「龍が如く」冠婚葬祭展レポート。結婚，葬儀，兄弟の盃を交わす……人生のドラマをテーマに「龍が如く」らしさを味わえる

　セガの「龍が如く」シリーズが，2025年12月8日に20周年を迎える。それを記念した企画のひとつとして，「龍が如く」唯一無二の世界観を表現した「冠婚葬祭展」が開催されている。

東京会場は，11月28日から12月22日まで。大阪会場は，2026年2月6日から2月24日までだ

　本稿では，東京会場（渋谷BEAM）で行われたプレオープンイベントの模様と，会場内で実施された，龍が如くスタジオ代表・横山昌義氏へのメディア合同インタビューの内容を紹介していこう。

個性際立つ4つのエリアでは，さまざまな「龍が如く」体験が待ち受ける！

　本展覧会は，“「龍が如く」らしさ”を，人生のドラマにおける象徴的な儀式である「冠婚葬祭」というテーマで表現したものだ。会場には「冠」「婚」「葬」「祭」のブースが設置されており，さまざまな展示や体験コーナー，フォトスポットなどが展開されている。

【冠】
　最初の「冠」コーナーには，「龍が如く」20年の歴史を振り返る，たくさんの資料が展示されている。
　シアターで約4分のオープニングムービーを見た後は，巨大スクリーンに映し出された歴代のおなじみキャラクターたちが左右からお出迎え。そこを抜けると，「龍が如く」シリーズに登場した約1500人のキャラクターを一面に並べた壁がお目見えする。
　その横には，歴代の“名言”が金色で書かれた無数のタペストリーが吊り下げられていて，自由に手に取って楽しめる。

ずらっと並べられたタペストリー。好きな名言を見つけて取り出し，記念撮影するのも楽しい。なかには，「これも名言!?」とびっくりするようなものもあるので，探してみてほしい

　部屋を進んでいくと，主要キャラクターのルックスの変遷がひと目でわかるコーナーと，「龍が如く」シリーズの年表が書かれたコーナーがある。年表は，各作品の販売年などリアル世界の出来事とゲーム内の出来事が見比べやすく並べられている。また，秘蔵の資料展示も展示されている。

　プレオープンイベントに参加していた横山氏は，「（TVドラマ）『クロヒョウ 龍が如く新章』放送開始のとき，ゲーム内では冴島と浜崎が沖縄の刑務所を脱獄しています。同時期の情報を拾ってみると面白いね。」と，通の楽しみかたを披露していた。



【婚】
　ふたつ目のエリアは「婚」のコーナーだ。描き下ろしイラストを使用した等身大パネルや金屏風が飾られているほか，キャラクターと一緒に写真を撮り，コンビニプリントで楽しめるARフォトアプリサービスも受けられる。

　また「結婚式疑似体験スペシャルパッケージ」も，この展覧会の目玉となる企画だ。これは，パネルになっている11人のキャラクターとの結婚式を演出してくれるイベントで，ウェディングドレスやタキシードを着れるだけでなく，プロのヘアメイクも施してもらえる。最大10名の知人や友達を参列者として招待可能で，プロカメラマンの撮影も含まれる超豪華プラン。価格は16万5000円（税込）と少々お高いのだが，すでに抽選申し込みは終了している。

ゴージャスな金屏風も必見！

横山氏が自ら，ARフォトアプリサービスの実演も。アプリからキャラクターとフレームを選んで撮影すると，こんな感じにキャラクターとのツーショット撮影ができる

　プレオープンイベントの会場では，実際の式の様子を見学できた。美しいウェディング衣装に身を包み，参列者に祝福されながら推しとの挙式を体験するという，好きなキャラクターへの愛を全力で形にした推し活の姿がそこにあった。



【葬】
　華やかな婚礼の場から一変，次のコーナーは「葬」。ここは，仁義を貫き命を散らした男たちを弔うための場所だ。キャラクターを追悼する葬儀体験ができ，本イベント限定のキャラクタースペシャルボイスを聞くことができる。

