手段が見つからないことがあり,ちょっと困ってしまった。
なんらかの課題に直面すると,ボトルネックを解消する手段(あるいは手段を探す方法)が不明な場合,あまり気持ちよくゲームを進められない。このあたりは世界観の表現や,プレイヤーに与える情報量の管理と密接に関わる部分なので,なかなか解消しにくい要素ではあるが,重要な仕様は手軽に参照できるとありがたいところだ。
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勢力の拡大とお金稼ぎは超簡単
真の課題は「分断」と「憎悪」の抑止
基本的な仕組みを理解したら,あとはゆっくり世界を楽しんでいられるかといえば,実はそういうわけでもない。導入部分で「100年後に破滅する」と示唆されていたとおり,キャンペーンモードには時間制限があるのだ。
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それを示すのが,世界の状況に応じて上下するステータス「分断度」「憎悪度」「寛容度」から算出される「世界崩壊度」である。世界崩壊度が150に達すると,100年が経過する前でも世界は崩壊してしまう。プレイヤーとNPCの振る舞いが(悪い意味で)噛み合えば,100年どころか10年足らずで世界が崩壊することもある。
| 分断度 | 国内の経済格差が大きすぎると上昇する。1つの国が巨大化しすぎると,格差の是正が難しくなる |
| 憎悪度 | 他国の領土を戦争で奪ったり,人を殺害したりすると上昇する。戦争をしない期間が長くなると,少しずつ低下していく |
| 寛容度 | 教育の投資,充実した設備などで産出される。ほかの値と異なり,産出された寛容度は累積していく |
| 崩壊度 | 分断度と憎悪度を合わせた値から,寛容度を引いた値が崩壊度となる |
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なかなか扱いの難しいシステムだが,個人的にはこれが非常に楽しかった。近いジャンルの作品では,自勢力の版図を広げきったら,あとは自分で目標を作ってこなしていくしかない。そのため,たいていは覇権を握ることが難しい構造になっている。
しかし,本作では基礎システムがシンプルなこともあり,単にお金を稼いだり,出世したりするのはわりと簡単だ。真に難しいのは分断度と憎悪度のバランスを保つことであり,そのためには常に世界中を飛び回って活動する必要がある。
うまくバランスを維持していれば,そのうちストーリーに関わる要素に触れられるようになり,その先には明確な着地点が待っている。このシステムによって全体に一貫した目標がもたらされ,手持ち無沙汰な時間が非常に少なくなっているのだ。
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世界全体をとりまくNPCの扱いも,こうしたシステムとうまく噛み合っている。本作のNPCは単なる駒ではなく,各勢力や個人に対する好感度,それぞれの好みといった要素を持ち,すべての行動がキッチリと記録されているのだ。
そのため,特定勢力との間柄を取り持つのが難しくなったり,仲間に引き入れやすくなったりと,さまざまな影響が発生する。序盤こそフレーバーとしか思えない要素だが,勢力図と世界崩壊度について考える必要が出ると,どんどん重要度が増す構造になっている。
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もちろん,武力と経済力によって安定を勝ち取ることもできる。自身の都市に投資を行い,十分な貯蓄ができたら新たな都市を奪い,治安維持活動と投資を行って――という流れをゆっくりと繰り返せば,分断度と憎悪度を抑えつつ勢力を拡大できる。広大な版図が“イコール悪”というわけではないのも,このシステムの面白いところだ。
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ストラテジー作品として要素をシンプルにまとめつつ,世界崩壊度による独自の楽しさを取り入れている。そのうえで,体験の中でルールを覚えさせる導線がしっかりと構築されており,同ジャンルの作品に触れる初心者にもおすすめできる意欲的な作品だ。
細かな挙動や情報提示には多少気になる部分があったが,それ自体はゲーム性を損なうようなものではなく,リリース後の調整に期待したい。じっくりとやり込める作品なので,ぜひ本作に触れてみてほしい。
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- 関連タイトル:
歴史の終わり
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