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光は届かず,空気は腐敗の匂いに満ちている。足元からは得体の知れない蠢きが,壁の向こうからは機械の軋む音が聞こえる。
ここは放棄された巨大地下施設の底。唯一の脱出口は,はるか頭上にある。
握りしめた手が赤く震え始めても,登ることをやめるわけにはいかない。
本日は,インディースタジオDark Machine Gamesが手掛ける「White Knuckle」を紹介しよう。
本作はSUB-STRUCTURE 17と呼ばれる巨大地下構造物を舞台にした一人称視点のローグライト・クライミングホラーゲームだ。プレイヤーは名もなきクライマーとなり,崩壊しつつある施設を下から上へとひたすら登り,脱出を目指していく。
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このゲームの特徴は,左右の手をそれぞれ独立して操作するクライミングシステムにある。マウスの左右ボタンがそれぞれ左手・右手に対応しており,壁面の赤く表示されたつかめる箇所に手を伸ばしてよじ登っていく。
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それぞれの手にはスタミナが設定されており,片手でぶら下がり続ければ急速に消耗する。手を交互に使い,跳躍のタイミングを見極めながら登る必要があるのだ。
インベントリの管理も重要で、ピトンや鉄筋などのツールを状況に応じて取捨選択しながら登攀に活用していく必要がある。
“速く登る"ことに特化した操作設計
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「Cairn」のように四肢すべてを駆使するクライミングゲームと違って,本作の操作は左右の手だけとシンプルだ。しかしそのシンプルさこそが,スピードクライミングという方向性と噛み合っている。
手を交互に使って壁を跳び上がる基本動作はすぐに覚えられるが,スタミナが尽きかけた手をどこで休ませ,どのタイミングで跳躍するかという判断は一瞬の迷いも許されない。
ルート選択の自由度も高く,安全な迂回路と危険な直登のどちらを選ぶかで登攀タイムが大きく変わる。操作を覚えることより,覚えた操作をどれだけ速く正確に回せるかが問われるデザインであり,繰り返すほどに自分の上達を実感できる構造になっている。
足元から迫る死
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足元からじわじわとせり上がってくる巨大な肉塊の存在が,本作の恐怖を決定づけている。この怪物は倒すことができず,ただ上へ逃げ続けるしかない。部屋の底から埋め尽くすように迫ってくるため,立ち止まって安全なルートを吟味する余裕は与えられない。
スタミナ管理の冷静さと,追い詰められる焦りのせめぎ合いが本作独自の緊張感を作り出している。施設内に響くスピーカーの警告放送や環境音も相まって,プレイヤーは常に追い立てられる感覚から逃れられないわけだ。
探索欲を刺激するリージョン設計
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ゲームは複数のリージョンで構成されており,それぞれがまったく異なるビジュアルとゲームプレイを持っている。乾燥した貯蔵施設,汚水にまみれた配管区域,レンガと鉄骨の居住区など,景観だけでなく攻略に求められる技術も変化する。
各リージョンにはショートカットや隠しエリアも存在し,何度もプレイするなかで新たな発見がある。ラン(周回)ごとに部屋の配置が変わるローグライト要素に加え,パークによるメタ進行システムがあるため,繰り返し遊ぶほどに選択肢が広がっていくのだ。
「White Knuckle」は,クライミングという行為そのものをゲームの根幹に据え,そこにホラーとローグライトの要素を巧みに組み合わせた意欲作といえる。
左右の手を操るシンプルな操作が,スタミナ管理やインベントリの取捨選択と絡み合うことで,奥深い判断の連続を生み出しており,早期アクセスながらその完成度はすでに高い。高難度アクションやサバイバルホラーが好きなプレイヤーはもちろん,独創的なゲーム体験を求めるすべての人に触れてほしい一本である。


