受付で記帳して……

献花を受け取り廊下を進むと献花台がある

想いを込めて花を手向ける

祈りを捧げ，散った男たちの声に耳を傾けよう

　なお期間中は，下記の日程でキャラクターのボイスが流れる。

• 11月28日〜12月5日：錦山 彰
• 12月6日〜12月13日：郷田龍司
• 12月14日〜12月22日：峯 義孝

【祭】
　最後に控えるコーナーは「祭」だ。ここは，誓いの盃ブース，名場面フォトスポット，来場者メッセージボードなどが設置され，来場者が「龍が如く」と兄弟の盃を交わすことができる。さまざまなシチュエーションがリアルなセットで再現されており，その気合いの入りように驚かされる。

各ブースにはスマホ固定用の台も。札束やバットといった，撮影の臨場感が増す小道具も用意されている

誓いの盃ブースや東城会本部の会議室も用意されている。本格的なインテリアで撮影ができるチャンス，クリスタルの灰皿にも「らしさ」を感じる

横山氏が，体を張って撮影ブースの楽しみかたを実演してくれた

　ここにも等身大パネルの展示があるのだが，なんと，峯 義孝，真島吾朗，桐生一馬，足立宏一，柏木 修の「20歳だったころの姿」だ。
　どことなくポーズが可愛らしいジーンズ姿の峯，荒々しいツナギ姿ながらも耽美な魅力に溢れた真島，20歳とは思えないほどシブい桐生，初々しい警官姿の足立，それから……どうした，柏木。彼のイメージは吉川晃司さんの「モニカ」だとのことで，アラフィフである筆者にはしっくりときた……というか，その不思議な似合いっぷりに笑えてしまった。

　お若い方々には何のことだかさっぱり分からないかもしれないが，ヤングの皆さんはこれをきっかけに元ネタを知るなどして，楽しみを広げてみてはいかがだろうか。

いろいろと想像が広がる，ハタチの彼ら

　会場のラストには物販コーナーがある。墓石アクリルスタンド，婚姻届や離婚届など，パンチの効いたグッズが揃っているので，眺めているだけでも楽しい。

横山昌義氏へのメディア合同インタビュー

──「龍が如く」が20周年を迎えた感想と，「冠婚葬祭展」の会場を実際にご覧になってどのように感じられたかをお聞かせください。

横山昌義（以下，横山氏）：
　20年経ったと言われても，あまり実感がないですね。僕，来年で50歳になるんですが，自分で50になるという自覚があまりなくて。気持ちは，このシリーズを始めた20代の頃のままというか，そのまま走ってきたような感覚があります。
　さっき会場内の年表を改めて見て，「こんなにいろんな出来事があったんだ」とびっくりしました。今日，会場を見て回ったことで，現実を突きつけられたような気がして，明日から急に老けそうです（笑）。


──今日は結婚式もご覧になったと思いますが，そのお気持ちをお聞かせください。

横山氏：
　本当に素敵だなと思いました。びっくりしましたね。
　この企画にこだわったのは僕なんです。以前，キャラクターをすごく愛してくださっているプレイヤーの方から，（キャラクターと）結婚式を挙げたときの様子を見せてもらう機会があって，今回はそれを参考にしました。

　フォトウェディングのような形も素敵だなと思っていたんです。ただ，それってメイクやドレスも必要で，準備も大変だし，勇気がいりますよね。「龍が如く」シリーズは20年前から，ゲームの力で，みなさんの「普段なら開けないような扉を少し開ける」ような作りかたをしてきました。
　当時，キャバクラなんて誰もが行く場所じゃなかったけれど，ゲームの中なら体験できる――そんな背中の押し方をしてきたんです。

