奇妙すぎる世界なのに，なぜかチルい。オーストラリアのちょっと変な放置ゲーム「ティングス・グース」［WePlay2025］

　中国の大型インディーゲームイベント「WePlay Expo 2025」の会場にあった，かなり目を引く奇妙なビジュアルのゲーム「ティングス・グース」（Tingus Goose）が強烈に印象に残ったので紹介しよう。


　本作は，オーストラリアのデベロッパ，Sweaty Chairが開発する放置ゲームだ。WePlayに出展していたのは，CiGA（中国インディーゲーム連盟）が主催する「indiePlay 2025」の最優秀海外作品賞にノミネートされたのが理由である。
　indiePlayのノミネート作品がまとめられたブースが設けられているのだが，魅力的で多彩な作品たちの中でも，「ティングス・グース」はひときわ存在感を放っていた。


　近くにいたパブリッシャの担当者曰く，プレイ体験は癒やし系。ストレス解消にもいいとのこと。

　だが，来場者がプレイしているところを後ろから眺めても，その奇妙すぎる世界観で，どう癒やされるのかがまったく分からない。

　疑問を抱きながら，実際プレイしてみた。画面の奇妙さは第一印象から変わらずだが，ヘッドホンを付けた途端に聞こえるチルい音楽は，奇妙と感じているのはおまえだけだ，と言わんばかりのリラックス度である。

　ゲームの説明も，ツッコミ不在のまま，当たり前のように進む。なぜ妊婦の中にアヒル（グース）が入って，赤ん坊がグースの中に入るのか。なぜ，もっと驚いた顔をしないのか。


　どうなってんだ，という疑問は次々生まれて，しだいに笑うしかなくなってくる。妊婦を外に連れ出し，お腹に水やりすると，巨大化したグースの顔が生えてくる。


　生えたグースの遥か上空に，どこから首が伸びているのか分からないグースがいる。このグースと結ばれることを目指して，グースに水をやり，首を伸ばしていくのだ。


　グースは，途中からティンギと呼ばれる赤ん坊のような見た目の存在を吐き出す。このティンギが上から下に落ちてくるのだが，マウスカーソルでエイムを合わせて右クリックすると，ティンギが跳ねてお金を落とす。そのお金を使って，水やりを続け，グースを成長させていくのだ。


　グースは成長すると，ブロッサムと呼ばれる顔を長い首から出す。木でいう枝のイメージだ。ブロッサムは，ティンギを食べてお尻から出すものや，滑り台のようにすべり降ろすものなどさまざまで，ティンギが滑ったり，排出されたりするタイミングで，クリックしたときのようにお金が入る。


　本作のシステムをざっくりおさらいすると，落ちてくるティンギを右クリックしてお金を稼ぎ，その資金でグースを成長させ，恋人グースのもとへ届く高さを目指す，というものだ。
　ブロッサムの配置を工夫すれば，放置するだけでお金を稼げる。より効率を上げるためには，ティンギが落下していく流れをうまく作り，各ブロッサムにおける生産量を最大化することが必要だ。

　ステージはクリア方式で，恋人グースのもとへたどり着けば次のステージに進める。恋人グースと1つになり，大量のグースをタンポポの綿毛のように飛ばし，次の人のもとへたどり着く。


　パブリッシャの方に話を聞くとすでにエンドレスモードの開発も進んでいて，DLCなどで展開する予定とのこと。

　また，デスクトップに常駐させると，仕事中に寄り添って，メンタルヘルスをケアしてくれるという。なんと心強い。

　ウィッシュリストの登録者数は日本が一番多く，次に中国，その次にアメリカとなっており，オーストラリアは人口規模的に上位になっていないという。
　担当者は，日本で伸びている理由を，「絵柄とちょっと変な設定が日本人の好みに合っている」「癒しや解放体験を求めている人が日本人に多い」と分析し，そういった人たちに刺さっているからではないか，と説明した。

　そして，Steamのアニマル系フェスに2回申請したが，2度とも却下されたという。擬人化した動物はアニマルフェスの対象外であり，グースは擬人化（または人間に近い動物）と判断されたそうだ。

　Steamストアページを見ると，会場で体験したものからさらに数倍ぶっ飛んでいることが分かる。もともと本作は，モバイル向けに基本プレイ無料としてリリースされた作品であり，Steam版は，PC向けに最適化などが行われた買い切りバージョンとなる。
　会場でプレイしただけでは，このゲームの変なところのほんの一部分しか見られていないような気がしてならない。2025年12月2日の正式リリースが楽しみである。