　今回も同じで，公式がこうした場を提供することで，プレイヤーさんに「一歩踏み出してみませんか？」と体験の提案をする狙いでした。企画に参加された方々が楽しそうにされていて，本当に良かったです。

──この20年の中で，横山さんご自身が「開発において最も印象に残っている時期」はいつですか。

横山氏：
　ああやって年表を並べてみると，どの時期にもそれなりに忘れている部分があって，「ここが特に」というポイントがないまま来てしまったのかなとも思います。

　ただ，やっぱり「春日一番」という文字が出てくるあたりが一番印象に残っていますね。あそこは本当に，大きな転換期だったと思うんです。ゲームがRPGになったことよりも，主人公が春日に変わったことのほうが，僕にとっては大きな出来事でした。

　あの変更をユーザーの皆さんが受け入れてくれたからこそ，今もシリーズが続いているんです。あそこを乗り越えられたことで，「ここからは何でもクリエイティブに変えられるな」と思えたので，強く印象に残っています。

──今日の展示は見どころがたくさんありましたが，来場された方に向けての個人的な推しポイントはありますか。

横山氏：
　むしろ，人によって「龍が如く」の楽しみかたや好きなポイントって相当違うな，と改めて感じました。
　結婚式の申し込みにある「どのキャラと結婚したいですか」というデータを見ても，人気の傾向は予想通りじゃない。最近締め切った「キャラクター総選挙」でも，舞台化に向けた人気順位がこちらの想定を大きく超えてくるんです。中間発表を見ても「そう来るか」という感じで，すべてが予想外でした。

　なので今回は，「見どころを絞る」というより，どんな人でもハマれるものを全方位に散りばめた，という感覚なんです。どこを一番気に入ってくれるかは，本当に分からないですね。

――ご自身はどこが一番良かったと感じていますか。

　僕ですか？　僕が一番気に入ったのは，年表ですね。さっき上の段（リアル世界の年表）と下の段（ゲーム内の年表）を比べながら見ていたんですけど，「クロヒョウ」のドラマ放送と「冴島脱獄」の時期が同じ時期だったりして，「ああ，こんなタイミングだったんだ」と。ああいう味わいかたは本当に面白いです。


──（等身大）キャラクターが多数展示されていますが，改めてリアルイベントでご覧になって，新たな発見などはありましたか。

横山氏：
　やっぱり……みんなスタイルいいなって思いますね（笑）。等身大にして並べてみると，改めて感じます。
　それと同時に，うちのキャラクターって，「おじさんたち」や「普通の，ちょっとむさ苦しい人たち」によって人気シリーズになったんだな，としみじみ思いました。

　美少年とか美少女を前面に出すゲームは多いじゃないですか。でも，こんなに「おじさん」が並んでいて，そのキャラでお客さんにお金を払ってもらえるというのは，本当に幸せだと思いました。

──「龍が如く」シリーズの今後の方向性について，現時点でどのような展望をお持ちですか。

横山氏：
　龍が如くスタジオは現在，「STRANGER THAN HEAVEN」と「New VIRTUA FIGHTER」プロジェクトのタイトルを開発中です。
　そして「龍が如く」シリーズとしては，来年2月12日に「龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties」が発売予定ですが，実はこの作品自体に“今後の方向性を示すヒント”が隠されています。

　その内容については，事前に一切発表していません。遊んでもらえれば「今後，龍が如くシリーズは何をしていくつもりなのか」ということが，かなりはっきり見えてくるはずです。
　「龍が如く 極3」を“ただのリメイク作品”だと思っているなら大間違いですし，「龍が如く3外伝 Dark Ties」の方も相当衝撃的な内容になっていると思います。楽しみにしていてください！


　「龍が如く」冠婚葬祭展は，東京会場が11月28日から12月22日まで，大阪会場は2026年2月6日から2月24日まで開催される。入場には，販売枚数に上限を設けた「日時指定制」のチケットを購入する必要があるので，気になる人は本展覧会の特設サイトを確認しておこう。